時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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June 7, 2008
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 「そして、人間というものが、決して意思どおりになるものでなく、むしろどうにもならぬ必然によって動かされるものだということを、おそらく彼らは知っていたのだろう。イギリスやフランスでは、彼はいわば丸い穴に差し込まれた四角な木釘だった。ところが、ここでは、穴はどんな形にでもなるのであり、したがって、どんな木釘でも合わないということはない。」

 最近は、ミステリーを読むことが多いが、その昔大学に入ったころは、外国の色々な作家の作品もよく読んでいた。そんな作品のひとつに、 「月と六ペンス」 (ウィリアム・サマセット・モーム/中野好夫:新潮社) がある。学生時代に買った本は、既にどこかに行ってしまったが、先日古書店で見つけたので、懐かしさもあり、購入して読み返してみた。

 作者のウィリアム・サマセット・モーム(William Somerset Maugham:1874 - 1965)は、有名なイギリスの作家である。第一次世界大戦中は、007で有名な「MI6」で諜報部員をやったこともあるという変わり種で、私は読んだことはないが、スパイ小説なども書いているようだ。多くの名作を残しているが、「月と六ペンス」は、画家ポール・ゴーギャン(Eugene Henri Paul Gauguin:1848 - 1903)の伝記に触発されて書かれたもので、モームの小説の中ではもっとも知られているものの一つである。

○ 原作 「The Moon and Sixpence 」( W. Somerset Maugham/Robert Calder:PENGUIN CLASSICS U.S )と行方昭夫訳による岩波文庫版


  この作品での、ゴーギャンをモデルとした主人公は、ストリックランドという男である。妻と二人の子を持つ、平凡でまるで面白みのない一介の株式仲介人というのが、この男の前半生だ。それが、40歳を過ぎてから、突然妻子を捨てて、住み慣れたロンドンから、画家を目指してパリに渡る。ここから、ストリックランドは、平凡な人生を送っていた男から、強烈で個性的な人物に変わる。とにかく極め付きの変人と言ってもよいキャラクターだ。周りの人がどう思おうが、全く斟酌せず、自分の思うように生きて、ただ絵を描き続ける。パリでは、彼を天才と見抜いた、唯一の理解者の妻を寝取ってしまう。そして、ついにはその妻を自殺に追いやり、タヒチに渡る。故国やフランスにいたときは、蛇蝎のように嫌われていた彼だが、タヒチに渡ってからは、深い同情さえ受けていた。彼はひたすら絵を描き続ける。業病による死が彼の筆を停めるその一瞬まで。

 ところで、 「月と6ペンス」 とは、極めて象徴的な表題であり、一見何を意味するのかよく分からない。ネットでの意見なども参考にしながら考えてみた。月は夜空に美しく輝いているが、西洋では昔から狂気の象徴でもある。そして、6ペンスとは世俗的なものを表すらしい。さらに、6ペンス銀貨は、月の象徴でもあるという意見もあった。そうすると、世俗的な株式仲介人であったストリックランドが、芸術という狂気に取りつかれ遥かなる高みを目指したが、それは、結局は人間という不条理なコインの表裏に過ぎなかったということであろうか。




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Last updated  July 7, 2008 09:22:57 PM コメント(12) | コメントを書く
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