時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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May 6, 2010
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「風の男白洲次郎」 (青柳恵介:新潮社)に詳しい。なかなかに魅力的な人物であったことは、この本でもよく分かるのだが、やはり、彼が直接書いたものを読んでみたいということで、「プリンシプルのない日本」(白洲次郎:新潮社 )というものを買ってみた。本書は、彼が、1950年代に、「文芸春秋」を中心に発表した文章を集めたものである。もっとも、タイトルになった 「プリンシプルのない日本」 という文章は、1969年に「諸君!」に発表したもののようである。

○「プリンシプルのない日本」(白洲次郎:新潮社 )


 彼の魅力は、その歯に衣着せぬ言論と、どこか奇矯とも思える行動である。写真を見ると、ちょいワルオヤジといった印象の人物であるが、かなり天衣無縫の人物だったようだ。本書の初めに、今日出海氏が「野人・白洲次郎」という一文を寄せて、白洲次郎を「育ちの良い生粋の野蛮人」で紳士道を理解している「サムライ」だと言っているが、これが彼の人となりをよく描写しているようで、なかなか面白い。 しかし、その目は、確実に、世界の中の日本と言うものを見つめている。彼は、日本人の大部分が、アメリカと戦うなど予想もしていない時に、日米開戦は不可避であり、東京は焼け野原になるだろうと言っていたそうだ。だから、戦前の段階で鶴川村に疎開し、農民として人知れず食糧増産に励んでいたらしい。

 タイトルから分かるように、彼はプリンシプル、すなわち原則というものを非常に大切にした人である。

「すべての物事で大事なのはそのこと自体より、それにかかり合っている原則だということを忘れてはならない。」(P62)

 しかし、我々の周りには、現象の上っ面だけ捕えて、枝葉末節的な解釈のみに終始し、そのプリンシプルは何かということを考えてもみないことがあまりに多いように思われる。彼の「西洋人とつき合うには、すべての言動にプリンシプルがはっきりしていることは絶対に必要である」(p217)という言葉は、今でも決して色あせてはいない。

 もう一つこの書で興味深いのは、戦後の占領時代の様子がうかがえることだ。特に日本国憲法がいかにしてできたかという話は、日本人として正しく理解しておく必要があると思う。現在の日本国憲法は、GHQであらかじめ用意した草案を翻訳して造られたもののようだ。GHQのオエラ方の夫人が、その草案の一章だか一項だかを書いたのは、当時休暇で日本に来ていた大学生の総領息子だと自慢げに公言していたことを、そこの高官の一人が嘆かわしげに、白洲氏に話してくれたとのことである。



 GHQと渡り合い、占領政策の内側を知る白洲氏ならではの言葉だろう。ただ、白洲氏は、憲法自体の出来の悪さはともかく、そこに流れているプリンシプル自体は素晴らしいとも言っていることには注意しなくてはならないのだが。

 それにしても、白洲次郎と言う男、スケールの大きな人物である。寡聞にして、最近の日本でこのような人物を知らない。今の日本に必要なのは、こんな人物だろうに。 

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Last updated  May 6, 2010 07:55:06 AM コメント(2) | コメントを書く
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