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November 29, 2025
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恋紅(新潮文庫)​

 吉原の遊女屋・笹屋の娘「ゆう」は、九歳の時に両国の盛り場に迷い込んだ所を、旅役者の福之助に助けられる。五年後、少女となったゆうは、福之助と再会し、思いを募らせていく。

 困っている所を助けられた男性に女性が恋する。王道ボーイ・ミーツ・ガールであり、解説で著者も述べているように、ゆうのビルドゥングス・ロマンであり、幕末から明治への変遷を描いた時代小説である。

  時代色のため、ゆうの反抗は“家が決めた結婚を断り、福之助と共にいること”だけに留まっている。しかし遊郭で、身を売る女性たちに対して無自覚ではなかった、という描写はある。

 ゆうが恋する福之助は実在の人物で、江戸時代末期に両国において、富田角蔵・金太郎と粗末な小屋で、薦芝居を行っていた。1873年(明治6年)の両国橋畔の興行禁止令により、現在の明治座となる喜昇座ができると、三人兄弟は座組から外されてしまう。飴売りという出自が、忌まれたのである。本編では、兄貴分が角蔵、けんかっ早い金太郎、顔がよくてもてている福之助というキャラクター分けができている。福之助はとりわけ澤村田之助に信奉していた。北村鴻作品『狂乱二十四孝』にも登場する、歌舞伎界ではかなりの有名人である。天才子役から人気女形にかけのぼったが、脱疽により四肢を切断した。本編では、福之助が田之助を救ったり、後年嘲られる田之助を見ながらも、彼には叶わないと実感する場面が登場する。彼の芝居における師匠であり、越えられない壁である。

 福之助は芝居町の変遷により切り捨てられるが、ゆうもまた、明治政府が一旦出した芸娼妓解放令により、商売の危機にさらされるが、結局のところ、吉原に売られてきた娘が戻っていく場所もなかった。私娼になったり、個人的に契約をして遊女に戻ったりする女性もおり、ただ禁止するだけではセーフティネットにはならなかったのである。


 第95回(1986年)直木賞受賞作。


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最終更新日  November 29, 2025 12:00:14 AM
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