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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第三章 4目の前の小さなコートから突き出た爪が小刻みに痙攣している。そのコート越しに「駆除終了」調教を失敗したボーカロイドのような発音が俺の耳に届くと同時に巨大な鳥とコートから突き出た爪が光と共に空気中に霧散していく。ターンテーブルにでも乗せられたように目の前の少女は振り返り、オリオン大星雲を内包したような瞳を向ける。まるで感情が読めない。しかし、その瞳が数ミクロン単位で開いたかと感じた時「……予期せぬエラー発生……デバックモード不可」無機質な声と共に少女はその場に崩れ落ちた。おい、どうした駆け寄り抱き上げた少女はまったく重さを感じられない。糸を切られた操り人形か、ゼンマイが止まったオートマターのようにぐったりした少女は大きかった瞳を閉じ、まったく動かない。「おい、どうした。大丈夫か」すこしゆすって見たが、「返事が無い……ただのしかばねのようだ」等と言っている場合じゃないぞ。俺はまだ名前すら聞いちゃいねぇんだぞ。俺の中で何か熱くてよくわからない感情が湧き上がる。頭で考える事じゃない、ただただ良く解らない感情が体の中心から顔面に向かって凄い圧力で迫ってくる。ふと、俺の頬に生暖かい感触が一本のスジとして伝わってきた。それを実感したらもうなんだか解らなくなって、目の前の景色が曇った水槽のようにボヤケテ、頭が真っ白になる。なんだか喉も熱い。息苦しい。僅かながらに重さを感じる俺の腕中の彼女が先程の巨大鳥と同じように光と共に霧散していく様を何も出来ずにただ見ている俺は、その彼女のお腹の中心にあった赤黒い大きな爪跡を二度と忘れることのない記憶に刻みこんだ。俺はこの名も知らぬ少女、俺の命を身を挺して救ってくれた彼女のアンティークドールのような白くて透き通った表情を一生忘れないだろう。抱き上げる物もなく逃げる相手もいなくなった俺は地面に腰を下ろし、木食修行を終え土中入定を決め込んだ即身仏修行中の僧侶のように考えること放棄した。見つめていても、なんの芸もしない地面が俺に危険を知らせてくれたのは冬に低く光る月光の助けがあってだった。俺の影が歪に変形する。もちろん俺の体に変形機構など付いていない。何度も言うが俺に特殊な才能とか属性など一切ないぞ。まぁ単に俺の後ろに他人が立ち、影が重なったただそれだけだ。そいやサマクさんを忘れていたな、それと里場もどうなったことだろう振り返った俺は絶句。まさに言葉を失った。「なんでお前が……」前言撤回。なんとか声は出たようだ。冬の夜に斜め下から見上げる人物は月を背後に背負い、僅かに微笑みながらこちらを見下ろす。「……私のIDはハチ」「それがお前の名前でいいのか、変わった名だな」「……一意性が確保出来れば問題ない」相変わらずなボーカロイド音声に安堵しつつ、少しの違和感をこの時に覚えた。「コート着替えたのか?茶色から黒になっているぞ」「……穴」ああ、あの巨大な鳥に開けられたんだったな。お前の方の穴はいいのかよ。「……修復済み、問題ない」しかし、なんだこの違和感は。月曜の朝の全体集会で並んでいる低血圧症の女子生徒のように両手をだらりと下げたたたずまいは、あの手紙の少女と同一人物に違いはないが何故か違和感を覚える。同じように冷たい無表情な印象ではあるが、手紙の少女は蒸留水を冷却したような透き通る氷の印象を受けたが、目の前の少女はドライアイスに手を触れたような痛さの伴う冷たさを感じる。一呼吸おいて、ようやく俺はハチと名乗る少女の横に仰向きで倒れるサマクさんに気づいた。そして再び視線をハチに移した時、彼女の口元が僅かに釣りあがるのを見て違和感が本物と実感した。間違いない、この少女は別人だ。姿形はまったく同じ、羽織るフード付きコートが色違いなだけの少女は片手をコートに入れ、笛を取り出した。木製の横笛だ。悪いが俺の縦笛フェチは小学校の低学年で卒業だ。下校時間終了後に隣の席からこっそりとソプラノリコーダを取り出して舐める同級生を見て、正直な話真似できんが少し羨ましいと思ったものだ。彼女の奏でる音色は不思議と心が惹かれる。しかし、音色と共に訳のわからない生き物が姿を現した時には恐怖の音色にしか聞こえなくなっていた。赤いライオン程の大きさの犬と先程の化け物と同じ位の大きさの鷲だか鷹だか。俺は咄嗟に逃げようと立ち上がり振り返り走り出そうと試みたが、先程と同じように空気壁が俺の行方をさえぎる。「なんなんだ、お前は何者だ」危機が迫った主人公が口にするベタな台詞が俺の口から恥ずかしくも無く飛び出した。ああ、こんな時はやはりこんな台詞が出るもんだ等と関心している場合じゃないぞ。何故だ、why、誰か説明しろよ。責任者を呼べよ。里場はなにやってんだよ。得意の魔法とやらでなんとかしろよ。「逃げられない。空間毎隔離している」「助けは来られない」くそ、取り敢えず無駄な抵抗でそこら辺りの石を投げつけてみるがまったくの無駄だった。石ごと俺の体は鳥の羽ばたきによって生じた風に軽々と飛ばされ見えない壁に打ち付けられた。やはり逃げるしかないのか、鳥と犬と少女の位置を確認し方向を確認して突破を試みようと足を上げようとしたがまったく動かない。何者かに掴まれたような感じだ。サイコキネキス?超能力まで使うのかこの無表情少女はと今日何度目かの絶句に陥り動かない足元へ視線を落としたら、あらビックリ。本当に足を掴まれてるぜ。ご丁寧に土の中から巨大なモグラが顔を出し、俺の両足を掴んでる。おいおい、動物奇想天外どころの騒ぎじゃないな。俺に大きな動物と仲良く過ごす趣味はまったくもってない。この役は相葉君に喜んで譲ってしんぜよう。はぁぁもう駄目だな、流石に打つ手が無い。諦めた俺は見えない空気壁に寄りかかり覚悟を決めた。何気なしにポケットに入れた手に暖かい感触が伝わる。ああ、里場から預かった訳の解らない包みか。どれだけ大切な物だったか知らないが、結局俺に託した所でほんの少しだけ奪われずに済んだ時間が延びただけだったな。恨むなよ里場、こりゃどう考えてもお前の人選ミスだ。そして再び俺の人生最終章が始まった。ハチは何処に入っていたのか辞書並みの本を取り出し、開いた中から死刑執行人に相応しい風貌の訳の解らない生き物を生み出した。おい、そこの名前も知らない生き物君。そんな大きな刃物持っているとお巡りさんに銃砲刀剣類所持等取締法違反で検挙されるぞ。どうみても刃渡り6cmで済まされないだろ。常識の範囲で正当な理由なくそんな物騒な物持ち歩いてちゃいけないんだ。最高刑は無期懲役だからな。まさかキャンプに行く途中とか職業が板前さんで出張料理に出向く途中とか言わないだろうな。例え職業柄必要でも、暗殺者が依頼の途中ですので携帯していますとかはきっと正当な理由とは思ってくれないぞ俺を含めて大抵の人間はな。まぁそんな忠告は聞くわけも無く、そもそも言葉が通じるかも疑わしい。「キャン・ユウ・スピーク・ジャパニーズ?」答えたのは茶色のフードコートの少女だった。「……この世界言語での意思疎通は難しい」「……名は……エルフ暗殺者」はぁ、聞かなきゃ良かった。名前を聞いた途端に暗殺者さんとやらが持っている刃物がとても恐ろしくなる。うん?ちょっと待て、ハチは何故コートの色が変わっている?妄想に忙しく気づかなかったが、耳に入る音色はいつの間にか二重奏となっている。「……何時の間に……」「……リブート完了」「……あなたのハッキング情報を逆探知した」「……もうあなたに勝ち目はない」黒と茶色のハチが同じ音質のボーカロイド音でステレオ放送している。「……もう遅い。既に暗殺命令は発動した」黒ハチの声と同時にエルフ暗殺者の凶器は閃光と共に俺の体を襲った。一瞬目を閉じた俺が目を再び開けた時、そこに映った光景はエルフ暗殺者の突き出した凶器を素手で受け止める茶色のフードコートの姿だった。<あとがき>えー、今回でようやく手紙の少女がハチと発覚となりました。てなわけで、前回の2個目の挿絵はハチとなります。これで、一家三人衆が登場となり今後の外伝を案内してくれるはずです。それより先に今回のクライマックスを早く書き上げなきゃw懲りずに見てくれる人、本当にありがとう御座います。m(_ _)m
2008年03月19日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第三章 3俺は急いで廊下を走り続ける、かなりの広さの洋館だな普段帰宅部の俺には辛いぜ。突き当たりまで来た時、本当に白いウサギが待っていた。俺を確認するように首をこちらに一度向け、階段を駆け下りるウサギの後を追う。その時だった、駆け抜ける廊下の窓ガラスが強烈なインパクトを伴って砕け散った。そして、俺に現在起きている非常識な現実を実感させた。窓からゆっくりと身を乗り出したその生き物は、ベタなホラー映画で見かける動く死体。簡単に言うとゾンビだな。25周年記念にビデオクリップの取り直しに来たエキストラでは無さそうだ。何故かって?あの血走った目を見りゃ判る。ありゃ俺を殺そうとしてる目だな。ところで、ゾンビなのに血走る目って可笑しいな。そんな感想よりもとにかく逃げなくちゃな、まだ俺は勧誘にのるつもりはないからな。幸いゾンビ達は動きは遅い、その辺は俺たちの世界のレギュレーションに沿っているらしい。でも、そこはそれ仲間が多いのはやはり俺の知っている通りだった。まったく嫌になる。全力でゾンビの群れを駆け抜ける俺とウサギ。くそ、こうなったら俺の隠し必殺技、デビルライトハリケーンで一気に抜き去るか等と持ってもいない技を空想しても、なんともならんな。なんせ、今の俺には武器一つないしな、サバイバルナイフの一つでもあればゾンビの群れ等G細胞で強化された怪物をも倒す俺のナイフさばきでどうにでもなろうものだが・・・・・・いい加減妄想はやめよう、無限マグナムがあったとしても現実の俺には逃げることしか出来ない。む、待てよ。さっき里場のポケットから取り出した包み、布に包まれているが形状から想像出来るぞ。これは、虎の彫刻でもあればその片目にぴったりはまりそうな手触りをしている、本当にコルトパイソンとかが隠されてるんじゃないのか?そんな事を考えながら走っていたのがいけなかったのだろう、いきなり天井から落ちてきた怪物ぶつかり尻餅をついてしまった。勢いよくぶつかって尻餅をついたのが幸いしたのか、怪物の鋭い爪は俺の頭の真上を通り過ぎ髪の毛が景気良く切れる感覚があった。しかし、この体勢では次の攻撃はかわせんな、辞世の句を考えてなかったな少々後悔していると、怪物の動きが止まる。良く見ると数匹のウサギが怪物にまとわりつくように動きを止めている。「さぁ今のうちです、早く起き上がって」声の主に速くどころか逆に硬直する俺を真剣な眼差しが刺す。はたしてその持ち主は魔法少女のようなステッキを振る、美少女サマクであった。勇敢とは程遠い童顔な顔が真剣な表情でステッキを振る、コンマ5秒程で我に帰った俺はは立ち上がりサマクさんの後ろに回った。「敵はまだ沢山います、でも彼らはこの屋敷の中でしか活動で出来ないはずです。ですから早く」状況が飲み込めないが、今はこの屋敷から逃げる事に専念すればこの悪夢から逃れられるんだな。俺は怪物と奮戦するサマクさんを置いてはいけないと一瞬、躊躇したが彼女の無言の逃げろとの指示に頷き、振り返り全力でその場を逃げ去った。どれだけ走ったのか、無闇に広い屋敷を怨みつつようやく屋敷の門を飛び越えた時、息をを整えていると背後から天使の吐息かと勘違いするようなささやきが俺の耳元に届いた。「だ、だいじょうぶですか?」声の主はこんな命の危険に晒された後でもとぼけた口調で俺を気遣う。もう少し緊張感が欲しい場面ですが、逆にほっとしますよ。「ご、ごめんなさい。私もっと早く助けにこれたら良かった」「いえ、こうして安全な場所についたのだから」本当に申し訳なさそうな表情でこちらを見る瞳には涙が浮かぶ。これが嘘泣きならもう女は信じられんな。まぁ世の中の最強スキルは可愛い女性の嘘泣きであることには清き一票は投票するけどな。「それより、何故サマクさんがここに?」「私の使命は貴方を守ることなのです」「俺を?」「貴方は貴重なY遺伝子の保持者なのです」なんじゃそれ?悪いが、俺に特殊属性はまったくもってないぞ。部屋にあるお年玉を貯めた豚さん貯金箱を賭けてもいい。但し、毎年のように1月の中旬には殆ど残ってないがな。油断があった、それは俺だけじゃなくサマクさんもそうだった。俺が異変に気づいたのはサマクさんの表情が強張った3秒遅れだった。俺の周りの空気が氷結するような皮膚感覚に襲われる。慌てて、サマクさんに近寄ろうとするが空気の壁にぶつかり俺は頭を酷く打った。「・・・・・・空間排他モード、何故この世界に」サマクさんは訳の解らない言葉を口走りながらオロオロして俺とサマクさんを阻む空気の壁に手のひらを当てる。そして俺は背後に凍りつくような感覚を感じる。振り向いちゃ駄目だ、間違いなく危険な者がいる。聞いたことのない、どこの動物図鑑にも載っていない生き物の息遣いが聞こえる。しかし、こういう場面に出くわして振り向かないでいられる奴がいるのだろうか、もしいたら俺が宮内庁のエージェントに言って勲一等を貰ってやる。丁度、同級生がそのエージェントだった事を知ったからな。でも請求は俺もあいつも生きてたらにしてくれよな。ゆっくり振り返った俺は、そこにやはり見るんじゃ無かったと後悔した。そこには、見たこと無いけどジャイアンとモアより大きい鳥が空中に浮かんでいる。いや、鳥にしては蝙蝠のような羽を持つ爬虫類と言った方が正解だな。間違いなく、レッドデータブックに推薦してやりたい生き物だ。鳥は強烈な超音波のような鳴き声をして鋭い爪を月明かりに光らせる。俺を食っても美味しくないぞ。かなりヤバイな、こりゃ間違いなく逃げられそうにないしモチロン戦って勝てる相手でもない。頭の中で変な分泌液が多量に生産され危険を実感させる。もちろん逃げようとするも、背後の見えない空気壁に阻まれる。嫌な汗が背中を伝うのを感じた時だった。「・・・・・・サマク・・・減点1」俺が聞き覚えの無い声を背後に聞いたのは鳥が俺を方に向かって飛んでくる最中だった。つい振り返った俺は、その声を思い出していた。この寒空に透き通るような音色。空気に溶け込みそうな存在感であるはずなのに、クリスタルのように美しさと透明感を俺に与えるあのフードコートの少女。不思議体験の始まりを告げたあの「手紙の少女」が音も無く俺の背後に舞い降りた。彼女で間違いないことは相変わらずキャンディーを舐めている事でも判断できる。そしてゆっくりと俺の背後の空気壁に手を当てる。黒い宝石のような瞳には何の感情も見せず、瞳だけを一瞬俺の方に向け何かを確認するように、俺と同様に言葉を失い口をパクパク、瞳をパチクリさせるサマクさんに移し再び空気壁に移す。サマクさんの表情は、何故か驚愕より脅えのパーセンテージが多い気もする。「排他モード解除、コミット完了」摩訶不思議な声と背後の空気を切り裂く羽音を聞いたのは同時だった。振り返った先に映った光景は、振り向く前に俺の前に確かにいた筈の少女の後姿。フード付のコートの小柄な少女の背中から、鈍く光る獣の爪が突き出てそこから赤い液体が流れ落ちる姿だった。<あとがき>今回も挿絵付です。内容も絵もグダグダですねw
2008年03月10日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第三章 2「まぁたいした事じゃないんですがね、少しだけ魔法が使えるのです」おいおい、簡単に常識レベルを突き抜けるなよ。いままでさんざん誤魔化しておいて、いきなり核心かよ。スキャンダルを誤魔化す芸能人がいきなり出来ちゃった結婚するぐらい唐突な告白だぞ。「いえ、魔法なんて大した核心にならないですね」「僕の場合、かなり限定されます。特に攻撃系の魔法はこの世界では制限がかかります」おい、今なんつった。「ええ、凄く限られた力しか使えないと」「そんな事じゃねぇだろ」思わず常に冷静キャラを自認する俺が同級生の胸倉を掴んでいた。そう、今俺の耳にはこの世界と聞こえた。じゃなんだ、この世界以外の異世界が存在するように聞こえるじゃないか。「否定しませんよ」してくれよ、思いっきり否定してくれ。「残念ながら、これは事実です。信じる信じないは別ですがね」俺は心の中で朝起きた時、今日が8月31日と気づいた時以上に認めないぞ。そして、まったく手付かずの宿題の山を目の当たりにしても脳内引きこもりをしてやるんだ。「実はもっと大切な設定が僕にはあるのですが・・・・・・」おいおい、それ以上に何があるってんだよ。「僕は、この国の象徴たる組織のエージェントとなっていまして。そしてある物を守るために私はこの世界にお邪魔しているのです」「どこの組織だよ、その怪しげな秘密結社は。まさか俺をバッタ人間にする気はないだろうな」「ご心配なく、普通にこの国の法で認められた組織ですよ。ただ僕はその裏の部分に属しているだけで。ちゃんと東京の千代田区に本部がありますから」いくら俺が馬鹿でも、この国の象徴で本部が千代田区にあると聞けば簡単に想像はつく。しかし、それを認めていいのか俺?UFOすら否定したこの国で魔法使いや異世界を国が認めてるだと?だったら、俺の進学先の第一希望は城のような学校で目に見えないホームから汽車に乗って行く学校だな。ところでセンターで足きりはあるのかアソコは。「もっと詳しい話をしたかったのですが、どうやら時間がないようですね」「どういうことだよ」「追っ手が来たようです。ここなら安全かと思ったのですが残念です」「ちょっと待て、俺はまだ信じていない。信じるまで一歩も動かんぞ」そりゃそうだろ、いきなりカトリック教会に拉致されて宮内庁のエージェントが同級生で魔法使いなど簡単に受け入れられる程、器量の大きい人間じゃない。「ふぅ、仕方無いですね。少しだけですが・・・・・・」里場は何気に胸のポケットからペンを取り出すと軽く円を書くように回した。するとペン先が少し光ったと思ったら、里場の奴中に浮いていやがる。正直、声を出して腰を抜かしたい気がしたが土俵際でなんとか持ちこたえた。俺の中でこいつは同級生であるという今となっては本当にどうでもいい設定がそれを許さなかったからだ。同級生相手に腰を抜かす訳には男の子としてはいかんのだ。そんな事を俺が思っている間に里場のやろうの表情が険しくなる。「時間がありません、急いでここを出ます」里場が扉のドアに手をかけたがそれは回らない。蹴破るか、男二人ならなんとかならんか?「いえ、そういった物理的なロックでは無いようです、呪いがかかっています」「じゃ、得意な魔法でなんとかしろよ。攻撃魔法でなくとも開くんだろ」「確かに簡単な呪文ですが残念ながら、アンロックは私の分野じゃないんですよ」「じゃどうすんだよ」「魔力を伴う物理攻撃なら開くでしょう」そう言うと里場は先程のペンを必死にドアノブにぶつけだした。確かにほんの少しだけペンは青白い光りを放っている事からなんらかの魔法的な攻撃なのだろう。なのだろうが、後ろから見るとかなり馬鹿っぽいな。なんせ必死にペンでドアノブを何度も何度も叩いてるのだからな。緑の海水パンツでも履かせて上半身裸にしたらどこかで見たようなパフォーマンスだなこりゃ。カチャ!「どうやら、なんとか開いたようです」流石魔法使いだななんとかしやがった。「ですが、残念なことに私はここでお別れです」「おい、どういう事だよ」「どうやら、呪いで言語機能以外が不自由になったようです」前言撤回、使えねぇなこの阿呆使い。「時間がありません、私のポケットに大事な品が入っていますそれを持って逃げてください。大丈夫です、廊下を突き当たるころには白いウサギが待っています。そのウサギが案内します。さぁ急いで!」いつも飄々としている里場の真剣な表情に俺は奴のポケットから包みを取り出し部屋を後にした。「ウサギだと、まさか異世界にトランプの女王とかいないだろうな」<あとがき>挿絵を描いてみました。里場です。イメージが違うのとか、絵が下手くそなのは許してください。色々とチャレンジしようかと思って書いてみました。
2008年03月09日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第三章 1不思議少女サマクと別れてから公園を出た俺を待っていたのは里場だった。「よう、用事があったんじゃなかったのかよ」「ええ、済ませた後たまたま通りがかっただけですよ」飄々と答える里場の首根っこ捕まえて色々聞き出そうと思ったがやめておこう。正直なところこれ以上の不思議体験はお腹一杯だ。「そうしてくれると僕としては有難いですね」「彼方が好む好まざるに係わらず、危険は迫ってきますから」このオトボケ同級生をどうしてやろうかと思案していると、丁度その危険とやらが届いたらしい。蕎麦屋の出前かつーの。その危険は如何にも私は怪しい組織の一員ですとばかりに黒塗りの高級車から、サングラスに黒のスーツ姿の大柄な男達が3人ほど現れた。「おい里場何の真似だ」「いや、私にこのような知り合いはいませんね」平然とした口調で答える里場と無言のまま近づいてくる怪しい男達を交互に見つめる俺。やれやれ、道案内なら交番へ言ってほしいものだが、どうやら最近の車にはナビがついているので問題ないようだ。何故知っているかって、その後直ぐに車に強引に乗せられたからな。でも、なんでお前までついてくるんだよ里場「さぁ、彼らが僕に用事があるとは思えないので単なる巻き込まれただけでしょう」「俺だって心あたりなんかねーよ」「まぁいいじゃありませんか。単に命を狙われてるならあの場で殺されてますから、きっと理由は直ぐに教えてもらえますよ」高級車に乗せられた俺達は、1時間程経過した後に目隠しされ何処かの屋敷へと招待された。目隠しを外された時に目に映った部屋はかなりの広さがあり、高そうな家具と骨董品と宗教画が飾られた洋風の居間であった。その中央にどうやらこの騒動の親玉らしき人物が髭を蓄えてとても優しそうな目でこちらを伺っている。初対面でこの優しそうな目はとても嫌な感じだな。大抵の悪玉は悪者顔しているが、本当に悪い奴は温和な表情をしている……と何処かの小説で立ち読みした記憶がある。その目が俺を確認した後、隣のまったく動じない奴に移った時に少しだけ驚いた表情を浮べた。本当に何者なんだ俺の隣に立っているこいつ、誰か教えてくれ。「何故貴様までここに」「いやですね。仲のいい友達と下校途中にお招き頂いただけですよ」おいおい、誰と誰が何時仲良しになったんだ。「ふん、まぁそちらも抜け目は無いと言う事だな」「部屋を用意した。悪いがそちらで暫く滞在してもらおう」「くれぐれも物騒なことを仕出かすなよ。我々もお前は管轄外だからな」「解りました。僕も事を荒立てる気はありませんので」飄々と答える里場に対し、親玉は苦々しい表情で部屋を後にした。おい、おっさんさっきの温和な表情は何処行ったんだよ。部屋を移り、再び俺は里場と二人きりとなった。少しだけこじんまりしたが、先程の部屋と変わらず立派な調度品に囲まれた部屋だ。来客用の部屋といったところだろう。丁度いい、どうせ暇なんだ里場に色々と聞きたい事がある。「なんでしょう、僕で話せることなら幾らでも」色々と聞きたい事や聞きたくないが聞いた方が良さそうな事があるがまずはこの状況だな。「お前、あのおっさんと知り合いか」「いえまったく」「向こうは知っていたじゃないか」「これでもある方面において少しは有名人でして。ただ個人的にあの方は存じないですね」「ただこの屋敷の所有者とか団体は想像つきますが」「本当に面倒くさい奴だな。さっさと言え、当然俺には知る権利があるのだろう」「そうですね。但し、彼方は信じないかも知れませんよ。あの手紙のように」「あの時と明らかに状況が違う。あの時は不思議な少女から手紙を貰っただけだ。今は怪しい同級生の宗教話と外国の王女の宝の話と拉致事件を体験済みだからな」「はは、そりゃ大変でしたね」一回くらいぶん殴ってやりたいな、どうしてそんな軽い口調なんだよ。「家庭環境ですかね。家族会議でいつも酷い目に合っていまして結果作り笑いが上手になりました」「どんな家庭環境だよ。まぁ知りたくも無いがな」「それよりさっさと話せ、時間はたっぷり有りそうだが俺の頭の整理と小さな心のケアが心配だからな」
