趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

May 2, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】同じ帝、月のおもしろき夜、みそかに宮すん所たちの御曹司どもを見ありかせ給けり。
【注】
・宮すん所=御息所。女御・更衣など天皇の妃。
・曹司=宮中などの部屋。
【訳】同じ醍醐天皇が、月の美しかった夜、そっとお妃さまがたの御部屋を見ておあるきになったとさ。

【本文】御供に公忠さぶらひけり。
【注】
・公忠=三十六歌仙の一人、源公忠。官は右大弁(太政官の三等官)に至り、滋野井の弁と呼ばれた。
【訳】おともには、公忠がお仕えした。


【注】
・袿=女性の普段着る上着。
・一襲=衣服を数える語。一着。一枚。
【訳】ところが、あるお部屋から、色の濃いうちきを一枚来ている女で、上品で美しい女が出てきて、ひどく泣いたとさ。

【本文】公忠を近く召して、みせたまひければ、髪をふりおほひていみじう泣く。
【訳】天皇は公忠を近くにお呼び寄せになって、ようすを見せなさったところ、女は髪の毛を振り乱してひどく泣く。

【本文】「などてかく泣くぞ」といへど、いらへもせず。
【訳】「どうして、こんなに泣くのか?」と言ったが、返事もしない。

【本文】帝も、いみじうあやしがりたまひけり。
【訳】天皇も、たいそう不審にお思いになったとさ。

【本文】公忠、



【訳】〔そこで〕公忠〔が作った歌〕

なにか考えているのであろうその心の中はわからないけれども、こんなにひどく泣くのを見るのはつらいものだなあ。

とよめりければ、いとになくめでたまひけり。






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Last updated  May 2, 2011 10:38:41 AM
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