つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2008.03.30
XML
カテゴリ: Book



漫画は相変わらず良く読み良く笑い良く泣きました.小説も.また屋外はというと,異常とも云える早さで融雪と植物の芽吹きが進みました.

そしてこの数週間,コミックスは豊作でした.旧作新作織り交ぜて,何から挙げて良いものやら悩むほどです.しかし買った順から行くと,吉田秋生『蝉時雨のやむ頃』を挙げておきます.

*

「この漫画を読め」だか「この漫画がスゴイ」だかどちらか忘れたけれど(まぎらわしいタイトル付けんなっつーの)女子カテゴリーの第一位にランクインしていましたので,読んだ方も多かろうと思います.

吉田せんせにはバナナフィッシュ以来とんとご無沙汰で,自分たち夫婦を描いたエッセー的漫画などちらちら読んだものの,どうも琴線に触れる作品がありませんでした.今回の本も,あらすじだけ読んでも特にピンとはこなかったので,放置してました.

ところが早くもブックオフに並んでいたので手に取ったところ,これはやっぱすごいと.ブックオフはまさに出会いサイト.続刊はちゃんと新刊で買うので許して秋生せんせ.

*

描かれるのは,鎌倉の古い家に住む二十代の三人姉妹.父母は離婚して両方とも家を出て,それぞれの家庭を築いており,連絡も取っていない.



なので色恋中心のストーリー展開を想像していたのですが,実際読むと印象がかなり違ってて,父の葬式をめぐる騒動を中心としながら,三人姉妹の生活や,仕事や,家族との思い出について,地に足の着いた筆致で淡々と描かれる,といった印象です.

確かに次女の色恋は描かれるのですが,それよりも長女と,新しく家族として加わる中学生の妹に強烈な存在感があって,この二人を中心に物語はぐいぐい進みます.

sky05apr

タイトルにもある蝉時雨の描き方は,やはり特筆に値します.父が最期を過ごした山あいの村の蝉の声の凄まじさたるや,それが悲しみであれ憤りであれ,何か一つの気分を長く維持することが難しいほどでした.

しかし,それが初対面の小さな「妹」のすずによって,一瞬でなぎ払われる場面が描かれます.こういう場面を描ける漫画家ってのもそうはいねーだろうな,と思える,たまらなく切ない場面が.

父の葬式編が終ると,舞台は鎌倉に戻り,やや緊張感を孕みながらも,ほのぼのドタバタと,新しい四人姉妹としての家族の日常が始まります.

ひたすら繊細そうに見えたすず(三人姉妹にとって母親違いの妹)ですが,鎌倉に越してきたために一番年少となり,いろいろと気兼ねなく振る舞える立場となります.そうして中学生らしい生活を謳歌しはじめると,それまで抑えてきた勝ち気な性分も現れてきます.

彼女の大人びて見えた態度は,ひとえにそうせざるをえない立場に置かれていたからだと,長女の幸(さち)は初対面で見抜いていたのですが,すずの生き生きとした中学生生活の描写によって,その慧眼はいよいよ説得力を持ってくるのでした.

*

本作は鎌倉の見所紹介も兼ねている作品なので,ふと『神戸在住』(木村紺)を連想しました.

そして木村紺といえば!

アフタヌーンで新連載ですね.いやー待った.「巨娘」でなく,ガチンコの木村紺ニューエディション,といった風情の柔道(百合?)漫画『からん』が登場し,嬉しすぎて悶絶しそうでした.「おお振り」を食ってしまうくらいに注目をさらってほしいデス.








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.03.30 15:51:30 コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Comments

inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: