きまぐれうさぎ

きまぐれうさぎ

PR

2010.04.14
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
刑事を休職中の主人公は、親戚の男に行方不明の婚約者を探してほしいと依頼される。


※ネタばれ防止のため一部反転しているところがあります。

ベストセラー作家である宮部みゆき作品の中でも一、二を争うくらい有名な作品です。
カード社会の闇を描いたミステリです。

さすが、ベストセラー作品だけあって読ませる力のある作品でした。
六百ページに近い長編ながら、
最後まで読者を離さない吸引力に満ちた作品だったように思います。

ただ、この作品は熱烈にミステリ作品をもとめている人にはあまりおすすめ出来ない作品かもしれません。

ジャンルとしてはこの作品はミステリの部類に入っているのかもしれないのですが、残念ながら作中のミステリ部分ではあまり目新しさや驚きがなかったように感じてしまいました。
まあ、目新しさについては、この作品が大分前に出版されたせいだとは思います。

それから、驚きが少なかったのは、推理の核心部分である失踪した女性は何故そんなにも別人になりたかったのかが容易に予想出来てしまったせいでした。
そりゃ、 こんなにもあらすじに「カード社会の闇」や「自己破産」が書いてあったら、過去の自分を捨てたい理由は「お金の問題」以外ないだろうと誰でも思ってしまうで しょう。

しかしながら、先の予想がついてもこんなにも読者の目を掴んで離さないのは、
物語の組み立てが秀逸であるからだろうと思われます。
読み進めてゆくと、ちょっとずつ真相が見えてくるという小出しの加減が絶妙なので
真相が大方予想出来たとしても、ページをめくる手が止まることはなかったです。


個人的にはラストが若干中途半端な気がしたのですが、


この作品は言ってみれば失踪した女性をひたすら追い求めるというシンプルな物語なのですが、その物語の中心でもある失踪した女性は最後まで登場せず、周りの人達が語る人物像のみでその女性を浮かび上がらせています。


その手法で、なんとなく三浦しをんの「私が語り始めた彼は」を思い起こしてしまいました。個人的にはこの二つの作品では、宮部みゆきの方がこの手法を上手に扱えているように感じました。
もし「火車」の内容をそのまま表わしたタイトルを付けるとしたら「私が語り始めた彼女は」しかないのではと、勝手に思ってます。

そんな失踪した女性に焦点が当たった作品なのですが、失踪した女性を探す理由を現実問題として考えてしまうとこの作品に入り込みづらくなる恐れもあります。物語の途中で女性を探す必要がなくってしまったのに、手間暇かけて必死で捜索を続ける主人公に疑問を覚えてしまう人もいるかもしれません。



そうすれば、読者とともに主人公が追っていたものは、
雲のようなものではなく、
もっと暗く底のない闇のようなものだったことに気付くという、
背筋がヒヤリとするような体験を味わえるはずです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.04.15 21:50:11
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ぷるんつ

ぷるんつ

コメント新着

ぷるんつ @ Re[1]:「月桃夜」遠田潤子(04/28) reichel!さん、こんにちは! >久しぶ…
reichel! @ Re:「月桃夜」遠田潤子(04/28) こんにちは。 久しぶりにコメントいたし…
ぷるんつ @ Re[1]:三浦しをん「木暮荘物語」(02/14) もりのゆきさん、こんにちは! >わた…
もりのゆき @ Re:三浦しをん「木暮荘物語」(02/14) こんばんは わたしも最近読みました。 …
ぷるんつ @ Re[1]:瀬尾まいこ「卵の緒」(01/31) きたあかりさん、こんにちは! >「瀬…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: