時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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February 18, 2010
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 武士すなわち侍と言えば、日本人なら、だれでもこんなものだというイメージが頭にあるのではなかろうか。確かに時代劇を見れば、武士はたくさん登場する。しかし、どういうわけか、映画やドラマになるのは、上級武士か浪人が多く、平均的な武士というのは、その他大勢の中に紛れ込んでしまっているのではないかと思う。

 それでは、江戸時代の平均的な武士とはどのようなものだろうか。それを明らかにしてくれるのが、 「江戸三〇〇年「普通の武士」はこう生きた」 (八幡和郎/臼井喜法:ベストセラーズ )である。

○「江戸三〇〇年「普通の武士」はこう生きた」(八幡和郎/臼井喜法:ベストセラーズ )



 この書では、平均的な武士像として、近江の国の尼子藩7万石という架空の藩に使える空谷恭之介という50石取りの武士を示している。50石といっても、全部が自分の収入になる訳ではない。4公6民とすれば、実習は20石ということになる。この収入で、なんとかやっていけないこともないが、やはりある程度の内職も必要なようだ。

 ところで、50石取りの武士と言えば思い出すのは、藤沢周平の「たそがれ清兵衛」である。庄内地方にある海坂藩に使える清兵衛は、剣の達人ながら、非常にみすぼらしい恰好で貧乏暮しをしている。「たそがれ清兵衛」のレビュー記事には、清兵衛のことを下級武士と書き、それは一般的なコンセンサスも得られているものと思っていたが、この本によれば、武士としては中級で、上級武士か下級武士かの2分法によれば、ぎりぎり上級武士だというのは意外だった。

 がちがちの身分制度の中で、先祖の功績のおかげで、いわば年金生活のような暮らしをしていた武士たちは、教養面では寂しい限りであったようだ。そのくせ、体面を大事にし、生活は数々のしきたりでしばられていた。そんな、普通の武士たちの生活を教えてくれる実に興味深い一冊である。

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Last updated  February 18, 2010 07:37:07 AM
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