mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年02月22日
XML
小さな暗い部屋、窓一つ無く灯りは蝋燭が一つのみ。
壁や天井にはカビがはびこり、匂いが鼻につく。

アルテミスはその部屋の片隅にしゃがみこむ小さな少女を見つけた。

「お姉ちゃん誰?」

不意を襲った小さな少女の言葉にアルテミスは驚愕した。

「私が見えるのか?」アルテミスが狼狽し少女に声をかける。

「え?他の人には見えないの?突然現れたからちょっとビックリしたけど見えるよ」

少女が微笑みながら言葉を返す。

「でもね、此処は誰も入っちゃいけないんだよ。長老さんに怒られるよ」

「普通の人は此処に入れないもんね」

「閉じ込められてるのか?」

「う~ん、月に一回ね赤い満月の夜があるの」
「私はその満月の夜に生まれたから、呪われちゃったみたい。だから毎月この日は外に出ちゃいけないの」
「でもね寂しくなんかないのよ。私にはこの子がいるから」

いかにもやせ我慢している顔で、自分に寄り添う一匹の子犬を撫でる。

「コロ、お客さんだよ。君にも見えるかい?」
「この子、コロチュウって言うの。生まれた時から一緒にいるの」
「・・・私のたった一人の友達かな」

少女が寂しい気持ちを押し殺し、元気に笑いながら友達を紹介した。
その小さな子犬は、柴犬のような茶色の毛並みとくるりと巻いた尻尾が特徴であった。


丁度真中で右に透き通る真紅、左に吸い込まれるような漆黒で形成された宝石。
その美しさは思わず息を呑む程であった。

「お姉ちゃん、どうしたの?幽霊でもコロが怖いの?」

「あ、いや。可愛い犬だな」

「ありがとうお姉ちゃん。お姉ちゃんは優しい人ね」


「初めてあった人を虐める理由なんてあるのか?」

「わからない。でも私を虐めない人はいないよ」
「全然知らない人でも虐めるから。多分、私を見ると人は虐めたくなるんだって思ってた」

アルテミスは平然とした表情で話す少女を見て自分の過去を重ねていた。

_私はこんな表情で人と接していたのか。
_これではまるで人形だ。

「何故抵抗しない?閉じこもっていては相手の虐めを肯定しているのと同じだ」
「君が抵抗の意志を示さないと状況は変わらないよ」

「そんな事、随分前に諦めたわ。それに理由は私自身ではなく私が生まれた日なんですもの」
「生まれた日までは自分で変えられないわ」

コロチュウを撫でる少女の手には無数のためらい傷があることにアルテミスは気づいた。

「傷が気になる?人って中々死ねないよね」
「元々臆病だから死を考えるのだけど、その臆病な自分が死ぬなんて怖いこと・・・」
「最初は自分でもわからないから行動するの。でも血を見ると臆病な自分が目を覚ますの」

「人が嫌いなのかい?信用できないのかい?」

「他人だけじゃないわ。閉じ込める長老も嫌い」
「面倒見てくれるニーナも嫌い、表面だけの妹達のルジェも雪音も嫌い」
「嫌い、嫌いこの世界も、あの赤い月はもっと嫌い」
「でも、一番嫌いなのは臆病な自分…」

「辛かったのね。でもあなたは人や自分が信用できないくせに」
「心の奥底で、他人を信じたいと望んでいるのね」
「名前はなんて言うの?」

「私はトリーシャ。父や母も生まれた時からいないのに名前だけあるなんて変なものね」
「あ、妹達とは血が繋がっていないの。ただ一緒に育てられてるから妹なんだって」
「大人の都合ね」

冷静を装うトリーシャの目には涙が浮かんでいた。

赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~

『第40章 呪われた血』

ザードフィルの研究室と思われる部屋にフクチ、楸、花火の三人がいた。
その不気味な部屋には大小様々な薬品と今まで見た事も無いような魔獣の標本。
ガラスで出来た水槽には何かの培養液なのか?
不思議な色の水が満たされた水槽がいくつか並べられていた。

