時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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February 26, 2010
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「向日葵の咲かない夏」 (道尾秀介:新潮社)、何とも不気味な作品だ。もっとも、この作品は、ホラーサスペンスだから、不気味というのは最高のほめ言葉となるのだが。

○「向日葵の咲かない夏」(道尾秀介:新潮社)



 物語の主人公はミチオという小学校4年の少年。父母と妹のミカの4人で暮らしているが、母親はミチオに対して、異常ともいえる位冷たい態度を取っている。夏休みを控えた終業式の日に、ミチオは、先生から、欠席したクラスメートのS君の家に、宿題とプリントを届けるように頼まれる。S君の家でミチオが見たものは、首を吊って死んでいたS君の姿だった。そして、S君は、ミチオの前に蜘蛛となって現れ、自分は殺されたと告げるのである。

 S君はある人物を名指し、ミチオは妹のミカと、犯行の証拠を手に入れようと動き出す。名指しされた人物は、確かに変態的な性癖を持っていたのだが、実はこんなものはほんの序の口。ここからどんどんと、異常で不気味な作品世界が広がっていく。

 仏教の世界観では、命あるものは、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の六道を輪廻するという。クラスメートが蜘蛛に生まれ変わるというのは、明らかに、仏教の影響だろうが、実は生まれ変わってくるのはS君だけではなく、この後続々と登場してくる。それが、ことごとく畜生道というのも不気味さに色を添えている。

 主な登場人物は、いずれも、どこか心が壊れた人たち。それぞれに理由はあるようだが、トラウマと言うだけでは片づけられないような異常さである。読み進んでいくうちに、この異常さがどんどんと拡大して、まるでブラックホールのように読者を飲み込んでくるのだ。

 ホラーとしては、すごい作品だと思う。しかし、そうそう出会いたくない作品だ。

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Last updated  October 17, 2010 09:49:04 AM コメントを書く
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