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2006.11.22
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カテゴリ: 邦画

 元々は夢枕獏の小説。岡野玲子による女性コミックになってから人気が急上昇。陰陽師ブームが始まった。
 これをきっかけに他の作家が陰陽師関連の小説を書くようになったり、テレビ番組が組まれたりした。いわゆる二番煎じ、三番煎じである


粗筋

長岡京から平安京への遷都から150年。
 天皇の臣下である右大臣と左大臣が、天皇の跡継ぎを巡って権力闘争を繰り広げる。陰陽術という魔術を操る二人の陰陽師は、その闘争に引き込まれた。
 一人は安倍清明。もう一人は道尊。清明は左大臣、道尊は右大臣についた。
 壮絶な戦いの末、道尊は敗北した。右大臣は自殺に追い込まれる。清明を恨むあまり発狂した道尊は、封印されていた強力な怨霊の封を解いてしまう……。


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感想

夢枕獏の陰陽師は、以前NHKでテレビドラマ化されていたので、どうしても見比べてしまう。
 どちらがいいかとは一概に言えない。双方とも良い部分と悪い部分があるからだ。
 あえていうなら、映画版は予算を充分にかけられた為ビジュアル面でNHK版より優れており、NHK版はキャスティングとストーリー構成の面で映画版より優れていた。
 まず最初に清明。NHK版では人気グループSMAPの稲垣メンバーが演じていた(後に警官に怪我を負わせたことで逮捕。本来なら「容疑者」と呼ばれるべきだったのに、テレビ局は所属のジャニーズ事務所に配慮してか彼を「メンバー」と呼んでいた。この事件の為BSでの再放送が延期。罪な奴である)。映画版では野村萬斎。こちらはNHK版に軍配が上がる。
 稲垣メンバーの清明は無表情だった為、近寄り難い雰囲気を出していたが(単に稲垣がそれ以外の演技ができなかっただけかも知れない)、野村萬斎の清明はいつもにやけていてばかりいた為、単なる馬鹿としか映らなかった。はっきりいって主人公になぜこんな役者(狂言師の長男らしい)を選んだのか不明。敵の道尊(真田広之)の方が際だっていた。
 清明の側にいる謎の女蜜虫。NHKでは本上まなみが演じていて、映画版では元SPEEDの今井絵里子が演じていた。これもNHKに軍配が上がる。というか、映画版では蜜虫の必要がなかった。小泉今日子演じる青音がヒロインだったから。NHK版では蜜虫には存在感があり、ストーリーで重要な役割を果たしていたような気がするが、映画版では清明のいうことを復唱するだけの単なる馬鹿娘にしか見えなかった。
 清明の友となる源博雅。NHKでは杉本哲太が演じていて、映画版では伊藤英明が演じていた。こちらは引き分け。いや、NHK版の方が演じている役者が年上で、存在感も映画版よりあった気がする。伊藤英明の博雅は単なるガキ、て感じで。やはりこちらもNHKが勝ちか。
 怨霊の封印を守る不老不死の女・青音を演じる小泉今日子(NHK版にはいない)。超人気アイドルだったそうだけど……。躍る大捜査線の映画版でも思ったが、「ちょっと可愛いオバサン」にしか見えない。
 全盛期の彼女は見ていないので自分は分からないが、全盛期の彼女を見ていた人々はどう思うのか。
 とにかく、映画版はキャスティングで全滅している。
 映画版がNHK版を上回る点が、特撮技術。NHK版のは、清明が放つ術は特撮的には子供騙しみたいなものだった。映画版はさずが凄い。日本の特撮技術もかなりのものになったな、と納得させられた。
 ただ、NHK版で清明が見せていた「術」は、錯覚など人間の盲点をつくという実際に使われていたであろう現実的なもの。映画版の「術」は人が人形や蝶に変身するなど、明らかにファンタジーの域に入っている非現実的なもの。
 説得力がある分、「術」の演出もNHK版の方が良かった気がする。映画版のは豊富な予算がかえって災いした。
 ストーリーはシンプルだが陳腐。
 前半は、NHK版でやっていた一話の焼き直し。なぜ映画製作者は同じストーリーを映像化したのか。NHK版を見ていなかったのだろうか。放送時には撮影が進んでいた為どうにもならなかった、ということもあったのかも知れないが、途中で変更することだってできた筈。そもそもNHK版放送と同じ年に公開しなければならないという制約があった訳ではなかったはず。映画スタッフはNHK版のを研究し尽くして全く別のストーリーを作り上げるべきではなかったのか。
 制作者側としては、後半でNHK版と差を出したと言いたいのかも知れないが、後半は盛り上がりに欠けた。清明が失敗ばかりやらかすからだ。最後で挽回したつもりだろうが、清明が平安時代に名を馳せた超人とは思えなかった。
 結論。本作品は日本の特撮技術の集大成。ただ、それにストーリーや、演出や、キャスティングが追い付いていない。
 最後に一つ。NHK版でも、本作品でも思ったが、平安時代の貴族、てあそこまで馬鹿だったのかね。


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Last updated  2006.11.22 14:19:16
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