2008年02月21日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第二章 2「少し歩きましょうか。えへ」小さな天使は少し首を傾け、上目遣いにこちらを覗き込む。表情筋が煮えすぎた餅のようになるのを必死でこらえ頷く俺。小さなその天使は大げさに広がったスカートの裾をつまむようにしてチョコチョコと歩く。その仕草がなんともまた俺をダメにする。二人でまるでデートのように川沿いを歩いて行くと、まぁそれなりの街に似合うそれなりの公園へと辿り着いた。「ここで少しお話してもよろしいでしょうか」天使の表情に見とれてボーとしていた俺は少し遅れて彼女の横、芝生の上に腰を下ろした。真冬というのに日差しの強い暖かな午後であった。「で、君は誰?あまりこの辺りでは見かけない格好だけど」川沿いに吹く風に乗せられた、天使の髪の芳香に脳が完全に支配される前になんとか言葉を出した。隣で座る彼女の横顔を半分程隠す赤茶色の髪が、光に照らされて宝石で紡いだ天然の髪飾りのように映る。「うーん、とりあえずお茶でも飲みましょうか」意味不明な彼女の言動にまたまた困惑する俺だったが、その後に空から白い鳩が緑の缶をくわえて舞い降りてきた時には、かなり嫌な予感に襲われていた。それでも、なんの疑いも無しにまだ暖かい緑茶缶を飲む自分の順応性に少し感心した。まぁ続けざまにこうも不可思議な事ばかりおこるんじゃ仕方ない。どうせ彼女も俺の考えつかないような奇天烈なことを話すに違いないしな。お互いに会話らしい会話もなく数分の時間が過ぎた時、彼女はようやく語り始めた。「えーと、私は……」間が長いな。頭の中を整理しながら話すらしい。「えーと、えーと……。そうだ、私はとある外国の王女なのです」「うーんと、そうそうサマクトリアの王女、サマクです。えーと昔、ロト・ボックスという勇者がいてその末裔なのですぅ」はぁ?いったいどうやってこのバレバレの嘘を信じてあげればいいのだろうか。国民的RPGの二作目からもじった経歴であることは間違いなさそうだ。要するに、自分の正体などばらす気は毛頭ない訳だこの王女サマクさんは。手紙をくれた天使は言葉など発せず、クラスメートの里場は意味深なことだけ言って雲隠れしたことから考えると最近の知り合いにしてはマシな方と考えよう。よし、前向きに生きるぞ俺。「それで、外国の王女様が俺になんのようなんですか?」「うーんとうーんと、私達はこの世界の時間軸においてはるか昔……」「あっ間違いですぅ。えーと、えーと、そう昔々ロングロングアゴーな時に私達は三つの宝と一つの鍵を持っていました」「私達は、この世界の住人と交わることをせず流浪の人々でした」「あっ、えーと神話みたいなものです」「ここから、ずーと西の方で宝を守ってきた私達は宝と鍵を封印する使命を持っていたのです」「ところが、我々の中に裏切り物が存在していました。いえ、多分最初から宝を狙った敵が紛れていたのでしょう」「我々は裏切り者の流布した噂の為に、この世界の人々から宝を守るための戦いを続けることになったのです」ここまで話すと彼女はふぅーと一息ついてお茶をすすった。「少し疲れちゃいましたね」いえいえ、トンでもない。話は意味不明ですが、彼方の横顔を見ているだけで疲れなんて成層圏を飛びぬけてアンドロメダ星雲まで行ってしまいましたよ。でも、堀井さん直伝の設定が何処にも出てこなくていいのだろうかと心配しちゃいますがね。「えーと、何処まで話したか……。とにかく、彼方の身が危険なんです」おーい、はしょり過ぎでしょ。そしてまた俺の身に危険が降りかかるのか。最近は危険の歳末大バーゲンでもしているのか?出来ればクーリングオフしたいのだけど。「なんで俺なんですか?全然繋がりが見えてこないですよ」「うーん。えとえと、ちょっと待ってくださいね」彼女は人差し指を口に当てながら、何か特殊な念波でも出すかのように瞳を閉じて何やら小声で呟いている。誰かとテレパシイーで交信でもしているのか?「あのですね、どうやら言っちゃいけない見たいです」「はぁー」「実は私の持つ情報はこの世界を壊す要素があってですね、今はまだ言えない見たいです」「ごめんなさい。私、下っ端なんですぅ」ぼーと彼女の背中にかかる髪を見つめながらいると不意に彼女が立ち上がる。「でも安心してください、あなたは私が必ず守りますから。えへ」手を振り、後ろ足で遠ざかる彼女が小石に躓くのを反射的に立ち上がり受け止める。柔らかい感触が俺の腕から脳に直撃する。彼女は微笑みながら舌を出し、自分の頭をこつく真似をする。そして再び俺から遠ざかっていった。まったくどうしたものか、そんなドジッ子さんに安心してと言われてはいそうですかとは決して思えないですよ、サマクさん突如現れた天使っぽい王女様で、不可思議な宝を守る民の美しい少女との出会いに喜びつつ彼女から聞いた又しても不可解な忠告に悩みながら家路へと向かった。流石に、この時はもう何もないだろなんて黒棒より甘い考えをしていた事は否定しない。だって普通の高校生だぜ俺。<あとがき>里場に続きサマクさんも登場……ってことはwこの外伝は説明が多すぎるところが難点ですね。それでも読んでくれる方は本当に有難う御座います。さてこれからどうやってもりあげましょうかね><;
2008年02月19日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第二章 1なんだか頭が痛くなってきた。横でひょうひょうと即席宗教研究家と化した里場との話を早々に切り上げ俺はやはり面白くもない担任のホームルームの話を聞くことにした。下校の時間、ひと時の平和が学生という身分である俺に訪れる……はずだった。「やぁ一人で下校ですか」「気をつけた方がいいんじゃないですか」こんな下らない忠告をするのは決まっている。「里場、まさかデューク東郷がM16で俺を狙ってるなんてことはないだろ」「ははは、流石にそれは無いでしょう。それじゃ殺した形跡が残りますから」「相手は彼方の存在そのものを消す手法を使いますよ。未空さんの様にね」なるほど、里場の言う通りかもしれないな。流石のゴルゴ13でも存在ごと消すのは難しい。そして、その難しいことを難なくやった奴がいることを俺は知っている。普通に部活帰りの少女の存在を親やクラスメートの記憶ごと消し去った。今では彼女のことを覚えているのはこの世で俺ただ一人になっちまった?!「おい、里場。今なんて言った」「え?存在ごと消されますよと忠告しましたが」「その後だよ。未空のことお前口に出しただろ。お前未空のこと覚えているのか」「うーんお会いしたことは無いので覚えてるというのは不適切な表現ですが彼女の存在は知っていますよ」なんて回りくどい奴だ。しかし、これで未空の存在を証明出来る奴が俺以外にもいることが解った。ひょっとしたら未空を見つけてやることが出来るかもしれない。でもまてよ、里場の奴俺と同じクラスじゃないか。なんで同じクラスの未空を知らない?「里場、お前何者だ。どうして未空と会ったこと無いのに知ってんだよ」「うーん、そうですね、転校生って設定ってのはどうです」「なんで俺がお前のキャラ設定を決めなきゃなんないんだよ」「俺が知りたいのは何故他の奴が忘れちまっている未空をお前が知ってるのか、何処で彼女の存在を知ったかだ」「残念ですが、今はあまり多くは語れないのですよ」「僕にも色々事情がありましてね。但しこれだけは言っておきます。私は味方ですよ。今の所はね」不自然な程軽い笑みを浮かべながら用事があると言って去っていく里場の後姿を睨みつつ俺は再び家路へと足を向けた。バタン!まぁ考え事しながら歩いていた俺も悪い、一体全体何がどうなってこうなったのかはっきり言って想像つかない。ただ言えるのは、今俺の視界はピンクに染まりつまり、そのなんと言うかその……ただひたすら柔らかい感触となんとも言いがたい俺をダメにしそうな素敵な芳香に包まれていた。全然説明になっていないな、つまり里場と別れた俺は不意に後ろからの強烈な衝撃に倒され地面に顔を直撃するはずが、こ、この柔らかい緩衝材に……つ、つまりだ、今俺は倒れた状態で女性の上に被さっていてだな「ご、ごめんなさーい。わ、私おっちょこちょいで」「あ、あのー、だ、だいじょうぶですか?」なんとか俺を人間的にダメにしそうな感触から立ち直り、ぶつかって来た女の子を見た。しかし、なんと表現すべきだろう。コスプレというやつなのかこれが?つまりだ、俺の目の前に立っている女の子、年は高校生と言えば高校生にも見えるが表情は幼い。しかし、体型は幼児体型とは程遠い。小さな体に不釣合いなほど……そのなんだむ、胸がおおきいのだ。格好は中世のお姫様が着るようなド派手なドレス。ピンクハウス系とか言う感じのやつだ。ピンクハウス系がどんなやつなのか詳しく知らないが、こうヒラヒラしてとても動きやすいとは言いがたい家でコタツに入って蜜柑を食べるにはとても不釣合いな格好だなうん。「俺は大丈夫ですが、そっちこそ大丈夫ですか」「は、はい。あのー、唐突ですが実は彼方にお話があるんです」幼女のようなあどけない表情の中に吸い込まれそうになる大きな瞳をうるうるさせながら、どこかオドオドした口調で話しかけてくる。間違いないな、聖夜に舞い降りた天使が俺に愛の告白をする……なんて事はありえないと幼い頃に見たルーベンスの絵を見た少年と犬の物語で知っている。聖夜に舞い降りる天使は幻覚だと俺の中の誰かが叫んでいる。でもちょっとだけ期待しながら、彼女の話を聞こうではないか。また意味不明な手紙をもらうなんてことは無いと信じて。でも聞かなきゃ良かったと後悔するのはそれから直ぐの事であったのだが、この時の俺にどうして予測出来たろうか、この小動物のような愛らしい彼女のお話である。例え焼きそばパン争奪戦中の購買前にいたって最優先で聞いちゃうに決まっている。<あとがき>うーん、微妙な感じのまま進む「外伝」です。戦闘シーンも無いし、これは客観的に面白いお話になっているのだろうか?やや不安ではありますが、もう少しお付き合いください。
2008年02月19日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第一章 2色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず うん、なんだか諸行無常な感じがする高尚な歌だな。この歌の何処に危険性があるのかどう考えても浮かんでこない。やはり里場は僻んでるのか?「とんでもない、彼方に彼女が出来るなら大変喜ばしく思いますよ」「じゃ、何処に危険が潜んでんだよ。俺は妖精に怨まれる覚えはないぜ」「彼方ならきっと直ぐ気づきますよ。どうせ何度も読み返すのでしょ横にも縦にも」「それより、最近物騒ですからそれこそ気をつけてください」そうだ、最近この辺りの高校生が何者かに襲われる事件が起こっているらしい。幸いにも今のところ怪我人は出ていないらしいが、何やら奇妙な獣に襲われる事件が勃発している。まぁ誰も信じちゃいないが、俺は実際に奇妙な獣に襲われた現場を見ている。そう、未空だ。実は未遂に終わった事件のみ明るみに出て、本当に襲われた人物は存在そのものを襲われて消え去られたんじゃないかと俺は想像していた。しかし、どうやってこれだけ大勢の人間の記憶を消すことが可能なのだ?集団催眠だって規模が大きすぎる。実は俺の知らない所で物凄い組織が暗躍していて社会的に抹殺されたのだろうか?まさかね、三流小説にも出てこない設定が現実にあるとは思えない。そりゃね、1ドル札にフリーメーソンのシンボルがあるのも知ってるし、千円札の野口さんの片方の顔が異常で裏から透かすと富士山の中央に瞳が写り、まるで富士山をピラミッドに見立てたフリーメーソンのシンボルとなっているのも知っている。でもそりゃ誰かが考えた都市伝説ってもんだ。そんな闇の組織が名も無いこの高校の生徒を襲ってどうなる?身代金でも取るのか?闇の組織が動くにはお金が目的とはせこすぎるな。じゃなんだ、宗教的な秘密でもこの無宗教国家に存在するのか?「さっき神道国家とか言ってませんでしたか?」いちいち細かい突っ込みをする奴だな。日本は戦争で負けて、無宗教国家になったんだよ。葬式はむしろ仏教の方が多いしな。怖いときには「南無阿弥陀仏」とつい言うだろ。キリスト教なんて今の時期にカップルが騒ぐ口実に使われる位だよ。元々、戦国時代に来て直ぐに追放された宗教だからな。高山右近と共にマニラ辺りに追放されたんだろうさ。「なかなか詳しいですね。ではこんな説は知っていますか」「なんだよもったいぶって」「いやですね、日本は元来キリスト教と根深い関係にあるという説があるのですよ」「もっと言うと日本は古来からキリスト教国家と言う人もいるんです」「はぁ?それこそ都市伝説か何かじゃねぇ」「はは、そうですね。でも彼方の持っているそれを書いたとされている人は知っています?」得意げな顔が腹立つが、どうも謎なことを言われると気になって仕方ない性分なので聞いてやることにしよう。「弘法大使、いわゆる空海上人ですね」「おい、キリスト教といろは歌と坊さんに何の関係があるんだよ」「慌てないで下さい。空海上人のことはどうやら知っているみたいですね。安心しました」どうやったらこんなに人を馬鹿にする言い方を顔色変えず言うことが出来るのだろうか。まぁ確かに俺の成績を鑑みて仕方なしとしよう。でも言っておくが歴史はちょっとだけ得意な方だぞ、三国志時代とか戦国時代限定でテストに全然活躍しない知識だけどな。「で、弘法大使は平安時代の遣唐使の一員でそこで宗教を学んできました」「真言密教だろ」「それと、景教です」「景教?」「その時代に中国でおおいに流行った宗教です。いわゆる古代キリスト教というやつです」はぁ?空海がキリスト教?どこの教科書に載ってんだよ。間違いなく教科書検定で落ちるぞ、そんなこと書いたら。「本当ですよ。正式にはネストリウス派と言って異端派なのですが」「で、もう一度手紙を見てください。通常は7・5調の歌ですが手紙は7・7調ですね」「ちょっと待て、お前さっき縦にも横にもとか言ってたな」「察しが良いですね、但し横にも縦にもと言いましたが」「細かいんだよ。で、縦に日本語読みすると」「『とかなくてしす』となりますね」まったく人を食った涼しい顔で言いやがって、しかし『咎無くて死す』と確かに読める。だが、無罪の罪で死んでいった奴はいくらでもいるけどな。「角の5つの文字は『い・ゑ・す・し・と』となっているのも気づいてますか?」「イエスと使徒と考えるのは深読みですかね」このやさ男はどうしてもこの天使からの恋文を何かの事件に巻き込みたいらしい。彼女の透き通る神々しい姿をみたら確かに天使かと思うのは無理も無いが実際見たのはこの俺だけだ。「そして彼女は「気をつけて」と言ったのですね」解ってるよ、無理やりに三流推理小説的な想像をするとこの手紙は忠告に受け取れる。彼女が名乗っていないのも極度の恥ずかしがり屋や、慌て者とは考えがたい。「やれやれ、どうやらあの日以来とんでもない事が俺の周りに起こっているらしい」<あとがき>構想は出来てたのですが、中々アップできませんでした。少し事件が起きてきた外伝です。サトヴァさんも登場し今後の展開は……どうしましょw少し宗教が入ってきていることが今一と反省しています><;まぁ何とか小説っぽくなるよう頑張りますので懲りずに読んでください。
2008年02月11日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・第一章あれから、半年以上の歳月が過ぎていった。あの信じられない光景が目蓋の裏に焼きついたまま時は過ぎ脳内でセピア色となった記憶はそれ自体が本当にあったものなのかさえ判別がつかなくなっている。・・・・・・んなわけない!明らかにオカシイ、あの後俺は未空の家に行ったそして昔からよく可愛がってくれた未空の母親と初対面の会話をした。扉を開け数十秒で違和感を覚えた俺はその数分後には彼女の家だったはずの場所を逃げるように走り去った。それから半年の間に彼女がこの世から存在を消し去られた現実に馴染むように俺の生活は過ぎ去っていった。今はそう、明日から始まる冬休み前の教室。明日から暫くの間、この学校という空間から解き放たれる開放感に満ちた空気が教室に溢れている。そして世の中は会ったことの無い奴の誕生日を祝うために交尾時期の源氏蛍のように無理やり光り輝いている。そもそも、そいつの誕生日など定かでないのは誰もが知っているはずだし神道国家のこの日本で海外の宗教を祝うなど本当に適当な民族だとこのイベントに関係ない俺は心の中で叫び続けている。が、それもどうやら去年までの俺である。つい頬は緩んでしまって仕方ないが、今までひがみ続けてゴメンねモテル男達よ。どうやら俺も君達と同じ世界の住人となるべく日が来たのだフフ。俺は鞄から一通の手紙を取り出した。なんの飾り気も無い真っ白な封筒。それを手に入れたのは昨日の夜。いつもながら地球に優しくない電気の無駄使いをしている街路樹に囲まれた繁華街での事だった。寒さが身に染みる中、通り過ぎるカップルを意味も無く睨みながら足早に帰宅を急ぐ俺の目に彼女は突然飛び込んできた。ついさっきまでいた気配はなかった、いや今も本当にそこにいるのかと思える程透き通った気配を持つ彼女は、フード付のコートをかぶりショウウインドウを眺めながらこの寒さの中キャンディーを舐めている。ウインドウショッピングをしながら食事など、古い映画に出てくる女優位にしか似合わないと思っていたが、ここにも実在した。銀幕の妖精といった感じではないが、深く被るフードからのぞく横顔は透き通るような白い肌を僅かに露出し、アンティークドールを想像させた。俺は彼女に目を奪われたまま、一歩一歩彼女に近づくにつれ身体の内部から押し出される血液の量がいつもの数倍に膨れ上がるのを感じた。俺は彼女とすれ違う時にはいったいどうなってしまうのかと心配しつつ彼女の横を通り過ぎようとしたとき、彼女が不意に首を90度こちらに回した。音も無く、唐突に首を回したアンティークドールは白い肌に似合うショートカットで無機質な表情で黒真珠のような瞳をフードの中から俺を観察するように見つめていた。やべぇ、ガン見してごめんなさい。視姦してごめんなさい。生きていてごめんなさい。心の中で反省文を50ページ程書き込んだ俺は一瞬足を止めたが、思い切って彼女の横を通り抜けようとした。その時、俺の人生の新たなページが始まった。もちろん、そのページは桃色の俺の頭の中と同じ色に染まった素敵なページである。そう、透き通る氷の妖精は粉雪の舞い振る中舞い降りてきて、「気をつけて」と俺を気遣い差し伸べた手にこの一通の手紙を差し出した。手紙を受け取る俺を確認するとその小さな雪の精は表情を変えないまま雪の街へ溶けるように俺の前から消えていった。「で、それがその妖精の手紙ですか」「うわぁ!突然現れるな、気持ち悪い」こいつはいつの間にか同級生となっている正体不明の友人、里場だ。高校生の癖に大人びた口調と長髪がトレードマークの嫌味な奴だ。「いったい誰に紹介してるのですか?」まぁはっきり言っていつものこの時期ならこいつが意味も無く腹がたって仕方ないのだが何故か今日は機嫌がいい。「そんな事より、変わった恋文ですね」「うん?そうか、今時古風な妖精さんなのだよ。お前でも羨ましいのか?」「いやぁ、いろは歌ですよねそれ」「ああ」そうなんだ、妖精のくれた手紙にはこう書いてあった。い ろ は に ほ へ とち り ぬ る を わ かよ た れ そ つ ね なら む う ゐ の お くや ま け ふ こ え てあ さ き ゆ め み しゑ ひ も せ すそれっきりだ、自分の名前すら載っていない。「ふむ、どうやら彼方に危険が迫っているようですね」里場はまったく悪びれもせずに俺を不愉快にさせる言葉を吐いた。
2008年02月11日
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【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory)『外伝』・プロローグ 今年もソロソロ終わりに近づく12月、毎年のように規則正しくやってくる年末は俺の生活を大きく変化させるような物を持ってきたりやしない。地球はあいも変わらずそれが仕事かというように太陽の周りを回っている。たまには有給休暇でも取ったらどうだい。それとも気づかないうちにたまにはサボっているか?そんなどうでもいい妄想にふけりながら退屈な授業を聞きもせず、3階窓際の席から何気なしに校庭でハシャグ下級生達の太ももを眺めつつ大切な時間を無駄に過ごしていた。喜ばしいことに、窓から眺める枯葉に生と時間の大切さを心に刻むほどの状況ではないからな。 下らないと感じる時間の積み重ねが今日も過ぎ去ろうとしている。よくよく考えてみると70年の人生の中で25550分の1を無闇に何もせずに過ごしているのではと虚無感が自分を襲うような時もたまにはあるのだが、そこは健全なる男子高校生。無意味な時間を過ごすのは特権であり、政府官僚が賄賂を受け取るのと同じくらい必然である。ああ、先程の数字はうるう年など考慮していないのであしからず。 終業の鐘の音と共に俺は今日も体育館脇を通り下校する。それは平安期に陰陽師に指示された牛車のように毎日欠かさずそのルートで帰宅する。理由はただ一ついるはずの無い彼女を探すためだ。 春先のとある日曜日、陽光がまばゆい光を放ちなんだか虫なみな俺にも春の到来を感じさせる穏やかな一日だった。きっと光孝天皇なら春の歌でも詠んだに違いない春らしい一日だった。君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつって思いっきり雪降ってるじゃん。思わず太陽暦の採用と地球温暖化をバリューパックにして脳内で文句を言いつつ先日の古文の点数が親にばれていないか恐れつつも回想は続く。今日俺は休みの貴重な時間を割いて週に5日以上頼まれても来たくもない学校とやらに三顧の礼を誰に尽くされた訳でもないのに朝っぱら来てしまった。もちろん帝の血を引く傑物に春眠を妨げられた訳でもなく、軍師として雇われたからでもない。単なる運動部の応援だ。 その応援を頼まれた相手は所詮、単なる幼馴染でありとりたてて青春漫画にありがちな恋愛感情などさらさら感じていないのはお互いの共通認識であっているはずだ。もちろん俺は甲子園を目指している訳もなく、当たり前だがまったく同じ顔をした同い年の兄弟など持ち合わせてもいない。単なる幼馴染である。 その幼馴染がキャプテンを勤めるバスケットの試合はどうやらこの先にある体育館で行われているらしい。と言っても俺たちの通う県立のありふれた高校の体育館には観客席などと気の利いた設備などありやしない。全席アリーナS席のみただし指定席は存在しないがな。当然のことながらそのアリーナには先客がいるため卒業式か合唱コンクール以外では上がることがない舞台に腰を下ろし、健康的とは程遠い有酸素運動に集中するクラスメートと幼馴染に目をやった。「やぁ、本当に来てくれたんだ」青い空に喧嘩を売るように黄色の自己主張をする向日葵のような笑顔で俺を迎えた荊州城主は不審な顔をしたチームメイトなど気にもせずこちらに歩み寄る。やはり来るんじゃなかった。どうせまた子供を遊ばせながら井戸端会議する主婦達のごとく暇な女子生徒に明日の弁当の時間の話題を提供してしまったに違いない。「どうせ直ぐに飽きるわよ、ネタなんてどうでもいいんだからあの子達。それにテスト勉強を教える代わり応援してくれると言ったのはそっちだぞ」専用のガムを目にしたマルチーズのごとく丸々とした目を大きく輝かせ屈託の無い笑みを零しながら腰に手をやるクラス委員にそんなに目を見開くと目玉が落ちやしないかと心配してしまう。 確かにそう言った。先週行われた小テストの結果如何によっては親による予備校という名の強制収容所行きが弁護人無しの家庭内軍事法廷で結審されていたからだ。当然のことながら溺れた俺は藁よりも確実に頼りがいのある真面目で有名なクラス委員の幼馴染にすがりついた。そしてなんとか泥舟は沈没することなく岸にたどり着いた。まぁ背中に背負った撒きには火がついたままであることは明白であるがこの時点では最高の結果であろう。 試合は予想に反して白熱した展開であった。どちらも譲らない気迫を前面に出しぶつかり合っていた。既に部活など等の昔に帰宅専門へとフリーエージェントした俺の中でもなにやら熱いふつふつとした感覚が蘇り、思わず顧問の女教師の前で「先生バスケがしたいんです」などと口に出しそうになる位の衝動が俺を突き動かしそうになるが、残念ながら女教師は白髪鬼などというあだ名を持っていそうにないし、MVPなど小学校のドッチボール以来取ったことのない俺に言われても「とりあえず日本一の高校生になりなさい」などと言うはずもないことは予備校強制収容一歩手前の俺にも理解できる。試合の結果はどうやら負けちまったようだ。これは結構な問題だ、苦やし涙を隠しながら精一杯の笑顔で顔の前で手を縦にしてこちらを見る幼馴染になんと言って声をかけるべきだろう。少ない経験と知識で5パターン位のシミュレーションをしてみたがどれもうまく行くとは言いがたかった。そもそも少ない経験というのが嘘であった。つまりは涙がこぼれる割に笑顔を振りまくという器用な表情の女との会話など少ない人生の中では遭遇していなかった。しかも、鼻をたらしながら砂場でお団子を作っていた時代から一緒にいたあいつが、俺の作った砂の居城を15センチに満たないピンクの靴で神々の雷がバベルの塔を崩すかのように破壊しても一度も誤ったことの無いあいつが初めて俺に謝ったのである。そんなことは今の今まで一度も無かった。ええーい何とかしろ俺。とにかく何かを俺はあいつに言うべきだ、出たとこ勝負で構うもんか。しかし、部室の前で待つのは構うことにしよう。無闇に明日の昼食の話題を放課後まで続く2時間スペシャルにすることはあいつも流石に喜ばないだろう。春の番組改編は終わったばかりだしな。俺は校門前のコンビニで幼馴染が着替えて帰宅するのを待つことにした。あいつが何時も一人で帰ることは知っている。そして家の近い俺が同じ道で帰る幼馴染と偶然一緒になっても不自然じゃないはずだ。いくらネタに困った新聞部であっても、イギリス大衆紙のようにゴシップネタで発行部数を増やそうなどとは考えないだろう。いい加減立ち読みをする漫画雑誌が尽きてきた頃あいつはやってきた。ところで、日曜日の立ち読みなんて見るものが無くて困る。大抵俺の愛読書は週の前半に発売されてしまう。もちろん全て漫画雑誌であるのは隠しようも無い事実であるのだが。さてどうしたものかと考えていると俺より先に先客がいたようだ。なんと間の悪い俺。まるで冷蔵庫のような極悪宇宙人を待ち構えて戦々恐々としていたがどこからとも無く現れた新キャラに出番を奪われた戦闘民族の王子のような心境で見守っていた俺に更なる驚愕が訪れた。 そうあいつの前に現れた新キャラは背中に大剣をもっていないし金髪で目つきの悪くなる変身もしない代わりに見たことも無い獣を連れていた。巨大で赤い毛皮で包まれた獣は犬にしては大きい。もしここにビスケットがあったら半分こしたい位の大きさの名犬よりも大きいのは間違いない。どちらかと言えば甘い物を食べ過ぎて虫歯になり牙が抜け落ちてしまったサーベルタイガーに近い生き物であった。その飼い主は季節外れのコートを被り、女子高生に無闇に対抗してるかのように素足を見せる少女である。意味不明な突然の来訪者に目を奪われるまま更なる衝撃が俺を襲う。まるで突然の転勤辞令に驚いている間もなく単身赴任確定な場所と知らされたマイホームローン一年目の係長位の衝撃だった。そう、校門前に意味不明な黒い影が突然現れSFXよろしくと言わんばかりに戦闘をおっぱじめやがった。呆然とする幼馴染と俺。シンクロしたように目を見開き目の前に起こっている現象を理解しようとお互いに脳内CPUをフル稼働させている。残念なことは俺のCPUはいいとこCELERONであり幼馴染はクアッドコアクラスであることだが、この時の俺たちは出来ることならこの信じられない事象を処理分散してしまいたかったはずだ。そして、なんとかこの馬鹿げたSFXもどきな現象が収まりつつあったその最後に俺は一生後悔するような場面と遭遇した。あいつが、あいつを乗せた猛獣もどきが俺の前から一瞬のうちに消えてしまったからだ。俺は箪笥の中の国で悪い魔女に弟を連れ去られたような気持ちのまま時を忘れて立ち尽くしていた。 俺は今まで見ていたものが何かの間違いであること、いや白昼夢でもいいあいつがまた月に喧嘩を売る明けの明星のような満面の笑みで「何夢見たいなこといってのよ」と笑い飛ばしてくれることを願った。今なら青い甘党猫型未来ロボットの漫画の落ちがメガネ少年の夢落ちでもまったく問題ないとさえ思った。しかし結果はもっと最悪なことであった。俺のメモリーリーク頻発な脳味噌の永久キャッシュに存在する幼馴染の存在がこの世のから全て無くなっていた。「いったい何が起きた?」<あとがき>皆様お久しぶりです。本編が進まないにもかかわらず、外伝的な物を書き始めてしまいしかもそれが思った以上に長編になりそうで脳味噌が痙攣をおこしているmikusukeです。まぁ一人称が書きたかっただけなんですがw面白くなかったら途中で放り投げてもいいかなと無責任な外伝ですごめんなさい><;
