GOlaW(裏口)

2006/03/31
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カテゴリ: 西遊記
 かくて旅は語り継がれ、『西遊物語』が生まれゆく。

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 それでは、西遊記の総括にいきましょう。

 やっぱり今回、『連続ドラマ』として足を引っ張ったのは『第八話 時の国』でした。
 そして『オーストラリア・ロケ』により、いきなり撮影が押したことも大きいと思われます(『第四話 砂の国』はスケジュールの為、泣く泣く殺陣をカットしたのだとか)。

 パーティ物の魅力は、パーティ・メンバー全員の職能分離と視点がはっきりとしている事です。それを描ききるには、今回なら四人分(凛凛を含めて五人分)の視点と思考を常にコントロールする必要がありました。
 それに加え、『時の国』に合わせて六本分(後から挿入された『第六話 森の国』を除く)の物語を同時進行させるのは、創作のプロでも難しいことです。
 この“複雑な構図を描く物語世界”のとばっちりを受けたのは、特に『第五話 子供の国』と思われます。この時、三蔵・悟浄・八戒は、いくらでも絡めたはずの物語において、不自然すぎるほどに傍観者を貫きました。それがこの回の魅力を激減させていましたね。

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 またシリーズの主題と、各回の主題が見事にかち合い、相殺していたのも印象的でした。
 その回の主題を巡る会話の筈が、突然割り込まれた『なまか』という言葉で混乱したりすることも多数でした。
 あるいは『仲間』がシリーズの主題であるのに、物語の都合やギャグの為だけに強烈な不和シーンを演出したり。


 “旅物で仲間を主題とする”、それはすごく良いと思います。
 しかし、仲間というものは“言葉で力説するものでは無い”んですよね。
 それは阿吽の呼吸であり、さり気ない優しさであり、共にやり遂げる気持ちの高鳴りであり…。つまり『一緒に居る時間を丁寧に描写する事』で初めて分かることだと思うんです。
 『チーム』の大切さとは、実際にチーム作業をしている方はもちろん、(コンシューマであれ、テーブルトークであれ)RPGを経験している方、『ワンピース』などのコミックを読んでいる方、特撮を観ている子供達…いろんな人が実感していることでもあります。
 その描写から手を抜くと、途端に視聴者は引きます。
 パーティ物として上手く描けていたのは『第二話 温泉の国』と『第九話 花の国』、『最終回 天竺』の三つだけだと思います。


 パーティ物として魅力を発揮するには、四人が活躍する事が必要です。
 それは『事件解決の役に立つ』という観点だけでは無いんです。

“いかに四者四様に物語に絡み、複数の視点から事件をより具体的に浮かび上がらせ、時にぶつかり、時に支え、時に刺激を受けながら、最良の結果を模索する”
 ただ、四人の設定を踏まえて、彼ららしく動くこと。それがより生き生きとするだけで、この項目が満たせたはずなんです。
 その描写を煮詰めるにも、時間が足りなかったと思います。


 主人公も、舞台設定も、ネタも、すべて好みだったこの作品。ただ、主人公以外のキャラクターがほとんど描かれないという点にドン引きして、『3話』視聴後に脱落。
 フジテレビさん、懲りてくださいよ…。滝涙)


 パーティ物はまた、多種多様のキャラクターを同時に立たせる事で、いろんなタイプの視聴者を引き込むことも出来ます。
(フジなら『ワンピース』、『デジモン』、『幽遊白書』等。他に『スーパー戦隊シリーズ』などがそれに特化しています)
 人間の好みは十人十色。はまりやすいキャラクターも違います。


 大切なのは、出番の多さや台詞の数じゃない。むろん、肉体や嗜好の強調でもない。
 ただ、事件に絡ませ、その立場をより“らしく”演出すること。キャラクターを背景ごと、その場面に投影させる事です。
 その方法は数々の黄金パターンとして洗練され、様々な創作ジャンルに積み重ねられています。それを今回の脚本スタッフにも上手く使いこなして欲しかった。

 本当に頑張って欲しかったです。

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 それでは、各キャラクターの考察に行きましょう。

★1.悟空

 『いつも感情のふり幅が100%』という設定が、少し足を引っ張りましたね。
 本当に泣き叫ばなきゃいけないときに、叫び方が一本調子なのは哀しかったです(後半では『心を得てきたため』、緩急が現れて良くなってきました)。

 悟空の見せ場は『啖呵』なんですが、これが『悟空の言葉』では無く『脚本スタッフの言葉』になっていたのが辛かったです。
 『第一話 火の国』を見たときから、
「この展開で、この立場で、こんな台詞が悟空から出てくるのはまずいでしょ(滝汗)」
と凍りつく事しばしば(汗)。

