大腸肛門専門外科医のひとりごと

大腸肛門専門外科医のひとりごと

2005.09.11
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テーマ: 癌(3567)

【大腸内視鏡その2】





いよいよ検査です。

検査をやるまえに検査着に着替えます。

私の病院では使い捨ての紙でできた「穴あきパンツ」をはいてもらいます。

たま~に穴の空いている方を前にしてはいてしまう人がいるのでお気をつけください。



検査台に寝ます。

左を下にして寝ます。膝をかかえるように曲げておしりをつきだした形、

ちょうど直腸診のシムス体位ににてますね。シムス体位

まずは直腸診を行います。



肛門を入ってすぐの病変というのは、ともすると内視鏡でも見逃されることがあるからです。

それと、お尻の割れ目が深い体格のいい人だと、おしりから病変までの距離があると

思ったら、実は入ってすぐだったということもあります。

「肛門からの距離」というのは癌の場合、手術でお尻を残せるか、人工肛門になるか

判断するのにとても大事です。

直腸診は、肛門からすぐのところに病変がないかを確認すると共に

検査中、内視鏡のすべりをよくするために潤滑のゼリーを塗るという意味合いがあります。

この潤滑のゼリーですが、よく医療現場で使われるゼリーに

「キシロカインゼリー」

というものがあります。
キシロカインゼリー

キシロカインというのはリドカインという麻酔のお薬なのですが、これを内視鏡に



キシロカインにアレルギーをもっている方が、稀ですがいらっしゃいます。

また短時間に多量にキシロカインを使用するとキシロカイン中毒を起こすこともあります。

注射だったらどのくらいの濃度をこのくらいまでなら大丈夫というのがわかりやすいのですが

このゼリー実はキシロカインの濃度がかなり濃くて、なおかつ使用量がわかりにくいのです。

私の施設では何か理由がなければキシロカインは使いません。



分かっている先生は(それがほとんどだと思いますけど)いいのですが、適当に

大丈夫といいつつキシロカインを使っているならばちょっと怖いかな。

まあ、これでキシロカイン中毒とか話にはありますが見たことはありません。

そういうレベルの発生頻度ではあるのですけれど用心するに越したことはないですね。



検査の前置きが長くなってきました(^^;)

お尻に内視鏡を入れます。

術者はテレビのモニターを見ながら、内視鏡を奥へ奥へと進めていきます。

大腸は土管じゃないので、ただいれていけば進んでいくものではありません。

押したり、引いたり、ひねったりと先人たちが培ってきた挿入技術を駆使していきます。

この挿入方法だけで本が1冊かけちゃいますので詳しくは書きませんけど、

私も何冊か持ってます。

まあ、読んだからといって簡単にはいるほど甘くはないんですけどね。

腸にやさしい大腸内視鏡挿入法 イラストレイテッド大腸内視鏡図解挿入法マニュアル 大腸内視鏡検査法 大腸内視鏡挿入法 コロナビを用いた新大腸内視鏡テクニック 大腸内視鏡 挿入手技の基本
読んでみたい人は手に入りますけど、医学書って高いです・・・。


手に伝わる感触、入っている内視鏡の長さ、腸のヒダのかたちなどから、

今、内視鏡が何処まで進んでいて、お腹の中でどういう形になっているのかを知ります。

そんなのから分かるのか?

と言いたい人もいるでしょうけど、これが分かるんです。

もちろん経験を積まないとだめですけど。

ですので、こうなっているときはこう対処すれば入れることができるというノウハウ

を数多く持っている先生、経験数が多い先生ほどやはり挿入するのが上手なんです。


内視鏡がお腹にはいるのですから、全く何も感じずに終わるということはありません。

なんかへんな感じ、おなかのなかでごそごそする感じはあります。

問題は 「痛み」

基本的に大腸は切ったり、刺したりしても痛みを感じません。

ではなぜ内視鏡で痛みを訴える人が多いのでしょう?

これは 「大腸が延ばされるためにでる痛み」 がほとんどだと思います。

お腹の中でたわんだ腸の中を進める際に、どうしても腸はある程度延ばされます。

これをさらに無理して進めると痛みがでます。

上手な先生は、腸をあまり延ばすことなく入れるすべを知っているので痛くないのです。

内視鏡編まだ続きます。

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Last updated  2005.09.21 12:29:53
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