2007年12月31日
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暗闇を引き裂く赤い閃光、高速で移動するアルテミスの身体を包む赤いオーラが尾を描き月光に照らされたその軌跡はあたかも彗星のように映る。ゲートキーパーの巨大な姿を肉眼で捉える事が出来る位置に達するとアルテミスは空中で停止した。その足元には淡いピンクの魔方陣が浮かびあがり、アルテミスを足場のように支えている。「レッドストーン!障壁展開!」『イエス、マスター』額の宝玉が少し煌き、アルテミスに答えるとアルテミスを包むオーラが球体状に広がり、群がる魔獣達を跳ね除ける。この時点でアルテミスはレッドストーンと呼ばれる赤い宝玉をほぼ使いこなしていた。それは、レッドストーンがアルテミスをマスターと呼んだことがなによりの証拠である。次元を超え、幾つかのキーとなる事件を目の当たりにしたアルテミス。そして、多くの人々の覚悟と秘められた想いがアルテミスにレッドストーンを受け入れさせた。「レッドストーン、目標補足できる?データを送って」『オーライ、ターゲットロック』「うーん、大きいだけじゃないみたいね。コアとなる欠片から大量の魔力が放出されている」「展開された魔法障壁は四重構造、周りには召喚された魔物の群れ」「ぶっちゃけ、接近戦はこちらが不利ね。消耗戦になったら私の体力の方がもたない」「どうせ、再生機能も完備してるはずだし……」「決めた、あれしかない。一気に決めましょう」「あの初めて彼方に触れた戦い、マシンインターに放ったあの魔法で決めるよレッドストーン」「レッドストーン、超長距離射撃モード!」『オーライ』レッドストーンが答えると同時に、アルテミスは手にした槍を脇に挟みまるでライフル銃を構えるかのような姿勢をとる。同時に額の宝玉から大量の魔力が溢れ出し、背中に生えたオーラの翼が左右六枚に広がり始めた。そっと瞳を閉じるアルテミスの気は高まり、魔力が槍を伝わり先端に凝縮される。槍の尖端には巨大な魔方陣が光り輝き、その円周上に魔力により五つの火球姿を現した。アルテミスがゆっくりと瞳を開けた時、巨大な五つの火球は互いに螺旋を描き巨大な魔獣へと光の軌跡を描きながら突き進む。魔法の発射による反動に飛ばされそうになるが六枚の翼により支えられる。火球は激しい光を発しながら、その高温により塞がる魔獣を焼き払い一気にゲートキーパーの障壁にぶつかる。その衝撃は轟音と共に次々と障壁をガラス細工のように打ち砕きゲートキーパーに直撃した。衝撃と高温により肉は削げ落ち、苦痛に満ちた表情を見せる巨大魔獣ゲートキーパー。しかし、その恐るべき再生能力は火球の持つエネルギーと衝撃と高温に耐えた後、直ぐに元の形へと戻りつつあった。そして、アルテミスを確認すると全身から暗黒のオーラを噴出し球状のエネルギー体を作り始めた。「見えたよ。ゲートキーパーのコア、これで決めるよレッドストーン」「全力全開!マキシマム・メテオ・バスターーーーーーーー!」アルテミスの声に反応するように、真っ赤なオーラが槍の尖端に集まりだす。アルテミスの身体、額のレッドストーン、そして周りの魔獣達、天空、大地、全てのありとあらゆる所のオーラがアルテミスの槍に集約されていく。それはまるで天から降り注ぐ光の雨のように優しく強い光がアルテミスの意思の元に集う。「シューーーーーート!」槍の尖端に輝く魔方陣の前に集まったオーラの球体が、先程の五つの火球の軌跡を辿るように轟音を発しゲートキーパーに突き進む。その威力は先程の五つの火球を足してもなお倍以上。その勢いは一切衰えず、反撃をするはずの黒いオーラと球体もろともゲートキーパーを飲み込んだ。パキン!その音は、ゲートキーパーの内部で力の源となるレッドストーンの欠片が砕け散る音であった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第56章 全力全開』蹲るザードフィルが聞き取れない声で呟きながらどうにか立ち上がろうとした時、世界全体が震えるような振動と轟音に包まれた。「な、何事だ」「これ程の魔力、どんな化け物が現れたんだ」ガラテアとセシルスが驚きの表情を隠さない。もっともこの場にいる全ての者達が今までに感じた事のない異様な魔力を肌で感じていた。「まさか、これ程の魔力を秘めた客を呼び出す事になるとは流石に予想外だったな」この言葉に一同が身構える。言葉の主は先程まで膝をつき苦しんでいたザードフィルであった。しかし、その表情は先程までガラテア達と交戦していた時のような禍々しさが消えている。「花火、随分待たしたな。なんとか奴を燻り出すことに成功したようだ」言葉と共に指差した空中には、もう一人のザードフィルが追放天使の姿を現し翼を広げ空中に浮遊していた。「さぁ、レッドストーンの欠片は消滅したようだ。もう他のゲートキーパーの偽石に魔力は供給されない」「剣聖達が魔方陣を破壊するのも時間の問題だ。観念してもらおうか赤い悪魔よ」ザードフィルがもう一人のザードフィルへ揺さぶりをかけるが赤い悪魔と呼ばれた方のザードフィルはにやけるばかりである。「いったい何がどうなってる」ガラテアが混乱の声を漏らす。そこへ花火が進み出て二人のザードフィルについて説明をする。つまり、前回の赤い悪魔との戦いの結末に異次元へと流されたザードフィルと赤い悪魔はエリプシャンの村の事件により再び現世へと戻ってきた。その時、トリーシャとその姉妹を救出するために赤い悪魔へ憑依したザードフィルは皮肉な事に自らの宿敵、赤い悪魔を肉体に取り込みその後の行動を共にする事となった。当初、この邪悪な悪魔を自らの中に封印することにより安心していたザードであったが、その邪悪で巨大な意思の力に次第に肉体と精神を奪われていくことに気づき、過去の戦友であり共に現代に蘇った花火達と共に赤い悪魔の完全消滅を企てていった。しかし、同じ肉体に共存する宿敵に気づかれず作戦を遂行するには至難を極め更に自体を複雑にしていったのは自らの身体だけでなく精神までも赤い悪魔に支配されつつあったことであった。そして、もう一人のザードフィルの狙いが過去の戦いで失った自らの肉体を異次元から再び取り戻す事と発覚したのをきっかけに再び宿敵である赤い悪魔との決戦のため、花火と同じく現代に蘇った剣聖sakezukiと連絡をとり今回の内戦を利用して赤い悪魔の企てを阻止することとしたのであった。もちろん、ザードフィル本人が赤い悪魔に完全に支配されているなら自らと共に葬るように依頼していた。「さぁ、ここからが本当の祭りの始まりだな。赤い悪魔、いや『明けの明星』と呼ばれ神よりもっとも愛された熾天使、光の大天使長…ロシペル」「……」ザードフィルの言葉に対し、ロシペルは反応を示さずただ無言で宙より見下すだけであった。しかし、ザードフィルとロシペル以外の全ての者達は自分が今聞いたことへの理解ができず困惑の表情を見せるだけであった。<あとがき>随分時間が掛かった割りに大味な展開に物凄く反省しています><;でもソロソロアップしないと殆どの読者が忘れてしまうのでwさて、インフレ気味のアルテミスのパワーはどうなるのでしょうか?ロシペルと神話のルシファーを同一的な扱いにして良いのか?ますます暴走気味ですがこのまま年末まで突き進みますb
2007年11月10日
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切り裂いた闇の中、白銀の翼が舞う月光に照らされて闇を飲み込み、全てを無に帰す。sakezukiとその両側の無言の戦士達が霧のように湧き出てくる黒き魔獣達を消し去っていく。その光景にアルテミスは息を呑む。「凄い、全てを飲み込んでいく」「ああ、確かに無敵だなしかし長くは持たないこちらも用意が必要だ」ゲルニカがアルテミスに準備を促した。「長くは持たない?」「ああ、あれは魔獣達の妖気を全て取り込み自らと同化したあとに切り捨てている」「あの攻撃ではゲートキーパーの異常な再生能力も無力だ」「切り捨てるって?」「そのままの意味さ。取り込んだ部分を自ら消滅させている」「奴の計算では3体で自分が完全に消滅してしまうのだろう。だから1体分、我々に仕事をくれた」「さぁ急ごうあまり時間がない。武器はこれを使いなさい」ゲルニカが投げ出した槍を受け取るとアルテミスは小さく頷いた。「メタビは悪いが人型のまま戦ってもらうからな、でもそいつも良い槍だ」「洞窟で宝を荒らしに来たが、魔獣の強さに逃げられなくなった盗賊を助けた時に頂いた奴だ」「たしか、ロクショウとか言ったな。小心者なわりに運だけはいい奴だった」「ロウクショウ・・・・・・そうかこの世界にはまだ元気でいるんだな」アルテミスは感慨深く手にした槍を見つめる。そして何かを決心したようにゲルニカ達の方へと振り返る。「師匠、メタビ。sakeさん達を手伝って下さい。ここは私が引き受けます」「引き受けますってお前」メタルビートルが不審な顔を隠さない。「皆命を懸けて今を精一杯生きている。私また臆病になっていたわ」「私はもう私の中の力に怯えたりしない。この時代にも懸命に生きている人がいる」「もう誰も死なせたりしない。私が守るから」「お願い、私のそばから離れて。多分まだ上手に制御出来ないと思うから」アルテミスの言葉に二人は困惑していた。しかし、アルテミスがゆっくりと目を閉じ精神を集中し手を前方で交差させた時点で二人はその異常なオーラの高まりにこの場から離れろという言葉が冗談ではないことを理解した。アルテミスは心の奥底に封印していた力を始めて自らの意思で開放し始めた。その力は強大でアルテミスの体を直ぐに侵食し始め、アルテミスの表皮は膨張し硬質化が始まり、爪は伸び瞳は深紅に染まり髪は背中まで伸び額からは真っ赤な宝玉が姿を現し始めた。そう、この現象は以前ロクショウを眼前で殺された時、意識をレッドストーンに乗っ取られたアルテミスが怪物に変化した時と同じ状況であった。ただ違うのは、あくまで今回はアルテミスの意志によっての力の解放であることである。その証拠に以前は完全に獣の形態であったアルテミスの身体は、あくまで人の原型を留めている。硬質化した皮膚や大きくなった身体はどちらかと言えば鎧の下に新たな真紅の装甲を纏ったようにも見える。そしてもう一つの違いは、以前の覚醒時とはアルテミスの戦士としての力の違いである。巨大な魔力を受けてめるベースであるアルテミスの力が素人同然であった前回から格段に成長しているため、覚醒時の魔力は数倍にも達していた。その力は大気を震えさせ、神々をも震撼させるに相応しい巨大なオーラを纏っていた。「ゲートキーパや赤い悪魔どころの騒ぎじゃすまないな」メタルビートルが震える手のひらを見つめ呟く。「ああ、俺達が封印した赤い悪魔より巨大。俺達はとんでもない者を呼び出したようだな」ゲルニカが答え顎で合図すると二人は一気にその場から跳躍し、アルテミスから距離をとった。アルテミスは僅かに残った瞳の中の人間としての意思をゲートキーパーに向け、集中した。溢れるオーラは収束し具現化した赤と黒のオーラがアルテミスの背中に巨大な翼を象った。バーン!アルテミスが姿を消した少し間をおいて轟音が鳴り響く。音速を超えた神速移動に伴う衝撃波と膨大な魔力による熱でアルテミスの移動した軌跡に沿って、全ての魔物達を砕き焼き尽くす。以前アルテミスがセシルスとの修行で一度だけ出したソニックブームであるレッドストーンの力で強化されたその攻撃は、不死鳥が放つ火の子で世界を浄化するように一直線にゲートキーパーに向かい突き進む。(私はもう恐れたりしない。いつの時代も精一杯生きている人達がいる)(私はもう逃げたりしない。死を恐れず、結果を恐れずに立ち向かう人達がいる)(人の心は魔物達などに負けやしない!)【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第55章 真覚醒』花火の杖が光る!閃光と共にザードフィル目掛けて火球が飛び交う。同時に苦痛の表情を浮かべながらも、楸の腕がザードに向かい杖と共に氷の刃がザードを襲う。しかし、どの攻撃もザードフィルの目前で見えない障壁により弾き返される。「ふははははぁああああ、そんな魔法攻撃など我の前には無力。非力、非力、非力ーーー!」「それなら、刃物はどうだぁああああ」花火達の頭上高く舞い上がったガラテアの巨体が巨大な斧と共にザードフィルに強烈な一撃で振り下ろされる。しかし、後数センチの所で時が静止したかのようにガラテアの巨体が空中でピタリと止まり、逆にザードフィルの軽い手払いで巨体がまるで猫が転げまわるように地面に吹き飛ばされた。「馬鹿な、ゆうに200キロはある俺を……」ガラテアは自らに起きた事が信じられないといった表情を浮かべる。「無駄、無駄、無駄ぁあああああ、お前達の使う技は全て魔力を伴う。例え物理攻撃でもな」「そして、私は魔力を極め、栄華を誇った古代魔法王国ザードの正統後継者、全ての地を守る民の王」「どんな魔力も王の前には無力、ただひれ伏すのみ」ザードフィルが誇らしげに高笑いを浮かべる。「古代魔法王国ザード……、聞いたことないな」とガラテア。「いや、安物の防具でレイメントオブザードとか言う奴の説明になんか書いてあったぞ」とセシルス。ドーン!二人の会話が気に入らなかったのかザードフィルは無表情に杖を振り、二人の間に巨大な火球を落とした。咄嗟に飛びのき、すぐさま反撃の斧と槍がザードフィルを十字に切りつけるが、結果は先程と同じく吹き飛ばされるのは二人の方であった。それでも、花火と楸は吹き飛ばされた二人の援護に魔法攻撃を繰り出すが結局ザードの前の障壁の前に全て消え去ってしまった。飛ばされたガラテアは自分の攻撃が効果ないことを悟り、解決の糸口を掴むため攻撃の手を休め思案する。しかし、セシルスの方は諦めきれずザードに向かい地面を蹴った。空中で槍を弓に持ち替え狙いを付けるセシルスを暗闇から鋭い矢が襲う。咄嗟に体を捻りかわしたセシルスの頬を鮮血が流れ落ちる。「ちぃ完全に気配は消していたのに流石一流の傭兵さんね」手に弓を持ち、悔しそうな表情を浮かべるのは風の三姉妹のうちの一人、雪音であった。そして両方の脇から雪音の肩に手をかけルジェとトリーシャがセシルスの前に立ちはだかる。「セシルスさん、ちょっと彼方は邪魔なのよね。ちょっと卑怯だけど三人で一気にやっちゃうわね」トリーシャが妖艶な表情でセシルスに話す。そして三人が跳躍しセシルスを囲み槍と弓を構えた。カッカッカ!三姉妹がまさに今セシルスに襲いかかろうとした瞬間、地面に投擲が突き刺さる。「チャララ、ラーラ、ラーラ、ラン♪」「誰だ!」ルジェが首を回し声の主を探すと壁の上に黒い装束の男が立っていた。「例え女性同士でも、一人に対し三人同時にとは戦士道を汚す行い。ゆ・る・さん」「ちょーっあんたネドでしょ!カッコつけすぎ」セシルスの表情が自然と緩む。黒装束の男は壁の上に肩膝をつき、パチンとジッポライターに火を点し一服する。「月影に 乙女の戦 火花散る アデュー」それだけ口走ると黒装束の男はさっと消えてしまった。「おい、ネドそれだけかい!期待だけさせてネタだけかい!しかもかなり古いぞネタが」「まぁまぁ、落ち着けセシ。奴は肝心な時だけしか手は出さないのさ」ガラテアがセシルスの背後に現れた。「取りあえず、ザードには手が出せないなら他から攻めるしかないな。流儀に反するがお嬢さん方相手願おう」ガラテアが巨大な斧を肩に担ぎ目線で三姉妹を牽制する。一方、花火と楸は相変わらずザードフィルに攻撃を繰り返すが、結局全ての攻撃はザードフィルの障壁の前に無意味であった。その中でフクチ大佐だけが魔力を失い、攻撃を繰り出す事も出来ずに悔しさをかみ殺すようにザードフィルを睨んでいた。「くそっ、こんな時に全ての魔力を失うなんて。なんのための杖だ」「なんのためのブローチだ」フクチは何とかして渾身の魔力を振り絞って杖に込めるが無常にもなんの反応もない。「えーい、メテオ!ファイヤーボール!ファイヤーボルト!」「サンダー!ウォーターフォール!アースクエイク!」「駄目だ、何一つ杖に魔力が反応しない。私の魔力は本当に費えたのか……」フクチは必死に魔法を唱え、杖を力一杯振るがなんの反応もない。「えーい、もう破れかぶれだ。テクマクマヤコン!マハリク マハラタ!テクニカ シャランラー!ピピルマピピルマ プリリンパ!」「パンプル ピンプル パムホップン! ハリラハリラハラリー!エクスペクト・パトローナム!ピリカピリララ!」「くそ、やはり駄目か。てかこれで魔力が戻ったらビックリビックリ!ビンビン!のドッキリドッキリ!ドンドンだな」」フクチは殆ど諦めたのか適当な言葉を繰り返し、杖をいい加減に振り続けるしかなかった。それくらい自分のこの場の無力さに途方に暮れていた。今まで戦場ではその溢れる魔力で先頭に立ち、数々の戦功を納めてきた軍人もその肝心な魔力を失いただの人となってしまった今、魔人とも言える人々の戦いは恐怖を肌に刻み込むのに十分過ぎた。(しかし、あの魔法障壁は異常だ。このままでは二人の魔力もそう持たない。しかも楸殿は私と同じく呪いに掛かっているのに)(考えるんだ、魔力は無くしても知恵や経験まで奪われた訳じゃないんだ)(全ての魔法も物理攻撃も効かない……何故物理まで?本当に透明な壁でもあるのか?物理も魔力を伴うか……)「はっ!そうか魔力を持つ全ての戦士の攻撃が無効。突破口が見えた」フクチの表情が何かを理解したようにパッと明るくなった。「気づいたようですね、ザードの考えに。狙いは首に掛かった赤い宝石唯一つです」ダッダッダー花火の声にフクチは頷き、ザードフィル目掛けて走り出す。そして魔力の費えた腕と杖でザードフィルの胸へ目掛けて殴打した。先程まで完璧に全ての攻撃を塞いでいた障壁がフクチの攻撃には反応しない。そしてなんの障害もないザードフィルの胸にフクチの杖が突き刺さる。いや首から下がった赤い宝石に突き刺さった。パキッ!赤い宝石にひび割れが生じるとザードフィルが苦悩の表情を浮かべ、頭を抑え意味不明な声をあげ、遂には膝を地面つき苦しみ始めた。<あとがき>さぁ、もう10月……いったい何時になったら終わるのか2部今回、後半は少し遊びが過ぎたかなwたまにはお笑いも必要だよね?でも少し対象がw20代とかしか判らんネタになったなw
2007年10月07日
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重い空気の中、床を鮮血に浸しうつ伏せに倒れこむマシン・インターを前にゲルニカが大きく息を吐く。「ネロス、今の戦いを良く覚えておけ。この次インターと槍を交えるのはきっとお前だ」「はい。必ず器の大きい男になってインターを越えて見せます」「ああ、お前は運だけはいい、ひょっとしたら……無理かもしれんが……いややっぱ無理なような……」「ええええええ、そりゃ酷いっすよ師匠!」ネロスの言葉に耳を貸さず、ゲルニカはタケウマ達の方を伺う。「それより、タケウマ、こっちは片付いたがそっちはどうだ?」「現在レベル5突破、霊力装置、シンクロシステム共に安定してます」「そろそろだね、タケチン。霊力制御装置開放を頼む」「了解、行きますよ。霊力制御装置開放、サケリンクシステム発動!」「メカサケ軍団発射!!!!」タケウマの声と共に、聖騎士団達の方角から夜空に無数に飛び交う蛍のような光が見えた。その光は大地を覆う暗黒のオーラを侵食するように次々と魔獣達をなぎ倒していく。「これが、おいら達の最終兵器メカサケ軍団さ。777体のメカサケをおいらとタケチンが霊力でコントロールするのさ」「天上界の魔石とシュトラの天才技師、そしてアウグの僧侶達の霊力を結集した最終戦略兵器さ」「まぁ霊力コントロールの媒介になるおいらとタケちんには負担が大きいけどね」「まぁじゃさおいらも行ってくるさ、おいらが行かないと上手にコントロール出来ないからね」「後は任せたよゲル、タケ」バン!sakezukiは言いたい事だけ言って一気に塔から飛び降りて行った。そして激しい火花を散らしながら、魔獣の群れへと切り込んでいった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第54章 最終戦略兵器』漆黒の魔獣の森その後方から無数の光の柱が立ち上がる。眩しい閃光を放ち、777の光の人形達が漆黒を侵食していく。光の人形達から眩い光の糸が放出され、全ての人形達を結ぶ。その光はsakezukiの背中へと収束されsakezukiの意思を人形達へ伝達していた。魔獣達を光速の刃で切り刻む。あまりにも膨大な光の力は魔獣達ばかりではなく、そこに存在すべき全ての物質を削り取り、無に帰す。まるでそこには初めからなにも存在しなかったかのように。そして遂に、魔方陣の一つをなすゲートキーパーの一体を飲み込み始めた。抗う漆黒の巨大な魔獣を更に巨大な光の束となった人形達が飲み込み始める。グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!大地を揺るがす魔獣の悲痛な叫びが世界に響き渡る。大きく口を開けたその魔獣の頭部へ目掛けて全身が透き通る程の光のオーラに包まれたsakezukiが飛び込んで行く。「よいっしょーーーーーー!」sekezukiの掛け声と共に振り下ろされた巨大な剣は光を放ち、巨大な魔獣に断末魔の声さえ上げさせず消し去った。切り裂いたのではない、完全に無に還したのである。先程まで存在していた巨大な魔獣もその周りに飛び交う魔獣の群れも、一欠けらも残さず灰燼と化していた。いや、そもそもそこに存在していた全てを無に還したと表現した方が正しい。今ではひたすらまっさらな大地がただ広がるのみであった。ザードフィルの居城では、信じられない光景に一同がざわめいていた、ただ一人城の主ザードフィルだけは落ち着き暗闇に花開く白い閃光を眺めていた。「ゲートキーパが落ちました、魔法陣が決壊します」トリーシャがザードに報告する。「ああ、そのようだな」「よろしいのですか」「既に異界の門は開かれた。今更どうにもならん、それを承知で何故戦うのだ剣聖よ」最後の言葉は力なく、魔獣に繰り出されるsakezukiの攻撃による爆音にかき消されトリーシャには届かなかった。ザードの言葉を裏付けるように、上空の空間の歪みはゲートキーパの崩壊後も大きさを増すばかりであった。「さぁ、こちらも忙しくなりそうだ。来客をもてなしてやれ」ザードフィルが指差した向こう側には花火、フクチ、ガラテア、楸、セシルスが立っていた。「これは・・・」楸が呟く。「強烈な力を感じるな、しかし多くの奴らが戦っている」「敵同士だった奴らが力を合わせているんだ、お前が何を企もうとこの世界は俺達が守ってみせる」ガラテアがザードフィルに向かって叫ぶ。