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2016年1月26日★★★★横山秀夫の短編集を読んで息を吹き返した私が次に手に取ったのは、東西ミステリーベスト100にも選ばれている殊能将之の代表作「ハサミ男」である。実はこの小説は東西ミステリーベスト100にランクインされていると知って2年前に買ったのだが、何故か行方不明となり、先週本棚を整理したら奥にずり落ちていたのを発見して、うーん次はこれだと思い読んでみたのだが・・・。美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!(裏表紙引用)読み終えて、これはホラーではなかった。明らかに大どんでん返しありのミステリー小説である。本作の舞台は後書きにも書かれているが2003年の東京らしい。女子高生2人が喉にハサミを深く突き刺されるという同様の手口で殺害される事件が発生し、犯人(ハサミ男)が次なるターゲット(女子高生)を決めて尾行を始め、綿密に調査をしている所から物語は始まるのだが、その女子高生が自分と同じ手口で殺されてしまい、先を越されてしまった。その模倣犯を突き止めるため、本物のハサミ男が警察の調査と並行し、自分も調べ始めるのだが・・・。この小説を読んでいたらハサミ男は女性でしかも超美人だとは誰も思わないだろう。しゃべりが男言葉だったので騙されたというより、先入観というのは怖い。全く女性を想像していなかった私が真相を知らされたときには唖然としたのは言うまでも無い。もうひねりがききすぎで呆れるぐらいで、読者をどれだけ混乱させたら気が済むのかと言いたい。本当に後半はページを行ったり来たりと大変でした。こんな超弩級の精神異常者のハサミ男には最後は笑うしかありません。あーなんてこった。意外性が抜群で頭が混乱したい人にはお奨めします。
2016.01.26
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2016年1月19日★★★★年末年始がバタバタで全く小説を読むことが出来ず、正月も終わり、なかなか読む気になれずにこのまま小説を読まない昔の生活に戻ってしまうのではないかと思うほど、長く読まない日が続いたが、読売新聞の書評欄を眺めているうちにまたうずうずと読みたい気持ちがわいてきて、まず短編集からと思い手に取ったのが、短編を書かせれば右に出るものはいないと言われている横山秀夫の渾身のミステリ短編集の本作である。刑事になるという夢破れ、留置管理係として職業人生を閉じようとしている、近藤。彼が証拠不十分で釈放された男を追う理由とは(表題作)。自叙伝執筆を請け負ったライター。家裁調停委員を務める主婦。県警ホームページを管理する警部。地方紙整理部に身を置く元記者。県知事の知恵袋を自任する秘書。あなたの隣人たちの暮らしに楔のごとく打ち込まれた謎。(裏表紙引用)やはり、横山秀夫の短編は読みやすく面白い。全部で6編ある短編それぞれの主人公が異なる肩書を持ち、順番にあげてみると警察事務職員、フリーライター、家裁調停委員、県警警務部情報管理課のホームページ管理責任者、地方紙の編集局整理部内勤社員、知事公室秘書課の課長と全く共通点の無い主人公が様々な難題に遭遇していくというパターンである。また、各短編とも心理描写が絶妙で切れ味も鋭く、読み応え十分に仕上がっている。その中で失踪事件の真相を追う定年間近のベテラン看守の眼が真実を暴くという表題作の「看守眼」と県知事を支える裏方の秘書課員の面々を綴ったラストの「秘書課の男」が特に楽しめた。横山秀夫の小説は、ある共通のテーマを扱った小説が多いが、こんな小説もありだなと思わせくれた一冊だ。完全に小説読み読み状態に戻ったので、次は長編を読んでみようかと思う。
2016.01.19
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