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January 3, 2025
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カテゴリ: 読書感想
『アイルランドの柩』エリン・ハート著
宇丹貴代実=訳 ランダムハウス講談社 2006年1月20日
原題『Haunted Ground』(幽霊の出る土地)


【中古】 アイルランドの柩 ランダムハウス講談社文庫/エリン・ハート(著者),宇丹貴代実(訳者)

■あらすじ
荒涼としたアイルランドの湿原で、
赤毛の女性の頭部が発見された。
泥炭層の防腐力に守られた死体は、

鉄器時代のものかさえわからない。
ひょっとすると貴重な歴史的標本に
なるかもしれないと、
考古学者コーマックと解剖学者ノーラは
調査に向かった。
だが、現場となる小さな町では、
予想外の事件が二人を待ち受けていて……。
学者コンビが、時を超えたふたつの事件に挑む、
ゴシックサスペンス!

■感想
ゴシックサスペンスってなんじゃろうかと調べたら、

ゴシック小説のジャンルに属するサスペンス小説です。
ゴシック小説は、中世ヨーロッパの建築様式や美術を背景に、
超自然的な怪奇を描いた恐怖小説で、
18世紀後半から19世紀初頭に英国で流行しました」
とある。

編集者の思い入れ問題なんだろうか?
と言う疑問を脇に置いての感想は
色々と勉強になって面白い一冊だった。

アイルランドの小説は20年ぶりくらいだろうか。
考古学者のコーマック・マグワイアが主人公になるのかな?
発掘の手伝いをする解剖学者ノーラ・ギャビンの視点。
ドラムクレガン湿原で若い女性の頭部(カリーン・ルア)
を見つけた農夫のブレンダン・マクガンの視点、
ブレンダンの妹ウーナの視点。
刑事ギャレット・デヴァニーの視点。
など、色んな人の視点で書かれている。

つまり一人称でない分、
多面的視点で物語りが進んで行く。
またしても私は扉裏の【登場人物】を
何度も何度も見ては人物特定をして
記憶に刻もうと頑張った頑張った。(;^ω^)

アイルランドの地理もベルファストしか知らず
全くダメなので、
始めの方に付いている地図3種類を見ては
位置関係や時間関係を想像する。
これも頑張った。( ´艸`)

学者の中でも考古学者と言う、
いにしえから現在まで紡がれたものを
「遺物」から紐解く学問に従事する主人公は
多分初めてで、
コーマックとノーラが
一つ一つの物を見て馳せる思考や視点が瑞々しくて、
とても楽しかった。

泥田から見つかった頭部(カリーン・ルア)の扱い方や、
年代測定について知ったし、
泥田には空気も菌も入る隙がない所がある事も知り、
泥炭を切り出して干して燃料に出来る事や、
長い間アイルランドに住む人々を支えて来た事や、
近代の世界情勢によるアイルランドの位置付けや、
泥田を掘り出してはいけない事になって
困っている事なども知った。

泥田から見つかったカリーン・ルア特定のために奔走する
コーマックとノーラの
コツコツ証拠と情報集めが面白かった。
その経緯からアイルランドの歴史についても書いてあり、
中世時代から島国であっても
イギリスや大陸と近いために蹂躙され
翻弄され迫害され追放され大変だった事を知り、
抵抗運動が激しかった頃のベルファストを思ったりした。

田舎町の領主だったヒューゴ・オズボーンの館に宿泊して
古い修道院の遺物確認をしている間に、
ヒューゴの妻と息子が行方不明である事を知った
コーマックとノーラは、
歴史的遺物である赤毛の頭部を調べつつ
ヒューゴの妻についても調べて行くうちに
徐々に事実が明らかになって行く。

その間、コーマックと刑事ギャレットと
農夫ブレンダンの弟フィンタンが自分の楽器を持参して
パブでの演奏会に参加していた。
アイルランドの人達にとって音楽は身近なもので、
ただ人との交流やお酒を飲むためのパブではなく、
演奏する人、聴いて楽しむ人々がいて
楽器の演奏は家族で伝承されたり、
知らない土地でも楽器があれば参加して楽しんだり、
凄く素敵な文化があると知った。
この一冊で、
アイルランドの知らない事を沢山知ったのだった。


★ここからはネタバレ注意。

登場人物についてはコーマックが誠実で
丁寧な仕事ぶりや優しさが現れていて
安心して読んでいられた。
ノーラは問題解決出来たら良いね!
頑張れノーラ。
ヒューゴはずっと気の毒だった。
ただもう気の毒だった。
こんな人の良い名士っているものなのか?
ってくらいに良い人だった。

刑事ギャレットはイギリスBBCのドラマ
『警部補アーノルド~チェルシー捜査ファイル』の
アーノルド役のエイドリアン・スカーボローが
始終浮かんで来て、
もう他の人では想像できない(笑)
もっと若い人なのかもしれないけれど、
熟練した老獪な感じが若さを全く感じなくて。
家庭が破綻しなくて良かったよ。 

ウーナは機織りや手作りをしている創作作家?
芸術家?で、私がやりたい事を
代わりに一杯してくれているような女性なんだけど、
なんか分からんけどあまり好きじゃないんだな。
コーマックの恩師ゲイブリエルは
回想にしか出て来ない故人なんだけど、
とても好きです。

ヒューゴの妻と息子の赤ちゃんの行方については
行方不明になった状況が分かった時点で
大体の所は分かったし、
犯人も大体の所は分かった。
何しろ目撃情報をチェックして行けば
誰を追求すべきかすぐに分かると思う。
刑事ギャレットは思い込み捜査が過ぎたのだと思う。

それよりもカリーン・ルアの身元捜しが面白かった。
アイルランドとドラムクレガンの歴史について
詳しく書かれていたのはこのためだった訳で、
最後にどんでん返しが待っていた。
何百年も前の話と現在が繋がって、
面白かったよほんとに。
だから編集者はゴシックサスペンスと書いたのかもしらんが、
中世からの物語りが続いていたけど
これは恐怖小説じゃないのでやっぱり却下!