「あの剣聖が自らを犠牲にしてまで戦っています、私もどうやら人間を信じてみたくなりました」「赤い悪魔は復活させないことにします」花火がザードフィルに対し静かに目線を投げる。それに答えるようにザードフィルも笑みを返す。「赤い悪魔の復活!」フクチが思わず声に出し驚愕の表情を見せるが、その事について驚きを見せたのはフクチだけではなかった。同行していたガラテアやセシルスはもちろん、ザードフィル側の者達も一様に驚きの表情を隠せず、言葉を放った花火とザードフィルへ交互に目線を運ぶ。「花火よ、それがお前の答えなのだな。このどうしようもない世界の浄化はこの機会にしか望めんぞ」「見るがいい、あの勇ましい戦士達を。何かを守ると大義を掲げ・・・・・・」「・・・・・・そして人殺しをする」「守る事は相手にとって殺戮者と同じだ」「そうだろうフクチ大佐殿。お前は治安の為と言い何人の独立軍を殺した?」フクチは答えない。ただ視線を床に落とすだけであった。「さぁ教えてくれ砂漠の虎と呼ばれる伝説の傭兵ガラテア、お前は何千人の屍の上に2つ名を授けられた?」「何千の屍の後ろの不幸な家族や孤児達はその何倍いるんだ?」「トリーシャの村のように地図から消えた故郷はどれだけあるんだ?」ガラテアの拳が震える、そして同時に身体の中心にある何かが窮屈に押し込められ押し出されないようにガラテア自身に封じられていた。それは自己矛盾であり葛藤と呼ばれる心の動きである。「ロウやインターは実にいい。素直だ、自分の欲望にな。強くなるその目的には敵を倒す。実に明解だ」「弱い奴は倒され、死んで行く。それは淘汰だ。自然の摂理だ」「しかし、お前達はどうだ。弱者を守るだの、神のための聖戦だの。民族独立だの」「人殺しに正当性などどこにも存在しないのだよ」「あるとすればそれは本能だ。お前達人間が刻んできた戦いの歴史が血となり遺伝となり受け継がれてきた」「お前達人間と言う種族は呪われた戦いの種族なのだよ。この世界は何時だって必ずどこかで傷つけ、殺し合あっている」「演説はもういいだろう、それともそんなに時間を稼ぎたいのか?赤い悪魔よ」花火の言葉がザードフィルの言葉を遮り、ザードフィル眉間が歪む。「俺やザードもそんな事は百も承知だ。それでも、俺達は生きたいと望む小さな命が愛しいと思った」「守るべき人々のために戦う。それが人間だ。お前の望む破壊や殺戮とは違うさ」「違わない。お前達も感じたろう。人の悲鳴と苦痛の表情に」「あの恍惚感を」「・・・我々軍人は・・・」既に表情も赤い悪魔に乗移られたザードフィルに対し、フクチが俯きながら言葉をつなぐ「・・・我々軍人はなんと無力なんだ。私の部下達にも家族や愛する人達がいる」「生きて帰る保証などない戦場に自ら望んで軍に志願する彼らは皆、愛する人達が平和に暮らすこと、守ることを・・・」「守ることを望んで・・・死んでゆく」「そして、今我々が命をかけて戦場に身を置く間に普通の生活を送る人々がいる」「酒を飲み、笑い、恋をし精一杯生きている人達がいる。その生活を死守するのが我々軍人の責務なんだ」「それなのに、赤い悪魔の問いに対する答えを私は持たない」「私は軍の御旗の元に殺戮者であり続けなければいけない。本当にそれでいいのか」フクチが力なく膝から崩れ落ち、床に拳を打ち付ける。ザザーン!真空の刃がフクチの後方からザードフィル目掛けて放たれる。しかし、その刃はザードフィルの差し出した掌に簡単にかき消された。ザードフィルは刃を放ったガラテアを睨み付ける。「大佐、俺は傭兵や。金を貰って人を殺す。そこに居るロウと見方によってはなんもかわらへん」「せやけどな、俺達が戦争してる間に魚屋は魚を売り、農民は畑を耕せる」「女は子供を生み、次の世代を育てる」「所詮人殺し商売やけどな、正解やないけど間違ってるとは思わへん」「魚屋が人殺しせんでええからな」「こんな悲惨な戦いを魚屋は知らんでええやろ」「そして全ての戦いは終らへんけど、少なくともこいつを倒せば少しの間は平和に暮らすことが出来る」「そうです、それが我々人間の答えです」花火がガラテアに賛同し、杖から巨大な火の玉を出しザードフィルに放った。ザードフィルは先ほどの剣圧と同じように放たれた火の玉をかき消し、それを合図にそれぞれの戦士達が臨戦態勢をとり、戦いの火蓋は切って落とされた。<あとがき>いやいや、正直なところ忙しくて更新が出来ません><;今回はこんな所で許して下さいね。
2007年09月06日
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闇は世界を包み、暗黒のオーラが空気を凍てつかせる。重たい空気にアルテミスは身体全体に体験したことのないプレッシャーを感じていた。眼下に広がる荒廃した大地に異様な大きさの魔物が蠢く。巨大な魔物から黒煙の様に湧き上がる無数の魔物達で大地が埋め尽くされる。巨大な魔物達は魔方陣を象り、世界を侵食するかのように膨張していく。今までに無い恐怖心から言葉を失ったアルテの横にゲルニカが立つ。「怖いのか?これ程の強い力だ、仕方ない」「でもな、人は決して魔物などには負けないさ」静かな口調で話し、ゆっくりと巨大な魔物の方向へ指を指す。無数の魔物達が蠢く中にいくつかの火柱が湧き上がる。大地を覆う暗黒のオーラを押し戻す力が少しずつ広がる。そこには、先の戦争でビガプールの地を開放すべく戦っていた太史慈率いる独立軍であった。「行くぞっー!ここは俺たちの土地だ、魔獣などに好きにさせるな」太史慈の号令で独立軍が巨大な魔獣、ゲートキーパーに向かい突進する。レイチェル、サモ、BUG、パプリカ達が魔獣を次々となぎ倒していく。それでも、アルテミスの瞳は不安の色が濃く浮かんでいた。察したようにゲルニカが再度差した方向は先程と少しだけ違う。そこには新たな雄たけびと土煙が上がり、独立軍の倍以上の部隊が魔獣に満ちた空間を波のように押し寄せる。「あれは?」「あの旗は正規軍だ。榎がうまく説得してくれたようだな」「不思議だな、先日まで互いに血を流し合った者達が今、同じ目的のために協力する」「それでも、いくら力を合わせても勝てやしない」「アルテ簡単に諦めちゃいけない。しっかり前を向きなさい」「絶望なんて、下を見て俯いている奴にだけ訪れるものさ」「奇跡は起きるものじゃない、起こすものさ」「前を向き、進める足を決して止めない強い心が奇跡を起こす。そう何度でもな」ゲルニカは優しくアルテミスの肩に手をかけ俯くアルテミスを諭す。そこに、場の空気を読まない二人組みが軽快にステップを踏んでやってくる。「やぁやぁ、こよなくお酒と女性を愛する正義の味方sekezukiとおまけ君の登場だ」「ちょー、毎度そのパターン止めてくださいよ酒さん」「お久しぶりですゲルニカさん。タケウマです」二人の登場は空気を読まないが、場がどんな状態であろうと不思議と二人の空気感で和ませる力があった。そのおかげか、アルテは少し恐怖に足が震えている事を忘れることが出来た。「やぁゲルちん、あれはどんな感じだい」「感じるままだな、想像以上の化け物だ。しかし太史慈達と正規軍で6体のうち2体位なんとかするだろう」「うんうん、じゃゲルちん達で1体。おいらとタケちんで残りもらうよ」「簡単だね、タケちん」sakezukiはまるで陽気である。しかし、剣聖と呼ばれるこの人物、その男がこの場に充満する禍々しいオーラ、馬鹿馬鹿しい位に巨大なオーラを感じていないはずが無い。アルテは戸惑っていた。確かにこれだけの面子が揃っていれば一個大隊程の戦力はあるように感じられる。それでも正規軍、独立軍の片方を凌駕する程の力があるとは思えない。sakezukiの涼しい表情と余裕がどこから生まれてくるものかアルテミスは混乱していた。「となると、到着した訳だな。本当にあれを使うのか?」「ん?ああ、ゲルちんの弟子がもう直ぐ此処にくる。よく爺さんを説得してくれたよ」「酒さん…」「タケ、そんな顔をしないの。男の子でしょ。ウフ」sakezukiの軽薄な表情と対象的にタケウマの表情は何か思いつめたように曇っていた。タッタッタ一人の戦士が小走りに向かってくる。風貌と背中に抱える槍と弓からしてランサーかアーチャーである。戦士は2メートル程の距離までくると足を緩め、その場に跪き一礼をする。「剣聖様、教皇の命により例の品を運んでまいりました。聖騎士団のほぼ全ての部隊が終結しております」「そして、書状を剣聖様へと」戦士が懐から封筒を出そうとすると、sakezukiが必要ないと掌を戦士に向けた。「エロスちんもやっぱゲルの弟子だね。インターと同じで頭が固いよ」「まぁそう言うな」「それより、アウグとの交渉ご苦労だったなエロス」「だ・か・ら、エロスじゃないです。ネ・ロ・スです。師匠も剣聖様に悪されすぎです」「それより剣聖さま。教皇から伝言が『アウグの民の全てはお前に託す。だから必ず生きて帰って来い』との仰せです」「老けたたな爺さんも。おいらは簡単には死なないさ、全国一千万の女子高生が泣いちゃうからね」「それよりタケちん、例の物は捕捉出来るかい?」「ええ、1キロ先に反応を確認しました。今、システム起動中です。シンクロ率も上昇、レベル1クリア」「トリプル7システム、霊力反応、増幅回路ともにオールグリーンですね」「よし、こっちは良さそうだ。後はゲルちん達次第かな」その時、一瞬の隙を突き、いや隙など突く必要がない。空気すら動く気配もない速度でアルテミスの視界を横切りゲルニカの前に一人の戦士が現れた。そして、膝つくネロスの頭に足を置き軽くアルテ達を見渡した。「ようエロス久しぶりだな。相変わらずへたれっぽいな」戦士の姿を見たアルテミスは体中の血液が沸騰するのを必死でこらえていた。アルテミスにとって忘れることの出来ない相手、ロクショウの命を奪った戦士「神速のインター」マシン・インターであった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第53章 切り札(ジョーカー)』塔の屋上ではゲートキーパからの魔力が集まり、上空のの空間に歪が出来つつある。ゲートキーパへの各軍の攻撃には特に動揺もなく、ただひたすら時を待っていた。「ザード様、巨大な霊力反応が確認できました」トリーシャが報告する。「ああ、間違いない。あれを出してくるとは、アウグの老人達も必死だな」「先にジョーカを切るのはやはり向こうだったな。しかし、本当にいいのだな剣聖よ」ザードフィルはどこか悲しげな表情を浮かべ呟いた。「よいのですか」トリーシャがザードフィルを気遣い悲しそうな表情を浮かべる。「人の真価など、鬼籍に入った時に他人が語ればよい。剣聖と俺は生き方が違った。ただそれだけだ」ゲートキーパから1キロ東に行った場所に聖騎士団が無数の棺桶のような箱を並べ、僧侶達が棍棒を両手に掲げ交互に膝をつき祈りを捧げる。祈りの言葉は言霊となり大気に溢れ、一帯を神聖な空気で満たす。その輝くオーラは何かの意思に従うように箱に注ぎ込まれていった。マシン・インターはネロスの後頭部に足を置いたままゲルニカを睨み付けている。「久しぶりだなゲル。まさか腕は鈍ってないだろうな」「ちょーインター!いつまで汚い足を乗せとんや!」ネロスがインターの足を振り払い対峙する。「相変わらず、器の小さい男だな。エロスよ」「違うわい、心優しき、器の大きい男ネ・ロ・スや!」「下らん、そんな言動にこだわっている所が小物感たっぷりだぞ、器の大きいネロス君」嘲るように横目でネロスを見るインターの手が一瞬だけぶれているようにアルテミスの目が捉えた時、ネロスの身を包む鎧が全て砕け散っていた。「ついでに着替えたらどうだ、その臭い鎧を脱がしてやった」「く、くさないわい」「インターよ、何故裏切った?」ゲルニカが冷静に問う。「簡単なことだ、集団戦において剣聖をも凌駕すると謳われる魔槍メタルビートルを持つ鬼神ゲルニカを倒すため」「全力の師匠を倒すことが弟子としての使命。武人として頂点を極めるのは当然だ」「何!インター、貴様裏切ったのかっ!」ネロスが叫ぶ。ネロスがインターに向かって背中の槍に手をかけようとした刹那、既にインターの突き出した槍の穂先が喉元数センチの所まで来ていた。そしていつでもネロスの首に大きな穴を開けることは簡単に出来た。それでも、インターが喉元で止めたのは自らの意思によるものでは無かった。インターの喉元にも同様に銀色に光る穂先が今にも突き刺そうとしていた。槍の伸びる先にはアルテミスの手があり、真っ赤に染まる瞳が、額がぶつかる程の位置からインターを睨み付けていた。「お前あの距離から。どうする、神速と呼ばれる俺の刃はネロスの首とお前の首を切り離すなど造作もないぞ」「やれるものならやってみろ。同時に私の槍がお前の喉元に風穴を開ける」身体の中の血液が沸騰するのを抑え、アルテミスが静かに脅す。しかし、その身体には既に異変が起きていた。槍を握る腕は硬質化が始まり、額には無数のしわと中央には僅かに紅い宝玉が少し姿を現し始めていた。金縛り状態の動けぬ二人を解き放ったのはメタルビートルであった。素早い動きで二人の間に入り、槍を回し二人を左右に吹き飛ばした。「ネロスよりまともな弟子を取ったようだな」インターがアルテミスとゲルニカを交互に睨み付ける。「インター、もうお前の槍は俺を超えてるさ。それ以上何を望む」「誤魔化すな、本気のお前を倒してこそ最強の名」「インターよ、万の兵に値するとまで言われるようになって尚、高見を目指すか」「ならば、武人として相手しよう。来いメタビ!」メタルビートルが軽く跳躍する。紅い光に包まれ中から紅蓮の炎を纏う槍が現れゲルニカの手に収まる。直後にはインターの槍がゲルニカを襲う。しかし魔槍の前に全て攻撃は弾かれる。一度間を置くインターに対し、ゲルニカの魔槍が追撃をするがインターのステップの前に空を切る。インターが反撃態勢に入った時、ゲルニカの繰り出す炎と氷の槍がインターを包む。「付け焼刃の知識技など!」構わず反撃に転ずるインターの動きが鈍る。足元が先ほどの攻撃により僅かに凍らされていた。一瞬の間が熟練者同士の勝敗を別ける。インターの周りに複数の分身が現れ一気にインターを串刺しにする。完全に決まったとアルテミスの目に映った次の瞬間にはマシン・インターの身体は崩れ去り、新たな姿がゲルニカの背後に現れた。「ダミーか、お前の得意技だったな」ゲルニカは背後のインターに振り向かずに言葉をかけた。「このゼロ射程では外さない。俺の勝ちだなゲルニカ」既に勝ちを意識したインターの背後に殺気がほとばしる。ゲルニカの持つ槍は魔槍ではなく通常の槍に変わっていた。先程の分身攻撃は囮で変身を解いたメタルビートルがインターの背後から槍を繰り出した。「ちぃ」インターはすんでの所で再度ダミーを出し切り抜けるが、頬には一筋の傷がついた。「メタビーにはこういう使い方もあるのさ」「しかし、それでも相打ちとは神速と言われるだけある」ゲルニカの頬にも同じく血が滲み出ていた。先程のメタルビートルの攻撃の間隙をつきゲルニカに一太刀浴びせていた。「ならば、本気を出さないといけないな」「来いメタビ、バージョン2だ!」ゲルニカは手に持つ槍を自らの周りに浮かせ、空いた手をメタルビートルに向ける。再度空中に跳躍したメタルビートルは紅い輝きを放ち今度は紅蓮に包まれた巨大な弓に変化する。「ゆ、弓だと」インターが驚きつつ攻撃態勢に移った瞬間、体中に小さな痛みを感じた。「くぅ、抜き打ちすら見えない程の弓さばきとは、しかしこの位のダメージ……」「動かない方がいい、俺のビットはお前の得意なサイドもダミーも通用しない」「そして、蓄積されたダメージは一気に暴発する。お前の負けだマシン・インター!」「何っ!ぐはぁーーー!」インターがゲルニカに向かい足を踏み出したとたん、体中から血を噴水のように噴出し前のめりに倒れた。
2007年08月21日
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ひやりとした感覚を背中に感じ、意識が戻る。閉ざされた暗闇にから解放されようと、目蓋が少しずつ明かりを取り入れる。ぼやけた視界がやがて鮮明となり、ゲルニカの顔を浮き上がらせる。それと同時に記憶がはっきりと脳裏に戻ってきた。「うぅぅ、私はどれだけ気を失っていた?他の人達はどうした?」「大した回復力だな。あれからまだ5分程度だ」ゲルニカはアルテミスの受けた傷が既に跡形も無く消え去っているのに驚愕の表情を隠さない。その隣では、人の形に戻ったメタルビートルがケラケラと陽気な表情でアルテミスを伺っている。「マスタ・・・」「ん?お前とは初対面のはずだが、もちろん弟子にした覚えも無いが」「確かに、先ほどの闘い方や槍のさばき方は俺の流派と酷似していたな」「ケケケ、まぁいいじゃん。私はこの子を気に入った、弟子にしてやれゲル」「私はメタルビートル。こいつはゲルニカ、一応私のパートナーだ」メタルビートルが微笑みながらゲルニカを指差し、片目を閉じた。「私は・・・アルテミス。それ以外は訳あって話せない」「いいだろう、ここにいる奴らは皆訳ありばかりさ。名前が知ればそれ以上は必要ない」「他の奴らは上を目指して行ってしまった。感じるだろこの異様なオーラを」「どうやらザードフィルの儀式とやらが始まったようだ」「ならば我らも」急いで立ち上がるアルテミスの肩を押さえつけ、言葉をさえぎるようにゲルニカの手が制止した。「そう焦るな。俺達はこれから外へ向かう、出来ればお前にも来てほしい」「外?」ゲルニカの言葉にアルテミスは不可解な表情を見せる。「お前はどうやら俺達地上界の者にとって切り札となりそうだからな」ゲルニカ、メタルビートル、アルテミスの3人は塔の中腹にあるテラスのような所へ出て外の様子を伺った。その眼前に視界の全てを覆い隠すかのように巨大な黒い塊が現れていた。その塊の周りには更にどす黒いオーラが立ちこめ、見る者の生気を奪う。通常の人々、いや生半可なプレイヤーでもこのオーラにあてられては意識を保つことが出来ないであろう。良く見ると、そのオーラの中には無数の魔獣達が飛び回り、地面を覆い、群がっている。「あ、あれは何なんだ?」アルテミスが洩らす。黒い物体に注意を注ぐアルテミスの横にうっすらと一人の魔導師が姿を現す。「あれは、ゲートキーパーさ」「誰だお前は?」「アルテミス、彼はこの塔の主さ。正確には彼のエイリアス(分身)でも飛ばしてきたんだろう」「流石に察しがいいねゲルニカは」「上で少しお祭りをしていてね、この世界を守る宝玉の欠片から彼らを呼び出したのさ」「それに釣られて、地下界の者達も大勢やってきたみたいだけどね」「何故そんなことを?」アルテミスの問いに少し微笑みを返すザードフィル。「さぁ、僕にも全ては解らないな彼の思惑は」「ただ、彼が一度封印した赤い悪魔を呼び出すのに必要なんだよ。ゲートキーパーは異界の門番なのさ」「この塔を中心として今、巨大な魔方陣が完成している。上を見てごらん」ザードフィルが指差した頭上には紅玉のような赤い月が大きく揺らめき、その中心に黒点が浮き上がりその点は次第に赤い月を侵食し始めていた。「さぁもう直ぐ赤い悪魔が復活する。君達はどうする?」「赤い悪魔の復活を阻止するなら上、ゲートキーパーを倒すなら下だ」暗い夜の砂漠の街、唯一地上を照らす赤い月は光を失いかけ、地上には巨大な魔物とおびただしい程の数の魔獣。アルテミスの心と身体を縛り付ける無常の風が通り抜ける。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第52章 挟撃』ザードフィルの両手が大きく広げられ、天に輝く月を抱く。うっすらと赤い光に照らされた夜の空は急激に雷雲が立ち込め稲光が大地を襲う。空に浮かび上がった宝玉はそれぞれ光を放ちながら、大地へと降下し地表に突き刺さる。光の宝玉達はお互いの色の光で結びつき、塔を中心に魔方陣を浮かび上がらせる。そして地表は隆起し、巨大な黒い山を形成する。隆起した周りは獣の口のように裂け、その奥深くから黒い霧のように魔獣達が鳥肌の立つような泣き声と共に湧き出てくる。塔を中心に重く、不気味なオーラが充満する。やがて、黒い巨大な山は小さく震えだしそれが山などではなく、一つの大きな魔獣である事を誇示するかのように立ち上がった。その巨大な魔物は雄叫びを上げ、その強烈な咆哮は天空を貫き大気を震撼させる。「ゲートキーパーが召喚されたな、これで異界の門が開かれる」ザードフィルがにやりと笑う。「さて、僕ちんの仕事はこれで終りやね。ほなさいならや」ザッザッ!sakezukiが一同に背を向けるとロウ・ヴァイオレットが立ちふさがる。「悪いが少し付き合ってもらおう」背中に担いだ大剣をsakezukiに向け、じわりと間合いを詰める。他の者達も逃がしはしないとばかりにsakezukiを囲みsakezukiは遂に、塔の隅に追いやられた。稲光がロウの大剣に反射し、その狂気に満ちた顔を浮かび上がらせる。「さぁ、もう逃げ場は無いぞ。我が剣と交えるか、恐れをなして塔から身を投げるか」「どちらがお好みだ?無敵の剣聖様よ」ロウが更に間合いを詰め、剣先をsakezukiの喉元へ差し出す。「フフ、おいらは勝てない勝負はしないから無敵なのさ」捨て台詞を放つとsakezukiは振り返り、塔から身を投げ出した。「馬鹿な!この高さでは生き延びる事は不可能だぞ」ロウは驚愕の表情を隠さない。宙に投げ出された体をひねり、sakezukiは背中の巨大な斧を塔に向かい振り下ろす。カン!キン!金属と石がぶつかり合い、火花が飛び散る。一度弾かれた斧を更に振り下ろし塔に一文字の傷を残し、巨大な斧が食い込む。sakezukiの鎧に包まれた重い体は巨大な斧と石の火花を散らす抵抗で落下速度が落ちる。塔の上からは苦虫を噛み潰した顔で伺うロウの横から、無表情な顔でルジェが弓を構え、矢を打ち下ろす。「ちょぉおおおおおおお」sakezukiは予想していなかった攻撃に驚き、思わず奇声と共に塔の壁を蹴り再び宙の身を投げ出した。当然の如く、ルジェの矢は空中のsakezukiを再び襲う。その時であった。sakezukiの真下から突風が舞い上がり、sakezukiの体をふわりと持ち上げ矢の攻撃から守った。「ナイス!タケちん」sakezukiの真下、塔のテラス部分にはタケウマが巨大な盾を回し、竜巻を作りsakezukiの体を浮き上がらせていた。竜巻を作り出す巨大な盾に着地したsakezukiは風に乗り、体の上体を使いルジェの矢の追撃をかわす。円を書くように、風に舞う落ち葉のようにゆらゆらと風に乗り落下して行くsakezukiにルジェの矢が当たらない。「うりゃー1440やぁ!」きりもみ上体で体を捻り無数の矢を避けるsakezuki。更に旋回中の上空から襲う無数の矢に対し、足元の盾に手をかけ頭と足を入れ替えて、天地逆さまの上体で体を更に捻り今では足の上にある盾をプロペラのように回し迫る矢を弾く。「よし、僕ちん3Dも完璧やね」グキ、グワギャバボンーーーーーーーー!ブチッ!「首がぁあああああああ」「そりゃね、あの体制から無理に縦回転加えると方向感覚なくなりますよ」「普通に矢に当たった方が頭から落ちるより痛くなかったんでは?」石のテラスに頭から突っ込み、大きな穴を開けたsakezukiの足をひっぱりながらタケウマが呆れ声を出す。「はひはとぉーはへひん(ありがとうタケちん)」「うん?なんでそんな口調?」「うぇええええ!口から血っーーーー!」「てか、舌がここに落ちてますよーーー!!」タケウマの足元には無残にも自らの歯で噛み千切られた舌の断片が悲しく落ちていた。「ぎゃぁああああ、おいらの舌がぁあああああ」「でも、おいら二枚舌だからいいか」「復活はやっ、妖怪ですかあなたは!」「さぁさぁ、こっちですよ」タケウマに引きずられ、二人はテラスを駆け抜けて行った。塔の上ではルジェとロウが苦虫を噛み潰した表情で二人の方向を目で追っていた。<あとがき>RS隠居中のため、執筆活動も停滞しております。楽しみにしている数少ない読者様には大変迷惑をお掛けしておりますm(_ _)m更新頻度は下がりますが、続けて行くつもりですので今後ともよろしくお願いします。
2007年07月11日
