2004年09月01日
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【真夏の邂逅】第66日目


 9/1

 夜中、何度か目覚める。錦江湾へ向かう。自販機がなぜか半開きになっていた
 のでジュースを失敬した。少し雨が降ってビビる。派出所で職質。工事現場の
 人にジュースをもらう。錦江湾に出る。曇っていて桜島はよく見えない。海水
 はもう九月というのにまだ温かい。なんだか空気もなまぬるい。垂水の土砂崩
 れを見る。ひどいものだ。牛根麓のガスステーションで寝る。斎藤克也となか
 なか連絡がとれない。明後日には佐多岬に着く。




 朝、起きるとくもっている。

 さらにこの先の道を海に向かって南下しつづけたのであるが、
 しばらく通行止めになっていたという意味がよくわかった。

 豪雨による水害のために各所で壊滅的な打撃を被っている。
 妙見温泉で見かけたドーベルマンはそれを象徴していた。


 川が右手を流れている。
 幅はそれほど大きくもないがものすごい急流だ。

 道の川向こうに建物があり、
 そこにはどこだかの研修所と書いてある。

 その建物のあたりを一匹のドーベルマンが狂ったように吠えながら、
 うろつきまわっている。

 その心配はないことがじきにわかった。

 その建物と道をつなぐ橋が崩れ落ちているのである。
 そのドーベルマンは孤立しているのであった。
 どういう経緯で取り残されたのかはわからないが、
 とにかく悲痛な様子で吠えまくっている。


 どうにかしてやりたいとも思ったが、恐ろしくもあったし、
 何よりドーベルマンの方へ渡ってゆくすべがないのだ。

 奴はおそらく飢えて死ぬか、
 山に入って野犬となって生きてゆくしかないだろう。
 野性化したドーベルマンなんて考えただけでぞっとする。
 僕はいたたまれなくなって、その場を立ち去った。

 川の流れに時々かき消されながら、
 しばらくは奴のなき声が聞こえていた。

 通って行く道のいたるところで
 生々しい災害の爪痕をまのあたりにしたが、
 やがてそれも他人事ではなくなってきた。
 曇っていた空がついに雨を降らせはじめたのだ。

 たいした量ではなくても、
 そんなところを歩いているのである。
 なんとなく不気味である。

 頼む、降らないでくれ、
 僕は天を仰いで祈るような気持ちでそう思った。


 やがて山の地帯を抜け町が見えてきた。
 雨は時々、思いだしたように降るが、
 その町の姿を見て何となく安心した。
 あれはたぶん国分市だろう。
 とすれば海はもうすぐだ。


 日当山というところまで来ると僕は地図を広げた。
 ここらあたりはもう完全な文明地帯である。
 この道から国道10号に出たいのであるが、
 そのためにはそろそろショートカットしていかなければならない。

 それで座り込んで地図を眺めはじめたのであるが、
 場所がよくなかったようである。
 何しろ交番の目の前だ。

 ここで地図を広げたのにはそれなりの理由がある。
 もしよく道がわからなければ、
 そのまま交番に入って尋ねてみればよい。

 だが警官にしてみれば交番の目の前で
 こんな怪しげな人物に座り込まれれば、
 職務質問をしないわけにはいかないだろう。
 そうしなければ職務怠慢とさえ言える。

 「君、何してるのかね」

 やがて新井将敬(政治家)のような
 鋭い顔つきをした警官が中から出てきた言った。

 「はあ、地図をみているんですが」

 僕はそのまんまを話した。
 すると、とにかく中に入れ、という。
 言われるままに中に入ると、
 もうひとり警官が椅子に座って何やら書類に記入している。

 やがて僕が北海道から旅をしていること、
 これから国道10号に出ようと思っていること、
 大学生であることを話し、
 学生証も見せると解放してくれた。

 10号に行く道も教えてもらい、
 僕は交番を出た。
 空は曇っていたが、なんとなく日の光が洩れてくるような、
 そんなかんじであった。

 さて、せっかく道を教えてもらったのであるが、
 どうもその行き方というのはよくよく検討してみると
 遠回りであることがわかった。

 そこで僕は適当なところを左へ折れて
 10号を目指すことにした。
 そしてやがて敷根というところで目指す国道へと出た。

 この道沿いで僕は
 しばらく出会わなかった物に出会った。
 コンビニである。

 思い起こしてみれば、
 最後のコンビニを見たのが熊本市の八代だったのではないか。

 ここ三、四日の道はそれぐらいすさまじいものだったのだ。
 僕はさっそくそこに入り文明の香りに浸った。
 しかし物は買わなかった。
 ろくでもない奴であると我ながら思った。


 国道を行くとやがて海に出た。
 僕は砂浜に腰を下ろして休憩することにした。
 そしてそろそろ旅の終わりに向けての準備を始めることにした。

 今まで会った人達の住所を確認したり、
 家に帰る日を計算したりした。

 この分で行けばあと三日か四日で佐多岬に到着するはずだ。
 どうやら台風との直接対決はなさそうだな、と僕は思った。

 今までなんだかんだと台風をうまくかわしてきたものである。
 いま、台風が接近中である、というような話も聞かない。
 もっともろくに人と話をしていないが。
 だが、もう心配はいるまい。
 あともうちょっとなのだから。

