真理を求めて

真理を求めて

2003.05.18
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大塚博堂は、失われた過去の切なさを感じさせてくれる歌が多いと思う。この歌でも、まずタイトルから、その失われた過去を感じる。

もう子供でもないということは、子供の持っている純真さが失われたということを感じさせる。鳥でもないというのは、鳥のような自由さが失われてしまったということだろうか。

歌い出しでは、少年の頃は何でもない石ころが宝物のように思えたことが語られる。それがいつの頃からただの石ころに見えてくるようになってしまったのだろうか。石ころが宝に見えるのは、そこに夢を見ているからだけれど、その夢を見なくなった頃に鳥のような自由さも失われてしまう。心の自由さというものが。「人はみんな傷つき生きてゆく」という言葉があるから、傷つくことによって子供であることをやめていくんだろうか。

しかし、子供であることを失い、鳥であることを失うというのは、ある意味では成長して大人になるということだ。この成長し大人になるということが、どんな風になるかということで、想い出を引きずって歩く人間になってしまうか、幼さを脱してより深いものを感じ、人間のすばらしさを感じられる大人になれるのかが決まりそうな気もする。その成長を支えるのは、いかにして芸術に触れるかということにかかっているような感じがするこのごろだ。

仮説実験授業では、技術というものの持っているメカニズムを重視する。<キミ子方式>という美術の授業では、発案者の松本キミ子さんの名前が付いているが、本物そっくりに描くという技術を教えることにかなりの時間を費やす。そのために、どの部分をどういうふうに描いたらいいのかどういうふうに見たらいいのかを教える。自由に描かせるということはしない。しかし、その技術を知ると誰でもモデルそっくりだと実感出来る絵を描ける。でも、そのそっくりは、自分の目を通したそっくりになる。だから、ほんのちょっと目の位置が違ったり見方が違ったりすると、それはその人の個性を反映する絵になってくる。

技術を全く考えずに、自由に書きたいものを描いているのは、子供の持つすばらしさを反映する絵になるけれど、成長するとなかなかそういうわけにはいかない。その時に、ちょっとした技術で表現の幅が広がると、自己表現の成長が感じられ、それが何とも言えないいい解放感を与えてくれる。<キミ子方式>は、とても人気のある授業だけれど、その秘密は、この解放感にあるような気がする。

自己表現の進歩には、ちょっとした技術が必要だ。これは技術として解明出来る限りでは、誰にでも習得出来る。このことを発見した仮説実験授業はやはり素晴らしいと思う。教育するに値するものを見つけたんだと思う。これに比べると、芸術を鑑賞することを教えるのは違う難しさを持っている。何を感じるかというのは、感じる方の自由であり、決して正しい鑑賞の仕方を教えるということは出来ないからだ。どんなに有名な芸術でも、その時に何も感じさせてくれなければ鑑賞することは出来ない。

仮説実験授業では、詩や文学の授業をするけれども、その時の教材は本当に優れていると教える側が思えるものを選ぶ。教科書に入っているから鑑賞の仕方を教えるということはしない。教える方がまず感動出来る芸術でなければ、その感動を伝えることが出来ない。だから、仮説実験授業の鑑賞の授業は、作品のすばらしさに依存しているということになるだろうか。

子供の純真さや鳥の自由さは素晴らしいものではあるけれども、それをいつまでも引きずるのではなく、そこから脱して芸術の持つ感性を受け取ることによって大人に成長するという道が、この歌で最後に歌われているように、「一人歩きの季節を見つけだす」ということになるのかなというような連想が浮かんできた。そういう意味では、この歌は、失われた過去の切なさと共に、未来への希望も歌い上げているような感じもする。それでメロディーとしてはけっこう明るい雰囲気を持っているんじゃないだろうか。



今日は、先週に引き続き、また一日だけ掲示板を開放してみます。久しぶりにフォークソングの話題につきあっていただける方は書き込みをしていってください。





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最終更新日  2003.05.18 22:42:06
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