原題の『Haunted Ground』(幽霊の出る土地)は
ヒューゴの暮らす館「ブラックリン・ハウス」でなされた事の
蹂躙と独裁的な行いと理不尽さを詰め込んだ
ドラムクレガンの人々とカリーン・ルアの怒りの現れと言う所かな。
ブラックリン・ハウスにまつわる中世の物語りと
カリーン・ルアが交差して、
結局ヒューゴはドラムクレガンの子孫でもあったと言う事で、
本当に凄い裏切りの結末で最高だった。
領主一族は、実はアイルランドとドラムクレガンを凌辱した
イギリス人の子孫だけでは無かったんだね( ̄ー ̄)ニヤリ

これは編集さんの付けた『アイルランドの柩』が
とっても良いお題だと思った。
また、訳文が読みやすくて間違いもなくて
難しい専門的な事も分かり易くて秀逸だった。

よくあるミステリを裏切るミステリで面白かった。
続編の『アイルランドの哀しき湖』も読んでみたい。



■著者情報1
エリン・ハート 
1958年ミネソタ州ロチェスター生まれ。
ミネソタ州文化局の広報をつとめた経験を持つ。
ミネソタ州におけるアイルランド音楽・舞踏協会の設立者。
1996年に短篇Waterbomeでグリマー・トレイン新人賞を受賞。
現在はボタン・アコーディオン奏者の夫とともに
ミネアポリスに暮らし、頻繁にアイルランドを訪れている

ちなみに本書はアガサ賞及びアンソニー賞の
最優秀処女長篇賞にノミネートされるなど高い評価を得た。

■著者情報2
ミネソタ州は、メリカ合衆国中西部の北、カナダに接する州。
アメリカ合衆国50州の中で陸地面積では第12位、人口では第22位である。
ミネソタ州は五大湖の一番西にあるスペリオル湖がある。
このあたりに出かけて行くミステリを読んだぞ!
ウィリアム・K・クルーガーの『血の咆哮』だ。
憶えていたぞ、よしよし(^^♪
この何年間かのベスト1、
もしかして20年くらいのベスト1かもしれない。

ロチェスターは、アメリカ合衆国ミネソタ州南東部に位置する都市。
オルムステッド郡の郡庁所在地である。
ミネアポリス・セントポールの南東約125kmに位置する。
人口は12万1395人。
ミネアポリス、セントポールに次ぐ州第3の都市となっている。

現在エリン・ハートが住んでいるミネアポリスは、
アメリカ合衆国ミネソタ州にある都市。
ヘネピン郡の郡庁所在地である。
人口は42万9954人で、ミネソタ州最大である。
市はミネソタ川がミシシッピ川に合流する地点の北側に位置している。
このミネアポリスと東に隣接する州都セントポールとをあわせて
Twin Citiesとも呼ばれる。

グーグル地図を見ると、Twin Cities界隈は大小の湖が
すごく沢山点在している。
水源の豊かな土地なんだな。

■宇丹貴代実 訳者略歴
1963年、広島県生まれ。
上智大学卒業。大手ゼネコン勤務を経て、
1990年代より翻訳を開始。
文芸、学術、ノンフィクションなどジャンルを問わず活動。
主な訳書にピーター・ブローナー『一瞬の英雄』
エリック・シュローサー 『巨大化するアメリカの地下経済』
シェリー・ブレイディ『きっと「イエス」と言ってもらえる』
ジョン・マン『チンギス・ハン――その生涯、死、そして復活』
ジュッテ・ロクヴィグ、ジョン D・ベッカー 『アルツハイマーガイドブック』
エリック・シュローサー 『おいしいハンバーガーのこわい話』
エリン・ハート 『アイルランドの哀しき湖』
スーザン・ウィッグス 『一度の夏では足りなくて』
スーザン・バリー 『視覚はよみがえる――三次元のクオリア』
リジー・コリンガム 『戦争と飢餓』
ジョシュ・シェーンヴァルド『未来の食卓 2035年グルメの旅』
マーティン・シックススミス『あなたを抱きしめる日まで』
ベス・シャピロ 『マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる』
などなど多岐のジャンルに渡り、沢山仕事をしておられる。

ドラマ化や映画化されたりしているものもあり、
マーティン・シックススミス『あなたを抱きしめる日まで』の映画は
2014年アカデミー賞主要4部門ノミネートされている。
読んでいて思ったんだけど、愛情が感じられて
訳者さんの性格もすごく良いんだと思った。
それに沢山の知識がないと訳せないものばかりで
勉強家なんだろうと思う。
読んでいて、誤訳的なものや表現の違和感が無かった。
とても珍しい。



―2024年11月末頃読了―





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Last updated  January 4, 2025 01:44:17 PM
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