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廊下の空気が冷たさを感じる。視線の向こうで悠然と立つガラテアから放出されるオーラが、アルテミスの肌に恐怖の寒さを与える。その反面、内面より湧き出る戦士としての高揚感が体を火照らした。「魔槍メタルビートルだ、そいつに任せろ。少なくとも死にはしない」ゲルニカがアルテミスに話す。アルテミスはゆっくりと頷く。_奴の言う通りだ、私に全てを任せなさい。_魔槍メタルビートルよ、悪いけどこれは私の戦い。_あなたは少しだけ私に力を貸して。私のオーラと同調して。_馬鹿な!プロフェッサーと呼ばれるゲルニカですら私と同調するのにどれ程かかったと思ってる。槍から伝わる心への言葉にアルテミスは耳を貸さず、自らのオーラを高めメタルビートルに同調する。槍から煙のように湧き上がる赤いオーラとアルテミスのオーラがシンクロし、絡み合うようにアルテミスの周りに渦をなす。ゴォーーー!張り詰めた糸が切れたかの様に一気にオーラが膨れ上がり、紅蓮のオーラがアルテミスの背後に不死鳥を浮かび上がらせた。これには槍の持ち主ゲルニカも、対面するガラテアやその背後に控える楸やフクチ、花火さえも度肝を抜かれた。「まさかこれ程とはな」「初めて手にしたメタビと簡単にシンクロするだけなく、オーラが完全に具現化している」ゲルニカは呆れたように言葉を発した。「どうやら敵では無さそうだな。しかし武人としてこれ程のオーラを見せられては相手しない訳にはいかないな」ガラテアはゆっくりと大剣で平正眼の構えを取る。「俺は元老院直轄部隊の隊長、ガラテア。お前の覚悟を決めたオーラに武人として最大限の力で応えよう」「はぁーーーーーっ!」ガラテアのオーラが急速に高まる。アルテミスとは違い、紺碧色のオーラが足元から湧き上がり大剣ごとガラテアを包む。無数の傷跡がついた大きな肩からは、オーラと同調するように黒い巨大な龍の頭の模様が浮かび上がり、その龍はやがて裸の上半身を囲むように全身を現した。その文様と同じ様にオーラも渦を巻きガラテアの周りに昇竜が出現する。青いオーラと赤いオーラが埋め尽くす中、静かにアルテミスは槍を構え大剣に向き合う。_この人、強い!巨躯と大剣の為かガラテアは大雑把な力技を得意と思われがちであるが、元々は正統派の戦士であり一軍を任される男である。その真骨頂は基本に忠実な型にある。背筋が伸び、前に出した右足は少しだけ踵を浮かせ、膝は緩やかに曲がっている。後ろの足はつま先立ちで何時でも獲物へ飛びかかれる態勢をとり、大剣を支える左手はしっかりと右手は柔軟にリラックスした状態である。その剣先はアルテミスの喉元へと向けられていた。アルテミスは同じように槍を水平に構えガラテアに集中するが、ガラテアの強い剣先が実際の数倍にも見え、脳裏にその剣先が喉元を襲うイメージが体を硬直させる。_くそ、相手に飲まれるな。_間合いは槍の私の方が長い。スピードでは私の方が上のはず。_迷うな、行くぞ!チッチッ剣先と穂先が触れる乾いた金属音がした。その瞬間、アルテミスは後ろに跳躍し間合いを開ける。アルテミスは体全体に寒気が走り、本能的に危険を回避したのであった。「いい感してるな」ガラテアは構えをそのままにアルテミスを誉める。_いつの間に間合いが詰まった?ガラテアに動きは見られなかった、その事がアルテミスの頭を混乱させた。_ケケケ。小娘よ、奴の足元を良く見るんだ。アルテミスは再び槍を構えると、ガラテアの足元に注目した。ガラテアは相変わらず微動だにしない平正眼を保っているが、右の足は尺取虫のように静かにアルテミスとの間合いを詰めていた。「安心しな、殺したりしない」ガラテアのこの声がアルテミスに決断を促した。_一撃、私の全てをこの一撃に込める。_この人には下手な駆け引きなど通用しない。_いい決断だな。心を決めたアルテミスは目を閉じた。剣先を見ると体が萎縮する。萎縮した筋肉では本来のスピードが出ない。体の力を抜き、オーラを相手と同調させ一気に攻撃を繰り出す。ゲルニカに教わったランサーの基本を思い出していた。「ほう、覚悟を決めたようだな。ますます気に入った」「俺は二段打ち下ろしだ、それ以外の技は出さねぇ」再び対峙した二人のオーラが交じり合う。バン!アルテミスが槍を突き出す。ダッダン!それに呼応するようにガラテアの大剣が強烈な踏み込みと共に迎え撃つ。強烈な二人の打ち込みに伴う踏み込みにより、石の床に亀裂が入る。紅の不死鳥と紺碧の龍がぶつかり合う。一瞬の間に二人の距離は縮まり二人は体ごとぶつかり、小柄なアルテミスは宙に投げ出され、石の廊下に激しく体を打ち付けられた。「いい突きだった」ガラテアの声にアルテミスは反応しない。篭手と兜に強烈な攻撃を喰らい、意識ごと飛ばされたのであった。ガラテアの方も右手で脇腹を押さえ、その指の間から血が流れ落ちている。_おいお前、大丈夫か?メタルビートルの心の声にもアルテミスは反応を示さない。「ちょっと、起きなさい。こんな事で死なれたら私の気分が悪いじゃない」メイヴィが涙を流しながら、倒れたアルテミスに近寄り笛を吹き始める。すると消えかかっていたアルテミスのオーラが再び不死鳥を象り、アルテミスはよろめきながらも再び立ち上がった。「うぅうう、ありがとうメイヴィ。また助けられたね」アルテミスの言葉の意味はメイヴィに伝わらなかったが、涙が伝うその表情に明るさが戻った。_おい、もう止せ。さっきの攻撃が通用しない以上、お前に勝ち目は無いぞ。_もう一度さっきの喰らったら本当に死ぬぞお前。「思い出したよ、覚悟の無い攻撃はフェイクにもならない。昔メイヴィに言われた言葉だ」_何言ってんだ?「ほう、あの攻撃を喰らって尚、俺の前に立つか」「前言撤回だ。殺す気でいく。それが俺流の礼儀と思ってくれ」ガラテアが再び平正眼の構えをする。ガラテアの後方にいた花火や楸が止めようと動いた瞬間、ゲルニカの分身が彼らの前に立ちはだかり、静かに首を横に振る。_今の私の攻撃はあの人に通用しないのはわかった。_でもあの人は優しい。その優しさが油断を生むはず。_メタビ、お願いがあるの。さっきのように意識まで飛ばされるのだけは避けたいの。_私の考えはもう解ってるでしょ。私の体が動かなくなった時はお願い、あなたが私の代わりに動かして。_・・・お前、結構凄い奴だな。_わかったよ。それしか奴に勝つ方法は無さそうだな。しっかり意識を保てよ。アルテミスはオーラを高め、不死鳥は再び舞い上がった。「行くぞ!」バン!ダッダン!再びアルテミスの突きとガラテアの打ち下ろしがぶつかり合う。激しい踏み込みが音をたて石の廊下を砕き二人の戦士は体ごとぶつかり合う。全く同じ光景である、しかし今度は吹き飛ばされる事無く、その場へ前のめりに倒された。ガラテアも同じ所、右脇腹に激しい突きを喰らい流血は激しさを増した。_何とか意識は保った。_今しかない、相手が勝ちを意識した瞬間のこの隙にもう一度同じ場所に攻撃を!_動いて私の体よっ!アルテミスの瞳が真っ赤に輝き、ガラテアを見据える。しかし其処には油断など微塵も感じさせないガラテアが再び平正眼の構えから鋭い眼光をアルテミスに向けていた。_うぅ、何故だ。明らかに私を既に打ち負かしているのに。_この男は殺しても尚戦いを止めないのか!アルテミスは愕然としながらも、覚悟を決め再び槍を持つ手に力を込めた。しかし、次の瞬間にはアルテミスの目の前にゲルニカが現れ、アルテミスを制止する。「『残心』と言う」「優れた武芸者は敵を打ちのめした後にも心を残す」「お前は良くやったよ」「YESマスター・・・」アルテミスはそれだけを言って力尽き、再び意識を失った。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第51章 残心』天には赤い月が昇り、常に北を指すという星すらも朱色に犯している。ザードフィルの居城の屋上に数人の黒装束の者達が集まっていた。その中心にはザードフィル本人が立っている。「さぁ、そろそろ始めようか同志達よ」ザードフィルがマントから両手を出し、頭上へと突き出し何やら呪文のような言葉を発する。その呪文に呼応し、足元から文様と共に六亡星が激しい光と共に現れた。「我ら大地の民の宝玉を今解放せん」掛け声と共に、懐から黄色に輝く宝玉を取り出した。宝玉は静かにザードフィルの手より離れ上空に浮かび上がる。「さぁ風の子達よ」ザードフィルに促され、3人の黒装束が前に進みその中心にいた者が光輝く緑石をかざした。光る緑石は手から離れ上空に浮かび上がる。「さぁ暗闇の子、ロウ・ヴァイオレットよ」また一人黒装束の者が進み出て、黒宝玉を宙に浮かべた。「さぁ、水の民。元老院よりの使者、ネド・ケリーよ」同じく、青宝玉が宙に浮かぶ。「さぁ、我が同志。その光輝く慈悲の心と共に聖騎士、sakezukiよ」眩しく光と共にまた一つ宝玉が浮かび上がる。「そして、これが最後宝玉。レッドストーンよ今その力を解き放て!」最後にザードフィルは自らの首に下がる赤い宝玉が付いたペンダントを天空高く放り投げた。<あとがき>う~ん、もう直ぐ、もう直ぐ。あと少し、あと少し。頑張れmikusuke!
2007年05月31日
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ザードフィルの居城、石で出来た床、音を出さないように神経を尖らせながら走るメイヴィとアルテミス。廊下と廊下が交差する部分では立ち止まり、メイヴィを制止するように手をあげ、壁に背中を付けてその先の様子をアルテミスが伺う。「ねぇ、どうして気で探らないの?向こうには誰もいないに決まってるわ」「そうね、でも私よりもっと強い人なら気を消すぐらい簡単にするでしょ」「お姉ちゃん、少しは頭使うのね」生意気な口調のメイヴィであったが、不思議と腹は立たなかった。成長後のメイヴィを知っているからか、彼女の言葉は常に真実を告げていると思えたからであった。背中に壁を背負いながらメイヴィへ笑みをこぼした時であった。その背後の壁から背中へ強烈な圧力がかかり、轟音と共にアルテミスを襲った。一瞬速く、危険を感じ取ったアルテミスはメイヴィを抱え廊下を転がるようにその場から遠ざかる。床にしゃがみ込むような態勢でそれでも崩れた壁の向こうに穂先を向け警戒する。アルテミスの下にいるメイヴィは無表情なままアルテミスの険しい表情へ目を向ける。「ふーん。こんな場合のためね、勉強になったわ」メイヴィの表情が少しだけ緩んだ。「ああ、しかしこいつはまいった。これ程の相手とは戦ったことがない」アルテミスは余裕無く答えた。「走れるか?」アルテミスの問いにメイヴィが小さく頷く。「私がその角を飛び出したら、お前は反対方向へ逃げるんだ。私がなんとかしよう」「お姉ちゃんはどうするの?」「安心して、私は此処では死なない運命なの。いい、わかるよね。私の胸の中の子が私を守ってくれるから」それだけ告げるとアルテミスは一気に崩れた壁の向こう側へと飛び出した。正直な所、時間を稼いでメイヴィを逃がし、隙をついて自分も命だけは助かると思っていた。その思いも壁から飛び出した直後には、自分の甘さを痛感し、間違いだったと認めるしかなかった。アルテミスの目の前には一人では無く、複数の猛者達が立っていたのであった。その全ての者達がアルテミスに気を悟らせない程の者達である。そしてその雰囲気から一人一人がアルテミスより断然に死線を越えてきた猛者である事を気の大きさではない部分で察知できた。「くぅ」落胆の表情から、奥歯をかみ締め戦う覚悟を決めたアルテミスは槍を猛者達に向ける。「お嬢さん、誰だか知らないが後ろにいるメイヴィを返しちゃくれないかい?」先頭にいた大男が大剣を肩に担ぎ前へ進み出る。その動きに合わせ、少しだけ後ずさりするアルテミス。その大男の後方に良く目をやるとアルテミスの知った顔が数人確認できた。花火、セシルス、楸であった。「楸!」思わず口に出したが慌てて口を閉ざすアルテミス。「ん?知り合いか楸」前方で大剣を肩に担ぐガラテアが楸を見るが、楸は首を横に振るだけであった。状況からすると敵では無いがアルテミスは用心深く構えを解かない。「傷つける気はないが少しだけ話を聞いてくれないか?」ガラテアの声かけにも頑なに構えを解かないアルテミス。仕方ないといった表情のガラテアの肩の剣が微妙に動きだす。その動きを察知しアルテミスは槍に力を込める。軽い風が舞ったように感じたその次には体ごと宙に放り出される。身軽なアルテミスは風に逆らわず、天井を足で蹴り再び床に舞い戻り、ガラテアへ向かって槍を構える。「ほう、中々の身のこなし」ガラテアは感嘆の声を上げ、アルテミスはガラテアに集中していた。_この人強い。まだ全然本気じゃないのに。_このままではまずい。腹を決めたアルテミスのオーラが槍へと伝わる。そのオーラの強さにガラテアを含め戦士達が驚きを隠せずにいた。一撃で決めるしかない、それ以上かかると他の者にやられる。そう決めたアルテミスの神経が刃のように研ぎ澄まされる。一点に意識が集中した時、アルテミスの肩に手をやる者がいた。咄嗟に振り返るアルテミスの頬に指が刺さる。「戦場では常に背後にも気をやらないといつか死ぬことになるぞ」「!!」アルテミスは声にならない程驚いた。自分の頬に指を差したその男はアルテミスの良く知る人物。そして、戦い方を全て叩き込まれた師匠。ゲルニカであった。「お前があの有名なゲルニカか」ガラテアが少し驚いた表情を見せる。「ああ、ちょいと面白そうだったのでな。それとこいつが応援しろとうるさくてな」ゲルニカが右手に持つ槍を指差して片目を閉じる。「さぁお嬢さん。槍子の強さを見せてあげなさい。ちょいとハンデでこいつ貸すからさ」ゲルニカがアルテミスの肩を叩き、後ろに下がりながら自らの槍をアルテミスに放り投げた。そう、魔槍メタルビートルであった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第50章 師弟』ザードフィルの居城の最上階。その窓際で赤い月を眺めるこの居城の主がいた。「さて、随分お客が集まってきたな」「誰もが自分の正義を掲げ、そしてそれぞれに対する悪を討ち取りに」「その敵の首を取った後、彼らには天国でも現れるとでも言うのか?」「それとも、俺や赤い悪魔の首を取らないと世界が地獄にでも変わるとでも思っているのか?」「私には到底解りかねます」ザードフィルの後方、扉の横で立っている男が答える。「ロスよ。お前は実に忠実だよ。でもお前はお前の考えで動いてもいいのだぞ」「いえ、御館さまに従うのが某の考え」「誰に脅迫された訳でも、誘惑された訳でもありません。それが某の望みなのです」ロス・ゲラーは静かに答える。「それも一つの考え方か」ザードフィルは振り返り、少し笑みを見せまた窓の外の赤い月に目を向ける。少し間を置き、またザードフィルが話し始める。「人は欲望の為に人を傷つけてきたのか、人を傷つける為の言い訳が欲望なのだろうか?」「そして、人を守る為にまた人を傷つける。それとも、人を傷つける為の言い訳が人を守ることなのか?」「誰かより強いことはそんなに偉いことなのか?」「競って強くなることを目指し、その結果どんどん強い技や装備が生まれ、そして多くの血が流れる」「自分達だけの平和を守るため、自分達以外の者達の血を流す」「悲しいが、それが俺の見てきた現実だな」「何故だと思う」「恐れで御座いましょう。他者への恐れですな」ロス・ゲラーは静かに答える。「それも正解の一つだな」「他者との違いが恐怖や孤独感を生み、争いを育てる」「唯一、そこから逃げ出す方法は自分で考える事を放棄し、他人に同調することだけだ」「そして考えない者達によってまた争いが大きくなる」「人は本当に意味では隣人とでさえ意識の共感を持つことが出来ない」「心の壁は果てしなく厚い」「まぁ俺は神様じゃない、全ての人間を救うことなど出来んし、全ての悪を倒すことも出来ん」「今夜は俺も楽しむとするかさぁ行くぞ、ロス。宴の始まりだ」ザードフィルは振り返り、ロス・ゲラーに声を掛けて居室を後にした。全ての者達の思惑が薔薇の蔓のように絡み合い、お互いの棘で刺激しあう。宴は静かに始まろうとしていた。<あとがき>いつの間にか50章><;12章×3部構成のつもりが・・・orzしかも、まだ2部すら終っていない・・・正直疲れたよ><;うーん富樫でも見習うかw
2007年05月30日
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不思議な声に導かれ、アルテミスは現実の世界へと再び降り立った。そこは小さな部屋、小さな机とその上に小さな明かりと花が一輪。冷たい石の壁には小さな花の絵が掛けられている。アルテミスは上と下がある世界を確かめるように両手で床を何度も確かめる。「やぁまた会ったね」部屋の片隅から聞き覚えのある声がする。アルテミスは振り返るとそこにはメイヴィの姿があった。しかし、アルテミスの知っているメイヴィとは明らかに違う。そう若すぎるのであった。「メイヴィなのか?」「ええ、そうよ。よく解ったね」若すぎるメイヴィに問いかけた答えは想像した通りであった。「それよりお姉さんは誰なの?何故、私の名前を知っているの?」「ん?『また会ったね』ってメイヴィから言ったんじゃなかった?」それもそのはず、この世界は過去。当然アルテミスがメイヴィに会い、このフランデル大陸にやってくる前の世界。そもそもメイヴィがアルテミスを知っている事のほうがおかしい。アルテミスは首をかしげた。「私はお姉さんに挨拶したんじゃないのよ」「お姉さんの中にいる子、その子に挨拶したの。それよりお姉さんは何故、私のこと知っていたの?」ここで初めてメイヴィの言った意味が理解できた。メイヴィはアルテミスの中で今は眠っているあのレッドストーンに対し話しかけたのだ。そしてアルテミスは軽率にもメイヴィの問いに答えた自分の失敗を悔やんだ。この過去の世界に干渉してはいけなかった。そして前々回、前回よりもかなりこの世界に馴染んでいる自分を実感した。(少なくとも前回はトリーシャ以外には私の姿は見えなかったはず)(メイヴィは適正者だからなのか?いやこの感覚は多分他の人間にも影響がある気がする)「メイヴィ、あなたさっき私の中の子に叫ばなかった?『そっちはダメー』って」「ええ、言ったわ。とても危険な感じがしたんですもの」「どんな感じとかって聞かないでよ。それはとても凄く嫌な感じなんだけど説明なんて出来ないから」「ええ、そうねメイヴィ。私の名前は言えないの。ただ赤い旅人ってだけ」「ふーん、いいわ。赤のお姉さんね。大人は色んな事情とかってやつで、子供に真実を隠したがる生き物だからね」大人びたメイヴィの口調はアルテミスを少し馬鹿にした感じではあったが、それ以上この話題を続けるのをアルテミスは嫌がった。「ねぇメイヴィ。少しだけ聞かせてもらっていいかな?ここが何処とか・・・」「そう、何故あなたが此処にいるとか」「此処が何処か知らない人がどうして私が此処にいる理由を知りたがるの?可笑しなお姉さんだね」「まぁいいわ。取り敢えず此処はザードフィルのお城みたいなとこね」「そして私はトリーシャを助けるために此処に来たの。まぁつれて来られたってのが本当なんだけど」メイヴィの口からザードフィルとトリーシャの名前が出た事に安堵を覚えたアルテミスであったが、メイヴィの口調に少し違和感を覚えた。トリーシャを助けたあのザードフィルからトリーシャを救うとはいったどういう意味なのかメイヴィを質問攻めにしたい気持ちを抑え、メイヴィの話の続きに耳を傾けた。一時間位の時が過ぎた。メイヴィの話はアルテミスに現状を理解させるのに充分であった。そして、メイヴィの方からアルテミスに対し質問が始まろうとした時、突然部屋の入り口が開かれ会話が途切れてしまった。バタン。扉を開ける衛兵。咄嗟に身を低くし衛兵の足元へ滑り込むアルテミス。衛兵は声を上げる間も無くアルテミスの突き出した弓で顎を上へ弾かれ、次の瞬間には背後からの手刀で後頭部を殴打され地面に倒れ気を失っていた。「さぁ、どうしようか」「お姉さん、馬鹿ね。もう逃げるしかないじゃない」咄嗟に体が反応してしまったアルテミスは少し反省したが現状ではメイヴィの言う通り逃げるしかなかった。二人は横たわる衛兵の部屋の奥へと運び、急いで部屋を後にした。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第49章 少女』時は、ザードフィルの「祭り」が始まる数時間前、sakezukiはある男と一緒にいた。青空に響く太鼓の音、正確なリズムは機械的ではなくむしろ歌声のようにも聞こえる。その音の主がいる部屋へsakezukiは足を進めた。その後ろに一人の僧侶を伴って。「シャッフルな、いいサウンドでしょ、太史慈ちん」「ああ、とても優しい音だな、彼らしいよ」「ん?タケは優しいだけじゃないさ、見てみなグリップを変えたフルストロークが来るよ」タン!スネアの大きな張りのある音に合わせて、リズムが速くなる。それでも、メロディアスな感じは失われない。「タムでもスネアでも音圧が変わらない、あの手首の強さと柔らかさがタケの強さの秘密さ」「そしてこの正確なリズム感もね、マイク・ポートノイも真っ青さ」 ※マイク・ポートノイはドリームシアターのドラムとして有名。3バスドラを使いこなすテクニシャン。「リズムと剣士の強さは関係あるのか?」太史慈が聞き返す。「大有りさ、見てみなあのパラディドル、左手のダブルから始まるところなんて左手剣を使う剣士向きでしょ」「相手のリズムを崩し、自分のリズムに持ち込む。剣士同士の戦いはリズムを制した方が勝ちなのさ」「そっちにもいたっしょ、あのデモとか言う運ダブクリ剣士さん」「サモだ、サモ!確かにあの独特の間合いに引き込まれると大抵の奴は知らないうちに倒れているな」「キャッキャッ、強そうだね。でもうちのタケもリズムじゃ負けないから対決すると楽しそうだね」「ちなみに、腕の動きだけじゃないのよ左のハイハットも見て」「ん?音もなっていないのに、パカパカしてるな?」「そそ、常に左足もリズムを取ってるのさ。その足捌きがディレイの強烈な反復攻撃を可能とするんよね」タケウマが二人に気づき、部屋中に溢れていた歌声のような音が鳴り止んだ。「sakeさん、ドラムは唯の趣味ですよ。でもsakeさんみたいな人は向かないけどね」「ちょータケちん、僕ちん凄く褒めてたのにー!」「ドラムはあくまでリズムですから、自由気ままなsakeさんは舞台の前面でソロしてるのが似合いますよ」「ああー馬鹿にして、名も無き塔にバディー・リッチがいると思って登ったら、火傷して帰ってきたことばらすよ」 ※バディー・リッチはドラムの神様として有名「おいおい、痴話喧嘩はよしてくれ。それより本題に入ろう」太史慈が呆れたように二人を止める。三人は周りに誰もいない事を確認し、真剣な顔で相談を始める。 ・ ・ ・「にわかには信じられん話だな」太史慈が首を捻る。「確かにそうでしょ、でも事は急を要します」とタケウマ。「取り敢えず、太史慈ちゃん・・・」とsakezuki。「なんだ?」「くぅちゃんといっちゃんを僕ちんのお嫁さんに」バコン!ドカッ!二人の強烈な一撃がsakezukiを襲う。sakezukiの頭は太史慈が出した鈍器とともに床に埋もれてしまった。「ちょー、冗談だってば」「しかし、タケチンはともかく太史慈ちんの鈍器・・・100tって書いてあるよ」「おお、すまんすまん。ついノリでな。しかし噂に違わぬ不死身っぷりやな」「慣れてますからねsakeさん。でもそんな事言ってるとまたアリアンで『sakeさんの浮気者ー!』って叫ばれますよ」「そ、そんな事もあったねぇ」「まぁいいさ、それより太ちゃん・・・ゴニョゴニョのゴニョって感じでゴニョなんだけど」「ふむ、今回の戦での仲裁の件では借りが出来た。よかろうそれぐらいなら俺がなんとかしよう」「ありがとうございます。この事はあのお方にもお伝えします」とタケウマ。「さすが太ちゃん。奥さんには弱いが忠義に厚い男だね」バコン!ドカッ!太史慈の鈍器がsekezukiの頭もろとも部屋の壁を突き破る。「ううぅぅ、だから100tって・・・」「ああ、ゴメンゴメン。ついついな」「じゃ俺は早速段取りに出かける、一応気難しい奴もいるからなうちの奴らは」久々の突っ込みに満足したのか太史慈は爽やかな笑顔を残し、二人を後にした。「さすが、変わってないですねあの方は」「ああ、記憶は無いだろうけどあの律儀な所は昔のまんまさ」砂漠を照らす日は既に陰り、夕日は大地の風景を血の様に真っ赤に染めていた。もう直ぐ、あの赤い月が昇りガラテア達がザードフィルの居城へとたどり着く頃であった。<あとがき>今回はタケさんにちょいとドラムを叩いてもらいました。sakeさんが目立ち過ぎてるけど実は強いのだぞって感じなのです。ちょいとドリームシアターとか出してるけど、ここのメンバーはテクニシャンで有名なので使いました。ギターも7弦、ベースも6弦を使うちょっと異常な方たちですがドラムセットの多さが一番馬鹿げてますw興味のある方は聞いて見るのもいいかもです。
2007年05月28日
