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最強助っ人！阪神・マートン、満塁弾締め

雨上がりの夜空を白球が切り裂く。その瞬間、マンモスが沸き上がった。弾むようにウイニングランを終え、ベンチ前でモミクチャにされた。マートンが満塁弾。見事な逆転勝ちで首位巨人に１・５差接近だ。

　「アレコレ考えずに、とにかく何とか打とう、という気持ちだった」

　初の聖地のお立ち台。ドウゾドウゾというジェスチャーで同点打の矢野に“上座”を譲り、赤毛をなびかせた。

　６－６の八回一死満塁。高橋と対峙する直前、同点のホームを踏んだ城島に特徴を聞いた。「初めての相手だったし、彼から教えてもらった」。秘策はカーテンの向こうだが、４球ファウルで粘った後のカウント２－２。「心の準備ができていなかった」。タイムを要求して、精神統一。外角高めの直球。ボール球に食らいついた。

　「きょうは、奥さんの誕生日だったし、いいところを見せられてよかった」と胸をなで下ろした。２６歳を迎えたステファニー夫人から家を出る前にお願いされた。

　「私のために、本塁打を打ってきてネ」。４打席凡退の後の最後の打席で願いをかなえた。

　前日６日には尼崎市内の大型スーパー「コストコ」に出向き、靴と財布を購入してプレゼントした。大リーグでもなかったという満塁弾は「アナタ、野球、チームを追いかける」と全試合テレビにかじりついている愛妻に最高の贈り物となった。

　「いつもありがとう。ハッピーバースデー、ハッピーバースデー！」

　「日本で成功するにはノートをとることが大事」。バイブルが結果を生み、早い適応能力につながっている。

　２０勝到達で貯金は今季最多タイの「７」。真弓監督は「あの打席は集中力が違いましたね。ゲーム差より、とにかく１チーム（巨人）だけ走らせるわけにはいかない。ウチなりにしっかりとついていきたい」と１・５差に迫った巨人の背中を意識する。１試合満塁弾２本は１９９６年（新庄、塩谷）以来、虎史上２度目。その重量打線を引っ張るマートンが言い切った。

　「勝利に貢献したい、といつも思っている」。交流戦まであと２試合。史上最高の助っ人核弾頭が、打って打って、打ちまくる！

甲子園熱狂！阪神・マートン、勝ち越し満塁弾

見逃せば完全にボールだった。阪神のマートンが高橋の投じた外の高め、１４１キロを振り抜いた。「２ストライクだったのでストライクゾーンは大きめにしていた」。迷いのないスイングから放たれた白球がバックスクリーンに消える。勝ち越しのグランドスラムに甲子園が熱狂に包まれた。

　絶好のチャンスをものにした。１点を追う八回に味方打線が満塁とし、代打矢野の左前打でまず同点。なおも１死満塁で打席に入った。ここまで４打席は凡退。「何とか打ってやろうという気持ちだった」と感覚を研ぎ澄ませたことが実を結んだ。真弓監督は「あの打席は集中力が違った」と褒めた。

　打たなければいけない理由があった。この日は妻ステファニーさんの２６歳の誕生日。甲子園で初めて上がったお立ち台では「ハッピーバースデー」と繰り返した。自宅を出る際に冗談交じりで「ホームランを打ってきてね」と送り出された。

　米大リーグでも経験のない満塁本塁打は、日本球界への挑戦を後押ししてくれたパートナーへ何よりの贈り物になったはず。「あくまでも冗談だったんだけど、喜んでると思うよ」。そう話すマートンはどこまでも優しい笑顔だった。

元祖必死のパッチ！阪神・矢野、一撃同点打

マンモスがひっくり返るような大歓声を浴びながら、一塁ベースの矢野は、不思議なほどクールな表情で立っていた。このコントラストこそ、じっと待ち望んできたひと振りに、すべてをかけた魂の証だ。

　殊勲の代打同点打を放ったベテランは「あまりにも久しぶりすぎて。本当はジャンプしたいぐらいうれしかったんですけど、必死にこらえました」と振り返った。

　「めちゃくちゃうれしかったんだけれど、タイプ的に、そういうタイプじゃないんでね。素直に出せないところが、俺の性格。心の中では、すごくうれしかった」

　勝負を決めたといっていい。八回に久保田が逆転弾を浴び、５点リードを失った直後の攻撃。一死二、三塁から狩野が敬遠気味に四球で歩かされた。１日の巨人戦（甲子園）以来自身５試合ぶり、今季まだ８打席目。それで、高橋の初球チェンジアップをいきなり振り抜いた。

　体勢を崩しながらも、鋭く三塁手の右を破る左前打は、今季２安打目での初打点。出番は少なくとも、試練を乗り越えてきたベテランの嗅覚は、衰えていなかった。

　勝利のため自ら“黒子”も演じた。今は小宮山も昇格中で捕手は城島、矢野、狩野と合わせて４人だが、捕手３人制なら外野兼任の狩野が試合に出れば当然、グラウンドに出る機会はない。時には若手のように投手のイニング間のキャッチボール相手も務め、合間を縫うように少ない代打準備も重ねた。

