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2009年03月07日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
私はすぐに彼女に返事をだした

まだ加奈子の事を諦めきれていない事

大作が後輩に浮気同然の卑猥なメールを送っていた事

概ねこの二つを書いておいた

加奈子の返信のメールには

大作の浮気の事について以前から問い詰めていたらしいが

「やっていない」と大作は否定し続けているそうで

今回の件が初めてではないと書いてあった

私は内心未だ浮気の事実を隠そうとする大作が



それはきっと加奈子も思っている事なのだと私は思っていた

私の気持ちについての答えは

「まだ混乱しているから」

「もう少し時間がほしい」との事

私は

「加奈子が冷静になれるまで待ってる」

「まだ一度もデートしてないし」

「しっかり見てしてほしい」

と返し

加奈子は

「あまり期待しないでね」と言ったが



デートをしてくれるという事は私をきちんと見る意欲がある事なのだと

デートをしてきちんと冷静に私を見てくれさえすれば

私を選んでくれるはずだという確信が私にはあり

内心で安堵の息をついた

遠回りはしたもののやっと軌道に乗って





私は綿密に緻密に考えつくされた

デートプランをその日から考えるようになった

「大作ごときに負けるはずがないのだ」

「加奈子はきちんと判断してくれるはずなのだ」

と闘志を燃やす

今度こそ始まる幸せの日々を手に入れるため

私は何度も辺りのデートスポットを探し尽くしていた



そんな日々が4日ほど続いたある日

私はいつものように帰り道デートのプランを考えながら

自転車を走らせていた

そんな中届いた加奈子からのメール

私は意気揚々と確認する




「やっぱり大作と付き合う事にした」

「浮気の事やっと昨日認めてくれて」

「もうやらないっていってくれたから」

「最後にもう一度だけ信じてみようと思うの」


そこには絵文字なども使ってあり

いかにも私は「他人」のような存在として扱われていた

結局加奈子は私の事を一度も見てはくれず

あれだけ酷い事をしておいた大作を選んだのだ

デートも一回もせずに私と言う人間の

何が分かってそんな決断をしたのだろうか・・・

空を見上げたまま突っ伏す私

本当に悲しいときと言うのは涙も何も出ないもので

私は真っ白になりながらも湧き出てくる全ての感情

悲しみ

痛み

絶望

殺人衝動

数秒間の短い間かもしれないが

その瞬間は永遠のようにも感じられ

私は途切れそうな理性で何とかそれらを抑えていたらしい

未だただ棒立ちのまま空を見上げている私

ふっと冷静になり次の瞬間「もういいや」と自分に言い聞かせた

しかしもし私の理性があと少し弱く

その場に大作や加奈子が居れば私は確実に殺人犯になっていただろう

あの日の夜のように

心に差し込まれた剣がギリギリと音を立てて抉っていく感覚

私は深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせ

「言いたい事は色々あるけど」

「もう何も言う事はないよ」

「さようなら」

と加奈子にメールを送り

軽くペダルを漕ぎ出した

パリパリと枯葉を踏んで音を鳴らしていくタイヤ

ゆっくりと過ぎ去っていく風景の中

これまでの出来事が走馬灯のように蘇る

今にも溢れだしてしまいそうな何かが

表面張力でギリギリの所で留まっている

私は零れ出してしまわないようにと

それを心配しながら悶えている

きっとその緊張が途切れたとき

何かが耐え切れずに溢れ出してしまった瞬間

私は私ではなくなるのではないかと思う

私は表情一つ変えずに大きく深呼吸をした




その後私は学校で大作に会うたびに

また自動車学校で加奈子に会うたびに

前にも増して酷く心が抉られるように痛むようになった

「さようなら」と言ったあの日から

今まで大作が浮気をしているという話は聞かなかったが

それ以外は何一つ改善していなかった

改善させようとする姿勢すらなかった

向上心のないものは愚かしいと思っている私は

そんな大作の姿勢に苛立ちを感じながらも

そんな大作に負けたという事実から

毎日のように苦しむようになった

人には忘れるという便利な機能があるが

深い傷を負い

毎日のように大作に会わなければならないという環境の中

私は忘れたくても忘れられない状態にあった

毎日のように「大作以下」という事実が脳裏に浮かんだ


そして卒業式の日

私は最後に何も知らずに悠々と加奈子といる

大作を本能のまま殴ってしまおうかと思ったが

結局私は何も言わなかった

それが私にとっての最初で最後の反撃

殴る事で

加奈子と私の事を言う事で

大作にしろ加奈子にしろが

成長するチャンスを与えてしまう

彼らが「人の痛みが分かる人間」になってしまうのを私は恐れたのだ

おそらく本当に菩薩のように優しい人間ならば

言って二人を成長させたのであろうが

私はここまで苦しまされた人間に優しさを捧げるほど

優しい人間ではない



「言わない」


私が一矢報いるために出した決断

二人がこの先先も付き合い続け

結婚しようが

子供ができようが

私にはもう関係のない話だが

いつか二人が人の痛みを分かる大人へと成長出来る日が来るのだろうか?




終わり





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Last updated  2009年03月12日 16時28分49秒
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