December 8, 2010
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20代前半だったわたくしは、その頃今で言う「フリーター」でしたから、バイトが休みの前日は友人で「グランド富士」の時間割引日本酒を目一杯呑みながら、その日バイト中の友人の店の開店を待っておりました。
開店時間後は、期限切れボトルで作ってあるいくら呑んでも減らない「魔法のボトル」のあるパブ、スナック、居酒屋などを梯子して、ベロベロになるまで深夜のススキノをうろついたものです。

その頃は豊平区平岸に住んでおりましたから、歩いて帰るのは辛いので、ススキノに向かう時には「地下鉄」で帰る!と、強く心に誓っているのですが、なにせ「通し代」だけで呑めるわけですから、そんな誓いなんてものは守った事は皆無であると記憶しております。
今考えますとなぜそんな普通人並な事を考えたのか分りませんが、若さにまかせて自由な生き方をしていることにおかしな優越感を持っていたとはいえ、実のところはろくな稼ぎもないフリーター暮らしに少しは不安を持っていたのかも知れませんね。

その日もいつもの仲間達で呑んでいたのですが、気がつくとすでに0時を過ぎ「今に俺たちの時代が来る」「そうだ!探偵をやろう松田優作になるんだ」「焼ソバが儲かる」なんてわけの分からない事をバカでかい声で話しながらも、すでに皆完全な海老蔵状態でしたから反対方向に住む友人達と分かれて松坂屋前に歩いて行くと、タクシー乗り場にはすでに長蛇の列が出来ておりました。

残金によっては1時間かけて歩いて帰らなくてはなりませんので、ポケットに手を入れて確認すると小銭の他に“がさがさ”した嬉しい感触がありました。
何とか1,000円以上はあるようでしたから列の後ろに並んだのですが、しばらくすると、数ヶ月は切っていない暑苦しく肩まで伸びた髪にぽつぽつと雨が降りてきました。
周囲の待ち客がざわめくのを横目に、ハンフリーボガードを気取ってちらっと空を眺めただけで無視を決め込んでいたのですが、どんどん強くなる雨足に付け焼き刃のハードボイルドでは我慢することが出来ずに、列を離れて松坂屋の玄関前の雨の当たらないスペースに座り込み雨宿りをしておりました。

その日は朝から雨模様でしたから、待ち客は傘を持っている方が多く、待ち客の人数は変わらないのですが広げた傘のせいで列は先ほどよりも長い列になり、最後尾はわたくしのはるか彼方後方へいってしまいました。

「あれまぁ…こりゃぁいつまで待つことになるのか分らないなぁ…まぁ良いかぁ~ゆっくりと待つとするか。明日はバイトもないし…」と、完全に座り込んだのがよくありませんでした。

幸せな時間を過ごしていたわたくしの真っ白な頭の中に、突然強い日差しと喧噪が割り込み、現実世界に引き戻されたわたくしは一瞬で全てを掌握いたしました。

伸び放題の髪に小汚いTシャツ、Gパンでがっくりと首をうなだれてススキノのど真ん中松坂屋デパートの正面玄関前に座り込んでいたわたくしは、朝の通勤時間が終わり「嘲笑」と「哀れむ視線」の気配が少なくなるまで、小一時間も顔を上げる事は出来ませんでした。

でもこの日は「地下鉄」で、平岸一の安アパート「えぞ松荘」に帰ることが出来ました。

まぁ日付は変わっておりましたが…“初志貫徹”に間違いはございません。





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Last updated  December 8, 2010 12:15:25 PM


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