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2006/06/13
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カテゴリ: 個人図書館
耳嚢(中)




●根岸鎮衛
●岩波文庫
●読書中


面白い。
怪談や不可思議ごとや日常の小耳に挟んだこと、上様の徳のこと、いろんな話が入っています。
原文で読むといっそう味わいがあります。

江戸時代はまだ「不思議」が毎日の中に普通に漂っていたんだナァとよくわかります。
現代だったら絶対「恐怖体験」「あなたの知らない世界」とおもしろ恐ろしく括られそうですが、江戸はまだ妖怪やらが闇の中に暮らしていたので、ごく淡々と書いてあります。

先日読んだのはこんな話でした。
 祐筆をしている役人のところにひとりの旅僧がやってきて言うには、今度よんどころない書の会が行われるので、あなたの右腕を二、三日貸して欲しい。
祐筆は貸すといってどう貸せるのかと首を傾げたが、僧は「いいからいいから」というばかり。
 僧が去ってから、さて筆を取ろうとしたがどうしたことか右腕がピクリとも動かない。

アラ不思議やと二,三日たった頃、かの僧が戻ってきた。
おかげで助かりました、お礼にこれをさし上げます、と僧が記した書の掛け軸を差し出された。
「これをかけておけば、火災があっても必ず免れます」
 言われたとおりに掛け軸を床の間にかけておいた。その後何度か近隣で火事があったが、不思議とその家だけは焼けなかった。
 ある時、掛け軸を床の間からはずして土蔵の中にしまったところ、火事がおきたときに家居は全部焼けたものの土蔵だけは焼けずにいたという。

これでこの話は終わりです。
それがどういう不思議だったかとか、何の仕業かとかは全く追求しない、それがこの本のスタイルです。
ただ、こういう話を聞いた、こういうことがあったと人に聞いたことをそのまま書き記しているだけです。
でも、それがいいんです。
こういう不思議は江戸にとっては日常茶飯事だったようですから。騒ぐ必要がないんです。

もう一つ、昔ぱらっと見たときに印象に残っている話があります。妖怪や不思議系ではないのですが、これも淡々と書いてあるくせになまなましいです。細部は覚えていませんが次のような話です。


ひとりは槍で、ひとりは刀。
 そのうち、槍で相手の胴を貫いた。槍は背中を突き抜けている。
勝負あったかと見えたが、なんと槍を胴に突き刺したまま、槍を貫かせながらその侍が一歩一歩と向かってくる。
 槍を持っているほうは、相手がずんずんと近づいてくるのに驚愕しどうしたらいいかわからない。
相手はもはやすぐそばまでやってきてしまった。

はっとして槍を捨てると、脇差で斬りつけて、相手は背中から槍を長く突き出したまま絶命した。

と、こういう話。
うまく書けなかったのですが、この、腹に槍を貫かせて前進してくるってところが…。
ずぶずぶずぶっと。

なんだか、面白い。
岩波、いいわ。






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最終更新日  2006/06/13 09:04:56 AM
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