GOlaW(裏口)

2006/02/15
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カテゴリ: 西遊記



──ただ、姫君を想い続けていただけなのに!


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 ということで、まずは『鶏肖魔人』こと修周について、背景の描写を含めて語りましょう。

 “兵士の姿に逃げ惑う修周の姿”に、目の端に涙を溜めてしまったのは私だけでしょうか。
 いや、分かってるんですよ、修周の理論って“ストーカー”と同じだということは(汗)。これが人間だったら、ぶっ飛ばすべきですけどね。

 “異質のメンタリティを持つ妖怪が、人間を愛する”ということは、こういう悲劇性も持ち合わせているんですよね。
 そんな“報われる事の無い一途さ”と、“滑稽ともいえるほどの、修周という妖怪の哀れさ”に、すごく切なくなりました。そして、同じ“純粋さと愚かさ”を秘めた悟空が、仲間に誘うシーンがすごく良かった。

 …ファンタジーに絡められると、相変わらず自分は弱いです…(←第二話の、八戒の失恋でも涙腺が緩んだ)。


 それだけ本筋は良かったんです。良かったのに…。

 なぜ、“冒頭のギャグシーン&殺陣”で、主題のメッセージを相殺しますか(号泣)?
 悟空が二重人格に見え、なおかつ他の二人も“悟浄の存在の有無を意識していない”ようにも見えちゃいます。


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 修周の妖力・妖術は“変化”ですね。

 まずは“人間変化”。
 ボス妖怪のほとんどが人間もどきの姿をしているのは、『古代中国における鳥獣蔑視』が由来です(これに関しては、すでになんども触れていますね)。
 ですが疑われないレベルまで人間に化け切れるということは、ちゃんと妖怪化している証拠なのかもしれませんね(半妖怪程度だと、そこまで変われない)。

 もう一つは“鳥への変化”。
 これは本質に関わる姿なので、先天的に持っている妖力だと思われます。
 幼い姫に近づいたのは鶏の姿と推測されます(「姫様はいつも鳥と話をしていました」より)。

 鶏に変化しただろうという事実から、一つの可能性が浮かび上がります。
『冒頭に出てきた鶏は、修周か?』
 “悟空と悟浄の戦い”を見て、利用しようと考えたのかもしれません。
(…確かに近くには『養鶏で成り立っている村はある』とありますが、逸れた鶏がお寺に逃げ込むのはちょっと都合良過ぎ?)




 その他はそんなに強くないのかもしれません(実際、妖怪避けの封印を解くには、彼では役不足だった)。まぁ、“チキン(へなちょこ)”ですもんね(をひっ)。

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 修周が実は妖怪、という展開は良かったです。
 『敵妖怪が同行』、『間違った愛情』というギミックを上手く組み合わせ、使いこなしていたと思われます。そして“悟空の共感と信頼が、その感情を動かす”展開も良かったです。
 修周を疑うべき悟浄を別行動させたのも、このためかもしれませんね。
(それに一時間で活躍を描くには、四人が限界じゃないでしょうか。←管理人の持論)

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『修周、冥鈴姫が五歳以前に接触。
 「鳥になりたい」という言葉を鵜呑みに』
      ↓
『五歳の時に、国王に姫を戴ける様に接触』
      ↓
『国王、妖怪に姫をさらわれるのを恐れ、森の奥に軟禁』
      ↓
    数年経過
      ↓
『悟空が現れ、修周は狂言を使って姫の下へ』

 こうして書き出すだけで、かなりの描写漏れが噴出してきますね(汗)。
 『修周の主観』と『事実の読み上げ』の二つしか出てこないのが、原因なんですけれど。


★幼い姫の「鳥になりたい」との発言。実際はどの程度本気だったのか。
★国王は“相手が妖怪だから”という偏見で拒絶したのか、それとも“娘の発言まで理解して”拒絶したのか。
★国王は娘を幽閉する際、“将来の政略結婚のため”だったのか、“娘を愛していた”からなのか。
★幽閉期間、姫はどのような生活を送り、幽閉のきっかけとなった妖怪をどう思っていたのか。
★幽閉期間、修周は“姫を解放する”誓いを元にどう過ごしていたのか。

 この辺り、当時のシーンをちらりと映すだけで、かなり描写できると思うんです。
 そしてこれらの背景を視聴者が理解できるだけで、より“修周の純愛”、もしくは“滑稽さゆえの哀れさ”が際立ったと思います。
(幼い姫様、鶏に話した言葉なんて、言ったそばから忘れてたのかもしれません…。汗)

 また、今回の修周のメンタリティの異質さは、そのまま“物語における妖怪の異質さや差異”を描写し、世界観の補強にもなりました。
 “異質なメンタリティの生命体が、そこらじゅうに存在すること”を強調すれば、さらに視聴者を物語の中に引き込むのではないでしょうか。

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 また、修周の背景描写を掘り下げて欲しかった理由はもう一つあります。
「似てるけど、違う!」
という悟空の叫びです。
 “悟空役の香取君の若い頃に似ている”と言われたことのある成宮さん。そんな彼をキャスティングしたのも、“悟空と修周の類似”を強調するためだったのでしょう。

 悟空が修周を助けたかったのは、もちろん彼に共感したからです(これは前回と同じ。そして共感から来る言葉は、説得力がありました)。
 その共感の理由こそ悟空の心の中にある、同質の“愚かさ、純粋さ”です。
 修周の背景を掘り下げて描写する事で、『人間の心』に憧れる悟空の内面もそれとなく連想させる事ができたはずです。

 そして“どこが違うから、結末まで変わったのか”ということに、視聴者は思いを馳せることもできたはずです。
(出会った相手の違い、それだけなんでしょうね…)

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 今回はすごく良いネタを扱っていたと思います。
 ただ、修周を憐れむにしろ、共感するにしろ。あるいは彼を真剣に救おうとする悟空を応援するにしろ。
 あまりに描写不足で、視聴者の脳内補完に頼りすぎているのが無念でした。

 でも、その悲劇性も含めて、今回の本筋は相当面白かったです。





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Last updated  2006/02/15 09:39:10 PM


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