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2004年10月25日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
さて、「外務省とは何なのか」後編です。

まず、昨日書いたことをもう一度まとめますと、

『湾岸戦争の頃から、
外交問題に関して、
外務省だけで処理できず、
他省庁との調整を必要となり、
首相官邸が主導して処理する
案件が増えた。

主要閣僚を歴任し、

橋本首相はそれを自身の内閣の重要課題と位置づけ、
首相官邸のスタッフの強化と、
内閣府の設置を成し遂げた』

ということ。

今日はまず、
この首相官邸機能の強化を生かした
小泉外交とはどのようなものかを紹介する。

次に、前編も含めて、
首相官邸が主導することが多くなった
日本外交の実態を踏まえた上で、
では「外務省とは何なのか」

論じてみたいと思う。

それではまず、
首相官邸機能を生かした小泉外交の事例として、
9・11米国同時多発テロ発生後、
迅速に米国支援の策を出し、

法案化した事を紹介したい。

2000年9月11日に起こった同時多発テロに対して、
小泉首相は内閣官房主導による対応を行った。

内閣官房に古川貞二郎官房副長官を中心にして、
防衛庁出身の大森、外務省出身の浦辺の二人の副長官補、
外務省から谷内総合外交政策局長と藤崎北米局長、
防衛庁から佐藤事務次官と首藤防衛局長、
そして秋山内閣法制局次長による
勉強会を発足させたのだ。

その結果、テロからわずか7日後の9月19日には、
情報収集、米軍支援、周辺地域支援、避難民支援などを含む
日本政府の対応策がまとめられた。

このすばやい対応には、
内閣官房の機構が改組されたことが大きかったという。

内閣官房の縦割りの弊害を取り除く目的で、
内政審議室、外政審議室、安全保障危機管理室(通称安危室)
を廃止し、それぞれの室長の代わりに
3人の副長官補が置かれ、
そのスタッフは「副長官補付室」して統合されていた。

これによって、
これまで安全保障問題で、
外務省出身者が室長となる外政審議室と
防衛庁出身者が室長となる安危室との
対立がなくなったことが
すばやい対応を可能としたのだという。

これは小泉内閣の首相官邸主導外交の一例だが、
イラク問題にしても北朝鮮問題にしても
官邸主導=外務省はずし
が目立つというのは、
皆さんもお感じのことと思う。

外務省内部の不祥事もあるし、

「外務省は何をやっとるんだ!」
「外務省など解体しろ!」

とお怒りの方もいらっしゃるだろう。

しかし、私に言わせると、
外務省はまあこんなもんだし、
こんなもんでいいのである。

外務省が外交全体を統括するというのが
世界的に見ればむしろ異常とも言えるし、
むしろやっと日本外交の意思決定システムも
正常になってきたなあという印象を私は持つ。

それでは、これからその理由を説明する。

まず、外務省官僚の思考・行動とは
どういうものかということを、
説明の出発点にしたい。

前編で私はこう書いた。

「外務省はアメリカの方ばかり見て、
国内の業界が苦しんでいるのを見ようとしない。」

これは日米包括協議での話だから、
外務省はアメリカの方を見るということになるのだが、
一般的に外務省では
ロシアの担当はロシアの方を見る、
中国の担当は中国の方を見る、
欧州の担当は欧州の方を見る、
と言われている。

そして、日本の外交政策に、
日本の国益を考えるよりも、
自分が担当する国の意向を反映させようとする。

その結果、いわゆる

「土下座外交」「謝罪外交」

と言われるものが
外務省主導で展開されることになる。。。。

これは、外務省が批判される時の
代表的な例だと思うのだが、
私に言わせると、
外務省の官僚が担当の国に対して

「土下座外交」「謝罪外交」

をするのは、当たり前のことなのである。

外務省の官僚が、
日本の国益を考えて行動するなど、
あり得ると考えるほうがおかしいのだ。

なぜなら、外務省の官僚にとって、

「担当する国の日本外交における重要度が増すことが
外務省内での自らの出世につながる」

からである。

重要度の高い国を担当していれば、
より出世できるというのは、
一般企業、例えば商社などでも
国内鉄鋼よりIT関連の部署の人間のほうが早く出世する、
つまり、より会社に利益をもたらす
会社にとって重要な部署にいるほうが
早く出世するというような、
似たような例が一般社会に結構あると思うので、
皆さんも理解できる話だと思う。

そして、担当する国の重要度を増すには、
その国と日本の間にいかに難しい問題があるのかを
外務省内でアピールしなければならない。

だから、外務官僚はみな競って、
せっせせっせと
アメリカやロシアや中国などの
御用聞きをして、
向こうさんの無理難題を
聞いてくるのである。

外務官僚という人たちに
そもそも「国益意識」を持てというのが、
むちゃな話というか、酷な話なのである。

外務官僚だって人間だから、
食べていかないといけないし、
そのためには出世したいだろうし。。。。(苦笑)

そして私は、外務官僚が

「担当国の御用聞きをして土下座外交をする」

ことは、それはそれでいいのだと思っている。
むしろ一生懸命御用聞きをやってくれることが
大事だと思う。

なぜなら、

「そういう御用聞きはやめろ。
国益に基づいて行動せよ。」

と言って、外務省内に

アメリカ派、
ロシアスクール
チャイナスクール、

などの派閥ができないようにするために、
例えば短期間での人事ローテーションを
徹底させるとする。

綺麗事は机上でいくらでも言えるけど、
現実としてそれで外交は成り立つだろうか?

