名無し人の観察日記

名無し人の観察日記

2023.07.29
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先日 別の日記 でアホが 「日本の国民所得が低いのもジェンダー差別が克服できないのも世襲政治家のせい!」 みたいなアホな事を言ってるのにツッコミを入れましたが、その際私は限界おリベ様方が日本がジェンダー差別の国と言う時の最大の根拠であるジェンダー・ギャップ指数について 「世襲政治家批判よりも穴だらけのゴミ指数」 と言いました。

今回 アホがめでたく元ネタにしてくれた ので、ツッコミを入れつつ ジェンダー・ギャップ指数がいかにゴミのような使えないものであるか について述べていきたいと思います。

125位の理由
続・125位の理由

元ネタは東京新聞の駄ポエム「本音のコラム」より斎藤美奈子ですね。 これにジェンダー・ギャップ指数とかまさに数え役満といえましょう。

日本におけるジェンダー差別というものについて、実際のところ限界おリベ様方はまともに興味など持っていません。 興味があるのは

「いかに日本の邪悪っぷり後進国っぷりを揶揄し糾弾しつつ、それを指摘できる賢く意識高い我様カッコイイアピールができるかどうか」

だけです。実際ジェンダー・ギャップ指数というのはスイスの世界経済フォーラムという財団が発表しているものなのですが、これのゴミっぷりはこれから語っていくとして、ジェンダーに関する指数は他にもいろいろあると言う事を限界おリベ様は知らないか、知っていても見なかった事にします。 なぜなら日本を糾弾できるネタに使えないからです。
例えば国連が発表しているジェンダー開発指数というのがあります。人間開発の代表的な側面である健康、教育、生活水準から男女格差を測定しているもので、2022年度の日本の順位は76位でした。 G7ではイタリアよりも高く6位になります。
同じく国連が発表しているジェンダー不平等指数というのもあります。こちらは健康、エンパワーメント(政治への参画・高等教育の水準)など、ジェンダー・ギャップ指数と重なる分野でも測定する指標ですが、 日本は何と22位。G7ではフランスとイタリアに次ぐ第3位になります。
ジェンダー開発指数と比較するとイタリアと順位が逆転していますね。 このように似たような分野の指数を求めるにも、調査方法や重視する分野によって結果は大きく変わってきます。 ではなぜ限界おリベ様がジェンダー・ギャップ指数に拘るか……と言えばもうおわかりですね。

日本の順位が極端に低く日本たたきの格好のネタだからです。

ではなぜそうなるのかに言及しつつ、駄ポエムにツッコミを入れていきましょう。

>日本の後進性を思い知るにはせめて上位20力国を見ておかなくちゃ。

と言う事で上位20カ国が紹介されているのですが、 ここで「おかしいな?」と思った人は普通の感性とまともな常識を持っている人です。

>北欧諸国が最上位(1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド)なのは納得の結果として

まぁ北欧諸国は 限界おリベ様にとってのカナン、約束の地、シャングリラ、アルカディア ですからね。上位に来るのを疑ったりはしないでしょう。とは言えこれらの国は先進国ではありますし、男女平等の国と言うイメージはあるかもしれません。
その下の国々はどうでしょう。


>7位にニカラグア(中米)、8位にナミビア(アフリカ)がランクイン。20位まで見ると、12位ルワンダ(アフリカ)、14位コスタリカ(中米)、16位フイリピン(アジアでは最上位)、20位南アフリカ。途上国のイメージがある中南米諸国やサハラ以南のアフリカ諸国はじつは欧州各国にも迫る上位の常連国なのだ。

特に12位のルワンダ。実はこの国は良くジェンダー・ギャップ指数のおかしさを良く表した国として知られています。 ルワンダは女性の社会進出が進んでいる国とされ、国会議員の6割が女性です。
ですがこうなったのは同国で1990~94年に内戦があり、 極めて大規模なジェノサイドが行われたため です。内戦の犠牲者は50~100万人、同国人口の1割から2割に及び、 これによって働き盛りの年代の男性が大量に文字通り消失しました。
結果として、 女性が社会進出しなければ国が成り立たない、という状況に陥り 、議会のクォータ制をはじめとする女性の社会進出を促進する政策が実行された結果が今のルワンダです。
ここで注目すべきは「国会議員の6割が女性」と言う事 。ジェンダー・ギャップ指数が男女平等を示す指数なら、これは「女尊男卑なのでは?」と扱われ順位が下がってもおかしくないはずですが、そうはなっていません。
ぶっちゃけていうとジェンダー・ギャップ指数というのは

「男性優位には厳しいが、女性優位の場合はそれがどれほどヤバい状況でも男女平等が実現されているとして扱う」

と言うアホみたいな指数なのです。それを表しているのが 実は一位常連のアイスランドです
アイスランドは主要産業が漁業で、男性の大半は高等教育を受けず漁師になる道を選びます。 同国の高等教育における男女比は2倍近く女性優位(女性進学率94%:男性進学率51%)の状態にあります 。敢えて極端に言うなら

