つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2005.03.03
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カテゴリ: Book



「ひとつのタブー」
わたしの愛したスパイの話.おどろくほど正統な悲恋のロマンス.「気まぐれ指数」や「夢魔の標的」を思い出してみても,星さんは恋愛小説を書けたと思うんだけど.

「少年期」
五十くらいの男が行きつけのバーで静かに目をつむってひとりで飲み,しばしのあいだ少年時代の追憶に浸る,という話.とくにこれといった仕掛けもなく,ただ味わうためのようなショートショート.日常とファンタジーの境目は,想像力と心持ち次第でかえられるのだと,少なくとも星さんはそう信じてたのだと,これを読んで,そう思う.

「きょうという日」
記憶や自我にゆさぶりをかける,星さんの常套手段.この手の話は四十年代後半に多かったけど,私の印象ではシュールすぎて楽しくない作品が多いです.しかし本作は,とちゅうでいきなり登場人物が種明かしをしはじめるという展開が楽しく,終わり方も歯切れがよくて,読後感はかなりよいです.ただ,前半がかなり退屈だったので,それが残念.

(解説)「億の読者を持つ作家ー星新一」
これは出色.海外の星作品の翻訳事情が詳しく報告されています.ただし状況説明に終始しているのが残念.なぜ共産圏(おもに冷戦末期)で特に広まったのか,なぜわけても中国が突出しているのか(そのうち全作品を訳すのではないかという勢いらしく,例外的に冷戦後も増加している)について,仮説が提示されていないのです.翻訳書の出版関係者に尋ねるだけでも,ある程度理由はわかりそうなのですが.



ファンサイトをいくつか見つけました.サイト名をご紹介:
星新一ひみつ倶楽部:全作品のランキングという遠大な計画を遂行中.枝情報もおもしろい.
星新一☆天上所有的星:まだあまり見ていません.
☆星の輝き☆(星新一):同上.


これ以外の星作品については FreePage 星新一 に.


◆本日の立ち読み◆
「ブーンドックス」めちゃくちゃおもしろい.最近よく立ち読みします.
「カラシニコフ」ノンフィクション.世界情勢モノでは久々に惹かれる.
「日経サイエンス」インドネシアのフロレンス島のホミニド化石の特集.






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Last updated  2005.03.03 17:07:19 コメントを書く


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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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