2005年01月08日
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客は買う理由を求めている。


新しい服を買うべく、バーゲンに出かけた。
ハッキリ言って、僕はオシャレにはあまり自信がない。
背が高いから、細身のスーツなんかはそこそこ似合うけれど、
残念ながら外見的にイケメンではないので、えらくカッコつけた
服なんかは、さすがに気がひけてしまう。

そんなコンプレックスもあってか、服を買いにいくのがあまり好きじゃない。
たまにポールスミスなんかで、少しは似合うようになったんかしらと
試着してみたりするが、やっぱりどうも違う。

「似合ってないな~と思いながら、心にもない褒め言葉を言ってるんだな、この人。」
なんて、嫌な事を思ってしまうくらい、ひねくれてしまう。
そんな自分の心の狭さを感じてしまうから、さらに服を買いに行くのが嫌いだ。

でも。
それでも、やっぱり新しい服が欲しくなるときもある。
それなりにいい服を着ていたいし、それなりにカッコもつけたい。
それに、気にいらなくなった服をずっと着るのは、服を買いにいくことよりももっと嫌いだ。

そんなわけで、気が進まないながらも久しぶりに服を買いにいった。


JR高島屋をふらふらと歩きながら、あれこれ考える。
服を買いに行くのが嫌いだけど、買わなければならない僕が、求めているものとは何か。

きっとそれは「買う理由」だ。

好みだってあるし、気にいるものもたくさんあるはず。

そんな中で、今日選ばれる服は、今日僕がもっとも納得した妥当な理由を
つけられた服のはずだ。
僕は服ではなく、理由を求めてフロアをまわった。


初めに目についたのは、セオリーだった。

デザインもとてもシンプルなのがいい。

でも、僕がセオリーに求めているのは、きっと「ブランド」だ。

社会人になった頃、その時付き合っていた彼女に教えてもらった。
「セオリーはちょっと高いけど、育ちのいい上品な人が着るようなブランドだね」と。
実際に、一緒に行った表参道の路面店では、大学生くらいのいい歳をした男が、
両親と妹とおぼしき上品そうな家族と談笑しながら、服を選んでいた。
「大学生になったら服くらい自分で稼いで買えばいいのに。
いい歳して、両親と服を買いに来るなんて恥ずかしい。」
と思ったから、よく覚えている。

でも、何故かそれ以来、セオリーというのはそういう
「上品なブランド」として、僕の頭には認識されていた。
そして去年の冬、ふとした拍子にマフラーを買い、
それが気にいってから、スーツも買ったし、シャツも買った。

いつの間にか、その「ブランド」を求めるようになっていたらしい。
いつの間にか、その「ブランド」から発せられる「上品さ」のようなものを
求めていたのかも知れない。


セオリーの次はボスに入った。
まあまだボスの服を着るような歳ではないだろうけど、
ものは試しとあれこれ試着してみた。
まあ悪くはないし、似合わないでもない。

ふと値段を見ると、何てことのないパンツが3万円もした。
バーゲンで安くなってこの値段。
へぇ、やっぱりこれくらいするんだ。そう思った。

そこでふと、買ってみようかという気になっている自分に気づいた。
こんな普通のパンツを3万円で?買ってもいい?
そう自問自答しながら考えた。
何故これを買おうと思ったんだろう、と。

きっとそれは値段の高さだ。
何てことのない普通のパンツだけど、3万円もするからだ。
「普通に見えるけど、そうじゃないんだ。3万円もするんだぞ。
3万円もするから、買ったんだ。」
と言って、それを着ている自分をふと想像した。

服を買う理由は「ブランド」だけではない。
セオリーの服は自慢したくなるけど、ボスの服はあんまり自慢する気にはなれない。
そう考えると、やはり今このパンツを買おうとした理由は
「ブランド」ではなく、「値段」なんだ。そう気づいた。

でも、そう気づいた瞬間、一気に買う気がなくなった。
鏡に映るこのパンツには、値段が高いということしか価値がない。
そうわかった今、わざわざ3万円をここにおいていくのは、バカらしい気がした。
金は持っているかも知れないけど、あまりにセンスのないおっさんが何人も
店内をウロウロしていたのが、その気持ちに輪をかけた。
「この人たちもきっと『値段』にだけ価値をおいてるんだろうな」と。


そして最後に。
前にも何度か服を買ったことのある「JOSEPH」というブランドの店に立ち寄った。

僕はこのブランドのことをよく知らない。
どういう人が着るのか、どういうイメージなのか知らない。
それどころか、いまだに読み方すら定かではない。
ジョセフ?ジョゼフ?それともひょっとしてヨゼフ?

でもまあ、そんなことはあまり気にしたことがない。
知らないから友達に自慢したこともないし、誰かに話したこともない。

でも、いくつもここの服は持っているし、今気にいってよく着ているセーターもそうだ。

読み方も知らないブランドの服を買う理由。
それは「人」だ。

ここには決まってひとり男の店員がいる。
別にカッコいいわけではないし、背も高くない。
とびきりオシャレなわけではないし、かといってカッコ悪くもない。
あまり特徴はないけれど、雰囲気はまずまずいい。
そんな、どこにでもいるような人。

初めてこの人に声をかけられたときは、ちょっとノリが軽すぎて嫌だった。
でも、話してみると結構ちゃんとしている。
商品についてはしっかり説明してくれるし、自分の意見だってちゃんと言う。
動きは早いし、押しも引きもテンポがいい。
そうして話しているうちに、不思議と本音が言える感じがした。

「う~ん。正直、何か違うような気がするんですけど」
なんて言っても、「あらららら。。」なんて言いつつ、
「何が違うんですかねぇ。色目は合うと思うんですけど。
ま、でも何か違うと思われるってことは、どっか違うんでしょうねぇ。」
なんていいながら、そんなに強引には薦めてこない。

でも、こっちが「おっ。これならいいかも。」という顔をすると、
あれこれ似合ってるポイントをさらっと言ってくれる。
そうすると、「あら。やっぱり?」なんて思いつつ、思わずニヤけてしまう。
するとどんどん畳み掛けられ、じゃあこれ買います、なんて言ってしまう。

自分でも「単純な客だ」と思いつつ、でもそうやってお金を払う。
去年の夏、初めて買って以来、僕に「買う理由」を与えてくれる
この人を求めて、この店に来るようになった。
僕は、彼が与えてくれる「理由」ではなく、理由を与えてくれる
彼自身を「買う理由」として求めているのだ。

ブランドでも値段でもなく、「人」が理由だったのだ。


そんなことを感じながら、彼が似合うと薦めてくれたスーツを買って、
バーゲンでにぎわう高島屋を後にした。





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最終更新日  2005年01月10日 03時28分08秒
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