つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2005.04.02
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カテゴリ: Sport
私は涙もろい方じゃないし,むしろ人情ものやスポ根への嫌悪は強い方だ.また私は一人で走ったり泳いだりするのは好きだけど,運動部とか団体競技は,眩暈がするほど苦手だった.

でもバスケットボールを題材にした本で三回,ぼたぼた涙を流したことがある.この競技には何か特別なものがあるのかもしれないとも思う.

そのうち一番新しいのが,今日うっかり本屋で見つけた, 「ファイブ」(平山譲,NHK出版) .

バブル崩壊後の不況の中,バスケットボールでもバレーボールでも,立て続けに企業チームの休廃部が起こり,国内一流選手が自分の競技能力と関係のない理由でリストラされた.それらの選手は引退し,あるいは移籍し,移籍先で再び,あるいは三たびリストラに会うという,最低の出来事があちこちで頻発していた.

そのような境遇に陥った三十代の選手を集めた,かつての弱小チーム・アイシンが,田臥勇太など台頭する若い選手や強豪チームを倒してじりじりとトップに肉薄していく過程を描いた本です.

いまどき作り話じゃないの?と言いたくなるような逆境の連続.それに耐えて,報われる話の集まり.でもそのタイムスパンは10年,20年というもので,その流れの中にいた選手には,バスケットから離れた数ヶ月や一年間は,永遠のように長い挫折や失望の期間だったろう.

でもアイシンに入ってからの選手たちの立ち直りの過程は,むしろ軽やかにすら感じられる.くたびれかけた肉体,残り少ない選手生命,バスケットボール以外のことでくたくたになりかけた心,明日爆発するかもしれない怪我すら抱えて,しかし誰もがこの上なく幸せそうに描かれているし,表紙の写真の皆の表情も,それがあながち誇張じゃないかもしれない,という気になる.

そうした過酷なもの全てに報い,お釣りが返ってくる程の幸せってのが,バスケットボールをつづけられ,戦いつづけられ,勝ちつづけられる戦友がいるという,単純な事実に由来するって言いたいらしい.



もうひとつ.アイシンと言う企業やチームのすばらしさには目から鱗がおちまくったが(内容を全て信じるのもどうかと思うが,それを差し引いても),それでもなお,プロリーグというものが必要で,実業団は良くないという思いがますます強まった.だってさ,そんなすばらしいチーム,指導者,選手が,ある日突然,会社の事情で消える危険は,何一つ変わっていないじゃないか.アイシンの経営がいくら安泰でも,思わぬ大事故や,間抜けな幹部の不祥事ひとつで会社が傾く可能性は否定できないじゃないか.バスケの未来はバスケ関係者が握らなくちゃいけないと思う.スポンサーが倒れても他のスポンサーを探せるような仕組みが,実業団よりも常にベターなはずだから.選手とファンにとって.

私は大山加奈や吉原知子が大声を張り上げて最後の一秒まで必死に球にくらいつき,球を上げまくるバレーボールという競技がサッカーやNBAに負けないくらい人気が出てほしいし,世界の強豪に加わってひりひりするような勝負をいくつもいくつも見たいんだ.

そして100万人近い競技者人口を誇り,SLUM DUNK が通算1億部売れたように,少年の間では野球やサッカーと遜色ない人気を誇るこの競技が,プロスポーツとしてはお話にならないほど小さな世界に甘んじているという状態を,一日も早く終わらせてあげたい.

ちなみに私が泣いたもう二冊のバスケ本は,スラムダンクと,もうひとつは少女誌の月刊LaLaで連載された,樹なつみ作「パッションパレード」.このパッションパレードは,今時漫画好きの人の間でも話題になってないけれど,この作品の特異さと素晴らしさというのは,いくら強調してもしすぎることはないと思っている.これについては,またいずれ別の機会に.





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Last updated  2005.04.03 00:59:53
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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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