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2009年03月02日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
2月27日卒業式を終えた俺は

感動もしなければ

友人や後輩との別れの涙を流す事もなかった

卒業式はただ「終わった」というその事実を受け止めるだけの

受動的な儀式のようなものであった

それはまるで映画やテレビの映像を見ているかのような感覚で

俺ただぼやっとしながら眺めていた

周りのクラスメイトは半数近くの人間は泣きながら

3年間の思い出を語っていたが



それはクラスや部活の諸活動について

なおざりな働きをしていたからではないし

クラスメイトと喧嘩をしていたわけでもない

おそら思い出に輝きを感じないのは

辛苦した思い出によってそれらが

掻き消されているからだと自己分析する

これまでその辛苦した思い出については

周りの対人関係や書く事によって起こる悪影響を配慮して

書いてこなかったが

高校を卒業した自分はそれらの楔からようやく解き放たれた

「今なら言える」



今は思う

これからはなぜ輝きを感じなかったのか?

その理由を書こうと思う

(以降自分のことを「私」と書く)


今から半年前



私は一つの恋を諦めた

一年半以上思い続けてきた女性への恋を諦めた


彼女を思い続けてきたその日々は

出口のない迷路を彷徨ってきたかのような感覚で

私が諦めかけると彼女は僅かな希望を与え

その希望へと追いかけると

そこには何もない

その繰り返し

そんな一年半

諦めると決意したのは

一向に縮まらない距離に絶望したたのが一番の理由

その日の私はこれまでの努力が全て無駄である事を改めて確認し

自分自身で決めた事ながら喪失感を感じていた

だが一方でこれ以上でこの迷路で彷徨い続けなくても良いという

安堵もあった


この恋を陰ながら応援してくれた加奈子(仮名)という女性がいる

とある女子高の生徒で

夏休みの花火大会で知り合い

そこでメールアドレスを交換し

私はたまに恋愛相談をしていた

友人曰く加藤ローサというモデルに似ているらしいく

確かに私の感覚としても美女であった

しかしなぜか俺と同じクラスの冴えない男

大作(仮名)と付き合っており

内心私は美女と野獣であると思っていた



恋を諦めた私は以前加奈子が言っていた

何か進展があったときにはメールを送るようにとの会話を思い出した

その時は気にも留めてなかったのだが

ここしばらく連絡もとっていなかったので

これも良い機会だと

諦めたとの旨のメールを送った


加奈子からは

今まで良く頑張ってきただとか

想いが伝わらない事は残念だが次があるなどの激励のメールを貰い

私は素直にそのメールに励まされた

そんなやり取りをしている中唐突に加奈子は

「大作が別れたいと言ってきた」

とメールを送ってきた

私は突然のメールに半信半疑であったが

おそらくそれは彼女の方がなおさらであるのだろう

私は

「とりあえず落ち着いて状況を話してほしい」

と返した

その後何通かメールのやり取りをした

曰く大作からの別れのメールについて

加奈子は「一体どうしてそんな事を言い出すのか?」と送り

大作は思い通りにならないからだとか

毎日会えないからだとか

随分と身勝手な理由を並べたてたらしい

そして最終的に彼女の方から別れを切り出すと

「やっぱり別れたくない」と大作は言ったそうだ

随分と滅茶苦茶を言うのだなと思いながら

加奈子のメールを待っていると

「明日会いたい」と彼女は言い出した



私は一瞬思考が空白になった

そしてその半秒後その言葉の意味を悟った

彼女の会いたいはただの会いたいではない

特別の意味を持ったものであるのだと

畳み掛けるように

「大作とは別れる」

とのメール

私は心臓が大きくドクンと一打ちしてそれが全身に伝わるのを感じた

大きく深呼吸をした私は待ち合わせ時間と場所を約束しメールを終わらせた




加奈子との約束の日の夕方

私は予めキープしておいた新品のカジュアルな白のインナーと

紺のシックなブレザーを羽織り

ワンポイントとしてネックレスをする

髪型を整え

口臭から爪の長さの細部に至るまで細やかなお洒落をした

加奈子と会うといえ

こんなに気合を入れてお洒落をしたのはもう何ヶ月ぶりだろうか?

そんなことを考えながら今日の日程の確認をする

まずは料理部の打ち上げ会に行く事だ

「打ち上げ」

普通高校生の打ち上げはコンビニでお菓子を買ってきて

楽しむというのが主流であるが

今回料理部は文化祭の露店で荒稼ぎした多額の利益を

学校には内緒で着服した

本来利益は全て学校に納めなければ成らないという校則なのだが

悪い事というのはばれない様にするものだ

幾らでも学校を誤魔化す方法はある

「もともとこのお金は自分達が稼いだお金なのだ」と

でっち上げの薄っぺらい正義の名の元

皆一丸となって隠蔽工作をし

その結果今回は焼肉を食べに行く事ができた

打ち上げ会は10時くらいまでは

皆で楽しんでいこうとしていたらしいが

私は加奈子と会う約束があったので途中で切り上げる旨を

あらかじめ伝えておいた

打ち上げのテーブル席の向かい側

そこの席に大作も居た

シワクシャのTシャツに色の抜けきったジーンズを履き

髪はワックスも付けずヘアスタイルなど

一つも気にする様子もなかった

以前聞いた話では服は

親に全て買ってきてもらっているらしい

周りの人間は

高校生にもなっていかがなものか

と警告しているようだが

本人曰く「買うのが面倒。興味がない。治す気もない。」だそうだ

いつもと変わらないその姿や考え方の大作

私は内心鼻で嘲笑った


自分を磨こうとしない人間は無能である




これから私が加奈子と会う事も知らないのだろう

大作はいつものように私に話しかけてきた

私は彼の話に適当に聞き流しながら

内心高揚感で一杯になっていた

言うなれば勝敗の分かっている勝負に

多額の財産を賭けたような気分だ

早く勝ち名乗りを言いたい

しかし今は堪えなければならない

興味のなさそうな顔をしているだろう私を他所に話を続ける大作

私は加奈子との待ち合わせを今か今かと待った



その後料理部の打ち上げを途中で抜けて来た私は

約束より5分ほど早く集合場所であるマクドナルドに着いた

するとちょうど横断歩道を挟んで向こう側から一つの影が見えた

洒落た薄いベージュのワンピースに

控えめなシルバーのネックレスがよく似合う少女

肩に届くぐらいの髪が秋風に静かに揺れていた

徐々に近づく少女の顔を確認しながら

私は思わず頬を緩め

内心で「前よりお洒落で可愛いい」と感嘆の息を吐いた

私は裏返りそうな声を凝らしながら

「夏の花火大会以来だね。久しぶり」と加奈子を迎え

彼女はいつにも増して穏やかに「うん」と返事をした


続く





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Last updated  2009年03月11日 15時52分28秒
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