ホスピスの日々を共に生きて～どのような「夫婦の年輪」を刻んだろうか

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August 30, 2017

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カテゴリ：ホスピスの日々を共に生きて～

ホスピス３２日目　

朝６時に目覚める、私が洗顔している間にパジャマもシャツも脱いてしまい、

起き上がりたいとしきりに言う。体温は３８℃、口にスプレーで水を含み、少し鎮まり

又眠る。最近の夫、このような時に赤子を眠らせる時のように呼吸に合わせて手や腕を

さすってやると落ち着くようだ。「子守歌」でも唄ってあげたいような気持になってしまう。

ＡＭ 8:00　

私の食事中に目覚めて「水が欲しい」といっている。口にスプレーを近づけると

「いらない」という。どうやら私の居場所（存在）を確かめたかったらしい。

私はソファのテーブルで食事をするのでベッドの夫の目線は届かない。

最近は視界に入らないと何かを要求して私の存在を確かめることが多くなってきた。

だから洗濯に行く時には必ず起きている間に「洗濯に行ってきます。」

「今、洗濯から戻ったよ」と声を掛けるようにし、黙って部屋を留守しないようにした。

AM 10:00　

　眠っている夫の脇に枕を並べ、私も少し休んだ。

夫のベッドの落下防護ザクは、少し以前に私は勝手に外してしまったが看護師からの

指摘もなく、そのうち足の方も外そうと思っていた。

看護師の気配で目覚めると夫はすでにいつものようにじ～っと天井を見ていた。

私は夫がじ～っと天井を見ているこの姿が一番堪える。私が目覚めたことに気がついたらしい。

何か言っている。身を起こして聴くと「僕はたくさんわがままをした」と言っている。

「私もたくさんわがまましたよ、お互い様」と言うと「mawakoはわがまましなかった、

僕はたくさんわがまましたね」と言う。天井を見ながらこんなことを思っていたのかなと

悲しくなる。

ＰＭ　2:34

チンプンカンプンなことをいう夫は時々宇宙人になり理解できないことを言うが、

夫との会話は時々正常なものになる。「言っておかなければならいことがある」

「伝えておかなければならないことがある」「確かめあっておかなければならないことがある」

それをしなければ・・・・そんな想いが彼の意識下に働いて彼の頭をクリアな状態に

するように思えた。

「mawakoの老後プラン、ダメにしてしまったね」と、いつものように繰り返す。

という。

私は「二人でよい年輪を刻むことができたね。」と応える。

「そうだね～、人生は長いに越したことはないけれど、短くとも、

美しいきめ細かな年輪を刻めたんじゃない？」と夫は言う。

５０代後半、同年齢の身近な人の離婚が続いた頃があった、その時「夫婦の年輪」を

刻み続ける難しさを話し合ったことがある。

高齢化になり一対の男女がともに生きる時間は昔に比べると大きく変化した。

「家族の年輪」に比して「夫婦の年輪」を刻む時間は長くなった。

よい年輪は長さ、美しさ、密度（きめ細かさ）で測られるように思う。

そんなこと話し合った記憶がある。

やはり二人の人生は長いものでありたかった。しかし、人生を共にと約束した時から５２年の

歳月を生きてきたのだから・・・・・年輪を刻むには十分な歳月である。

樹木の年輪に重ねてイメージするなら、

自分たちだからこそ刻むことができた固有の美しい年輪を創ることがきたようにと思う。

ふたりでひたむきに生きてきた努力がきめ細かな鮮明な線を描き美しい輪郭を刻むことが

出来たように思う。私たちにとって大満足な「二人の年輪」である。

ひとしきり、こんなことを二人でぽつりぽつりと話し合ううちに夫はまた眠り、

そして私も眠った。

ＰＭ　5:34

夕方になると痰が絡んで辛そうだったが、何度も自分で痰を出そうと頑張っていた。

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