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月曜日。ヒデキ(小3)が珍しくため息をついています。「どうしたの?」「木曜日に漢字の50問テストがあるんだ」「50問?まとめのテストかぁ~。そりゃ、大変だね」「それがさ~、90点以上取らないと不合格なんだってそんなの絶対に無理だし!」「まだ何日もあるじゃない?毎日少しずつやれば、きっと大丈夫だよ」自分が出来ないことでも、子どもには平気で言えるから怖いですね(笑)。”毎日少しずつ…”私が最も苦手とするやり方です。ヒデキは毎日家に帰ると、ランドセルだけ放り投げて、すぐに外に遊びに行きます。真っ暗になるまで外で遊ぶか、柔道があるから、家に帰るともうお風呂、食事。ゲームもしたいし、テレビも見たい。…勉強をする暇なんてありません。結局、勉強らしい勉強をしないまま、水曜日の夜になってしまいました。いよいよテスト前日になると、さすがのヒデキもモーレツに焦り始め、「もう明日だよ~!オレ、不合格になったらどうしたらいいんだろう…」(だって、いくら言ったってやらなかったんじゃん!笑)でも、そうなることは分かっていた私。ちゃんと手書きで50問テストを作り、5枚もコピーしてありました。「ヒデキ、ママをなめちゃ~いけないよ」「えっ?」「ママは明日のテストでヒデキを合格させることも、100点取らせることもできるんだよ」「ウソだーー!!」「さっ、コースを選んでもらおうか。”合格コース”か”100点コース”どっちがいい?」半信半疑の顔のまま、ヒデキは小さい声で、「そりゃ100点の方がいいけど…」「よしっ!じゃ、100点コースに決まり♪さっ、始めるよ」まずは、テスト問題をテストと同じように、何も見ないでやってみました。結果:52点。×がいっぱいです。(う~~ん…半分か。ま、悪くない。半分はできてるんだから)ところがヒデキはそうはいきません。「ほら~!ダメじゃん!こんなんじゃ、絶対に無理だよぉ~~!もう、オレの人生終わったし!」「あはは♪何をふざけたこと言ってんの?たったの9年くらいで人生終わってどうすんの?ヒデキ、どうやらまだママを信じていないようだね。ママは明日までに必ずヒデキが100点取れるようにしてあげる、って言ったでしょ?」「ええ~~~っ!?」(再び、疑いの目)「いい、ヒデキ?いつも言ってることだけど、字を書くときには、下手でもいいから、心をこめて丁寧に書くんだよ。丁寧に書いたら、きっとその字は1回で覚えられるから」(もちろん、そんな根拠はどこにもありません!ほとんど洗脳しちゃっています。笑)まずは10問ずつ練習をします。そして自信がついたところで小テスト。完全に覚えたら、次の10問に進みます。大事なことは、褒め続けること!「さすがはヒデキ!いい字書くね~」「わぁ!もう覚えちゃったの?ちょっと早すぎるんじゃない?これじゃ、あっという間に終わっちゃうよ~」もちろん、ヒデキは”褒めれば褒めるだけやる気になる子”だと知っているからです(笑)。…そして最後に50問テストに挑戦!結果:92点「ほら!やったじゃん♪1時間前には52点だったのに、もう90点以上!!!合格だよ~~!」ちょっと安心した様子のヒデキ。90点以上になると、今度は間違えてしまったところが悔しいようで、気がつくと自分から間違えた字を何度も書いて練習しています。その後、お風呂の中でも湯船につかりながら、間違えた字を壁に指で書いて復習。お風呂からあがると、寝る前にもう一度テストをする、と言います。やったーーー!!!ついに100点です。「どう?ママの言った通りになったでしょ?あとはもう心配しないでいいから、寝なさい」翌朝。ヒデキは学校へ行く前に、自分でもう一度確認テストをしました。「ママ、オレ頑張ってくるよ♪」玄関先で、鼻息を荒げるヒデキ。頭の中には、既に漢字テストのことしかないようです。「うん、しっかりね」その日、学校から帰ってきたヒデキは、「オレ、100点かもしれない。全部できたよ」ニコニコの笑顔で報告してくれました。