趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

May 1, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】同じ帝の御時、躬恒(みつね)をめして、月のいとおもしろき夜、御あそびなどありて、「月を弓張といふは何の心ぞ。其のよしつかうまつれ」とおほせたまうければ、御階(みはし)のもとにさぶらひて、つかうまつりける、

てる月を 弓張としも いふことは 山べをさして いればなりけり

禄に大袿かづきて、又、

しらくもの このかたにしも おりゐるは 天つ風こそ 吹きて来つらし

【注】
・躬恒=三十六歌仙の一人、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)。宇多・醍醐天皇に仕え、官位は低かったが、和歌に優れ、紀貫之らと共に『古今和歌集』の撰者をつとめた。
・弓張=弓形をしている月。特に、陰暦七・八日ごろの月を「かみの弓張り」、二十三、四日ごろの月を「しもの弓張り」という。
・大袿=平安時代に禄・かづけものとして賜った袿で、裄(ゆき)丈(たけ)を大きめに仕立てたもの。着るときは普通の大きさに仕立て直す。
・しらくも=空に浮かぶ白い雲。また、白い大袿のたとえ。


夜空に照る月を、弓張とも言うことは、山辺を目指して入る(山のあたりをめがけて射る)からなのだなあ。

天皇に頂いた褒美の大袿を肩に掛けて、又、次のような歌を作った、

白雲がちょうどこちらの方におりてきてとどまっているのは(白雲のように白くてふわりとした大袿が、私の肩に高い御殿からくだってきてのっかっているのは)、空の風がまさに吹いて来たらしい。







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Last updated  May 1, 2011 10:31:59 AM
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