趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

May 6, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】又男、「日ごろさわがしくてなむ、えまゐらぬ。かく、いそぎまかりありくうちにも、え障り来ぬことをなむ、いかにと、限りなく思ふたまふる」とありければ、女、

さわぐなる うちにも物は 思ふなり わがつれづれを なににたとへむ

となむありける。
【注】
・男=前話の藤原兼輔を指すのであろう。
・さわがしく=忙しい。しなければならない用事が多い。
・えまゐらぬ=参上できない。「え~ぬ(打消助動詞「ず」の連体形)」で、不可能表現。
・まかりありく=あちこち移動します。「まかる」は、他の動詞のまえについて、丁寧な改まった言い方にする。
・あり=引用の助詞「と」を受けて「言ふ」「書く」「仰す」「のたまふ」「問ふ」「答ふ」その他の語に代えて用いる。

・さわぐ=忙しく立ち働く。
・つれづれ=所在ないこと。また、物思いに沈むこと。
【訳】また、男が、「つね日頃は、何かと身の回りでしなければならない用事が多く、あなたの元へ参上できない。このように、用事で忙しくあちこち歩きまわっていますあいだにも、あなたのほううでは、差し支えがあって来られないことを、どんなにご不満に感じておられるだろうかと、このうえなく恐縮いたしております」と言ってきたので、女が、

あなたが忙しく立ち働く内裏においても私のことを心配はしているそうだ(でも、私のほうも。そのあいだ、あなたが来ないから思い悩んでいるのだ)、わたしの、あなたが訪ねて来ないあいだの所在なく物思いに沈むこの気持を、何にたとえようかしら(いや、何物にもたとえようがありませんわ)。






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Last updated  May 6, 2011 11:12:32 AM
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