夢中人

夢中人

2010.01.31
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どうしてこんな時期にこんな本に出逢ってしまったんだろう?


あまりのことに遠くに心を彷徨わさせざるを得ない。
確かによしもとばななの小説の題材には、不倫を扱ったものは少なくなく、そして不倫というものはどんなに純愛でも遊びでも、大概同じような軌跡をたどって終焉を迎えるから、そんなに突拍子もない環境でなければ、普通に(?)不倫を経験した誰しもをぎくっとさせるようなストーリーテリングはそう難しいことではないのかもしれない。


だけど。


どうしてなの、観てたの?!あたしたちを、と何度も思った。
なんで知ってるの、あのときのあたしの行き場のない悲しみを、どうしようもなく歯ぎしりするくらいくやしかった夜明けを、と。


彼がここにいて、一緒に眠る。
もう彼が自宅に帰るほうが珍しかった。だから、何の不足もないはずだった。
だけど。

どこに出かけても、手をつないでいても、いくら自然にしていても、その不穏な感じ、いやな感じが完全に心から出ていくことはなかった。
海外でも、温泉でも、彼といればいるほどその考えは濃く、深くなり、どんどん私は自分の感情にふたをしていったのだと思う。
結果、なんにでも無感動になり、表面上は笑っているのに、心の底からゲラゲラ笑ったりすることが本当に少なくなった。



結果的に寝ても寝ても眠くて、なんにもしていないはずなのに毎晩、風呂で髪を洗うことすら億劫だった。
なにか心に後ろ暗いところがあることの、なんという負担、負荷。
心のスイッチを半分切って、なるべく悲しいことやつらいこと、彼が建てた家に置き去りにされた彼の子供や奥さんのことを、「なかったこと」にするためには心の開度をうんと小さくするしかなかった。



彼というフィルターを通して観る景色の、リアリティのなさ。


そういうことを、強烈に思い出した。
守られていたのではなくて、社会の隅に追やられていたこと。結果的にね。


それらのこと。
ハゴロモの中の、妙な癒しのプロセス。



必死にもがいて、立ち直った、今。
そんなことを、ページをめくりながらフラッシュバックのように思い出し。仕事の待ち時間、控室で。
風呂で半身浴をしながら。


何度も涙をこらえた、


それは号泣というものではなくて、





今のこの、世界と近しい感じ、自分の足で歩き、自分の手で灯明を掲げ、誰も先を行ってくれない道を歩くことのなんという高揚感。
忘れていた、不倫をしていた時には気付かなかった、澱のように心の空気穴を少しずつ塞いでゆく自己嫌悪と焦燥感。



今度はもっと、きちんと歩いてゆこう。
自分の道をもう、誰にも侵されない様に。



そう、思えた名作でした。





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Last updated  2010.01.31 22:41:45


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