 『口上』は歌舞伎に始まり、『勧善懲悪もの時代劇』を経て、アニメや特撮に色濃く受け継がれています。
 この『口上』が魅力を発揮するのは、あくまで“口上を述べるキャラクターが、キャラクター自身の言葉で切り捨てるから”です。
 それは『作り手の意見』と一緒でもいいんです。そうするならば、“口上を述べるキャラクターが作り手と同じ意見になるように物語を組み立てる”ことが必要なんです。

 視聴者に『啖呵が長い、うっとおしい』と言われる理由は、言い方でも長さでもありません。ただ『必然性をきちんと出せていない』からです。
 “その台詞にたどり着くまでの、心理的な過程”を丁寧に描き出し、視聴者の心を揺さぶり、共感させることが必要だったんです。

 どんなに出番が多くても、重要な部分は『悟空の言葉』ではない。 それでは本末転倒です。
 啖呵が悟空の言葉であったのは、半分~1/3程度と感じました。
 それくらいなら、『一番言うべきキャラクター』に台詞を譲った方が、むしろキャラ立てとしてもいい。
 その意味では、演者のファンとしてすごく哀しかったです。


 とはいえ。
 やっぱり『異形』であり、『異形の心』を演じる香取君は、管理人のツボを直撃します。
 荒れ狂っていたり、切なげでなったり(『第一話 火の国』)、やるせ無さそう(『第六話 森の国』)であったり、無条件の信頼をみせたり(『第七話 幽霊の国』)、『異形の心』故の表情はすっごく良かったし、世界観を見事に補足していたと思います。

 後、個人的には『香取君の棒術』という、数年来の願望が満たされて嬉しかったです(『第五話 子供の国』や『第九話 花の国』)。
 やっぱり似合いますよね!

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★2.八戒

 脚本スタッフが本気で持て余しているのが、嫌というほど伝わってきました(遠い目)。
 その意味ではキャラクター、役者さん共々、不幸であった気がします。

 しかし。
「こんなに美味しい設定のキャラクターを持て余しますか、普通(全力ツッコミ)!?」

 はっきり言って、私はこのキャラクターの設定はかなり好きです。
 キーワードは『心の弱さ』。
 うまく使えば、『直情型の悟空』や『一歩引く悟浄』、『信念を貫く三蔵』とは違い、物語の中で自由に揺れ動き、視聴者の疑問を他の三人にぶつける事すらできました。
 心が弱い人間や妖怪に共感し、時に泣き、時に励まし、時に全力で庇うこともできるはずでした。
 物語の展開に深みを出すには、彼のキャラは大切なんです(『仮面ライダー555』に例えるなら、啓太郎のポジションかな?)。

 また『異端コンプレックス』のある八戒というキャラクターは、同じく異形であったり、迫害される立場に積極的に絡んでいく事ができます(『子供の国』の雲呑に絡まない姿には、不自然さを覚えずにはいられませんでした)。
 物語の導入としても最適だったはずなんです。
 …悟空の『妖怪コンプレックス』ばかりが焦点に当たり、八戒の『異端コンプレックス』があまり生かされていなかったのが残念です。

 もちろん、彼は悟空や悟浄よりも能力は低いです。でも『嗅覚』はかなり使いやすいし、『我慢強さ』も戦闘時の壁役としても重宝します。そんなに使いづらくは無いはず。
 そして『能力の有無』≠『活躍の有無』。
 大切なのは『持つ者、持たざる者、共に等しき』(等価交換の法則)。悟空や悟浄にしか出来ない事があるように、八戒にしかその時できないことがある。
 彼にやるべきことを見極めさせ、行動させるのがポイントです。
 妖術をメインに置かない物語展開なので、本当は八戒を活躍させやすかったはずです。

 彼を活躍させるのには工夫が要ります(彼にしか得られない情報を用意したり、状況と彼の設定を絡めて見たり)が、それを決めた時は最高ですよ。
 八戒が活躍すれば、『現実の、特殊能力を持たない視聴者』も一緒に活躍している気分にもなれたはずなんです。

 個人的には『第二話 温泉の国』の間欠泉のシーン(『はいはい、そこどいてくださいね』の台詞の落ち着き方が好き)、『第九話 花の国』での役回り(…出番は少ないけれど、ちゃんと設定をアピールし、人質解放し、悟浄&三蔵の避難をする)が好きでした。
 これらの回を見ると、やはり八戒の活躍の少なさが惜しまれてなりません。

(以下、総括2へ続く)





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Last updated  2006/03/31 08:58:19 AM


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