つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2005.01.21
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カテゴリ: Book
昨夜の寝床と今朝の列車内で「ボンボンと悪夢」(新潮文庫)を読みました.

冒頭から数編,死者にまつわるショートショートが立て続けに並ぶ.
「椅子」は幼くして母を失った実業家二人の話.
「雪の夜」は息子を亡くした老夫婦をめぐる事件.
「凝視」は死んだ恋人の視線を感じる男の話.などなど.

***
「夜の道で」

昔,大好きだった怖い話.わくわくしつつ読み進めた.
 主人公の男は,余命わずかの病床の友人を見舞った.

 まことしやかな説明までつけ,心配ない,と嘘をついた.
 数年後,ひどく蒸し暑い片田舎の,暗い夜の帰り道.
 死んだ友人の仕返しは,ひどく子供じみた意地悪な言葉だった.
読み終わった直後,こんな身も蓋もない話だったっけ?と思った.
確かに死者の声は怖い.けどこれは単に,さあ怖がれという話なのか?
死が間近い友への小さな嘘が,仇となって返ってきたという?
ひねた子供だった俺がそんなことを怖がっただろうか?
もっとじんわりとした,スペシャルな感覚をこの話に感じていた筈なのに.

ふと,杉浦日向子「百物語」の産女の話を思い出した.
十万億土を歩くうち,余りに遠く,気が違ってしまった女の魂.
毎晩我が家に戻るものの,もはや夫の声も耳に入らず


この病死した友も正気を失うほどの苦しみのなかで友を恨み,
知らぬうちに彼の元へ向かい,捨てぜりふを吐いたのか.
死者が投げかけた言葉に私たちは悪意を読みとるけれど,
それは死者にできる唯一の繋がり方だったかも知れない.
たあいない嘘をあっさり信じたのも,

友がそれだけ男を信用していたからだろう.
しかし友はいまや彼岸にあり.
ただ夏の夜闇が彼我をへだてる.

わずか二頁半.
ふたたび,みたび読み返してみる.
言葉ひとつひとつにまで神経が行き届いてる.
これはやっぱりスペシャルな作品.

***
新潮文庫版「ボッコちゃん」「ようこそ地球さん」「ボンボンと悪夢」
は装丁が統一されており,三部作っぽくなっている.
背景はカラーで,それぞれパステル調の緑,紫,黄色.
絵はもちろん真鍋博だけど,以降のつとめて無機質な画風ではなく,暖かみがある.
モチーフには柱時計,ピアノなど調度品.
表紙も裏表紙も,背景はカラーでカットが一つずつある点も,以降の作品(裏表紙は白一色)と違う.
単行本に準じた形での丁寧で手の込んだ装丁は,当時の思い入れと相まって,
じんわりと懐かしく,暖かい印象を呼び起こします.





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Last updated  2005.01.21 18:02:40
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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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