きまぐれうさぎ

きまぐれうさぎ

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2010.12.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類
やむを得ず大学を休学し、熱意のないまま伯父の古書店でアルバイトしている主人公の芳光。ある日、叶黒白という作家が書いた五つの小説を探して欲しいという若い女性が店に訪れる。



この作者が書くミステリは大体二つのジャンルに分けられると思います。
「インシテミル」や「犬はどこだ」に代表されるダークな作品か、
「古典部シリーズ」や「さよなら妖精」に代表されるほろ苦さを感じるビターな作品か。
この作品はそのどちらにも属していない、ダークとビターの中間に位置する作品だったように感じました。


この作品でまず興味深かったのは、結末を読者にゆだねたまま終わるという「リドルストーリー」を扱っているということでした。
読者に結末をゆだねるとは、言い方を変えれば中途半端に終わるということです。
たまに純文学などで、結末が中途半端な感じで終わる作品があったりしますが、作品によっては深い余韻を残していて味わい深かったりします。が、それをミステリでされてしまうと、余韻よりも不満を感じてしまうことが多いかと思います。
しかし、そこはこの作者です。



少し気になったのは主人公の境遇や心情がやけに丁寧に描かれていたのに対して、その結末がきっちり描かれていなかったことでしょうか。
主人公の周辺部分とミステリ部分は関連性があまり感じられなかったので、なぜこんなにミステリとかかわりのない部分を丁寧に描写しているのが不思議でした。
しかし、読み終わった後に残る独特の余韻は、ミステリ部分だけでは出せなかったように感じました。
なので、もしかしたらこの余韻を残したいがために、作者はあえて主人公の周辺を丁寧に描き、結末を「リドルストーリー」のようにきっちり描かなかったのかもしれません。


「インシテミル」ほどの派手さはないし、
「古典部シリーズ」ほど爽やかではないけれども、
地味ながら味わい深い作品だったように思います。

ミステリファンや、「リドルストーリー」に興味のある方などおすすめの作品です。





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最終更新日  2010.12.29 23:02:48
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