「あ~~あ、早くテスト返ってこないかなぁ♪オレ、ほんとに100点だったら、嬉しすぎて泣いちゃうかもしれないよ~」「あはは♪100点が嬉しくて泣いちゃうの?でも、一夜漬けだけどほんとによく頑張ったもんね!」テストが返されるのを楽しみに待つヒデキなんて、初めて見ました。(よかった!ちゃんとできたんだね♪でも50問の漢字テストで本当に100点満点を取るっていうのは、なかなか難しいんだよね…)そして今日。「ただいま~!ママ、漢字テスト返ってきたよ♪」「え?そうなの?それで、どうだった?合格した?100点取れてた?」「う~~ん、まだちゃんと見てないからよくわかんない」(何じゃそりゃ?見てないなんて、そんなことあるわけないでしょ?まさか、不合格だったとか?)「あのさ~、テストに合格したのは34人中18人で、100点が5人だって!」「うんうん。やっぱり少なかったね~。それで?ヒデキは?」「あのさ~、100点の5人の中で、女子が3人。男子は2人。先生がさ、黒板に100点の子の名前を書いていったんだよ。まず、3人の女子の名前を書いて~…」(だから、ヒデキはどうだったんだよ~!?)「男子は、まずR君が100点で…」(ゴックン。いいから早く次を言ってよ~~!!)「そしたらみんなが、あとの一人はいつも100点取ってる”D君♪D君♪”って言い出して…オレも絶対にD君だ!と思ったら、(ガクッ!結論を先に言え~~!)何と!?先生が”ひ”って書いて、(キターーーーーー!)みんなが”ひできだぁ~~~~!”って。そう!オレ、100点だったんだよ~~!!!」「おお~~っ!?ほんとに?すごぉぉおおおおい!!!やったじゃん♪」(それにしても焦らしすぎ!笑)そして目の前に広げてくれたテスト。「本当だ!よくやったね、ヒデキ」ん?心配そうに私の顔を覗き込むヒデキ。…そう!嬉しすぎて泣いちゃったのは、私の方だったんですね~(爆)だって、これまでヒデキがテストでこんなに頑張ったことはないのです。気がちっちゃいヒデキは自分だけが”不合格”になるのがよほど怖かったのでしょう。ヒデキの100点がどのくらい珍しかったのかは、この先生のコメントを見ていただければ一目瞭然ですね。いつも100点を取っている子なら、こんなコメントはつきませんからね~(笑)。「ママ、このテスト、賞状みたいに飾ってね」うんうん♪今回は、2人で勝ち取った100点ですからね~。私にとってもヒデキにとっても、嬉しい100点の思い出ができました☆ひなたまさみ
2006年12月22日
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小5・小6の2年間は、一日も学校へ行かず、市内の適応指導教室へ通いながら卒業した娘のサキ。 そこで出会った先生の紹介で、市内の中学校の支援学級に通い始めたものの、1年生の頃は出席日数は約半分。行けるときでも、ほとんど私が送り迎えをする状態で、もらった内申書には空欄(テストも受けていないため、評価できない)と1、2ばかりでした。 卒業後には...引きこもり?養護学校?サポート校?自宅でインターネット学習?その頃の私には、「いつか娘が高校生になる」というイメージは、まったく持てませんでした。 ところが中1が終わる頃、突然 「高校生になりたい」 と言い始めた娘。 理由は 「アニメグッズを買いたいのに、お小遣いだけではお金が足りない。 バイトしたいけど、アルバイト募集の条件には、たいてい 高校生以上 って書いてあるでしょ? だから、高校生にならないと」 (えっ そ、そんな理由で???) ところが、そんな理由のために、サキは中2になると、本当に毎日学校へ通うようになりました。やがて、高校生になるために成績も上げたい、と、塾へも通い始めました。 そして成績は少しずつよくなり、内申書から1が消え、2と3ばかりになっていきました。 その頃、サキはこんな目標を持ちました。 「卒業するまでに、1つでいいから4をとりたい!」 「そうだね~自分の得意な教科で、4がとれたらいいね~」 支援学級のお友達の中には、教科によっては普通クラスで、みんなと同じ授業を受けている子たちもいます。 