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2006.11.29
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カテゴリ: 邦書

「十角館の殺人」でデビューした綾辻行人の第二作。前回と同様、島田潔が登場する。


粗筋

著名な画家故藤沼一成の息子紀一は、父の弟子である正木を乗せて車を運転していたところ、事故に遭う。紀一と正木は助かるが、紀一は車椅子生活を強いられるようになり、おまけに顔に大火傷を負って白いマスクを身に着ける羽目になった。正木は一見外傷はないものの、ある重大な疾患をかかえるようになり、画家への道を諦めることになった。十数年前のことである。
 事故を機に、紀一は山奥に館を建て、そこに引っ込む。父が描いた絵を回収することに専念するようになった。その内父の弟子の娘である由里絵の面倒を見るようになった。後に、紀一は由里絵と結婚する。
 そんなところ、正木が館に転がり込んできた。暫く住ませてほしいと。紀一は正木の画家としての未来を奪った負い目から、正木を館に住ませることになった。
 紀一は館から出ることはなくなり、父の絵画も公開しなくなった。例外は、父が世話になった数人に年に一回集まってもらい、披露する時だった。
 その公開の為に数人が集まったある日。
 家政婦の根岸が二階から転落して死ぬ。死体は川に流されてしまった。
 同じ日に、招待客の一人古川が屋敷から姿を消した。壁に掛かっていた絵画が一枚なくなっていた。古川が盗んで外に逃げたと思われた。が、奇妙なことに、二階にある古川の部屋は密室状態だった。階下には人がいて、誰にも目撃されず外に出られるはずがなかったのである。
 正木が外に出て古川を捜索することにした。が、二人とも戻ってこない。その後、焼却炉からバラバラ死体が発見された。焼け残った指から正木のものとされた。古川の仕業とされたが、古川と盗まれた絵画は消息を絶ったままだった。
 それから一年後、紀一はまた絵画の公開の為に関係者を招待した。招待しなかった者まで現れた。古川の知人島田潔である。事件の調査に来たという。紀一は渋々島田を館に入れた。
 紀一は、新たに雇った家政婦野沢から、一部の部屋で変な臭いがすると言われ、その後にドアにこんなものが、と紙切れを渡される。そこには「ここから出ていけ」と書いてあった。紀一は不思議に思う。自分が見た時は、ドアの下には何もなかったのだ。
 そんなところ、招待客がまた一人死ぬ。家政婦の死体もその直後に発見される。
 島田は、一連の事件を見て、犯人を指摘する。犯人は紀一だと。正確には、紀一に化けた正木だと。
 正木は、画家としての道を絶った紀一を恨んでいた。そこで紀一の財産も妻も奪おうと企み、由里絵と共謀して計画を実行した。
 正木は、紀一に成りすますことにした。紀一は白いマスクを付けている。顔立ちが違ってもマスクに覆われるので、成りすますのは困難でない。ただ、入浴の世話までする家政婦は騙せないと判断し、根岸を殺した。
 紀一に成りすますには、正木は自分が死んだことにしなければならなかった。自分の身代わりとなる死体が必要だ。それに選ばれたのが古川である。格好が似ていたのだ。
 古川は部屋でバラバラされ、窓から外に投げ出された。部屋の窓は肉体全体が通るのは無理だったが、バラバラだったら通れたのだ。正木は、その後古川を捜しに行くといって外に出てバラバラ死体を回収し、焼却炉に放り込んだ。自分の指を切り落として現場に残し、焼死体が自分のものであるかのように偽造した。
 正木は紀一を殺そうとするが、紀一は館の秘密の部屋に逃げ込んだ。正木は紀一をそこに閉じ込め、死なせた。が、正木は秘密の部屋の入り方が分からず、死体を放置するままに至った。新家政婦の野沢が異臭がすると言っていたのは、このことだった。
 盗まれたとされた絵画は無論盗まれておらず、他の絵画と共に保管されていた。
 紀一に成りすました正木は、紀一の財産も妻も手に入れた。事件は、古川が絵画を盗んで正木と根岸を殺した、ということになった。
 そして一年経った。由里絵は別の男を密会していた。招待客の一人である。それに逆上した正木は、その招待客を殺す。が、部屋から走って逃げる場面を、野沢に見られてしまった。紀一は事故で足が不自由な筈なので、走れる訳がない。現在の紀一が偽物だと気付かれてはまずいと思った正木は、とっさに野沢を殺したのである。
「ここから出ていけ」の手紙を書いたのは由里絵だった。紀一(正木)は、ドアには何もないと思っていたが、実はそうではなかった。正木は事故で色を識別できない障害をもつようになった。だから紙の色と絨毯の色が同じに見え、何もないように思ってしまったのだ。外傷がないのに画家の道を絶たれたのも、このことからだった。


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解説

驚きが少ないミステリ。
 火傷の為顔を白いマスクで隠している、となれば、「別人なのでは?」と大抵の人は思うし、焼死体が見付かれば「実は別人では?」と思う筈。
 こちらは「まさかそんな月並みの馬鹿馬鹿しいトリックの筈がない」と思ったほどだ。まさに馬鹿馬鹿しいと却下した解答こそ正解だった、の好例。
 そもそも、館で十数年も仕える執事が、主人がすり変わっていることに全く気付かないのはおかしい。たとえ館に仕えているのであって、主人に仕えているという意識はないにしてもだ。
 古川の焼死体が、正木の指一本があっただけであっさりと正木の死体とされるのもおかしい感じがする。他殺の焼死体となればもっと詳しく調べる筈。
 すり替えに成功した正木が、なぜ前年同様客を招待したのかも不明。昨年嫌なことがあったから公開は中止する、と言い訳すれば、また犯行を繰り返して自滅することはなかった。ま、由里絵は館に閉じこもりの生活に飽きていたらしいから、いずれ破綻していただろうが。
 正木がなぜ紀一を殺したのかも理解できない。画家の道を絶たれた恨みはあるだろうが、普通は殺して相手に成りすましてやろうとは考えない。しかもその後正木は紀一を演じ続けねばならず、三人も殺して財産や妻を手に入れたのにこれといったことができないでいた。殺してまでそんな生活がしたかったのか。最終的には共謀者の妻にも飽きられるのだから。
 正木がなぜ紀一の遺体を回収できないでいたのかも不明。主になったのだから、館をひっくり返して紀一の遺体を探し出せばよかった。そうしないで別の家政婦を雇った為部屋から異臭がすると言われてしまったのだ。
 新家政婦の野沢が入浴の世話までしていたかは不明だが、そうだとしたら観察力がないことになる。足が動かない者は足の筋肉が当然ながら衰えるため、細くなる。正木は歩けた為、足は細くならない。車椅子生活を十数年もしている割には足がしっかりしている、などとは考えなかったのだろうか。
 そもそも、なぜこのような方法で紀一とすり変わったのかが分からない。招待客がいない時に紀一を殺し、紀一に成りすまし、何らかの理由を付けて(これからは妻に面倒を見てもらうなどの言い訳)根岸や執事に暇を出せばよかったのである。正木はふいに館を出た、ということにして。
 そうすれば自分の死体を用意する為に古川を殺す必要はなかったし、紀一の世話をしていた根岸も殺す必要はなかった。
 無論、自分の指を切り落とす、という手間もかけないで済んだのである。
 この方がバサバサ殺すより合理的ではないか。
 トリック自体は平凡で、なぜ水車館という奇妙な館を舞台にしたのか不明。
 館のデザインそのものは事件と関係なかった。



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Last updated  2006.11.29 14:13:27
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