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真っ黒な世界なのか、真っ白な世界なのか、いやそれともそもそも色など存在しない世界なのか。アルテミスの意識は既に自分の存在すら忘れるほどとなっていた。そのアルテミスを再び呼び戻したのは赤い不思議なオーラであった。それは凄く細い糸のよう、しかし切れる事のない針金のようにアルテミスに絡み付いていた。意識を時の流れの中に取り戻した後、アルテミスの中に不思議な声が脳の中に響き渡る。『un grand vent soufflera, quand un esprit mauvais rouge se réveille』『Un vent appelle un chevalier, et un chevalier sera vêtu dans un vent et aidera une flamme rouge』『Le vent du futur agitera une flamme rouge et scellera un esprit mauvais rouge』_何?_不思議な言葉、でも何故か優しい響き。_何処かで聞いたことがある気がする。_アルテミス、聞こえますか?_ええ。_それは我等「守人達」に伝わる古き伝承の一説です。_しかし、このような次元を超えて届くとは_あなた達の力には驚かされます。_なんて言ってるの?_言葉が全然わからなくて。_意味はこんな感じです。「赤い悪魔が目覚める時、大いなる風が吹くでしょう」「風は騎士を呼び、騎士は風を纏い、赤い炎を助けるでしょう」「未来からの風が赤い炎を呼び覚まし、赤い悪魔を封印するでしょう」_我々の守人達は、六つの石の地上界での守護者です。_そして対になる六人の悪魔が地下界より現れた時、必ず天上界より使者が現れ_救いがあるという都合のいい予言があるのです。_殆どは人々を統治するための作り話と思われてきましたが・・・_天上界からの使者かぁ、なんか凄い人の扱いになってるなアルテミスは時折、現在の自分の状況や力とは関係なく、現世にいた感覚で物を考えたりした。この不思議な空間にいて、過去への旅や自らが人でない物になった経験さえ時折、他人の事に感じてしまうのだ。_うぅうっ_どうしたのです?_なんだか胸が苦しいの。_胸の奥から力が抜けていくよう。_いや、どちらかと言えば力が何処かへ向かって溢れ出る感じ。アルテミスに繋がった赤いオーラが先ほどより更に強く光りだす。その光はやがて色のない世界でアルテミスの形を抜き取るようにアルテミスの全身を包む。苦しむアルテミスの鎧の中心部分、白い肌が丁度半分程露出した胸の谷間から一本の赤いオーラが底のない井戸の奥へと吸い込まれるように色のない世界への果てへ向かって伸びていた。『existence plus sombre que noir de jais』(漆黒より暗き者)_また不思議な声が聞こえる。_こ、これは詠唱呪文。_誰かが契約の詠唱を唱えています。_しかも、これは赤の王、すなわちレッドストーンとの契約呪文。_これを地上界で唱えるなんて。_凄いやつなの?_「メテオ」なんですが通常の魔導師が使う物とはまったくの別物です。_レッドストーンの力を無理やり完全解放する。_かつてエリプトの国を一夜にして地図から消し去ったと言われる_別名「The flame of God(神の炎)」最強最悪の禁呪です。_いったい誰が?_普通は使えないの?_この呪文はかつて炎の守人が封印した禁呪です。_使えるものは炎の守人の長か・・・適正者のみです。_じゃ多分トリーシャね。_この気はきっと彼女よ。_彼女の悲しい気持ちが伝わってくるもの。『existence plus rouge qu'effusion de sang』(流血より赤き者)_うん呼んでる。_彼女が私を呼んでる。アルテミスが赤い糸に導かれ、色のない世界の先に僅かな光を見つけた時、急に先ほどまで聞こえた呪文が途絶えた。しかも、アルテミスから出ていた赤いオーラも力なく消えていた。何故だかアルテミスには判らなかったが既に向かうべき方向を見つけたアルテミスは先ほどまであった赤いオーラをたどる事で自分が向かうべき場所にたどり着くと確信していたアルテミスはいつの間にか自由となった体を意識の力で推し進めていた。「ダメー!」_な、なんだ!「そっちはダメ!」「お願いだから、彼方が向かうべき場所はそこじゃない」「私の所へ、お願い私の所へ」新たな不思議な声に吸い寄せられるかのようにアルテミスは再び光ある世界へ吸い寄せられていった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第48章 禁呪』『existence plus sombre que noir de jais』(漆黒より暗き者)『existence plus rouge qu'effusion de sang』(流血より赤き者)ゆっくりと、篭るような声で呪文を唱えるトリーシャをルジェと雪音が必死に止めようと試みるがトリーシャから溢れ出す赤いオーラにより近づく事さえ出来ずにいた。「くっ、このままではまずい」ルジェが近づく事も出来ないもどかしさを愚痴る。「何とかして止めないと。何とかして」雪音も同様に表情を歪める。赤いオーラに向かい足を進める二人の足は圧力に押され上がらない。体を支えるので精一杯の足がオーラの力に押され、大理石で作られた頑丈な床にミシミシ音を立てながら亀裂を作る。『Une personne des six grands rois loin oubliée par les gens』(人々に忘れ去られし、偉大なる6人の王が一人)トリーシャの差し出す右手の前方が空間毎、何者かにつねられたかのように湾曲しだす。そしてその中心部分から光の球体が姿を現し始めた。「凄い熱量だな。この時点でゆうに通常のメテオの倍のオーラを感じる」シトンが地面に剣を付きたて呪文の圧力に耐えながら感嘆の声を上げる。マシン・インターは既に言葉を失い、呆然を口を開けその圧力に体ごと壁に打ち付けられていた。『Il promet le nom de tu』(その汝の名に誓わん)球体は大きさを増し、トリーシャは右手を支えるように左手も球体の前に差し出し、掌を大きく開く。トリーシャの足元には不思議な文字か文様か判別が付かない物が白い光を放ち、魔方陣を形成して行く。膨張するオーラは部屋全体を内側から圧迫し、壁や天井も崩れだし落ちた欠片は紙くずのように舞い上がる。シトンを支える剣も遂に力尽き小さな音を合図に亀裂が入り、その直後には刀身の中程から二つに折れシトンは体を宙に放り投げられ、そのまま一回転し壁へ逆さに貼り付けられた。「よう旦那、今度はもっといい剣を買いなよ」インターが軽口を言う。「ああ、考えておこう。生き残れたらな」同様にルジェが大きな音を立て、まるで十字架に磔られたようにシトンの隣に打ち付けられる。雪音は転がるようにルジェの真下に横たわる。皆が一様に自由を奪われ、それに対抗するように必死の形相で体全体を襲う圧迫感と戦っていた。「ダメ、もう詠唱が終る」ルジェが悲痛の叫びを上げる。「だ、誰か、トリーシャを止めて」雪音が床に張り付きながら涙を流す。『Moi et toi ruinerons toutes les personnes folles qui s'opposent!』(我と汝の力をもって我らが前に立ち塞がりし愚かな全ての者に等しく滅びを与えん!)遂にトリーシャの詠唱が終り、床の魔方陣から一斉に光のカーテンが天井へと昇り、トリーシャを囲む。前方に伸びた両腕の先の球体はその場に押し留められる事を拒絶するかのように激しく輝き、揺れている。トリーシャの身体からは激しく渦巻く赤いオーラに溢れ、その力によって床から少し浮遊した状態である。その背後には炎を纏う不死鳥の幻影が陽炎のように現れている。『Meteo・・・うぅぐぅ』今まさに呪文が放たれようとした時であった。赤いオーラは吸い込まれるかのように壁に張り付く戦士達の直ぐ隣の扉の方へと集まり、呪文を放つ寸前のトリーシャは黄色い光に自由を奪われていた。その扉の奥の暗闇から、ゆっくりとした足取りでザードフィルが現れた。そして高らかと右手に赤い宝玉のついた首飾りを持っていた。その宝玉に物凄い勢いで室内に満ちた、赤いオーラが吸い込まれていく。「なんとか間に合ったな」ザードフィルが言葉を発すると同時にトリーシャは前のめりに床に崩れ落ちた。「お姉さま!」「トリーシャ!」雪音とルジェがトリーシャに駆け寄る。「大丈夫だろう。急激な力の解放と消失で気を失っているだけだ」「しかし、何があった?レッドストーンが急激に反応し、強烈なオーラを感じやってきたのだが」「シトンとマシン・インターの戦いの最中にお姉さまが突然現れて、例の一節を唱えた後にメテオを・・・」ルジェが答える。「守人達の伝承か・・・」「花火、トリーシャ、メイヴィ、適正者が多く集まっている。レッドストーンも異常な反応を示した」「しかし、予定外にレッドストーンを使ってしまった」「そうそう思い通りにはいかんな」一人納得顔のザードフィルは再び皆に背を向け部屋を去ろうとする。その手に持つ赤い宝石には僅かに亀裂が入っていた。「インターの処遇は?」シトンが問う。「彼も大切な祭りの参加者だ、頬って置け」そっけなく言い捨てザードフィルは扉の向こうの闇へと溶けていった。その足取りがほんの少しだけ重い事を誰もが見逃していた事に気づかなかった。<あとがき>まぁ少し頑張って更新しましたb今回もまた少しだけオフランス語がw訳も言葉も適当なのは仕様ですし、間違っているかもですがそこはスルーでお願いします。因みに、前回言ったパ○リの元ネタは黄昏よりも昏き存在血の流れより赤き存在時の流れに埋れし偉大なる汝の名において我ここに闇に誓わん我らが前に立ち塞がりし全ての愚かなる者に我と汝が力以て等しく滅びを与えんことをです。(まぁ有名な奴ですね。赤目の王との契約呪文だったなぁと思い出して使いました)アレンジと翻訳が無知な私には苦労でした><;フランス語ってちょっとカッコイイかなと思ったんですが・・・どう?どう?
2007年05月19日
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切り取られた風景画のように静寂した世界がアルテミスの視界から遠ざかる。物音一つしない世界は視界の中で時計回りに回転し、暗闇の中、その中心へ小さくなっていく。アルテミスは必死にしがみつこうと手を伸ばすが、その掌は虚しく空を掴む。「アルテミス、これ以上の干渉はいけません」「あなたの力、いえレッドストーンの適正者の力を少々見誤っていたようです」「これ以上の歴史の捩れは私でもどうにもなりません」「ザードフィルは、トリーシャは、あの禍禍しい影はどうなったの?」「私の知る歴史では、トリーシャとその姉妹は無事です」「トリーシャは赤い石の力を解放し、あの悪魔を退けることに成功しました」「そして、同時にレッドストーンの力も失い妹達とニーナと共に歴史から一旦姿を消します」「ザードフィルは・・・」「彼はあの後、赤い悪魔と共に歴史の闇へ姿を消します」「赤い悪魔と!」「影は消え去ったんじゃ?」「彼は影の力が弱った瞬間に憑依を使ったのです」「憑依?」「ええ、影に乗移り、トリーシャから赤い悪魔の意識を奪う事に成功しました」「そして自らの力と共に封印した事になっていたのです」「さぁその続きは自らの目で見て、耳で聴くがいいでしょう」守護者の声は遠ざかり、絵画のような風景も今では暗闇の中の小さな白い点のようになっていた。再び暗闇の中、川を漂う木の葉のようにアルテミスは身を任せ流されていった。そのままこの暗い空間に溶け込む感覚に全身が包まれそうになる位の時間がたった時、ふいにアルテミスの皮膚に違和感が襲う。明らかに自分以外の存在がこの空間に漂っている。全てを暗闇に支配された空間に、確実に自分以外で無ではない存在がある。そしてそれはアルテミスの記憶の片隅に残っているオーラの色が、残り香のようにアルテミスの皮膚に感じさせていた。「この感覚は・・・、残留思念なの?」アルテミスは頭の中で既にその存在を確定していたが、身の自由の利かないこの空間では流される身体に抗う力もなく再び意識が空間に溶け込む感覚に全てを委ねた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第47章 交差』ザードフィルの居城にある一室、その奥に大理石で囲まれた空間があり水の流れる音が独特な反響音を鳴らす。湿度に満ち、視界は白い湯煙で閉ざされ壁に掛かる明かりがまるで銀色の世界を作り出していた。その銀色の世界に、薄っすらと細い影が浮かび上がる。「ふぅ、雪姉さん。やっぱりミストサウナは気持ちいいね」「私は頭がボーとして好きにはなれないよ」「それは姉さん我慢が足りないからよ」白い霧の掛かった浴室の白い大理石の壁に溶け込む様なルジェと雪音の白い肌が浮かび上がる。短めの髪に露出したうなじ、そこに柔らかい水晶のような水滴が浮かび上がる雪音。丁度、そのうなじから今、一粒の水滴が小柄な背中をゆっくりと曲線を描き流れ落ちる。その背中は女性らしく少し小さめで文字通り雪で作られたように白く、そして柔らかい曲線を描いていた。一方、ルジェの方は本来肩まである髪を銀細工で出来た髪留めで大雑把に丸め、やはり雪音と同じようにうなじに水晶を留めていた。姉より少しだけ大きい体躯には白い布が、丁度身体の前方にある女性特有の膨らみのある部分の頂点あたりから身体に張り付くように掛けられていた。しかし、部屋中に充満したミストにより布は薄っすらとルジェの肌の色を透かしその豊かな流線型の肢体を全てさらけ出していた。その時であった。部屋のドアが何の予告も無く音を立てて開いた。「無礼者!何者だ!」叫ぶルジェの向こう側には槍を担いだマシン・インターがぶっきら棒に立っていた。「ちょいと聞きたい事があってな、トリーシャはいるかい?」女性の性か一旦は身を屈め、左右の腕で恥部を隠す二人であったがトリーシャの名を聞き、まずはルジェが立ち上がった。そして威風堂々と仁王立ちしマシン・インターに問いただす。「姉に何用だ。事と返事しだいでは唯では済まさんぞ」「ふん、武器も無く裸でどうする事が出来る」不用意に足を進めるマシン・インターの動きが一瞬止まる。その頬には一筋の傷が浮かび上がる。「中々いい気を練るな」傷に手をやり、表情を歪めるマシン・インターの目線の先には自らを覆っていた布を手に提げたルジェが立ちはだかる。「我が気を通せば布切れさえ鋭い刃と化す。風の冠を持つ我らを舐めるなよインターとやら」「いいねぇ、その強さと勝気な性格。気にいった。が、何の装備も持たぬままのお前たちでは俺には勝てんさ」「俺はトリーシャに少し聞きたい事があるだけだ。悪いがさっさと質問に答えてくれ」「ふざけるな!」ルジェの後方から雪音の声と同時にインター目掛けて光りが走る。カッカッ!インターは顔の前に槍を横一文字に出し、放たれた光を受け止める。その槍に三本の黒い針が連続して刺さる。「布の次は自らの髪か、暗器が得意な姉妹だな」得意げなインターとは対照的に二人の姉妹の表情は怒りに満ちていた。その時であった、インターは咄嗟に幻影を作り背後からの攻撃から身を守った。「婦女子を辱める行為、騎士として許せん。万死に値する」インターの作った幻影を切り裂いた刀の先に一際大きい鎧を着た大男が立っていた。「御二方の護衛が我任務でしたが、このような輩の侵入を許すとは申し訳ありません」大男が姉妹に頭を下げるのを見て、二人は安堵の表情を浮かべた。「いいえシトン、席を外せと申し付けたのは私達の方です」「さぁ、お着替えを。こやつは私が引き受けます」シトンは二人の姉妹の鎧を投げると再びインターに対峙した。「おっさん、いい気を持ってるな。かなりいい線行ってるぜ、楽しめそうだ」「インターとやら、お前は強さを求めているのだろうが、理由無き強さなど所詮知れている。まずはそれを知る必要があるな」「言ってろ、おっさん」この言葉を合図に二人の戦いが火蓋を切った。まず先手を取ったのはインターであった。無数の矢を放つと同時に自らも槍は振りシトンに迫った。殆どの矢はシトンの左手に持つ小さな刃の付い盾により打ち落とされたが、それでも何本かの矢とインターの槍はシトンの重厚な鎧をかすめた。しかし、何事もなかったようにシトンの右腕はインターの頭上に高らかと上げられ、そのまま一気に振り下ろされる。咄嗟に軽い足裁きでかわすインターであったが、自分の元いた場所に出来た床の亀裂を見て高揚感を感じていた。「強いなおっさん。このギリギリの緊張感たまらんぜ」言葉を発するとインターは白い霧の中を高速で移動し始めた。その体は残像と共に歪みシトンの目からは沢山のインターから槍や矢が向かって来るように見えた。しかし、先ほどと同じように幾つかの攻撃はシトンをかすめるが、致命傷を与えるどころか反撃の度にインターは冷や汗をかくほどの強烈な攻撃に一旦距離を置かなければならなかった。「その方、中々の速度を持っているな。しかし、結局は俺の所に攻撃は向かってくる」「無数の攻撃も俺が少しだけ盾を動かすだけで殆ど殺傷能力は無くなる」「ちぃ、防御だけは立派だな。しかし、そんな鈍重な攻撃は俺には当たらんぞ」「確かにお前の機動力は立派だよ、俺の目にはお前が霞んで見えるさ」「しかし、本当の神速とは見る者に遅さを感じさせる。それが分からん間は俺を倒せん」「まるでその神速とやらを知ってるみたいだな」「お前も知ってるさ、お前の師匠ゲルニカは神速使いの一人だからな」一瞬、インターが動揺し動きが止まった。それをシトンが逃さない。白い霧を十字に切り裂くように剣戟がインターを襲う。「咄嗟にダミーを出したか、いい判断だ。センスは流石に一流だな」「舐めやがって、しかしさっきの攻撃でお前が何者か想像がついたさ」「その基本に忠実な太刀捌き、やたら騎士道を気にする性格。お前、盾だろ」「アウグの法皇に一対の太刀と盾がある。一方は剣聖sakezuki、そしてその片割れはお前だなシトン」「さっきのサザンは正に剣聖技ブラインドクロスに近い。天位を持つ者でないとまねすら出来ん代物だ」「そして、攻める役目の天衣無縫な剣聖と違い、決して間違いの許されない盾は基本に忠実な型と聞く」「私が何者か貴様に知る権利は無い」「聖堂騎士団・テンプルナイツ、しかも法皇の盾まで動かすとはザードフィルは何を企んでる?」「さらに疑問が深まった。トリーシャは一旦諦めるとしよう。ここは引かせてもらう」その時であった、霧の中から神秘的な、それは歌のようで詩のようでもある優しきさに満ちた声が静かにインター達の耳に訪れた。『un grand vent soufflera, quand un esprit mauvais rouge se réveille』「姉様これは!」ルジェが叫ぶ。『Un vent appelle un chevalier, et un chevalier sera vêtu dans un vent et aidera une flamme rouge』「ええ、これは確かに守人達の言い伝えの一節」雪音が答える。『Le vent du futur agitera une flamme rouge et scellera un esprit mauvais rouge』「トリ姉さん!」ルジェが叫んだその先に白い霧を侵食するかのように赤いオーラに身を包み、無表情なトリーシャが真っ白なドレスを纏い立っていた。そして聖人のように穏やかだった表情は見る影もなく、無表情な顔には二つの赤い瞳が妖しく輝いていた。「危険よ!二人とも早くこの場から去りなさい!」雪音がシトンとインターに呼びかける。『existence plus sombre que noir de jais』(漆黒より暗き者)トリーシャが不思議な呪文と共にゆっくりと右手を差し出しす。トリーシャを包む赤いオーラが激しく呼応する。「いかん詠唱呪文だっ!」シトンが激しく動揺する。「なんだそれ、この危険なオーラの量はなんなんだ」インターは訳が分からず他の者の動きを確認する。「通常、我らが使う無詠唱の技や術と違い、地下界や天上界との契約により尋常じゃない威力を発揮する」「しかも、この呪文はメテオだ。下手するとこの建物全て消え去るぞ」シトンがインターに説明する中、トリーシャを包むオーラが肥大する。『existence plus rouge qu'effusion de sang』(流血より赤き者)「姉さん止めてー!」雪音の声にもトリーシャは無表情のまま答えない。赤い瞳は更に輝きを増していた。<あとがき>一言「更新遅くてごめんなさい」以上。って冗談ですwええー因みに今回もまたパクリが少し。後、お願いですから翻訳などしないでね、適当なんですから><;
2007年05月17日
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暗闇の中、赤い月だけが1匹と小さな少女達を照らす。その光に逆らうかのように、異様な影が1匹の獣に絡みつく。コロチュウの顔は酷く歪んでいた。金縛りが解け自由の身となった影が体中に絡みついていた。絡みつく影に締め付けられ体は不自然な曲り方をしている。まるで抽象画のように。それでも、その瞳の中の光は消えうせる事は無かった。そこに、一人の少女がゆっくりと足を進めやってくる。「やっぱり、彼方の事好きじゃないみたい」トリーシャはその小さな手をゆっくりと影に向け、掌を開いた。「ぐぉーーー、おのれ裏切るのか少女よ」「お前の自由を与えた俺を裏切るのか」影が悲痛な声を上げる。その隙をコロチュウは見逃さない、一気に影を引き裂くと一旦間を取り雄たけびと共に自らの闘気を高める。コロチュウのオーラに呼応し大気が震え辺り一帯の空気が渦をなしコロチュウを中心に集まっていた。「その汚れたオーラ毎消え去るがいい!」コロチュウが叫んだ声が影に届くよりも速く、コロチュウの鋭い爪が無数の残像と共に影を覆う。オーラに包まれた爪は切り刻むというより、その空間そのものを削り取るかのように影を消し去って行く。「おのれザードフィル二度までも我が野望を阻むのか」「しかし、我は滅びはせぬ。お前達守人がそうであるかのよに我等赤い悪魔もレッドストーンと共に」「いかん!」コロチュウが声を出した時、ほんの僅かに残った影が再びトリーシャの中へと溶け込み始めた。「いやぁーー!怖い、この感じは嫌」ゆっくりと、そして確実にまるで蛇が獲物を飲み込むかのように影がトリーシャを侵食する。_トリーシャ、戦うのだ。_お前は弱くない。_お前の優しさは強さなんだ。_妹達を想う気持ちは本物だ。本物は力だ。身体の中からのアルテミスの声を聞き、トリーシャは塞ぎかかった目を見開いた。「ぬぅー我に逆らうか、呪われし子よ」「だが、お前の持つ赤き力は我の力と同じ。幼きその力では我にあがらう事はできないぞ」トリーシャの周りに赤き光、影を覆う黒き光が互いに溶け合うかのように、いや反発しあうかのように輝きを放つ。それはコロチュウの首の宝玉の不思議な光と同じであった。コロチュウはもう見守ることしか出来なかった。今、同調しあうオーラに加勢出来るのは同じ性質を持つオーラだけだ。「花火がいれば・・・」「私の大地のオーラではどうにも・・・」コロチュウは口惜しそうに呟く。「さぁ悠久の時を経て同化した我等の力を再び我に!」「その力を持ってすれば、異界にある我が本体を再び我が物に」トリーシャの表情が曇ると同様に赤い光が黒い光に押され始める。_トリーシャ、頑張るのよ。_アルテミス、過度な干渉はダメです。_これは既に起きてしまった過去の出来事。_貴方はこの世界ではただの傍観者なのです。_だからと言って、ただ見ているだけなんて!_この時代で彼女は私を認識できる。_なら私に出来る事をするの。_さぁ赤い石コロ!_あんたいつも見てるばっかで、たまには自分でなんとかなさい!_私に力を与えるって言ったのあなたでしょっ!突如、コロチュウの首に掛かる石が輝きを放ち、黒と赤が混じった色は透き通るルビーのようになる。その光が凝縮し光線となりトリーシャを喰らう影のオーラに突き刺さる。「ぐぉおおおおおお、この光はなんだ」「熱い、我の意識が・・・」影が光の貫いた部分から蒸発するかのように消えうせ始める。「まだ、まだ終わらんほんの一欠けらでも少女に入り込めば我は復活出来る」「そう時間はいくらでもある。我は不滅にして不変」「お前達がいる限り、我は必ず復活する・・・忘れるな古の民達よ」「呪われたお前達がいる限り・・・」「悪いがお前の思惑通りにはそそいかせん」「ちょっと危険だが今のお前なら何とかなるな」「ライカンスロープにはこんな技もあるのさ、ザードフィル最後の業、喰らうがいい」コロチュウの掛け声と共にトリーシャに絡みつく影は消えた。しかし、コロチュウも動きは止まったままだ。そして光を放った赤い宝玉も、渦をなした大気も今は静まり帰り音一つ無い静寂の世界が広がった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第46章 干渉』花火の話を神妙な顔つきで聞き入る戦士達。花火はあの「赤い日」と呼ばれる戦いについて語った。そしてその発端が天上界から降りてきた赤い悪魔の存在に自らが気づいた事。その理由がレッドストーンと呼ばれる神獣の卵と同調する自らの適正者の能力の事。「すると、赤い悪魔がその石を盗んできたためその守人である花火が悪魔を討伐したと?」楸が口を挟む。「ああ、しかし俺一人では太刀打ち出来ないから、ザードフィルに助けを求めたのさ」「天上界には六つの守護聖獣がいる。その内の火の聖獣の卵がレッドストーンだ」「そして、彼は大地の守護聖獣の守人」「俺達、守人は天上界の聖獣を地下界の悪魔達から守るために地上界に産み落とされた種族なんだ」「六つの種族は互いに助け合い、悪魔を退けてきたのさ」そして花火の話が続く。その後、異変を感じ取った花火がザードフィルと協力し世界に散らばった守人達を集め遂にあの神殿で赤い悪魔をレッドストーンと共に異次元に封印した事。しかし、その時一緒に花火とザードフィル、他数名が一緒に次元の彼方へ飛ばされた事。「それでは貴方はどうして今ここに居られるので」ガラテアが敬意を表しかしこまった言い方で尋ねる。元来、礼儀正しい戦士はある種特殊な使命を負った人を敬った。「それは、皮肉にも守るべきレッドストーンに守られてなんとか一命を取り留めたのさ」「意識が遠のき永い眠りについた私達は10年前、ある事件により再び地上界に降り立った」「そして、最悪なシナリオが幕を開けた」「10年前?まさか、あの忘れ去られしエリプシャンの村と関係が?」「さすがフクチ大佐、博識ですね」「そう、一人の少女が生まれた日から異次元の中のレッドストーンに変化が起きた」「新たな適正者が現れたのです。その子の名はトリーシャ」「まさか!」一同が驚愕の表情を浮かべる中、ガラテアが声を出した。「彼女の適正者としての能力が我々を再び地上界へ導いた・・・」「しかし、最悪な事に長い年月を経て赤い石と赤い悪魔は強い結びつきを持ち」「時を同じくして、再び奴は地上に降り立ったのさ」「結局、村を一つ地図から消すだけで赤い悪魔の覚醒は防ぐ事が出来たけど」「奴は今も力を蓄え、復活を目論んでいる。それがきっと今回の儀式と関係があるのさ」「10年前はどうやって奴の復活を?」フクチが問う。「詳しくは私もその場にいなかったので知らないんだ」「我等の内の殆どがこの世界に戻った時に記憶を無くしていたし、その場所もバラバラだったんだ」「なんとか記憶を取り留めていたのは私が知る限り、ザードと私、そしてsakezukiだけなんだ」「アウグの剣聖か!」ガラテアがさらに驚く。「我等三人は、赤い悪魔の存在と赤い石を取り戻すため再び同士を探すために別れたのさ」「そして私はゲルニカを見つけた」「更に、あの赤い日に取り残された同士の末裔をゲルニカの弟子に見つけたのさ」「マシンインターか!」今度は楸が声を上げる。「そして、あの村の惨劇の後見つかった少しの仲間と再びザードフィルに会ったんだ」「ザードフィルは変わり果てていた、見た目は少しやつれたようになり何より驚いたのは・・・」「彼の覆うオーラが禍禍しく、そして忘れもしないあのドス黒い赤い悪魔とそっくりだった」「私も仲間も直ぐに異変に気づいた。でも彼はなんとか正気であった」「そして一言「インプロビゼーションで行こう」と笑いながら言ってそこから消え去った」「即興劇か」フクチが呟く。パン、パン、パン廊下に乾いた手を打つ音が鳴り響き、暗闇から一人の男が現れた。「さすが博識だなフクチ大佐」そこには榎の姿があった。そして続けて口を開いた。「楽譜の無い音楽や、シナリオの無い劇で行われる手法だな」「つまり、奴の奏でる主旋律に我々がフリーセッションしろって事だな」「そんな事が可能なのか」セシルスが思わず声を上げた。「簡単では無いな、しかし攻城戦では与えられた使命は紋章を奪うか守るだけだ」「それぞれの役割で最適な行動を個々が考え実践出来るギルドが強い」「可能かどうかより、やれって事だな。自分の役割を演じろとな」「この世界にある全ての物は使命が与えられている」「大地は水を育み森を育てる。植物は太陽を浴びて大気を作る」「親は子を育て、子はやがて親を養う」「使命とは誰に命令された訳でもない」「そして大地に降り注ぐ雨はいくつもの川になり、やがては一つの海へと繋がっていく」「つまり、皆がそれぞれ考え行動する事によって解決しようとしたのさ」「まぁ随分勝手な手法だが、奴のオーラを感じて理由はおおよそ検討がついた」花火がコクリと頷いて話を再開した。「彼はなんらかの理由で奴に支配されている、そして最小限の情報で協力を求めた」「我等は再び別れて、独自に彼ザードフィル。いや、赤い悪魔の計画を探す事にしたのさ」「その後、ザードフィルも赤い悪魔の目を盗んで何やら企てている事も解ったのさ」「ここからは私の想像に過ぎないが、赤い悪魔の目論見と我々の目論見は少なからず一致している」「どういう意味だ?」困惑気味の楸が問う他のメンバーも一様にお互いの顔を伺い困惑していた。<あとがき>いよいよ話が繋がって来ました。結構苦労しました><;さぁ後少しで第二部が終了します。ここまでお付き合い下さった方どうもありがとう^^