　「そりゃ難しいけれど。俺はベンチで見たいタイプだから。でもそれで準備不足というわけにはいかんしね。これからも必死でやるだけ。気持ちで、バットを振るだけだから」。

　ファンも待ちわびた今季初お立ち台。

　「またこの舞台に上がれるよう必死のパッチで頑張ります」と誓った。ここまでも、そしてこれからも、虎を引っ張っていく大ベテラン。その笑顔は誰よりも絵になる。

阪神・矢野が同点打！「気持ちは必死やった」

　城島の加入で代打に回ったが、捕手として試合の流れを見る必要もあり「（代打の）準備もしなきゃいけないし、難しい」と言う。今季初打点に「あまりに久しぶりだったのでジャンプしたかったが、こらえた」と笑みを振りまいた。（甲子園）

阪神・真弓監督

「打ち勝つのはいいが、投手を含めた守りをしっかりしていかないと」

阪神・城島（今季２本目の満塁本塁打など５打点）

「本塁打は芯だった。風も逆じゃなかったので入ると思った。本当はぼくが取った５点のリードを守らなきゃいけない」

阪神・フォッサム（五回途中まで４失点）

「五回は広島打線が対応を変えてきたことに自分が対応できず、ずるずるといってしまった」

甲子園の満塁男や！城島、トラ初５打点

１発でもすごいのに、なんと２発！！　阪神は同点に追いついた八回、マット・マートン外野手（２８）が７号満塁アーチを放ち、広島に逆転勝ち。初回に飛び出した城島健司捕手（３３）の一発と合わせ、虎史上２度目の１試合２満塁弾で今季最多の２けた１０得点。連勝で首位巨人に１・５差接近だ。
虎の背番号「２」も文句なしのヒーローだ。雨が止んだ甲子園に大きな“虹”を架けた城島が、闇夜を切り裂く執念の一打で逆転勝利を呼び込んだ。

　「相手の４番に打たれたのを、ウチが逆転したのが大きい。いろんな意味がある。カープとの頭（１戦目）だし、勝てば疲れも違うよ」

　勝者の列を笑顔で歩いた。３打数２安打１本塁打５打点の大暴れで、勝利への流れを作った。

　まずは一回。広島の先発・青木高の立ち上がりを攻めた。平野の中前打を足がかりに作った一死満塁で、甘く入ってきた変化球を仕留めた。

　「手応えは十分だった。風も逆じゃなかったしね」。舞い上がった打球が軽々と左翼フェンスを越えた。

　今季７号は、４月１０日のヤクルト戦（甲子園）以来、今季２発目の満塁弾。日本通算６本目（日米通算では８本目）のグランドスラムとなった。日本歴代５２位タイとなる豪快なひと振りで流れを呼び込むと、次は小技で魅せた。

　三回一死三塁から、二塁へゴロをたたきつけた。日本ではダイエー時代の２００４年６月３０日のオリックス戦（ヤフーＢＢ）以来となる５打点を記録すると、１点を追う八回には打線に点火。

　５番手・高橋から、体勢を崩しながら中前打。３球ファウルで粘ったフルカウントから逆転への足がかりを作った。

　「バットが残ってセンターに打てた。自分にとってはすごく意味のある打席」。矢野の同点打で生還すると、打席に入るマートンに耳打ち。

　「直球やチェンジアップの抜け方とか、見た感じをね。マートンも知らない投手ばかりだから」。メジャーで鍛えた語学力で助っ人を助けた。

　勝利の余韻が全身の疲労を癒してくれるが、反省も忘れない。「５点リードを守らないといけなかった。キャッチャーとしては重い空気だった」。苦しみながらつかんだ勝利が、また城島を進化させる。首位を視界にとらえ虎を、ジョーが力強く支えていく。

阪神、４点差でも球児登場！鮮やか３人斬り

逆転に次ぐ逆転の荒れたゲームを、守護神がピシャリと締めた。４点差リードの場面で球児が登場。当然の３人斬りで乱戦に終止符を打った。

　「（間隔が）空いていたからね。ヒットも打たれなかったし、よかったと思う」

　２日の巨人戦（甲子園）以来の登板。八回の逆転劇の余韻が残る九回。スタンドの盛り上がりを喜ぶかのように、５日ぶりのマウンドにあがった。

　まずは、先頭の東出をカウント２－２から１５１キロの真っすぐで見逃し三振。続く梵は投手へのライナー。低めに飛んできた打球を、直接キャッチすると、笑顔を浮かべた。最後は天谷をスライダーで二ゴロに仕留め余裕の“３人クッキング”。鯉料理は、うん、うまい！！

　だが、うま味はない。セーブはつかない。４月１８日の横浜戦（横浜）以来となる４点差での登板。競演不敗神話を共に刻む久保田が八回、一時逆転となる２ランを栗原に浴びた。相方の失敗を見事に払拭し、ＫＦ不敗神話も１４試合に伸ばした。

　「これを続けていきたいね」

　ここまで１５試合に登板して、いまだ無失点。虎が誇るミスターゼロは、まだまだその歩みを止めない。

阪神・西村＆渡辺、安定感抜群や～

１点差に追い上げられた五回二死二塁でマウンドに上がった２番手の渡辺は広瀬を二ゴロに抑えて広島の勢いを止めると、六回も無失点。バトンを受けた３番手の西村は七回１イニングを２奪三振の３人斬り。真っすぐとシュートで押しまくる投球は圧巻だった。

　「城島さんのリードについていくだけです。いい結果になってよかったです」と西村。久保田は誤算だったが、“その前”の２枚は安定感抜群だった。

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