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スタジオ・ジブリの新作映画「借りぐらしのアリエッティ」を観ました(出張先でふらりと。)
原作は英国の児童文学作家 メアリー・ノートンの「床下の小人たち」(The Borrowers(借りる人たち、っていう意味ですね)」。原作も読んだことがありますし、BBCがドラマ化した実写版も見たことがあります(これも面白いです。確か名優イアン・ホルムがアリエッティのお父さん、ポッド役でした)。
原作のストーリーや登場人物はほとんどそのままに、舞台を現代の東京郊外にある森に囲まれたクラシックなお屋敷に、主人公の小さな少女アリエッティと友人になる「男の子」(原作では名前がなくただの「BOY」)を翔という12歳の日本人の少年に変えたお話になっています。
東京のごく当たり前の街の風景。ベンツを運転する上品な老婦人と、助手席の線の細い美しい顔立ちの男の子。車は瀟洒な洋館を取り囲む私道へと入っていき、そこから急に、鮮やかな緑と色とりどりの花々の咲き乱れる別世界が広がります。
(以下ネタバレです)
この映画を先に見た友人からは 「ここから物語が始まる、とわくわくするところで終わっちゃってちょっと残念、物足りなかった」
という感想を聞いていたのですが、私はこの展開とちょっとせつない終わり方、わりと好きでしたね。(原作に忠実な展開の割には、かなりドラマチックになっていると思いますよ)
翔くんの数年前の回想、という始まり方なので、多分彼も元気になっているみたいだし。
状況も人種も(普通の人間と小人)違うけれど、それぞれ限られた小さな世界で生きてきた男の子と女の子。
人間の男の子は生まれつき心臓が悪く、親からの愛情も薄いようで、本を友達にずっと寂しく暮らしてきたのでしょう、生きることをあきらめたような、孤独な表情をしています。
小人族の少女は好奇心旺盛で元気いっぱい。無口でしっかりもの、たくましい(レスキュー隊員かロッククライマーみたいに頼もしくて素敵)おとうさんと、ちょっとヒステリーっぽいけど憎めないおかあさん(このキャラは原作そのまま)に愛されて育った、たくましくてきかん気の強い美少女です。ですが、彼ら三人のほかに、小人族の仲間は誰もいません。
仲間と離れ離れになり生きているかも分からない、だから両親は自分たちに何かあったら娘はひとりで生きていかなければならなくなる、という覚悟のような思いを抱いているのでした。
「人間に見られたら引っ越さなければならない」掟がある、床下の「借りぐらし」をしているアリエッティたちの住む瀟洒な洋館に住むのは上品な老婦人と老齢のお手伝いさん。そこへ、心臓の手術を1週間後に控えた物静かな男の子、翔が静養にやってきます。
そして翔に「見られてしまった」アリエッティ。
閉じられた小さな世界でおそらく常に死を意識して暮らしてきた翔と、床下の小さな世界で愛情に包まれて精一杯生きてきた明るいアリエッティ。
出会ってはいけない二人なのですが、導かれるように、すれ違いながらも距離が近づいていく二人は、やがて対面することに。
翔は、アリエッティに残酷な言葉を言います。彼女の種族が「滅びゆく種族」だと。
それは少女の発散する生のオーラに対する、少年の嫉妬だったのかもしれません。それに対して目から涙をぽろぽろこぼしながら、絶対に負けない!と言い返すアリエッティ。
翔はすぐに自分の言ったひどい言葉について謝り、「滅びゆくのは(死ぬのは)、自分のほうだ」とつぶやくのでした。彼は心臓の手術を受けるけど、多分だめだ、と諦めているのでした。
やがて、確かに戦争も大乱闘も起きないけれど、小さな世界で暮らしてきた二人にはこれまでの世界がひっくり返るような事件が起きます。
たぶん初めて「守る相手」が出来た翔は、体にはかなり無理をしつつ、一生懸命アリエッティと彼女の家族を守るためにアクティブなヒーローになっていきます。
そしてアリエッティも、守られる一方ではなく小さな体を上手く使って翔を助けます。
アリエッティは翔に母親探しの手助けをしてもらうけど、翔もアリエッティから「生きようとする心と力」という大きなものをもらうのでした。
ほのかな気持ちの交流と、そして別れ。
二人は別々の、でもこれまでより遥かに広い世界へと旅立っていくのでした。
小人たちから見た普通の人たちの家や家具のサイズのビッグさとか、角砂糖とかお茶の滴の大きさとか、ティッシュのごわごわ加減とか、そういうディテールも楽しかったです。
ちょっと困ったキャラのお母さんとか、翔が突然ドールハウスのキッチンをアリエッティの家に配置しちゃうところとか、意外なくらい原作そのものなのに、原作以上の 「甘酸っぱい初恋風味」
が流れているのはさすがジブリですねー。
ちなみにアリエッティと同種族のワイルドな男の子、スピラー。病弱で美少年の翔に比べるとまさに野生児ですが、原作の最終巻(5巻目)では、アリエッティと結婚することになるんですよ。
でもこんな展開は、この映画でキュンキュンしちゃった女の子たちにはちょっと不満かも?(笑)。
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