「ザードフィルの奴、ここで何をしていたんだ」楸が独り言をもらす。

「奴は有名な錬金術士だからな。俺達が見てもまったく判らん」花火が丁寧に答える。

「二人とも、ちょっと来てくれ」研究室の机を調べていたフクチが二人を呼び寄せる。

その手には一冊のノートが握られていた。
その分厚いノートはかなり古く、表紙は既に色あせていたが最近まで使用していたのか
誇りなどは付いていなかった。
古い表紙には『ザードの秘密の日記(見ちゃだめよ)』と書いてあった。
三人はその拍子抜けな題に笑いながらも、フクチが手に取り机の上で開いた。

-----------------------------------
ザードの日記XX年XX月XX日

うへへへ、今日は誰に奉仕させるかな。
ルジェの指使いは最高だし、雪の一生懸命な態度も捨てがたい。
悩むところだが、姉妹全部に相手をさせるか。

いやぁ最近は溜まってるからな、ここで一気に抜かないとやばいな。

疲れがね取れるのさ、マッサージはね。
うん、彼女達はいい整体師になれるな。
------------------------------------

「なんなんだ、紛らわしい。ちょっと期待したじゃないか」と楸。

「何を期待してたんだか」フクチが白い目で楸を見る。

「いやぁ、まぁそのなんだか関係無いようだなこの日記は。はははっは」

「いや、フクチちょっと貸してくれないか」

花火が真面目な顔でフクチの本を受け取る。怪訝な顔で二人が見守る中、花火は先ほどのページを
開けながら、なにやら不思議な呪文を唱える。すると、先程見た文章の下から赤い文字が現れた。

「どうやら、簡単な呪法が仕掛けてあったようですね」
「赤い文字は多分彼の血で書かれているのでしょう。通常の人間が開いても読めない」
「力ある者が読むとトラップが、赤い力を使う事が出来る者しか読めないようです」
「ある特定の人間にのみ伝えたい何かが書いてあるようです」

-------------------------------------
XX年XX月XX日

この文字を読む事が出来る人間がまだ残されている事を願う。
これは、我々地上界の最後の希望を造るための研究を綴る。

奴に対抗するには、あれが必ず必要だ。
奴は今も力を取り戻す準備をしている。そして、運命に導かれ彼らも集うだろう。
奴は邪魔な物全てを一気に取り除く準備をしている。
私も急がなくてはならない。

私は今も私が自由になる時間で例のあれを探しつづけている。
そして、その為にもこの研究を成功させなくてはならない。
--------------------------------------
XX年XX月XX日

私は今も奴の目に怯えている。
奴にだけはバレては行けない。

例の物は随分情報が集まった。そのことに関しては部下達も上手く動いてくれている。

研究は相変わらず進まない。
最初に生まれたのは、生命とも物とも言えない状態であった。
大きな力に器が耐える事が出来ず、不安定なまま5分で崩れてしまった。
私は彼を”ド”と名づけ丁寧に葬った。
--------------------------------------
XX年XX月XX日

奴の力はドンドン強くなる。
私には時間が多く残されていない。
急がねば。

例の物が遂に一つ手に入った。多くの戦場で武器商人をしてきたかいがあった。
多くの血の代償として、一つの希望を手に入れた。

研究は相変わらず進まない。
次に生まれたのは、人の形であった。タンパク質の合成は問題ないだろう。
しかし魔力を使うには至らない。そして寿命の問題は解決出来なかった。
急速に成長しつづける細胞を止める事が出来ず、三日目には土へと還った。
やはり、無からは創造出来ない。触媒を探す必要があるのか?
私は神への冒涜を決断する必要がある。
私は彼を”レ”と名づけ丁寧に葬った。
--------------------------------------

「何をやっていた?ザードフィルの研究はなんなんだ?」楸が首をかしげる。

「しかし、我らの知るザードフィルとは少し違うな?奴は何を隠しているんだ」フクチも同じ表情だ。

「彼は昔から一人で背負うタイプだから。この研究と今夜の宴、何か関係がありそうだね」
「奴とは誰なんだろうか。黒幕がまだいるみたいだね」
「その黒幕と戦うために何かが必要で、いくつかは集めて足りない物を作っているのかな」

花火が自分の解釈を説明し、更に日記を読み進めていった。

<あとがき>
さてさて、またまた新たな複線が始まりました。
そろそろクドイ展開ですが、もう暫くお付き合いください。
さすがに、構想段階での複線は出揃い始めましたのでもう少しの辛抱です><;

・・・いつまで二部は続くのかw





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年02月22日 17時24分21秒
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: