時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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October 31, 2010
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 「時をかける少女」、「魔法少女」、「文学少女」のように、「少女」と言う言葉が付くタイトルを見ると、どこか心ときめくような思いのする殿方は多いのではないか。もっとも、「地獄少女」とか「壊れた少女」となると、少し微妙かもしれないが。こういった場合の少女とは、たいてい「美少女」を指しており、美少女が、一生懸命何かをやっている姿というのは、おじさんたちには(いやおにいさんたちにも)非常に好ましく映るのであろう。

 もちろん、こんな物語がつくれるのも、少女が活躍できるという社会が前提になっているからであり、「○○少女」というタイトルは、現代社会特有のものかと思っていた。ところが、封建社会である江戸時代にもそんな本があったことを知って少し驚いた。「算法少女」である。ここで紹介する 「算法少女」 (遠藤寛子:筑摩書房)は、その江戸時代に著された同名の本をモチーフに、作者が豊かな想像力を使って、和算好きな少女のお話として織り上げたものだ。




 主人公のあきは、町医者である父の千葉桃三から上方流の算法を習っている、利発な少女である。ある日、神社の算額の間違いを指摘して、それが、久留米藩主の耳に届き、姫の算法指南役にという話がもちあがるのだが、江戸の算法の権威で関流の宗統である藤田貞資から横槍が入る。

 江戸時代は、多くの分野で家元制度があった。実力の差がよく分からない、最後は見解の相違で終わらせることが可能な芸事と違って、実力がはっきりと分かる将棋などにも、家元制度があったというのは、今の感覚からは不思議なことである。ましてや数学の世界など、家元制度とは一番遠いと思うのだが、この作品の舞台である安永年間では、関流から分かれた諸流派を中心にして、勢力争いをしていたようだ。作品中にも、円周率の計算方法などが、まるで流派の秘伝のような扱いで描かれており、苦笑してしまう。

 政治学者の故丸山 眞男氏によれば、日本はタコつぼ文化だそうだ。この時代は、算法もまた各流派が自分のタコつぼに閉じこもっていたのだろう。それは、上方流算法を学んだあきの父親も例外ではなかった。父親の算法に関する考え方に納得がいかなかったあきだが、関流を学びながら和洋の算法を広い視野でく研究している本多利明と出会うことにより、自分の本当の生き方を見出す。この作品は、江戸時代の「算法少女」成立までの話だけではなく、あきの成長の物語でもあるのだ。


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Last updated  October 31, 2010 08:13:26 AM
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