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八木哲郎

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2006/10/30
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カテゴリ: カテゴリ未分類


車窓から見る光景は行けども行けども草原ばかり。あっても低い丘程度。草原に羊や牛を放牧している。土地を耕して穀物とか野菜を植えている光景を見たことがない。もし日本の百姓がみたら何という無駄な土地の使い方をしていると思うだろう。
いったい小麦とか野菜はどこでつくっているのだろうか。
リバプールに近くなったところにマンチェスターという大きな街があった。有名な工業都市という知識しかないが、車窓から見たところ、殺風景な工場と労働者の街という感じがする。ものすごく発達している幹線道路と高速道路が見えた。
やがてリバプールに着く。タクシーでシスツル・リバプールというホテルについてみると、さすがに最高級のホテルであった。海岸よりの位置にあり、部屋の窓から見る光景はすばらしい。隣接する教会の時計塔が目の前に聳え立っている。

街に出てみると、海岸から坂道をのぼった高台に発達した街で、神戸かサンフランシスコのような味がする。眼前に迫ってくる圧倒的な景観に息をのんだ。
なんという美しい街だろうか。そそり立つ赤屋根の教会の尖塔、色とりどりの色彩のおとぎ話に出てくるような凝りに凝った建物、何百年の歴史をそのまま残している大聖堂、往年の栄華を思わせる銀行や貿易会社の連なり。狭い路地の石畳にかもめが舞い降りていた。のぞかせてもらった公会堂は1723年に出来たものといい、往年の商業貿易の最盛期にお偉方が集まって会議やパーティを楽しんだと思われる贅沢を極めた天井や壁の装飾に目を見張った。そういう威風堂々の一帯からダウンタウンの方に下りていくと、新しいスタイルのモールがあり、そこだけが現代風である。デパートとも大型スーパーともつかぬ大店で金をエクスチェンジする。

海岸沿いにある海洋博物館を観る。ドックに往年の帆船や蒸気船が風雪に耐えて係留してある。百年あるいは二百年前にこのような長さ数十メートルに満たぬ小さな船で大洋を渡ったのだ。博物館の内部にはさまざまな船の模型、19世紀の蒸気機関などがあり、地下に行くと、かつてこの港で行われた黒人奴隷売買の図、何百万という大量の移民がこの港から新大陸のアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに出て行っ頃を髣髴させる貧しい一家の群像とか、かつての検疫所、穴倉のようにくらい移民の収容室などが保存されていた。
すりへった石畳はものすごく歩きにくい。何百万人の移民や黒人奴隷がかつてふみしめた道であろう。博物館の壁画にあった海面を埋め尽くすほど群がった大小の船舶の姿はもはやなく、しずかな入海に夕闇が舞い降りつつあった。






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Last updated  2006/10/31 01:26:58 AM


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