「男は中卒で漁師になり、女は高等教育を受けて専門職に就く」
「男はみんなブルーカラー、女はみんなホワイトカラー」

というのがアイスランドの教育と労働市場の実態ですが、 ジェンダー・ギャップ指数の調査方法ではこれが女性の高等教育と社会進出が進んでいると見做されてエンパワーメントの部門が高得点になります。 ちなみに男女どっちの割合が高くても点数が下がるジェンダー開発指数で見ると、アイスランドは76位、ルワンダは92位となり、 日本よりも下に来てしまいます。

一応断っておくと、アイスランドでは漁師の収入が極めて高いので、特に女尊男卑の国と言うわけではありません。 同国の事情がジェンダー・ギャップ指数が高くなりやすいものだ というだけです。

このような傾向は健康面の調査にも現れていて、ジェンダー・ギャップ指数は「男女の健康寿命の割合を単純に順位付けしている」という方法でスコアを付けるのですが、一般的に女性の方が長生きなので、日本はこの分野で1.048(女性の健康寿命が男性より1.048倍長い)というなかなかのスコアが付きます。
ところが 日本の健康寿命は男女ともに70歳を超えるのに対し、それが40~50代にとどまっても女性の健康寿命が男性の1.09倍以上あるアフリカ諸国の方が良いスコアが付きます。 こんなものが男女平等の何を表しているのでしょうか。アホらしくなりませんか?

ジェンダー・ギャップ指数がなぜこんな事になっているのかは良くわからないのですが、 欧米のラディカルリベラリズムは割と北欧発祥な事が多いので、それを理想とする人たちが北欧が優位に来るように指標を決めた結果 として、本当に男女平等かどうか疑わしい国が上位入りするような仕組みになっている疑いがあります。


>理由は簡単。国会議員の選挙制度にクォーター制を導入する、平等に向けた法律を整備する、教育プログラムを充実させるなど、これらの国々は特に2000年代以降、ジェンダー平等政策を積極的に推し進めてきたからだ。そしてその間、日本は何の手も打たぬどころかジェンダー平等にむしろ背を向けてきた。

これには佐原さんも諸手を打って賛同しており

>手っ取り早い対策としては「国会議員の選挙にクォーター制を導入する」を、先ず実行するべきと思いますが

とか言ってますが、そもそも 日本では女性が男性に比べて昇進意欲が低い傾向がある 事を前提にしなければいけません。

女性の昇進意欲を左右する基幹的職務経験 (大和総研:18年11月13日)

>労働政策研究・研修機構が2016年に実施した「企業の人材活用と男女正社員の働き方に関する調査」によると、総合職正社員の男性の56%は課長相当職以上への昇進を希望しているが、 女性は28%にとどまる

さらに日本は 女性の幸福度ランキングでも上位に来る国で、女性の方が男性より幸福度が高い傾向がある事が世界価値観調査の結果から分かっています 。日本ではジェンダー・ギャップ指数を上げる要素として非常に重視される 女性のエンパワーメントを強化しようという社会的価値観が弱い のです。

つまり、 日本でクォーター制の導入などで形式的に男女比を同率に近づけようとしても、ジェンダー・ギャップ指数は上がっても女性の幸福に直結しない わけです。はっきり言うとジェンダー・ギャップ指数を向上させようという意見は、日本においてはこの指数を良く知らない人たちが素朴に男女平等を実現すべきと考えてる以外は

・とにかく日本を劣った国とし、その理由を自民党に求めて敵を殴りたい限界おリベ様
・男性を蔑み女尊男卑社会を実現したいアレな自称おフェミ様

のどっちかなのです。 佐原さんは前者であり、斎藤は前者と後者の混合です。 「続」の方になるとその傾向がはっきりしてきます。

>02年、山谷えり子衆院議員(現自民党参院議員)が「行き過ぎた性教育」を批判。厚労省肝いりの教材が自主回収に追い込まれた。この頃から国と自治体は当時ジェンダーフリーと呼ばれたジェンダー平等教育への圧力を強めていく。

山谷議員が性教育に批判的なのはカトリックだから です。カトリック、特に保守派は性教育に対して非常に批判的で、フィリピン(ジェンダー・ギャップ指数16位)でも 性教育の教材配布がカトリック教会の反発で回収されたなんて事件がありました。
でもそんな事は斎藤は気にしません。 重要なのは山谷議員が自民党である事 です。 自民党なのでいくらでも殴って良いと思っているから、山谷議員が性教育に対して保守的な思想を持つ背景は一切無視 です。


>保守論壇、旧統一教会などの宗教団体、日本会議などの政治団体とも連動したこうした動きが、ジェンダー政策全体に及ぼした悪影響は計り知れない。

ぶっちゃけ関係ないです。上にも書いたようにジェンダー・ギャップ指数は

「北欧を理想化し北欧が上位に来るように女性優位の国ほど順位が上がるようにした、不平等かつ恣意的な指標を選んでおり、男女平等を表したものではない」

からです。本当に保守論壇(笑)がジェンダー政策全体に悪影響を及ぼしているなら、 ジェンダー開発指数やジェンダー不平等指数も下がり、女性の幸福度も下がるはず です。複数の指数の多くが日本はそれほど男女平等という面で悪い国ではない事を示している中に 突出して順位が他と違う指数があるなら、おかしいのはその指数 です。 それを有難がる連中もおかしい し、不純な動機でやっているようにしか見えませんね。





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Last updated  2023.07.29 03:45:46コメント(0) | コメントを書く


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