相手国に信頼を得て人脈を築き、
情報ソースを確保することは、
外交を成功させる最も基本的に大事なことだ。
(それができず、米国の意向を汲み取れなかったことが
湾岸戦争の資金援助の失敗の元だったことは
昨日書いた。)

だから、外務省の官僚には
どんどん担当する国に食い込んでもらわないといけない。

どんどん御用聞きをして

「あいつは愛い奴じゃ」

と相手国に思ってもらってこそ、
的確な情報を掴めるのだ。

そういう意味では、
よく世間で言われる
外務省批判というのは、
私は当たってないと思っている。

外務省は実はよくやっているのだ。

これは実は、
日本だけに特有な現象ではなくて、
諸外国の外務省も同じようなものだと
私は思っている。

アメリカでもロシアでも中国でもイギリスでも、
外務官僚というのは担当国に食い込んで
御用聞きをやっているのだと思う。

それが官僚として出世につながるのは、
世界中の国で変わらないと思うからだ。

これらの国に実際に、

「日本派」「日本通」

の役人って、いっぱいいるしね。

ただ、外国の場合は、
その御用聞きしたことが
そのまま表に出てくることは
ほとんどないように思える。

外交について発言するのは、
大統領、首相、外相などであって、
官僚がぺらぺらしゃべったりすることは
外国ではほとんどないからだ。

つまり、日本の問題は、
外務官僚が御用聞きしてきた相手国の意向が、
そのまま日本外交の政策となることが多かったことだろう。

外務省の官僚が、政府の方針が決まる前に
記者を前にぺらりんこぺらりんことしゃべるシーンは、
結構皆さん見てきたと思う。

湾岸戦争以前の外交はこれが当たり前だったようだし、
近年でも、田中真紀子さんが外相だった頃なんて、
この典型的な事例だと思うが。。。

つまり言いたいのは、
外務省が相手国の御用聞きをするのは当たり前なんだけど、
その外務省に「外交の決定権」を与えるのは問題だということだ。

先ほど外国では、
官僚が外交についてぺらぺらしゃべることはないと書いたが、
考えてみると、外務省に決定権を与えている国はあるだろうか?

外交に関して、決定権を持っているのは
米国では国務省ではなく、ホワイトハウスだろう。
英国では外務省ではなくダウニング街10番地(首相官邸)だ。

外相というのは、外交交渉においてあくまで露払いの役割でしかなく、
ブッシュ大統領もブレア首相もシラク大統領もシュローダー首相も、
外交は人任せにせずみな自らが主導してやっている。

これは、上記の民主主義の国だけではなく、
独裁の大統領や軍事政権の国では尚のことだし。

要するに今、日本で首相官邸機能が強化され、
外交における官邸主導体制が強まっていることは、
世界的に見れば珍しいことではなく普通のことであって、
ようやく日本も普通に外交ができる体制が
整いつつあるのだと私は考えている。

ちなみに小泉内閣は、
これまで官邸主導外交の中で、
外務省を実にうまく使ってきた。

北朝鮮問題で、
田中均氏が築いた北朝鮮人脈を
使うだけ使って、最後に彼を使い捨て。

「私はもう北と話ができない。私の立場はどうなるのか。」

と、田中氏がいくら吼えようと、
官邸は涼しい顔。。。

外務官僚は、
最後は日本政府に捨てられる結果になることを覚悟の上で、
担当国に深く食い込んでいく、
高いプロ意識を持っていただけたらと思う。

「外務省とは何なのか」。
今日の要点をまとめましょう。

外務官僚が交渉相手国の御用聞きを一生懸命やって、
相手国の意向が日本の外交政策に
取り入れられるようにがんばるのは、
当たり前のことである。

自分が省内で出世するためには、
自分の担当する国が日本にとって
重要な国にならないといけないから。

外務官僚に「国益意識」を求めるのは酷。

また、外務官僚が御用聞きを一生懸命やらないと
相手国に食い込んで情報を取れず、
外交が成り立たない。

外務官僚には大いに御用聞きをやってもらわないといけない。

ただし、外務省に外交政策の決定権を与えてはいけない。

外交は世界的に見て
大統領府や首相官邸が主導するのが主流。

外務省は外交の露払い、
下準備の役割しか果たさないのが普通。

日本外交において、
首相官邸主導が強まり、
外務省の影響力が低下するのは、
ようやく日本も普通に
外交ができる体制が整ってきたということである。

ああ、疲れた。(苦笑)
それでは、またね。



今日の文章は以下の論文を参考にさせていただきました。

信田智人『小泉首相のリーダーシップと安全保障政策過程- テロ対策特措法と有事関連法を事例とした同心円モデル分析』日本政治研究1(2)pp. 42-67.



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最終更新日  2007年10月27日 14時16分28秒


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