悦楽Days~精神的裸体宣言~

悦楽Days~精神的裸体宣言~

2012.07.11
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1日まで普通に働いていた父親が末期癌と診断された。
突然の弟からの電話。
だるさと黄疸が出ての受診だった。
肝臓の5分の4はもう癌に冒されていて、手術はおろか治療すら意味をなさない。
あとはもう死を待つのみ…。
余命も言えないレベルで、「ひょっとしたら明日、明後日」「もって数日」。

はっきり言って、父親のことは好きでも何でもない。
大きな何かがあったのか、小さなタブーが重なってそれが嫌悪感を形成したのか、それもわからない。
ただ、物心ついた時から「好き」という感情に欠けていた。むしろ嫌いだった。

「嫌だ」と泣いて逃げようとも、父は写真を撮った。
その写真は、数年後引き出しで発見し、ネガごと捨てた。
思い出すのはこんなこと。
バージンロードを共に歩くということも想像しただけで身の毛がよだち、
狭い会場であることを幸いとしてすぐに断り夫と歩いたほどだった。

でも、悲しかった。
「ふつう」に悲しめないことが悲しかった。
周りの友達のように、尊敬して、もっと頼ったり、甘えたりしてみたかった。
どうしたら取り戻せたのか、何をしたら過去の本当のことがわかるのか。
わからなくってぐしゃぐしゃになって泣いた。

病院へ行った。

金目のものは既に売って手元にお金がないくせに、ただ一方的に言いたい放題の父親が不快だった。
母を遺すのにその後の生活を心配しないのか?
心配した気持ちが少し醒めた。

その場では受け入れるしかできない母親は、鬱憤をわたしにぶつける。
「自分は健康診断なんか受けたくない、何か見つかるよりも手遅れになって死にたい」とわたしに言う。

昔からこれを聞かされてきたから、彼女をひとりにするのが怖かった。
彼女の居場所を奪うまいと、何もできない駄目な娘でいようと決めた。家事は一切しなかった。
夜、静かになると彼女が死んでいないか、そっと階下を覗いた。
そんな過去がまたよみがえる。

家族の蜜月って実は短いなと思った。
結ばれ、子を成し、せいぜい何年だろう。
子どもは少しずつ離れていく。
やがて巣立ち、夫婦が残る。
そして、死ぬときは皆ひとりなのだ。
それを思うと、家族の終わりって悲しいな、自分の作った家族にもそんな時が訪れるのか、と
別の思いがこみ上げる。

たった数日でたくさんの感情に翻弄された。

父親は幸せな人生だ。
好き勝手やって、お金の心配もせず、慣れた自宅で命を全うすることになるだろう。
母の手によって訪問してくださる先生の手配も終えた。
あとは、娘に会わせてやりたい…。

いろいろあったけどそう思う。






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最終更新日  2012.07.11 19:36:47
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