2007年04月25日
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今日は気分を変えてネタです。少し前、少しの間ですがINしていませんでした。そしてその間にRSが随分変わってしまってました。昔はネタ日記も書いていたのでネタを書きたいとムラムラとしちゃいましたが、小説も放置中><;でもやっぱり書いちゃうもんwそこで、今回は同じく浦島太郎状態の剣聖sakezuiさんとRSの事情通(社員疑惑が絶えない)ガラテアさんに登場願いましたb注)小説内の二人です。当然、私が勝手に書いてますので本人達は無関係です。酒好き「やぁやぁガラちん、久しぶりだね」ガラテア「そやね酒ちん」酒好き「随分変わったもんだねRSも」ガラテア「ん?ああ、ギルドホールとか出来たしな」酒好き「おお~遂に、おいらのジャイアン並みの歌を披露する場ができたのか!」ガラテア「いやいや、ギルドの我が家みたいなもんよ」酒好き「あの山を~いつか越えて~♪」ガラテア「帰ろうよ我が家え~♪って歌から離れろやw」 「攻城戦も実装されたしな」酒好き「何それ?」ガラテア「下の図を見てみ」ガラテア「これが攻城戦のマップやねん。で、紋章を破壊で攻めが勝ち」 「時間内を守りきれば守備側の勝ちや。ちゃんと僕ガラ見とけよ!投票もな!」 ※図は僕ガラ衛門から拝借しました^^酒好き「ほほう、つまり芸能人水泳大会の騎馬戦やね^^。ポロリはあるのかい?」ガラテア「RSの最強グラフィックでそんなのあるかいw」 「でも、やることは似てるかなw」 「後はポイント戦とか出来たな」酒好き「む!それならおいらの出番だな」 「名古屋のおっパブの帝王とはおいらのことさ!」ガラテア「“ボインと戦”やない!どう間違えばRSでボインが出てくるんや」 「他には神像なんかはグラフィックが追加されたから見た目が嬉しい修正やな」酒好き「あの小学校によくいるこんな奴?」ガラテア「ま、まぁ・・・似たようなもんかな・・・」酒好き「やっぱ関西にもあるん?」ガラテア「全国的にあるんじゃないの?」酒好き「そうそう、で背中の薪に火がついて泥舟に乗るなって教えを広めてるんだよね」ガラテア「な訳ないやろ!現実と童話がごっちゃやし、RSから離れすぎや」 「ちなみにこんな奴だよ」酒好き「ほほう、これの生き血を求めて過去未来な訳だね」ガラテア「流石に其処までパクランやろw手塚プロに怒られるわ」 「それより、この神像を作るには元素を集める必要があるんよ」酒好き「黒鯖のジャック・スパローこと酒好きに任せてくれたまえ」ガラテア「あんた誰やねんwいつからジャック・スパローになったんや」酒好き「チッチ、キャプテーーーーーーーン!ジャック・スパローと呼びたまえ」 「ゲソと言えば、こいつが敵やね」ガラテア「・・・そりゃ蛸や、ゲソともちゃう。間違えすぎや、しかもキモイ」酒好き「なぬ!つまみと言えばタコワサや、ゲソカラなんて邪道だ!」ガラテア「ゲソカラ馬鹿にすんな!居酒屋と言えばゲソカラはつきもんや」酒好き「ゲソカラはメタボリックな僕ちんのお腹に優しくないのだぁ」ガラテア「もういよ。ゲソじゃなくゲンソね、元素!」酒好き「なんだ元素かぁ。早くいってよ、ガラちん。水兵リーベ僕の船やね」ガラテア「そうそう、酒ちんもそれで覚えたん?」 「んで、抽出機ってのを鞄に入れて狩りすると元素がドロップするんよ」酒好き「う~ん僕の船の後、なんだっけかなぁ」ガラテア「人の話、聞けよ!」酒好き「そだ!シップス・・クラ・・・クラーケン!」ガラテア「おーーーーい、変なの出てきたぞ」酒好き「よし、二人で奴を倒そうぜ、ガラちん」ガラテア「う、うん」酒好き「いくぞーーー!俺たちコンビの最強パラを食らえやタコワサ」ガラテア「うりゃぁーーーーーー!」酒好き「・・・この仕様は半年前と一緒なのね・・・」 「くそーーーー!俺たちのブラック・オパール号を返せー!!!」 (劇中のジャック・スパロー船長の船はブラック・パール号です)ガラちん「さ、鯖管理してきまーすw」 注)ガラさんは社員じゃありません・・・多分w<おしまい>久々にネタ書いたら疲れたよw面白かったかな?実際のお二人の絡みはもっと面白いけどね^^
2007年04月23日
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漆黒の世界を突き刺すかのように輝く赤い月がにじんだ大地を照らす。その円形の中心に切り抜いたように大きな犬の形が浮かび上がる。「ウォーン、ウオン」雄たけびを上げ、二本の足で大地を蹴りあげ天高く舞うコロチュウ。宙に浮かぶ影と大地で迎え撃つ影が交差する。コロチュウが大地に両足を着けると大地から生える影が二つに割れた。更に追い討ちをかけるために、コロチュウが影に向かい飛び掛る。鋭い爪を影に突き刺し、大きく裂けた口が二つに裂けた影を襲い連続した攻撃が影を必要以上に切り分ける。「はぁあ、はぁあ、はぁ」「やったのか?」先程まで子犬だったと思えない大きな狼が呟く。その不安混じりの言葉を裏切るように飛散した影が再び宙で元の姿に蘇る。「どうしたザードフィル、それで終わりか?」「物理は利かないか、ならば!」影の前に立ちはだかるコロチュウを中心に魔力の力場が発生し、閃光と共にコロチュウが炎に包まれる。そのまま軽く跳躍し体を回転させ体中に纏った炎を影にめがけて放った。炎に包まれる影、しかし炎が消えると何事もなかったかのように影の笑い声が響き渡る。「所詮、貴様も人間。一人じゃ我にとって何の障害にもならんな」影はそう吐き捨てると遊び飽きた玩具に興味が沸かなくなったようにコロチュウを無視してニーナと姉妹の方へ視線を向けた。「なめるな、ロシペル!」コロチュウの叫びに反応した影が振り返ると、その動きが硬直したように止まった。「うぐぐぅ、金縛りか、そう長くは持たんぞザードフィル」「ニーナ、こいつが言った通りそんなに長くは持たない。今度こそ姉妹を連れて逃げるんだ」「トリシャーも一緒にな」ニーナは黙って頷くと二人を担ぎ、トリーシャの元へ走り彼女の手を握った。しかし、トリーシャは震えたままその場を動こうとしない。「トリーシャ、逃げるのよ」ニーナが呼びかけるがまるで聞こえないかのように反応がない。その足元には先程のニーナが刺した傷からの血が地面に染み込んでいた。_トリーシャ、意識をしっかり持って。遂に我慢出来ずにアルテミスがトリーシャに話しかける。_彼方の心の弱さをあの影が利用しているの。_奴は自分では何も出来ないの。「ニーナが私を殺そうとした。ニーナが私を殺そうとした。ニーナが私を殺そうとした」「私は生きていてはいけない子。私は生きていてはいけない子。私は生きていてはいけない子」トリーシャの声が手を引こうとしているニーナの身体を縛り付ける。_トリーシャ聞いて。_自分の存在価値は自分で決めるのよ。「私は悪魔の子なの。皆が影で言っているの全部聞こえてるの」「赤い月の夜は私が悪魔になって皆を襲うの。私は生きていてはいけない子なの」_それは彼方のせいじゃない。_全部あの悪魔がやった事。_彼方は悪くない。「でも私は全部知っていた。知っていても知らない振りしてた」「凄く怖かったから。だから知らない振りしてニーナにも優しくしてもらって甘えて」「本当は皆が私を怖がって、憎んでいた事も知ってたけど」「ごめんなさいトリーシャ。ごめんなさい」トリーシャの言葉にニーナは泣きながら答え、その小さな身体を力強く抱きしめた。「ずーと、ずーと戦っていたんだねトリーシャは」「こんな小さな身体で、いろんな思いと戦って傷ついて・・・」「それなのに、大人の私が負けて・・・ごめんなさい・・・」「がはああああああ」トリーシャを抱きしめるニーナの前に影が再び立ちはだかる。その背後には傷つき地面に倒れたコロチュウが敷物のように両手、両足をだらりと広げていた。「私はもう逃げない、今度こそトリーシャを守る。この命に代えて」ニーナがその両手を広げ、影とトリーシャの間に立ちはだかる。「ニーナ・・・」_さぁ逃げないで。_彼方は悪魔なんかには負けないわ_トリーシャ、命をかけて彼方を守ろうとしているニーナさんを助けるのは彼方よ。人形の形に伸びた影の腕の部分が伸び、目の前のニーナに襲い掛かる。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第45章 秘密の欠片』狭い石造りの廊下や壁面が異形の者の血で染まり、異臭が辺りに広がる。その中を巨大な斧を肩に担ぎ悠然と歩く男が花火、フクチ、楸の前に現れる。「よう、危ない所だったようだな」軽く手を上げ、三人に挨拶をするガラテアは敵の居城にいると思わせない余裕さがあった。その後ろにはセシルスとノラローの姿もあった。「ガラテア、後ろの子は確か……ノラローだったかな?助け出したのか?」花火が問う。「ああ、メイヴィ以外は皆無事だ。これからザードの所へ迎えに行く途中やけどな」「そうか、しかしそう簡単に返してくれる程お人よしとは思えんな」と楸。「多少の交渉は必要やな」ガラテアが得意そうに担いだ斧で肩をポン、ポンと叩いてみせる。「随分物騒な交渉になりそうだな」セシルスが嫌味を小声で言うがガラテアには聞こえていない。ガラテアはふと足元を見ると一人の男が青ざめた顔で蹲り、自らの腕を押さえている。フクチであった。「どうしたフクチ大佐」ガラテアが心配そうな顔で問う。フクチは小刻みに体を震わせ、全身から大量の汗を流していた。「どうやら、先程の魔物達の血液には感染力があるようです。フクチ大佐はその血液を」花火が説明する。「ぐあああああ」フクチは、ついにこらえ切れず声を出し、廊下を転げるようにのたうち出した。両手を着き、必死に痛みを堪えようとするフクチ。その太い腕は網目のように血管が浮き出ている。一同が見守る中、10分程苦しみに耐えると突然体の力が抜けたようにフクチはその場で仰向けに寝転がった。そして意識を失っていた。一同は心配してフクチの体に近寄るとその周りには異常な魔力の場が形成されている事に気づいた。「これは?」楸が口走る。「魔力の回帰現象のようですね」「これで彼の思惑が解りかけてきました。フクチ大佐は大丈夫なようです」花火が納得顔で話すが、他の者は首をかしげ花火の次の言葉を待っていた。「まだ全てでは無いですが、随分重要なピースが埋まってきました」「そろそろ私の知っている事を話す必要があるようですね」「フクチ大佐が目を覚ますのを待って、説明いたしましょう」「わ、私なら大丈夫だ。その説明、今すぐ聞かせてもらいたい」「彼方やザードフィル、秘密が多すぎる」「今回はただの内紛だった。それなのにこの騒ぎはなんだ」「軍ではなく民間の傭兵が派遣されたり、アウグの教皇が動いたり、難民キャンプが襲われたり」「最後は誘拐事件に妙な儀式。得体の知れない魔物の研究」「納得が行くまで話してもらおう」フクチが震える身体を起こして、鋭い口調で花火に問いかける。「全てを私も知っている訳では無いのですが、私の知る限りの事を話しましょう」花火は答えると、初めに過去にあったザードフィルと20名の戦士と赤い悪魔との戦いを語り出した。「そして、私も彼と一緒にこの時代へと飛ばされました。もちろんあの赤い悪魔と一緒に」「今回の騒動、最後には必ずあの赤い悪魔との対面があるでしょう間違いなく」そこまで話すと花火は一息つき、一同はこの時代では既に伝説、いや唯の昔話となっているレッドストーンと赤い悪魔を想像し表情を強張らせていた。<あとがき>また随分長い間、更新をサボッテいました><;PCが故障していた事と、仕事の都合で中々小説がかけませんでした。他にする事があると、頭がすっきりしていないからでしょうか小説も進まなくなるんですね。また暫く更新出来ないかもですが、長い目で見てくださいm(_ _)m
2007年04月11日
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「恋の卒業式 裏」登場する人物団体等は全てフィクションです。俺の名前はゆうじ、そしてもう1つの名前は「ガラテア」この名前はレッドストーンと言うゲーム上の名前だ。オンラインゲームって不思議だ。架空の世界なはずなんやけど、様々な人間模様が現れる。登場する殆どのキャラクターが液晶を通して人と繋がっている証拠なんやろう。その世界で俺には彼女が出来た。同じギルド「おっさんず」に所属するセシルスと言う明るい女の子や。せやけど、明るいのは実は架空の世界でのセシルスの性格やった。現実の世界では少し内気で、色々な思いを内に秘めてしまいどこへもぶつけることが出来ない不器用な性格やった。架空のセシルスと現実のセシルスに戸惑いながらも二人は打ち解け行った。彼女の方も最初はどこかトラウマを抱えた野良猫のように臆病であったが、心と身体を重ねるにつれ次第に架空の世界のような奔放さや甘えも現れ、二人は幸せに見えた。しかし、いつしか俺の中で「どこか違う」と感じ始めていた。そのどこかが自分でも解らない。セシルスにも自分にも答えを探しても見つからない。どうにもならない悶々とした気持ちが自分を支配する。俺は無理やり1つの答えを作り出した。そう見つけたのや無い、無理やり作り出した。その夜、架空の世界でビスルに向かい其処からセシルスにチャットした。あえてビスルにした理由は、殆ど人が訪れることが無い事と、テレポーターが無いため直接会う事が出来ないからだ。「俺たち別れよう」「え?」唐突に話しかけた言葉に彼女の返事は速かった。しかし次の言葉を打つのに俺は5回も打ち直した。「なんか今の俺、お前に依存してるんやと思う」「このままやと、二人とも不幸になるだけやし」そこまで打ち終えた時、液晶のガラテアの前にセシルスが映し出された。きっと何処かの天使に頼んで送ってもらったのだろう。しかしセシルスは何も言わない。架空の世界では飛び切り明るい性格の彼女が黙っている。一瞬液晶の中のセシルスの顔が泣いているように見えた。その時、俺はログアウトした。そう彼女から逃げ出したんや。もう二度とあの世界に行く事は無いやろうと思ってた。現実の世界でもセシルスは俺に連絡する勇気はないやろう。でも、その時は意外と早かった。ある日、一通のメールが携帯に届いた。トリーシャと名乗る人物やった。彼女はどうしても俺に合わせたい人がいるのでレッドストーンに来てほしいと言った。結局、半信半疑ながらもまたあの世界にもう一度足を踏み入れた。そこで知った事実は衝撃的だった。幼い頃に俺に兄がいた事実、そして随分前から兄は俺を見つけ里親に送金していた事。よく考えると貧しい里親が俺を大学まで出してくれた事に不思議さを感じていた。但し、里親制度の約束として本当の家族を教えてはいけないため兄の存在を俺に隠していた。そんな彼は俺と同じ、レッドストーンの世界で奇遇にも同じ剣士をしていた事。何処かで、剣を交えていたかと思うとその不思議さでなんだか嬉しかった。しかし、次のトリーシャの声で俺の嬉しさは全て凍りついた。「彼はもうこの世界にはいない。いえ現実の世界にもいない」「彼、事故で舌を噛み切って死んでしまったの」画面から流れるログに現実の俺は絶句した。初めて知った唯一の肉親の存在が・・・しかし、知らされた時にはもう合う事が出来ない存在となっていた。翌日、現実の世界でトリーシャと待ち合わせをし、出会う事が出来なかった兄の墓参りをした。会ったことも無い、昨日まで存在さえ知らない兄の死が現実となった時、俺の頬に涙が流れた。何でやろ?その夜、深い悲しみに奪われた俺の心と体をトリーシャは癒してくれた。翌日、病院で受け取ったという兄の遺書にはこう書いてあった。「ルジェはいいやつだ。彼女の事をよろしく頼む。これが最初で最後のお願いだ」トリーシャは黙ったまま泣く俺を抱きしめた。そしてすがる俺を突き放し「あまえないで、あまえる男は嫌いさ」言葉と共にどこからかフライパンを出し強烈な一撃をくれた。トリーシャが言った通りルジェは兄が作った「酒ギルド」にまだ在籍していた。兄が死んでから1年も経つというのに彼女はまだ兄の匂いのする場所から離れられなかった。俺は、架空世界の中で彼女を喜ばすために必要以上に陽気に振舞った。いつしか二人はギルドに関係無く頻繁に会うようになり、俺は思い切ってオフ会に彼女を誘った。正直、兄の彼女であったルジェではなく一人の女性として会ってみたかったんや。オフ会であった彼女は想像以上に綺麗な女性で、俺は彼女に直ぐに夢中になった。「いいわ、付き合ってあげる。ガラテアが1年間貯めていた私の恋の貯金箱を開けちゃったの」それが俺の告白への彼女の返答やった。そしていつしか、兄と一緒に暮らしていたはずの部屋で過ごすことも多くなった。お互いの背中にぬくもりを感じながら、二人は液晶の中の世界で愛を育む。しかし、現実の世界のルジェ、いや、あけみは中々部屋の外へは出ようとしない日々が続いた。その事が気がかりだった俺は、もう一度オフ会に無理やり誘った。そこで俺を待ち構えていたのは、少し元気を取り戻したセシルスやった。「ゆうじ、元気にしてた?」「ん、ああ。お前こそどうなんや」「私はいつでも元気娘だぞ」ピースサインをしながら元気を装うセシルスは明らかに無理をしていた。「そうやな、臭いのと元気はセシの取り柄やったな」「臭くないわい!うちは清純可憐な乙女やろ」不思議と二人でいた空気感が戻ってくる。「そいや、ゆうじはまだ彼女できへんの?」「あ、いやほらあそこにいる人。あけみって言うんやけど・・・」「そっかぁ、そうだよね。ゆうじ優しいし女の子が放っておかないよね」「・・・お、お前こそどうなんや」「私だってゆうじが思っているよりも、もてるんだぞ。べーだ」また彼女に嘘をつかせてしまった。少しうるんだ瞳を隠すように俺の側から離れていった。彼女はいつも俺といる時は無理ばかりしていた。そんな彼女が愛しいと思っていた。翌日、ルジェから突然チャットが入った。冒険しようと。「なんやか久しぶりに二人で冒険やなー」「ええー、そして最後の冒険よ」「な、何!」「なんでなんや、俺なんかしたんか?」「訳も判らず突然別れるなんて、納得できへん。俺はルジェが好きなんや」「ごめんね。私が貯めた恋の貯金、使いきっちゃったみたい。えへ」「セシルスさんを大切にしてあげて」「ルジェ・・・知ってたのか」「うん、でも今までいい夢見れたよ。ありがとガラエモン」「それに、姿形が一緒でも育て方で全然違うキャラになるって教えてくれたのはガラテアよ」「あなたはやっぱりsakezukiではなかったの」「私、もう卒業するわ。あなたと酒から。本当に今までありがとう」液晶の前に座る自分の膝がガクガクと振るえた。一帯何が起こったのか理解出来ない。すると、ミズナの洞窟に一人の女性が現れた。トリーシャやった。「いたのか」「ええ、サヨナラしたのね」「俺、サイフリしよっかな」「馬鹿ね、サイフリしても結局彼女にとって貴方はsakezukiの代わりなの」「そしてね、サイフリしたのは彼女の方よ。貴方との恋愛で経験値を積んで」「そして現実の世界で新しい自分と向き合うはずよ」「そっかー、結局俺だけが取り残されちったなぁ」「そだトリさん俺と付き合わない」ガツン!どうやってしたのか、液晶からフライパンが飛び出してきて画面の前の俺のおでこを直撃した。「ちょーーーー何者やあんた」「フフ、貴方には他の誰でも無く貴方を本当に必要としている人がいるでしょ」そう言い残し、トリーシャは消えていった。「ふん、冗談やったのに。本当に痛いやんか・・・うぐぐぐっ」「胸の中心がさ」「あれ、おかしいやん。なんでこんなに泣けるんやろ」不思議な恋は唐突に始まりそして終わった。良く考えると依存ばかりしてたのは俺自身やった。いつも直ぐ側で笑いかけてくれてたアイツの事、実は何も解っちゃいなかったのかも。「この恋の卒業で少しは成長できたかな兄貴・・・」○キャストゆうじあけみトリーシャセシルス<あとがき>今回の短編はいかがでしたか?女の視点と男の視点で一人称小説に挑戦してみました。女心を知らない勝手な作者なので、女の人の心情とか上手く表現できていないと思います。ガラさんは本当に悪役でごめんなさい。やっぱ人気者で主人公書くと皆が読んでくれるかなとか下心がwまぁ構想20分(会社帰りの車の中)執筆1時間の大作なのでこんなものでしょうwでも短編の方が書きやすいや^^挿絵を別の所で描いたのでこの子達に物語を書いてあげたかったのが始まりでもあるwえ?この続きかい?ガラさんならどうするかRSで耳して下さいb
2007年03月07日
