真理を求めて

真理を求めて

2004.04.08
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「週刊文春」の4月1日号・8日号には、連続して立花隆氏の緊急寄稿が載せられている。これを論理的側面から批判してみたいと思う。立花氏の方が、一般庶民である僕よりも遙かに多くの資料を用いて論じる条件にあるので、事実に関する批判は難しい。しかし、論理的な側面であれば、たとえ事実を知らなくても、論理の使い方としておかしいという面を批判することが出来る。

坂本竜馬のエピソードだっただろうか、外国語を勉強している仲間の会話を聞いていて、竜馬がその翻訳の文言が論理的におかしいということを指摘したというものがあったように記憶している。竜馬自身は外国語に堪能というわけではなかったようだが、論理がおかしいということから、翻訳自体も間違っているのではないかと類推したというエピソードだった。そして、その類推はまさに当たっていたというものだったように記憶している。外国語を翻訳できなくても、論理的なおかしさは指摘できるということだ。

さて、立花氏は物書きとしてすぐれた人である。そう簡単に論理の間違いを犯す人ではない。しかし、立花氏は、文春を舞台に活躍した人で、文春に対しては客観的な第三者ではない。文春の利益の側に立って発言をする人である。この立場が、立花氏の論理を狂わせる原因になるのではないかと僕は思う。

文春の側に立って発言すれば、結論は最初から決まっている。文春を擁護する結論にならざるを得ない。そうすれば、論理の立て方としては、文春の擁護という結論がまず最初にあり、それを証明するための事実を探すというやり方になる。これは論理の使い方としては逆立ちしている。本来は、手に入る限りの事実をもとにして、その事実相互の整合性を図りながら、妥当な解釈に落ち着くような結論を探すというのが論理本来の使い方のはずだ。知られていない事実が分かったら、いつでも結論が修正されるということも考慮に入れなければならない。

立花氏が、文春擁護をするために拾ってきた事実に論理としての強引さがないかどうか、また都合の悪い事実を無視しているために、その事実と整合性のとれない論理になっていないかどうか、ここをポイントに立花氏の寄稿を批判的に検討してみたい。これなら、あらゆる事実を知らなければならないということはなく、検討のために必要な事実さえ手に入ればいいということになるだろうか。

さて、始めに、文春を擁護していると思われる部分を批判的に見てみようかと思う。まず4月1日号の第一弾の冒頭の部分だ。そこでは、●●というふうに伏せ字が使われているが、これがどうしてかという説明で、「文春の側の見立てでは、先方は常識では考えられない反応を示すから」と書いてある。

これは事実ではなくて解釈の一つであると思うが、曖昧なイメージを利用した解釈であって、誹謗中傷に近いような言い方だ。このような言い方で相手側を批判するのは、ジャーナリストの感覚としてはどうかという感じがする。もっとも、立花氏は、この見解は自分のものではなく、「文春側の見立て」であると注意深く記している。こう書けば一応立花氏の責任ではないという逃れ方は出来るかもしれない。しかし、責任を問われそうな文言は自分のものではないという逃げ方は、ちょっと姑息な手段ではないかと思う。やはりジャーナリスト感覚を疑ってしまう。

「これはテロ行為である。憲法が保障する言論・出版の自由に対して国家の側が加えてきたテロ行為である。」

この言い方に対しては、言葉の意味が正確に使われているのだろうかという疑問を感じる。単に扇情的なイメージをあおり立てるために「テロ」という言葉を利用しているに過ぎないように感じる。「テロ」という言葉の正確な意味は、僕自身もはっきりとつかんでいるわけではないが、この場合に使う言葉だろうかという疑問は大いにある。また、使うなら、はっきりと定義して使わないと、間違ったイメージで伝わるのではないだろうか。言葉に対する厳密さの感覚として、やはりジャーナリストとしてのセンスを疑う。



