女将けい子のブログ山代温泉　小いきな宿　紅柿荘（ｺｳｼｿｳ）

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2010年11月25日

美味しい加賀の野菜が！

(7)

カテゴリ：酔鳳作紅柿荘想ひ出石物語

　　　お帰りなさい

今日は11月ももう終わり？と疑いたくなるような暖かい1日でした。

お客様を加賀温泉駅へ送り、帰りに私はJA元気村へ行き、

朝食に使う煮豆の大豆1年分を15Kｇをかってきました。

まだ足りないので今度また　買ってきます。

やはり地元で取れた大豆で煮たまめは味が最高です。

元気村は今日も大根　キャベツ　人参　葱・・・

沢山の野菜がいっぱい、それを求めに買い物客も沢山いました。

先日からテレビで野菜が高いとの事ですが

加賀の農家の方は美味しい野菜を沢山作っています。

酔鳳さんの紅柿荘物語、！

加賀山代温泉紅柿荘　想い出石物語　失くした切符

[ 物語 ]

　北陸本線加賀温泉駅の到着ホームと改札を２往復して杉田京子さんは「仕方ないわ」と、改札口脇の事務室の駅員に告げた。

　「あの、切符を失くしちゃったんです。東京から新大阪経由でここまでです。おいくらになりますか」

　「あ、ひょっとして今到着したサンダーバード号ですか」

　「そうです。座席指定で、確か６番のＡ席でした」

　「それでしたら、ここに届いていますよ。ホラ、あの山代温泉の紅柿荘の女将さんといらっしゃる男性の方が拾われたと言って」

　「え、そうですか。私も今日は紅柿荘なの」

　京子さんの顔がパッと明るくなると女将さんと眼が合った。

　「あの、杉田京子さんですか。紅柿荘の女将です」

　「そうです、杉田京子と申します」

　「ああ、よかったわ。お姿が見えないんで心配していましたのよ」

　「切符をなくして改札とホームの間をウロウロ探していたの。諦めて駅員さんに話したら、そちらの方が拾って届けて下さったと言うことで助かりました。有難うございました」

　「そうですか、私もそれらしい方に声をかければ良かったと反省していましたが、まあ、とにかく良かった。私は田所亮一です。よろしくお願いします」

　田所亮一は４０代半ばのガッシリとした体形と風貌をしている。

　女将さんは二人を乗せて駅から紅柿荘に向かった。

　紅柿荘１階のカフェ　レッド。

　食事をすませた田所亮一がカウンターに腰かけて水割りグラスを傾けている。

　女将さんと「山中塗」の話で盛りあっている所に京子さんがはいってきた。

　「あら、楽しそうだわ。隣によろしいかしら」

　「ええ、どうぞ、どうぞ。前と横に美人がいてボカア幸せです」

　田所が満面の笑みを浮かべて真っ赤になっている。

　京子さんは女将さんも見とれるくらいの美人。

　「あの、不躾な質問なんだけど、田所さんのお仕事はなんなの？」

　「ハハ、そうは見ないらしいんだけど、大学病院の勤務医なんです。高校時代の友人はボクのことをドクター・ブッシュって呼んでいるんですけど、まさにその通りで、オペをやるのが怖いから内科医に転向したんです」

　「あら、素適なお仕事じゃない」

　「いやあ、安月給ですから本を買ったり山登りやスキーに行ったらアッというまになくなりますよ。おかげで、４０半ばになろうかってのに、未だに独身です」

　「キャッ、素適ッ！私も３２ににもなろうかってのに独身なの。フリーのバイリンガーをやっているんだけど、なにしろ相手はオジサマと外人さんばっかりだから出会いのチャンスがないのよ」

　なんだか素適なカップルができそうだと微笑む女将さん。

　「そうですか。ボ、ボクでよかったら、お付き合いください。あの、薄給のドクター。ブッシュですけど、一緒に山登りに行きましょう。あ、好きですか、登山」

　「ええ、山は大好きよ。登山家も好きよ」

　「そうかああ、よかったあ」

　次の朝、紅柿荘の玄関の新しい「想い出石」。

　『私は勇気をもって自分を信じて生きて行きます。もう死ぬことなんて考えません。京子』

　『山もいいけど・・・京子さんはもっと素適だ。亮一』

　二つ並んだ想い出石を見ている女将さん。

　「なんだよ、どうしたんだい、女将。嬉しそうに」

　「うん、しあわせな気分なの。ふふふ」

　女将さんは板長の胸に傾（かし）げた頬を押しつけた。

　初冬を迎えようとする紅柿荘の玄関に幸せな時が流れる。

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