 だが空気が何やらなまぬるい、ということ。
 それが、『奴』の到来を暗示していたのではないか、
 ということに気づいたのは、
 それからだいぶたってからのことであった。


 さて夕方も近くなり
 僕はそろそろ今夜の泊まる場所を物色しながら歩いていた。
 するといきなり凄まじい光景が出現した。

 家、二件分が土砂に完全に埋まっている。
 よく注意して見なければそこに家があったことなどわからないかもしれない。
 僕は大阪で見たテレビのニュースの映像を思いだした。

 あのとき、たしか土砂に埋まった家のことを話していたが…。
 そうだ、垂水だ。
 地図を見ればその垂水は20kmほど先である。
 まさにもっとも被害の甚大だった地帯に
 僕はさしかかろうとしているのである。

 今が雨の降っていない時でよかった。
 ぼくは心のそこからそう思った。

 それからずっと海沿いの道を歩いた。
 町があり、しばらくは何もなくなり、
 また町があるといったかんじで道は続いている。
 そして歩き続けて、ついに日が暮れてしまった。

 そうなると遠く、所々に見える町の灯かり以外はまったくの闇である。

 その闇の中をタッタッタッと足音が聞こえてきた。
 やがて前方から父親と二人の小学二年生ぐらいの子供達が走ってきて
 僕とすれちがった。

 この暗い中、マラソンをしているのである。
 ごくろうなことだ、と思っていると、
 ランナー達は10分もすると引き返してきた。

 父親が先頭を走っている。
 そしてそれから300mぐらい離れて子供達が走ってきた。


 「おとーさん。待ってよ」

 半ベソの声を出しながら息子達は走っている。
 僕はこの子供達が通り過ぎるときに、
 がんばれよ、と声をかけてやった。
 すると殊勝にも「はーい」と言って走っていった。
 そのときにはスパルタ親父は
 もうずっとずっと先の方を走っているようであった。


 さて泊まるあてもないまま9時を回ってしまった。
 僕は斉藤克也に連絡を取ろうと思った。
 この時間ならやつも家にいるにちがいない。

 奴に小倉から電話をした際に
 大隅半島のどこかで落ち合おうということを話した。
 ただあの男の言っていた「ちかや」という地名は
 僕の地図にはのっていない。

 それがどのあたりなのかも確認しておきたい。
 そこで時々、電話をしながら行くのだが、
 なぜか常に話し中であった。

 僕にしてみれば今日中に連絡を取らなければ、
 この先どういうコースを歩いて行くのか決定できない。
 それにこのあたりは電話がそこかしこにあるという場所ではなかった。
 町を過ぎてしまうとしばらくはそういう文明の利器はなくなってしまう。

 電話をして居なければ、
 また歩き続けるしかないのだが、
 つぎに電話をかけられるのがいったい何時になるものだか
 皆目、見当もつかない。

 僕はとりあえず10時になると進行を止めた。
 そしてここでなんとしても連絡をとろう、
 そう思って電話をかけるのだがいっこうに電話が切れる様子がない。

 誰かと長電話をしているんだろうか。
 電話が通じないということは僕にとって眠ることができない、
 ということを意味していた。

 だんだんいらいらしてきたが、
 辛抱して15分ごとに電話をしてみた。
 そして何度目かの電話の後、ある疑惑が心に浮かんだ。

 もしかしたら受話器が外れているのかもしれない。
 しかしそんなことがあるかな。
 こんなにタイミングよく、というか悪くというか。

 とにかくそうそうしょっちゅうあることではないのは確かだ。
 しかし僕は念のためNTTに電話してみた。
 NTTでは受話器が外れていないかどうか調べてくれるサービスがあるのである。
 そして外れていればその家に気づくよう促してくれる。

 すると、やはり受話器が外れていたらしい。
 それから15分くらいたって電話をすると、えっへっへっ、すいません、
 といって斉藤克也が出てきた。
 どうもこの男は憎めない。

 奴とは予備校のアルバイトをしているときに知り合った。
 なかなか良い顔である、という評判であったが、
 どうも僕にはそのあたりは解せないところであった。
 たしかに松方弘樹に似ている。

 その男が言うに学会で博多まで行くので
 友達と九州を回るということであった。
 そして9/4の夜に鹿屋にいるということである。

 「ちかや」ではなく、「かのや」であった。
 鹿屋といえばここから25kmほど先ではないか。
 明日には着いてしまう。

 さてどうするかということになった。
 だが、うまいことを思いついた。

 佐多岬までの距離が約90km。
 二日で行ける。
 そしてそこから鹿屋までもどって一日の行程である。
 これで四日の夜に鹿屋で落ちあえる。

 それで旅先のことなので、 
 お互い連絡がとれなくなったらその時は会うのはあきらめよう、
 ということにして電話を切った。


 今日は長い一日だったような気がする。
 墓場の向かいのガスステーションに寝袋をだして眠った。
 すぐそこにトンネルが見えている。
 明日はあのトンネルを抜けねばなるまい。




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最終更新日  2004年09月01日 22時25分26秒
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