ゆのさんのボーイズ・ラブの館

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2007年01月26日
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カテゴリ: ボーイズラブ


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「諸藤君!本当~!?」
クラスメイトの少年、山田はソファから勢い良く立ち上がった

「本当に美術部に入る!?」
「・・・え・・あ、うん・・・」

自分でもわからずに、なぜかそう返事をしていた
念を押されてから、安易に返事をしてしまったと後悔はあったが
それでも良かった
この親友?の喜び様を見れば、今更やめるとも言えない

「先生!そういうことです~!! 二人で今日入部します」



「わかった、わかったから、落ち着け山田」

何がそんなに嬉しかったのだろうか
テーブル越しに身を乗り出して何度も何度も顧問の小梶に伝えていた


彼らがそうしている間、日樹はじっと小梶の顔を見つめていた
その歳の頃合、背格好が
今は別々に暮らす大好きな義兄にそっくりだ・・・





翌日の放課後から日樹はにぎやかな放課後の時間を過ごすようになった

二人はこの美術部への入部をきっかけに
“親友”と呼ぶにふさわしく、日に日に仲を深めていく


昨日の今日、突然の入部で美術教材も用意できず
この新一年生が初めて取りかかったのは風景画のスケッチ

二人は校内の中庭にいた

「諸藤くんの進み具合はどう?」
隣にいる日樹のスケッチブックを覗き込んでくる

広い中庭
何もべったり寄り添わなくてもいいのに・・・

まるで猫にでも擦り寄られているようだ

今まで親しい友達を傍においたことがない
小学生時代もクラスの仲間とは当たり障りなく過ごしてきた
何につけても秀でた日樹は、本人の自覚はまったくなしに
まわりから一目おかれていたのだ

祖父の代から企業経営を行う、どちらかといえば上流家庭に生まれた日樹には
品格、教養が備わり
もっとも日樹にとっては日々、それが当たり前の暮らしにしか過ぎなかった

静かにマイペースで下書きをする日樹とは対照的に
隣に座るクラスメイトはどうも落ち着かない様子
先ほどから何度も日樹のスケッチブックをチラチラと気にしている
どんどん描きあがっていく下絵が、目の前の光景とまるで同じだったから

日樹にしてみれば、気が散って仕方ない


職員室や事務室などがある校舎と中等部の間にある一つ目の中庭は
日本古来の“和”を強調した庭園に施され、
静寂さをかもし出す
そこにたたずめば、時代をさかのぼり遥か昔へ
おのおのが思い浮かべる歴史上の人物が活躍した世界へタイムとリップする
そんな錯覚を起こしてしまいそうになるここは、
『時の広場』 と呼ばれる

中等部とその次にある高等部との校舎の間には
前者とは対照的な洋風の庭園だった
木立の合間に、石膏でできたオブジェが無造作に散在する
中でもここの別称の由来となる彫刻出できた大きな噴水が学園のシンボルでもある
『水の広場』
生徒たちはそう呼んでいる

そして、高等部の校舎と美術室や特別教室のある一番奥の校舎との狭間は
『風の広場』 と称される
三つのそれは個々に特長があった


どこか他の二つの広場とは異なる空気が流れると感じるのは
生い茂る木々のせいだろうか

自然の群生緑豊かな『風の広場』には
四季折々に花や果実を実らせる木々、草花が種類多く植えられている
ところどころに地面から露出している木の幹がちょうど良い腰掛になり
日樹と山田は並んでそこに居た

「諸藤君はなんで西蘭に入学したの?」

どうやら創作意欲がまったくないような質問だった
話題は手元のスケッチブックとは無縁のこと

「・・うん・・義兄の母校だから・・・かな・・・」
確かにそれが一番の理由だった
日樹は義兄を想い浮かべ、はにかみながら答えた

「ふ~ん」
反応は期待していた答えとは違ったようだった

「山田君は」
少しの間を置いて、今度は日樹が訊ねる

「僕?」
う~ん、なんて答えようか
瞳は楽しそうな表情で青空を仰ぐ

そして、トンと立ち上がり日樹の目の前に立つ
日樹のスケッチブックに彼の人影が映し出されると一瞬気を取られ
再び彼に視線を向け直す

「遥(はるか)って呼んで」
クラスメイトはそう囁いた

「・・・遥・・・?」
「うん、僕の名前だよ」

そして彼は日樹を見つめながら後ろ退る
大きな歩幅でゆっくりとゆっくりと一歩ずつ

二人の間には小声では聞き取れないほどの距離が開いていた

「あのね~」
山田が何か言い始めた

「え?」
日樹もそれを聞き取ろうとする

「にゅ・・・・」

通り過ぎる春風に、木々の葉が擦り合い、サワサワ音を立て
クラスメイトの言葉は遮られてしまった


「なに・・・?今聞こえなかった」

クラスメイトは揺れる髪を押さえながら
気のせいか照れくさそうに笑んでいた



二度と日樹には届かなかった言葉・・・





『入学式の日、

         君を見た時からずっと好きだったよ・・・』







彼はそう言ったのだ





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最終更新日  2007年01月26日 20時09分59秒
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