趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

May 5, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】三条の右大臣のむすめ、堤の中納言にあひはじめたまひける間は、内蔵(くら)のすけにて内の殿上をなむしたまひける。
【注】
・三条の右大臣=藤原実方。内大臣藤原高藤の子。和歌・管絃に秀でた。《小倉百人一首》「かくとだにえやはいぶきのさしも草さしもしらじな燃ゆる思ひを」の歌で知られる。(873~932年)
・堤の中納言=藤原兼輔。三十六歌仙の一人。賀茂川の堤のそばに邸宅があったので堤中納言と呼ばれた。。《小倉百人一首》「みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ」の歌で知られる。(877~933年)
・あふ=結婚する。
・内蔵のすけ=内蔵寮の次官。内蔵寮は、中務省に属し、宮中の宝物、天皇や皇后の装束、祭式の奉幣、佳節の御膳などを掌る役所。
・内の殿上=内裏の殿上の間で、日直や宿直をして警備や雑務、節会などの宮中行事の供奉、時刻の奏上、天皇・皇后の命令の伝達などを行った。
【訳】三条の右大臣の娘が、堤の中納言、藤原兼輔様と結婚したてでいらっしゃった頃は、兼輔様がまだ内蔵のすけにて内の殿上をなむしたまひける。

【本文】女はあはむの心やなかりけむ、心もゆかずなむいますかりける。


【本文】男も宮づかへしたまうければ、え常にもいませざりけるころ、女、

たきものの くゆる心は ありしかど ひとりはたえて ねられざりけり

かへし、上ずなればよかりけめど、えきかねば書かず。
【注】
・心ゆく=満足する。
・ひとり=「一人」と「火取り」(香炉)の掛詞。「たえて」は、「ざり」と呼応する「まったく」の意と、火が消えての意を含む。
・くゆる=「燻る」(煙が立つ)意と「悔ゆる」の掛詞。
【訳】男も宮仕えなさっていたので、常には女の所に通うこともできなかった、そんな頃に、女が作って贈った歌、

たきものの香のように、あなたとの結婚を後悔する、くすぶる気持はあったけれども、一人寝は寂しくて全く寝ることができなかったわ、燃える心の火もあなたが来なかったから絶えてしまったわ。

それに対する男の返歌は、歌の達者だから、内容は、さぞ良かったのだろうが、聞くことができなかったので、ここには書かない。







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Last updated  May 5, 2011 09:22:53 PM
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