真理を求めて

真理を求めて

2003.05.29
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
仮説実験授業研究会に牧衷さんという人がいる。牧さんは、戦後まもなく学生運動の指導的立場にいた人で、砂川基地闘争の運動などでも活躍した人で、「運動論いろは」(季節社刊)という本を書いている。この本は、運動論をいろはカルタふうにまとめて、様々な箴言を教えてくれている。その中に、

  「見物人のいない議論は殴り合い」

というものがある。牧さんは、この言葉の説明にこんなことを書いている。

「ところで、この討論・論争というものは、対立者と二人だけの場でやってはいけません。議論するからには、相手と自分は意見が違う。これ、敵対的矛盾です。で、一対一でムキになって相手を説得・論破しようとすると、矛盾対立はますますひどくなって、しまいには「この野郎ッ」とゲンコツが飛び交うことになりかねません。」

インターネットというのは、ある意味では見物人はたくさんいるといってもいい。だから、牧さんのこの言葉が正しいとしたら、インターネットでも実りある議論が出来てもいいはずだが、牧さんの言う「見物人」はちょっとインターネットの見物人とは質が違うようだ。ちょっと長い引用をさせてもらおう。

「殴り合いになるのを防ぐにはどうしたらよいか。議論をみんなの前で行うのです。公衆の前で議論する。そうすると、その議論を聴いている公衆の方が、どっちかの意見に味方する。そういう形で議論の勝敗を判定してくれます。それで勝ったか負けたか決まります。そんな時に殴り合いなんかやっちゃったら、殴った方が負けですよ。だから殴り合いにはならない。<見物人のいない議論は殴り合い>--私、腕力にあまり自信がありませんもので、もっぱらこれを拳拳服膺しております。
 仮説実験授業の討論も、まさに見物人を前にして議論を戦わせ、どっちが多数を獲得するか競っておるんですね。だから子供たちが盛り上がる。ずいぶん激しい言葉でやり合いますね。あれを見物人のいないところでやり合ってご覧なさい、子供だって殴り合いのケンカになりますよ。だから見物人のいないところで議論をやっちゃぁいかん。
 --これはつまり、「矛盾を媒介する場」が「二人だけの場」だと矛盾はゲンコツ(=運動を阻害する要因)になり、「見物人のいる場」だと矛盾は白熱した討論(=運動を推進する原動力)となる、ということです。<矛盾の性格は媒介次第>なわけです。
 運動における議論は、見物人を自分(たち)の意見の味方にするために行うのです。まさに多数を争って行われるんです。どっちが多数を獲得するか、「見物人」の多数をどうやって獲得するか、で議論が面白いんです。


長い引用だけれど、その最後の部分が重要だ。牧さんの言う「見物人」とは、議論に参加してくる見物人のことを言うのであって、単に傍観するだけの見物人では、いくらいても議論を盛り上げることは出来ない。インターネットでは、傍観するだけの見物人が圧倒的に多いので、口数の多い方が議論に勝ったように見えるだけという感じになる。「朝まで生テレビ」状態にしかならないんだろうと思う。長い引用になったのは、このことを本当に実感するには、前半部分の記述も必要だと思ったからだ。

インターネットでの議論は、相手を受け入れるという雰囲気があって、自由に口出しが出来るということを誰もが感じていられる状況でなければ、実りあるものにはならないだろう。見ている人間が、口を差し挟むのをためらうような雰囲気では実りある議論は出来ない。これは、インターネットの未成熟というものの一つの表れであろうと思うけれど、今のところは、信頼出来る相手としか議論は出来ないというのが僕の感想だ。掲示板での議論をほとんどの人が嫌うのは、匿名での無責任な放言の方が多いからなんだろう。まずは信頼出来る相手との議論から始め、その輪を広げていくことが、インターネットでも議論が出来る可能性を広げることになるのではないかと思う。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2003.05.29 10:22:04
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

コメント新着

真の伯父/じじい50 @ Re:自民党憲法草案批判 5 憲法34条のロジック(02/03) 現行憲法も自民草案も「抑留」に対する歯…
秀0430 @ Re[1]:自民党憲法草案批判 5 憲法34条のロジック(02/03) 穴沢ジョージさん お久しぶりです。コメ…
穴沢ジョージ @ Re:自民党憲法草案批判 5 憲法34条のロジック(02/03) ごぶさたです。 そもそも現行の憲法の下で…
秀0430 @ Re[1]:構造としての学校の問題(10/20) ジョンリーフッカーさん 学校に警察権力…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: