真理を求めて

真理を求めて

2004.01.01
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今朝は、朝まで生テレビの特別版を見ていたので、少々寝不足気味だ。姜尚中さんの発言が聞きたくて見たのだが、やっぱりさすがだと思うことが多く、6時頃まで見入ってしまった。

朝鮮民主主義人民共和国を巡る議論では、同席していた小林よしのり氏の「どうして国交正常化が必要なのか」という疑問に対して次のように答えていた。もし、国交が正常化されて、国内にいろいろな国の大使館が出来たら、今までのように中国まで逃れて、脱北という行為をする必要がなくなるのではないかということを言っていた。つまり、国交の正常化が、国内を監視する一つのきっかけになり、国そのものが変わらざるを得ないきっかけにもなるという説明だった。

朝鮮民主主義人民共和国については、その国家体制に対する批判がたくさんあるが、その体制が変わらなければならないという点ではどの立場の人も意見が一致する。その変えようとする方法について、アメリカがイラクに対して行ったような武力による方法を選ぶか、国交正常化というような方法で、変わることを相手の内側から起こるように、いわば相手に下駄を預けるような方法を選ぶかの違いがあるだけのことかもしれない。ソフトな方法の方が、日本の損害の可能性が低くなるのではないかと思う。そのための国交正常化だという姜さんの説明は、充分説得力があると思った。

この説明は、小林氏も納得したみたいで説得されていた。姜さんは、在日という立場があるので、どちらかというと北の立場に近いのではないかと思う人もいるかもしれないが、どの立場を代表することもなく、きわめて中立の立場で客観的な論理を展開して語ってくれているように感じる。だから、とても信頼できる人に見える。それで、眠いながらも姜さんの言葉を聞きたくて起きてしまった。

他の出席者は、ほとんどある立場を代表して発言しているという感じがした。ある利害を離れて客観的に論理を展開できないでいるように感じた。姜さん以外では中東の専門家である高橋和夫さんが、唯一利害から離れた発言が出来る人のように見えたが、発言が少なかったのが残念だ。高橋さんは、中東の専門家ではあるけれど、アラブの人々の意見を代弁しているわけではないから、それなりに客観的な立場に立てると思った。

自民党や、それに近い立場だと思われる人からは、「政治的判断」という言葉が出てきたが、これは抽象的に論じている限りでは、権力の側が恣意的に判断することのごまかしに使われているような気がした。ある法律(議論では「イラク特措法」を巡ってだったが)が、現実にそぐわない状況が出てきたときに、法律を越えた判断をするのは「政治的判断」だということで、合理的な判断だという議論があった。

これは、抽象論としては全くその通りだと思う。法律が制定されたときは、ある種の特殊な条件の下に制定されているわけだから、その条件が変われば法律が現実にそぐわなくなる場合はいくらでも想像できる。しかし、「政治的判断」を具体的に行うのならば、法律のどこが現実にそぐわないのかを具体的に指摘して、対処の仕方が正当であることも具体的に説明できなければならないのではないだろうか。抽象論として正しいからといって、いつでも「政治的判断」に正当性があるわけではない。「政治的判断」が間違っている可能性はいくらでもある。

「イラク特措法」を越えて、イラクに自衛隊を派遣するのは一つの「政治的判断」であるという認識は、出席者がほぼ共通に了解していた。そして、それが正当であるという具体的な説明としては、小泉さんの説明は不十分であるということも共通して了解されていた。僕は、ここの部分に自衛隊派遣を世論が反対する大きな理由があるのではないかと感じた。

姜さんはさらに、自衛隊を派遣する以上、その撤収の時のことも考えていなければならないと言うことも語っていた。自衛隊を出すという決断は、それをいつ撤収するかというさらに難しい決断を伴うのだといっていた。これに対しては、自衛隊を出したいという側からは、具体的には語られなかった。どんな事態になったときに撤収を決めるかは、まだ分からない混沌としているということだろうか。出した以上は生半可なところでは撤収は出来ないという言い方はしていた。



それぞれの立場で語られている言葉は、その立場から出てくるものだということを考慮に入れればそれなりに理解できる。これは、賛成したり共感したりするということではなく、この人がこう発言するのは分かるということだ。むしろ客観性のある発言をしたときの方が驚く。学者であったりしたときは、学者としての良心が残っているんだなと感じるところだ。

ジャーナリストという肩書きでありながら、全く中立ではなく、一方の立場を代表しているのではないかと思われるような人もいたが、それぞれの立場の人の発言は、立場を差し引いたものとして理解し、姜さんのように中立を保っている人の発言は、かなり信用できるものとして僕は受け取った。

新年早々イラクでは、またもテロ行為と思われるニュースが飛び込んできた。

「<イラク>自爆テロで5人死亡 新年目前のバグダッド
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040101-00001003-mai-int

反米勢力の攻撃は、テロと呼ぶよりも、単なる凶悪犯罪と呼んでもいいようなくらい、政治的なメッセージ性がなくなってきているように感じる。テロリストの側に、完全な絶望を与えるのも、戦術としては失敗なのではないかという感じさえする。テロリストを殲滅するのではなく、テロリストをテロリストでなくさせるために、政治的な駆け引きというものが必要なのではないかなと感じる。

テロリストを殲滅するための作戦が、新たなテロリストを生み出す原因にもなっているという悪循環はどこかで断ち切れないものだろうか。しかし、田中さんの報告などを読んでいると、権力の側にいる人間は、必ずしもテロリストがいなくなることを望んでいないようなところもある。テロリストがある種のバランスで存在していてくれた方が支配には都合がいいと思っているところもある。そうであったら、我々が願いを込めて議論しても、全く役に立たないということもあり得る。立場によってはそのような思考もあるのかということを、考えの中に入れて事実を見ていきたいものだと思う。

最後に、元日早々次のようなニュースを見て、日本の未来にちょっと暗い影を見るような思いがした。

「小泉首相が靖国参拝へ、元日は初めて
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040101-00000005-yom-pol

中国での反日感情が高まり、朝鮮半島での緊張した状況の中で、協力関係に水を差すようなこのような行為を、わざわざこの時期に行うという外交センスに疑問を感じる。ほとんどあきれてしまうという感じだ。ある立場の人にとっては、靖国参拝の問題は、日本国内の問題であり、それを問題にする中国や韓国の方が悪いという思いがあったりする。しかし、この問題は、日本がいくらそう思っていようとも国際問題になってしまうのが事実だ。おまえが悪い、というだけでは孤立するだけだ。理解してもらうためのなんの努力もしないで、これは俺の自由だといっていれば、アジアでの友人はいなくなる。そして、そうなるとますますアメリカに追従するしかなくなってくる。いや、もしかしたら、アメリカに追従するしかない状態を小泉さんは作りたいのだろうか。そうした方が小泉内閣の延命になるかもしれない。






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最終更新日  2004.01.01 13:50:53
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