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2010.12.14
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テーマ: お勧めの本(7416)
カテゴリ: ★★★★★な本

この感覚は、決して悟られてはならない。人には言えない歪みを抱きながら戦前~戦後の日本をひとり生きた女性を描く表題作のほか、ラスト一頁で彼岸と此岸の境を鮮やかに越える「巻鶴トサカの一週間」など、名手・皆川博子の傑作短篇七篇を収録。



<感想> ★★★★★

小説読みヲタを自認する私ですが、皆川博子さんは未読。

キャリアの長い作家さん(1930年生)なので、名前だけは知っています

が、 なぜ?なぜ今まで読んでいなかったか?? 私は激しく後悔する

と共に、ここ数日間は法螺貝を手に山奥に踏み入り、滝に打たれたい

衝動と闘っている次第です。


さて、本書には表題作を含めて7つの短編が収められています。



です。 さらに言うなら、すげぇエロいです。 ただし、直接的な表現や比

喩はいっさいありません。 行間から噎せかえるように立ち上がってくる

匂いに官能を強く刺激されます。 おそらく、この匂いをより強く感じ取れ

るのは女性なのではないかと思います。


櫻の幹に手を当てて見上げていた葉次を思うと、父母の冷酷

な仕打ちや無責任な言葉が同時によみがえるのだが、久緒には、

両親を責める資格などないのだった。 樹木と溶け合い樹液と

なって幹の中を流れる感覚に、言いしれぬ愉悦があった。 そ

以前に、葉次の肉体が苦痛のなかにある時、同じ感覚に貫かれ

た。 愉悦を何と呼ぶか、さとったのは阿星と語り合った時であ

った。 阿星が唇には上がらせない言葉が、わかった。

 悦びを感じて当然の相手と口づけし、性をかわしても、あの一

瞬の愉悦は絶えて生じることなく、久緒は自分の歪みを思い知

らされた。   
                (『少女外道』)


独特の世界観と美しい文章に加えて、いくつかの作品で試みられている

構成は読み慣れないときついと思いますが、小説好きならそれを十二分

に楽しむことが出来ると思います。


小川洋子 さんの静謐感がお好きな方、そしてなにより上質な小説を読み




文藝春秋のサイトで冒頭部分を 立ち読み できます。






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最終更新日  2010.12.14 15:25:25
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