でも、サキはもともと大勢での授業が苦しかったので、ずっと支援級の少人数で授業を受けていました。 「高校生になったら、みんなと一緒に授業を受けられるようにならなきゃね」 「そうだね~高校生になったら、ねぇ~」 まだ、その頃の私には、「サキが高校生になる」というイメージは湧きませんでした。 中2が終わる頃、今度は志望校が決まったサキ。 理由は 「制服がめっちゃ可愛いから」 (またまた、そんな理由で???) でも、サキが選んだ志望校は、県立高校の中でも「美術コース」のある学校でした。 物心ついてから、毎日絵を書き続けている娘ですから、それはとても自然な選択のように感じました。 問題は、 成績が足りるか? と、 デッサンの実技試験は大丈夫か? ということ。 それまでデッサンなど一度も習ったことのなかった娘ですが、4月からその学校を受けるために、地元にある美大、美高受験対策のデッサンを指導してもらえるアトリエへ通いはじめました。 塾での勉強も、それまでの英・数の2教科に加えて、国・社・理を含む5教科に変更。遅い日は、学校帰りにアトリエで絵を描き、そのまま塾へ行き、22時過ぎの帰宅になります。 デッサンでは、最初はこんな静物画ばかり描いていましたが、 最近では、試験の課題になりそうな「手」の練習にも入り、こんなデッサンを描いて帰ります。 絵の下手な私には、どれももう十分上手に見えるわけですが、美大受験の高校生たちの中で描いている自分のデッサンは、いつも「本当に下手なんだよ」だそうで... これまで自由に絵を描いてきた娘にとっては、このデッサンの練習は、とても苦しい修行。 「大好きだった絵が、嫌いになってしまいそう。 でも、ここを乗り越えたら、力もついて、これまでよりもっと豊かな絵が描けるようになるんだろう、と思って、今は頑張るしかない」 そんな風に、壁にあたってはときどき号泣を繰り返しつつ、それでも志望校に合格する日を夢見て、頑張っています。 少し前まで 「頑張るってことば、大嫌い」 って言っていた娘が、私の目には、めちゃくちゃ頑張っているように見えます。 美術コースの受験生だけ、美術の内申点が倍になるそうで、しかも「4以上が望ましい」そうで...(そのときのサキの美術の成績は、2から3になったばかりでした)それを知ったサキは、4月から美術だけは普通クラスで授業を受け始めました。 「ママ、怖い子とか、いないかな?」 「友達ができなくても、美術だから、作品作ってればいいんだよね?」 「ああ~~、緊張してお腹が痛くなってきた」 ...小4からまともに教室で授業を受けていなかったのですから、実に5年ぶりの授業参加、というわけですね。 それでも、自分でそれを決め、サキはしっかり教室で授業を受けるようになりました。テストも、美術だけは90点近い点を取りました。 とにかくサキは、本気でした。 1学期の最後に、担任の先生との面談がありました。1学期の成績表が広げられました。 サキは、美術で5をとりました サキの目標は「1つでいいから4」だったのに、サキは5をとったのです。 もちろん、5なんてそれ1つだけ。4も1つもありませんでした。 それでも、そのたったひとつの5が、私にもサキにも、真っ暗闇の空に光る、たった一つの金星のように光り輝いて見えました 面談を終えて、車に乗り込んだとたん、サキが叫びました。 「ママーーー やったよ 5だよ 5をとったんだよーーーー」 そのとたん、先生の前では我慢していたサキの2つの瞳から、ポロポロと大粒の涙がとめどなく零れ落ちました。 思わず、もらい泣きする私。 志望校は、今のところ「可能性がないわけじゃない」感じ。すべり止めは大丈夫(合格)そう、だと先生に言われています。 サキはきっと、高校生になれるね。ようやく、そんなイメージが私にも持てるようになりました。 ひなたまさみ
2009年09月26日
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