長い引用になったが、上のような考えは、この問題の基本的なとらえ方の違いから起こるような気がしてならない。立花氏は、事実が大したことではないということで文春を擁護しようとしている。「よくある話だ」「すでに知られている」「いつかは知られる」ということをもとに記事の内容の重要性を貶めている。

しかし、ここで問題なのは、それをわざわざマスコミである文春が暴くということなのではないだろうか。大したことのない事実であれば、どうしてわざわざ暴く必要があるのだろうか。「暴く」ということについての正当性についての言及がなく、事実は大したことではないということだけをことさら言うのは、文春擁護のために拾ってきた事実ではないかと感じるのだ。この文章に続けて、次のような記述もある。

「●●に至るまでには、いろいろ人に知られたくない裏事情があるのかもしれないし、それこそがプライバシーに属することなのだろうが、週刊文春の記事は、そういう裏事情は何も書いていない。」

これは、暗に、あの記事は「プライバシーの侵害」ではないと主張しているように見えるが、はっきりと断定的な書き方はしていない。さすがに、そこまで言い切るには論理的に強引すぎると思ったのではないだろうか。しかし、裏事情を暴露するようなことがあれば、プライバシーの侵害だけではなくて、名誉毀損という問題も生まれてくるのではないだろうか。裏事情が語られていないから「プライバシーの侵害」が問題になるのではないだろうか。

立花氏が、文春擁護の立場を離れて書いている部分は、論理的に真っ当な主張のように感じる。たとえば次の部分だ。

「救済対象の私的価値と救済に伴って社会全体が失う公的価値を比較衡量するなら、失われる公的価値の方が問題にならないくらい大きいからである。」

立花氏が、最初から最後まで一貫してこの立場で論じていれば、論理的な疑問を起こさせない論じ方ができただろうと思う。まあ、その場合でも、文春批判に一言も触れないようであれば、僕は不満を感じるが、擁護さえしなければ、論理的な疑問は感じない。しかし、立花氏としては、文春を擁護せずにはいられない立場にいたのだろうと思う。それが論理的なおかしさを生んだと思う。

立花氏は、文春側の主張を、「真紀子の長女ないしその配偶者が、後々田中家の政治的後継者となる可能性があるから、その●●問題も公共の利害に関する事項と見なした」というものを、「いかにもとってつけたような主張である」と、これに対しては少し批判的に書いている。しかし、この批判は次の主張につなげての批判であることを考えなければいけない。

「文春が、この記事の眼目は、真紀子の政治家としての適格性を問うことにあったのだと主張していたら、この争いにおいて文春側が破れることはまずなかっただろうということだ。」

あの記事を実際に読む限りでは、田中氏の政治家としての適格性を問う内容だとは思えなかった。単なるゴシップとして興味本位に書かれただけのものとしか思えなかった。立花氏が主張するような記事であれば、そう主張するのが正しいが、そう主張してもそれを受け入れられないような記事だったというのが本当のところではないかと思う。

立花氏は、実際の記事と離れた一般論としては正しい主張を随所に入れているが、実際の記事が、その正しい一般論に相当するものだという証明はいっさいしていない。しかし、立花氏の主張が論理的に正当性を持つのは、まさに問題の記事が、政治家としての田中氏に関する公益性のある情報であるということが証明されなければならないのではないかと思う。その証明がなく、一般論としての真理をいくら並べても、それはイメージとして文春が正しいというイメージを作り出すための、文春擁護にしかならないのではないか。次の引用などもそれを強く感じる主張だ。



この主張は、正しいことがちりばめられていながら、結果的に文春を擁護するものになっているという、実に巧妙な文章だ。確かに、記事は「出版差し止め」に値するほどの重大性はなかった。しかしそれだからといって、多少プライベートな領域に及んだだけとか、公共の利益目的の報道であるとか、プライバシーの侵害が低かったかのようなイメージを与える言い方には疑問を感じる。

ここまででかなり長い日記になってしまったので、残りの部分の批判に対しては、またこの次にしよう。





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最終更新日  2004.04.08 09:45:33
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