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「恋の卒業式」この物語はフィクションです。登場する人物、団体等は全て架空です。どこかで聞いた名前でもそれは貴方の勘違いです。私の名前はアケミ、そしてもう一つの名前は「ルジェ」それはレッドストーンというゲームの中の名前。(ルジェさんのリア名はアケミじゃありませんw)ゲームなんて、私には別の世界の物だと思っていたあの人と会うまでは。彼の名は酒。私の大切な彼。ゲームが大好きだった彼に誘われいつしか私もゲームにはまった。やがて二人で暮らすようになった後も同じ部屋にPC2台で仮想の世界でデートした。喧嘩もチャット、仲直りもチャット。二人で仮想の世界を冒険し、旅して一緒に戦った。やがて、二人は同じギルドで戦友のように戦い、一緒に勝利を喜びそして現実の世界で抱きしめあった。あの日までは・・・あれは1年前、現実の世界で雪山登山に行った酒は滑落し自らの舌を運悪く切断し帰らぬ人となった。現実の世界と架空の世界に取り残された私はひたすら彼の跡を放浪した。現実の世界にないこの美しき景色が全て涙で滲んでいた。そして私は現実の世界に戻るタイミングを失い、架空の世界に閉じこもった。二人が一緒にいた「酒ギルド」。私はそこから離れることが出来ずにいたある日彼が現れた。「ガラテア」そう名乗った剣士は関西弁を話し、その場の雰囲気を和ませる人物だった。傭兵として数日間の滞在だった彼との時間が荒んだ私の心を癒してくれた。丁度その頃、オフ会と呼ばれる現実世界でゲーム内のメンバーが集まるイベントがあった。正直、気乗りはしなかったがガラテアの誘いもあり参加する事になった。その当日、私は衝撃的な光景を目の当たりにした。「酒さん!」オフ会で出会った男の人は酒であった。いや酒であるはずがない。彼はもうこの世界には存在しないのだから。彼はガラテアと名乗った。全てがそっくりであり、共に過ごした私でさえ見間違えるほどであった。その晩、ベッドの中で彼との違いを探そうとしたが結局見つけられなかった。部屋に帰った私はこの秘密は酒の生い立ちにあると考え、彼がそだったと言う施設を訪れる事にした。そこで分かった事は、酒には生き別れの弟がいたことだった。そして弟の名はガラテアとゲームで名乗る人物と同じであった。私はその事をゲーム内でガラテアに話すと案外素直に認めた。そして、兄の好きであった私に会いたくて酒ギルドを訪れたと。「でも俺、本気でルジェの事が好きになったんだ。付き合ってくれ」ゲーム内での思わぬ告白だった。私は酒の事を忘れた訳じゃない。でも今ガラテアに惹かれているのも事実であった。「いいわ、付き合ってあげる。ガラテアが1年間貯めていた私の恋の貯金箱を開けちゃったの」「この貯金を使い切るまで一緒にいてあげる」自分に対する言い訳だったのかもしれない。実の所、あの楽しかった日々を思い出させてくれるガラテアと一緒にいたかった。そしてまた私は架空の世界で彼との冒険と現実の世界での彼との甘い生活を楽しんだ。ある日、またオフ会がありガラテアに誘われて一緒に出かけた。しかし、この時私はある事に気が付いた。それはガラテアの女の匂いだ。オフ会で話しかけてくる女性達のガラテアの対応は明らかに通常の友達以上であった。「あら、あなたがルジェさんなのね。私がトリーシャよ、よろしく」酒ギルドで昔から付き合いのあるトリーシャさんだった。私より年上だけど、とても可愛らしい女性であった。「ふーん、あなたが今のガラテアの彼女なのね」「でも気お付けなさい、ガラテアは案外捨てる時は冷たいわよ」トリーシャは少しきつく、そしてはっきりとした口調で私に話し、また他の席へと移動した。その時、はっきりと判った。トリーシャがガラテアの前の彼女だ。そのオフ会の後、ガラテアは私の家で一晩過ごした。翌日。TRUUUUU。TRUUUUUU。携帯の音で目が醒めたが表示された番号は知らない。「誰だろう」不思議に思ったが応答した。「私、セシルスといいます」知らない名前だ。しかもかなり上手な日本語を話す外人である。「あ、あのー、ゲームの中の名前がセシルスなんです」ようやく理解できた。昨日のオフ会で番号の交換をした誰かだろう。「唐突でご、ご免なさい。出来ればガラテアさんと別れてください」「ムチャな事言ってるのは判っています、でも私彼がいないとダメなんです」その電話で判った事は、ガラテアは「酒ギルド」に来る前は「おっさんず」と言うギルドに所属していた事。そしてセシルスとはそこで付き合っていた事。リアルでも付き合っていた事。彼女とこじれて「酒ギルド」に来た事。そして彼女とは結婚の約束をしていた事であった。その晩、私はガラテアをミズナの洞窟へと誘った。「なんやか久しぶりに二人で冒険やなー」「ええー、そして最後の冒険よ」「な、何!」「なんでなんや、俺なんかしたんか?」「訳も判らず突然別れるなんて、なっとくできへん。俺はルジェが好きなんや」「ごめんね。私が貯めた恋の貯金、使いきっちゃったみたい。えへ」「セシルスさんを大切にしてあげて」「ルジェ・・・知ってたのか」「うん、でも今までいい夢見れたよ。ありがとガラエモン」「それに、姿形が一緒でも育て方で全然違うキャラになるって教えてくれたのはガラテアよ」「あなたはやっぱりsakezukiではなかったの」「私、もう卒業するわ。あなたと酒から。本当に今までありがとう」私は一人街へワープして、そしてログアウトした。私は今日、ようやく1年かけて酒を忘れることが出来そうだ。今日が私の恋の卒業式だ。
2007年03月06日
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血で溢れる大地。大気は異臭で埋め尽くされ、目に写る光景は身を震え上がらせる。天空に赤く輝く月だけがいつもと同じであった。「何故?」背中に刺さる冷たい感触と頬に触れる柔らかくも暖かいいつもの感触の違いに戸惑いながらニーナに視線を向けるトリーシャ。「あ、あなたさえいなければ・・・」「あなたが全部いけないのよ。私はあなたのせいで全てを失った」「最初から何もないあなたと私は違う。私には大切な夫や両親、子供や村の仲間がいた」「全てを持たないあなたに、全てを失った人間の苦しみはわからない」「うぅぅぅ、痛いよ。痛いよニーナ」訳もわからずに泣き崩れるトリーシャ。「そう、私の心はもっと痛かった。そしてあなたに殺された私の子供達も痛かったのよ」「あなたにも私の痛みを教えてあげる」ニーナはトリーシャに刺さる短剣を無造作に引き抜くと視線をトリーシャの後方に向けた。そこには、震えるまだ幼い子供が二人泣き崩れていた。雪音とルジェであった。ニーナ・マイヤーは、一気に幼い子供の前に立ちはだかると鮮血に染まった短剣を大きく振りかぶる。しかし、その短剣は振り下ろされる事なくニーナの頭上で震えたままの状態で止まっていた。幼い二人の怯える目がニーナの心に突き刺さる。「くそ、何故だ!何故お前達が私の子達と重なる。私は仇をとるんだ、あの子達の無念を晴らすんだ」「何故なんだ・・・」頭上に短剣を振り上げたまま動きを止めたニーナの頬に涙が伝う。その時、地面に黒い影が走る。影はニーナの影に入り込み人型のまま浮かび上がる。「何だ!うぐぅ」その影はニーナの首に巻きつき締め上げる。「よくやった、お前のその激しい憎悪、恨みがトリーシャの心を殺した」「そして我はついに長年の呪縛から解き放たれ、今ここに復活した」「さぁこの二人を殺し、我の復活を飾ろう」ニーナを締め上げる影が更に伸び、幼い雪音とルジェに襲い掛かる。「そ・・・そんな事はさせない」ニーナは力を振り絞り、影を振り払い二人の前に立ち影を短剣で切りつける。「ほほー、これは可笑しな人ですね。先程まで彼方が殺そうとした子を今度は守ると?」「私はなんて愚かだったんだ。危うく取り返しのつかない事を・・・」「私は間違っていた、今の悲惨な光景も過ぎてしまった過去も消えやしない」「でも、未来は違う。私や私達を覆う暗闇に光をもたらすのは未来だけだ」「その未来を消してはいけない。私の子供たちが教えてくれた」「現在を生きる人が希望という一歩をためらってはいけない。未来へ紡ぐ運命の糸は切らせはしない」「無駄、無駄、無駄!貴様等人間には、絶望という未来しか残ってはいない」「絶対的な力の前では奇跡など起きないことを教えてあげよう」再びニーナに影が襲い掛かる。二度三度、短剣で応戦するが影が雪音に向かった時にニーナは自らの体を投げ出し影に捕らわれてしまった。「はっはっはぁ、所詮人間は甘い。さぁ死ぬがいい」グルッ、ザキン!「クハァ!誰だ!」影の首の部分に一瞬光が円を書き、影が悲鳴を上げた。ニーナを放し、首を押さえながら影が辺りを見渡す。するとニーナと雪音、ルジェの間に一匹の犬コロチュウが現れていた。「おのれ、我の体に傷をつけるとはただの犬ではないな。何者だ!」「やれやれ、次元の狭間で生き長らえたのはお前だけじゃないんだぜ」「お、お前は!まさかザードフィル!」「正解だ。流石に死んだと思ったが、お前の天上界と争う程の力とレッドストーンの力でな」「残念だがお前は完全に復活できないさ。今、お前の力とレッドストーンの力は此処にある」コロチュウの首にぶら下がる宝石がキラリと光る。「そ、それは」「そうさ、俺達が封印したお前の力と赤い力。今のお前は意識体と少しの力しか持たない」「お、おのれー、またしても我が前に立ちはだかるかザードフィル!」封印から解き放たれたロシペルとザードフィルの戦いが何百年の時を経て再び始まった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第44章 時を経て』ダッダッダザードフィルの研究室を後にして、花火、楸、フクチの三人が走る。その後方に怪しく蠢く塊が三人を追ってくる。「ちょー、あの生き物めちゃ速ぇーー!」フクチが愚痴をこぼすその後ろでは、実験体達が元気一杯に手を振り走って来ていた。「フクチ、前!前見ろ」楸が指差した先には、瞬間移動をした直後の実験体がいた。「スッスキル使うんかい!」フクチが驚愕の声を上げる。「まぁ失敗作とは言え、対赤い悪魔用の最終兵器にするつもりだったからこれ位は」「しかし、随分立派な方達ですねぇ」「花火っいいい!涼しい顔して何言ってんだよ」と楸。「いやぁ、まだ襲ってくるとは限りませんし」相変わらず涼しい顔で花火が答える。「いや、やばいってあの眼めちゃくちゃ赤いよ、攻撃してくるって」「まぁまぁフクチ殿、そんなどこぞの森の主じゃあるまいし」ガブッ!「ほら、アマガミしてじゃれついてますよ」ぴゅいーーーーっ「花火っ、血、血が出てるって」「普通アマガミで頭噛まないだろっ!」「あれ、本当だ。では少しお仕置きが必要ですね」花火が杖をかざし、念を込める。杖は光を帯びる。「馬鹿、花火!こんな狭い所でメテオなんてやめろ俺達追われてんだぞ」と楸。「それより心配なのは、ウイルスだけに感染力ですねぇ」「私達は大丈夫と思いますが、フクチ殿は今、通常人ですからねぇ」「あ、あのー、これはまずいのかなぁー?」フクチが二人に見せた太い腕にはしっかりと爪に跡がつき血が流れていた。「今のうちに布で傷を塞げば大丈夫だろう。敵の返り血でも浴びない限り感染しないだろう」と花火。ザザン!花火が杖を振る前に突然の衝撃波が通り抜け、目の前の実験体を切り刻んだ。斬激により無数の実験体が吹き飛び、その返り血が三人を覆った。「よう、又会ったな」実験体が崩れた後、三人の視界には巨大な斧を肩に担ぎ片目を閉じて挨拶するガラテアの姿があった。「あれ?なんで固まってんの、せっかく会えたんやしもうチョット笑ってよ」フクチの思いも知らず、ガラテアの笑い声が廊下に響き渡った。<あとがき>なんか前半は暗いよねぇw作者が暗いから作品も暗くなる気がするね。ニナさんゴメンね、嫌な役柄となってしまった><;書いてる途中でもう少しハジケタ感じが書きたいと思ったりして後半は少しギャグっぽく。皆さんはどちらがお好みでしょうか?本編は結構真面目な感じなので、また短編でも書くかな。(また本編が進まなく・・・)
2007年03月02日
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魔獣の群れに蹂躙された村。つい先程までいた村人達はもう形すら残っていない。唯一、最後に意識を残している長老エロス・ラグ・ブルーは既に下半身を失い力なく地面に転がっている。「さぁ、お前が最後だ。我が目覚めた記念すべき日の最後の住人だ」「死ぬがいい」その風貌からは信じられない声色で、虫の息の長老に語りかける少女トリーシャ。そして、再度トリーシャの右腕が天にかざされた。「はっ!」長老が静かに目を閉じた時、信じられない声が聞こえた。ニーナ・マイヤーの声であった。「長老、すみません。私はどうしても逃げる事が出来ませんでした」「例えこの場を逃げ切れたとしても、私はこの光景を忘れて生きていくことが出来ません」「弱い私をお許しください」「うぅぅぅ、だめじゃ、逃げるのだ。もうどうにもならん」「トリーシャは完全に意識を失っておる。お前の知っているトリーシャはもういないのだ」「それでも私は彼女を信じる。トリーシャ!トリーシャ、目を覚まして」「悪魔に打ち勝って、お願いだから」「ガハハハハァ、何をふざけた事を言っておる。この娘の意思などとうに我が食い尽くしたわ」右腕に纏わりつくニーナを振りほどき、高らかとトリーシャが笑う。そして再度右手に力を込めてニーナの胸に拳を突き刺した。グチャ!「ああぁあ」ニーナの悲鳴が漏れる。「ダメ!」アルテミスの声であった。「それ以上自分を血で汚さないで」「彼方は聞こえてるはずよ。ただ震えているだけ。村人と同じように自分に乗移った化け物が怖いだけ」_アルテミス、ダメです。_この世界は彼方の世界じゃありません。過度な干渉は歴史を歪めます。_だからと言ってほっとけない。_あの小さな子は私なんだ。あの魔物に変わり果てた時の私と同じ。_私は皆に助けられた。だから私が今度は助ける番だ。「トリーシャ、聞こえるのでしょ。勇気を持って立ち向かいなさい」「彼方しか奴に立ち向かえないの」「彼方なら出来る」「優しい彼方なら。人を信じたいと願う彼方なら」トリーシャの動きが止まる。「誰の声?ううっ、もう目が良く見えない。誰かは知らんが逃げるんだ、この子は悪魔に・・・」ニーナが激しい痛みに耐えながら、アルテミスに話し掛ける。「お姉ちゃん?さっきの幽霊さんなの?」「ぐおぉおお、誰だこいつを起こす奴は」トリーシャが自らの頭を抱え、苦痛な表情で話す。二人のトリーシャが交互にそれぞれの言葉を使う。「私怖いの」「誰だ、貴様は人間か」「私、いつも赤い月の日は怯えていたの」「この感じ、普通の人間じゃないな、天上界のものか」「この人が私を、私の意識を奪うの。体と一緒に」「いや、天上界の奴等のオーラじゃない。もっと大きな力だ」「さぁトリーシャ、勇気を持って。私にも出来たんだ君ならきっと出来る」「心を開くんだ。後は私がこっちに引っ張ってあげる」_アルテミス、彼方は傍観者であるべきです。_全てを受け止めるのです。コレはもう起きてしまった過去に事実。_守護者よ、私にはこのまま見ているなんて出来ない。_私は先を読む力とか無い、でも人は皆今自分に出来る事をすべきと思う。_結果、この先に何が起こっても正しいと思う事から逃げる訳にはいかない。「ううううう、貴様!解ったぞ、貴様の力。しかし何故その力をも・・・」トリーシャが、いやトリーシャの中の悪魔が話し終えない間にその体が光り始めた。黒いオーラに赤いオーラが混じり、やがて全てのオーラが赤色に犯されていった。そのオーラの根源はアルテミスであった。「ニーナ、長老・・・ごめんなさい私・・・」トリーシャが正気を戻した時、既に長老エロス・ラグ・ブルーは息を引き取っていた。ニーナも胸に穴が空き、出血量からして長くは持たない。「トリ、こっちにおいで」「さぁ、もう怖くないよ。震えないでこちらにおいで」トリーシャに手を差し伸べるニーナ・マイヤーの手は震えていた。恐る恐るニーナの手を取るトリーシャ。「ごめんなさい、私・・・」泣きながら謝るトリーシャをそっと優しく抱きしめるニーナ。トリーシャはもう泣く事しか出来なかった。ただひたすら泣きつづけた。「いいのよ、もう終わったの」「怖い悪魔は消えるのよ」「消える?」トリーシャが不思議に思い、埋めるニーナの胸から顔を離してニーナを見る。そこには厳しい表情でトリーシャを見つめ、短剣を大きく振りかぶっていた。グサッ!【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第43章 真』ガシャン、ガシャン!次々と培養液の入った水槽が割れる。その中から見たこともない魔獣達がゆっくりと立ち上がる。「くぅ、ザードフィルの作った生き物か」「ちゃんと処分しとけよ」楸が杖を構えながら愚痴をもらす。「失敗作って訳か」「でも、レッドストーンの力を持っているはず。慎重に」フクチが二人に指示する。楸の杖が襲い掛かる魔獣に打ち付けられる。魔獣達は幸い動きが遅く楸の素早い攻撃に対応できない。2体、3体と杖に込められた魔力により凍りつく魔獣たち。同じように、花火の杖も魔獣達を襲う。杖より放たれた炎が魔獣達の全身を焼き尽くす。数分間の闘いであった。赤い石の力をもった魔獣達も楸と花火の前には太刀打ち出来なかった。「終わったようだね」花火が楸に話し掛けた時、楸は額に手をあて眉間にしわを寄せていた。「痛むのか?力を酷使すると呪いが発動する。出来るだけ控えたほうがいい」「ああ、だが大した痛みじゃない。コレくらいなら問題なさそうだ」花火の問いに顔を歪めながら楸が答える。「では、時間がないので簡単に説明するよ」「ザードフィルは味方であり、敵なんだ」「遠い昔、私と共に赤い悪魔を封印した仲間なんだ」「しかし、赤い悪魔と我々の仲間の一部がこの時代に飛ばされ」「そして今、再び赤い悪魔が復活しようとしている」「ザードフィルは前回の闘いで、力を殆ど失い今のままでは奴に勝てない」「だから、我々に協力の依頼が来たのさ」「ではまさか、儀式とは!」とフクチ。「そう多分、赤い悪魔の復活の儀式でしょう」「赤い悪魔は全ての力を取り戻していない。儀式が完成する前に倒さないと世界は破滅する」「そんなに強い力なのか?」と楸。「奴は天上界でどうにもできなかった。そしてレッドストーンの力を手に入れた奴なら」「この世界は7日で滅ぼす事も可能です」「じゃ、どうすればいいんだ」楸が愚痴をこぼす。「私も全てを知っている訳ではないのです」「ただ、奴を倒すことが出来るのは昔も今もザードフィルだけでしょう」「今は彼を信じるしかない。彼の残した”ラ”と例の物を探しましょう」ザザ、ザザザ。花火の話に聞き入っていたフクチの後ろで物音がした。不意に振り返ると先程倒したばかりの魔獣が起き上がり始めていた。「凄い再生能力だな、あれだけやっても復活できるのか」と楸。「流石ザードフィルか、どうします。」とフクチ。「三十六計、逃げるが勝ちでしょう」花火の答えで一斉に振り返りザードフィルの研究室を後にした。<あとがき>皆、驚いた?ねね、驚いたでしょ?驚いてくれなきゃいやんいやん。えぇもう二度としませんが、ボリュームを落とさずに3章同時に更新b全ての力を使い果たしたので、当分は頭休めますが(マテまぁ楽しみにしてくれている人には少しは喜んでもらえたかな?では良い週末をノシ
2007年02月23日
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「ふははははっ。いい眺めだ」トリーシャの声が響き渡る。「最悪じゃ、ついに悪魔が目覚めおった」「長老・・・」「ニーナよ、我々一族が古来より封じていた魔物が遂に目覚めたのじゃ」「もうわしらに抗う術はない。ただこの惨劇を見守るのが最後の勤めじゃ」「長老、諦めないで下さい」「いや、もうダメじゃ。今までも犠牲は出してきた、じゃがここまで大きな力は感じはせんかった」「古き言い伝えにより、赤き日の子を授かった時より、わし運命は決まっていたのかもしれんな」「ニーナよ、ニーナ・マイヤーよ、そなたは若いまだ死ぬには惜しい」「唯一残された希望、二人の姉妹をつれて逃げてくれぬか」「長老、私も戦います。私の夫や子供、家族全員が既にこの世にはいません」「ならば、この世界の子供達のために刺し違えてもトリーシャを・・・」「それが、幼き日より我が子のように育ててきた私の努めです」「ならん!これは古代エリプト王国の末裔。放浪の民エリプシャンが長、エロス・ラグ・ブルーが務めじゃ」「エリプシャンの女性は強い、よろしく頼んだぞ。よいな」「希望は捨てちゃいかんぞ、必ずや世界は救われる。今は信じて逃げるのじゃ」「言い伝えにはこうある」 『長き眠りより赤き悪魔が目覚める時、光の使者あらわれん』 『黒き光と赤き光は一対、連鎖により長き眠りから覚めるだろう』 『黒き力は世界を覆い、天は泣き、地は枯れ果てる』 『赤き力は束ねられ、連鎖の鎖を断ち切るだろう』 『赤き力と黒き力は約束の地へ帰らん』「よいな、必ずや希望は訪れる。信じるのじゃ」そこまで話すと、長老は魔獣達の群れへと飛び込んでいった。ニーナは震える体でうずくまる、幼い姉妹を抱いて立ち去った。残された男達は長老も含めよく戦った。元々は傭兵での出稼ぎを主な生業としていた種族である。魔獣に対する知識や戦闘の方は長けていた。多くの返り血を浴びながら、エロスが魔獣の森を突き進む。その目の前に幼い少女、トリーシャが姿を現した。「ご苦労だな長老。いつも丁寧な呪印で閉じ込めてくれて感謝している」何倍も年上の相手に見下したように語るトリーシャ。顔には薄っすらと笑みがこぼれていた。「しかし、お前も長く生き過ぎただろう。帰る村も今は無くなった。ゆっくり休むがいい」「安心しろ、村、いや全世界の人間共がもうじき後を追う」トリーシャは右手を大きく上げる。その手の先には巨大なオーラが集まり光り輝く。「何故じゃ、今まで解けなかった封印が今になって何故じゃ」「さぁな、私にも解らんよ。ただし今日はすこぶる気分がいい」「だから安心しな、一瞬で殺してやる」ザク!振り下ろされた邪悪なオーラに包まれたトリーシャの手により、エロスの体は無残にも切り刻まれる。肩から袈裟切りにされ、下半身は元の形さえ判別つかない程になってしまった。ただ胸の下から伸びた背骨であった細い物が左右にゆらゆらと揺れていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第42章 予言』三人の男達は食い入るように、ザードフィルの研究日記を読む。しかし、肝心の彼の目的は検討がつかなかった。ただ、花火だけは何か思うところがあるのか眉間にしわを寄せていた。--------------------------------------XX年XX月XX日これが最後の日記だ。既に私の体は自由を奪われ、これ以上続けることは出来ない。奴はそれ程までに力を取り戻している。後は彼等に託すしかないだろう。今の私では何も出来ない。いや、出来ないどころか全ての希望を消し去ってしまうだろう。奴の儀式は準備が整い始めている。随分時間が掛かったが、それは私が気づかれないように邪魔をしていたからだ。もうこの儀式は避けられないだろう。私は最後の希望を例の物とこの研究とまだ見ぬ仲間に託す事にする。もし、万が一彼等の内一人でもこの日記を読んだなら私の本意に気づいてくれ。二度と失敗は許されない。我々の過ちを此処で正すのだ。結論から言おう。この研究は失敗に終わった。レッドストーンから新たな生命体を創造するには時間も能力も足りなかった。やはり、神は私の恐れ多い行いを許しはしなかった。しかし、前回の”ソ”における実験で新たな希望が湧いた。生命体を創造すること、人との融合には失敗したが鉱物とは明らかに成功した。元々宝玉として天界に存在したからなのか今は理由は知ることが出来ない。しかし、無機物に意識を持つレッドストーンの欠片を融合させる事は可能と解った事が大きい。私は全世界における力を持つと言われるオーブやスフィアを集めた。そして、あの炎の神獣の知恵と力を借りて遂に完成させた。私は彼を”ラ”と呼び、無垢な存在であるラに私の全ての知識を与えた。それは、一人の赤ん坊を育てるのと同じであった。但し、意識や知識は成長していったが感情と呼ばれる物は欠落していた。それも仕方無い、今はもう私にも世界にも時間が許されないからだ。きっと、ラが最後の切り札となるであろう。--------------------------------------「ふむ、なんとか完成したようだな」と楸。「ラと呼ばれる人物が今回の儀式に対抗する術なんですね」とフクチ。「では、彼を探しましょう。必ずこの塔にいるはずです」花火も続く。「いや、ちょっと待て何故奴は自分が行う儀式を邪魔しようとしているんだ」「しかも”奴”とは誰なんだ?」楸は憮然としながら二人に問い掛ける。「どうやら、私の知っている事を話す時が来たようですね」「出来ればフクチ殿は巻き込みたくなかったのですが、そんな段階ではないようです」花火の言葉にフクチばかりか楸までが反応する。ガシャーン!突然の破壊音に三人は身構えた。<あとがき>もう何も言うまい。ただ一言、疲れました><;今日は以上wあっ、一つだけ言うの忘れたw昨日GV後にエロスちんが出演希望してたので予告で小説で切り刻んでやると言いましたので実行ですb(長老は最初無名の予定だったよ)普通の方はあんな惨い仕打ちはしませんので^^
2007年02月23日
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薄暗い部屋に幽閉された少女、そこに寄り添うようにコロチュウと呼ばれた子犬が寝そべる。ふと壁の外から話し声がアルテミスの耳に入って来た。「そろそろだな」「ああ、今夜はかなりまずい事になりそうだ」「いっそのこと・・・」「それは無理だ。我々にはどうにもならん」「せめて、あの姉妹がもう少し育たんことには太刀打ち出来ん」「長老、何時まで我々は怯えて暮らさなきゃなならないんだ」「もう少しの辛抱じゃ、きっと彼等の意思と力を告ぐ者が現れる。それまで待つんじゃ」「もう、もう無理です。私には耐えられない。此処にいるみんなは全て家族を殺された」「例え自らの意思ではなくとも、彼女を許すなんて私は出来ない」その時であった。無数の魔獣の咆哮が村中に響き渡る。ウォーーーーーー!グォーーーーーーン!激しい獣の鳴き声と、血肉を削る音が部屋の中にも聞こえてくる。中には悲鳴や断末魔の声までがアルテミスの耳に入って来た。ふと、トリーシャに目をやると俯きながら小刻みに震えている。「どうしたの?」アルテミスがトリーシャに近寄る。「フハハハッハ、下部達よもっと暴れるがいい」「赤い月夜に大地を血で染めるのだ」トリーシャの思いもよらない声にアルテミスは動揺し、彼女の肩を揺らす。俯いた顔が上下に揺れ、アルテミスと視線があった時少女の瞳が血の色に染まっていた。ガーン!ガーン!ガガガ、ガーン!突然の轟音と共に、地震のような揺れが部屋全体を襲い、壁がもろい陶器のように砕け散った。閉じ込められた世界から開放された外の世界はあまりにも惨い世界であった。黒い塊のように蠢く魔獣。黒とも赤とも言えない色に染まった大地。鼻につく異臭。響き渡る獣の咆哮。視界にはそこがほんの少し前まで人々の営みが行われていたなど想像出来ない世界に変わり果てていた。希望の欠片も見つからない。暗黒の世界。ただ赤い月だけがあざ笑うかのように大地を照らしていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第41章 悪夢』ザードフィルの研究室、不気味な雰囲気が漂う中、花火がめくるザードフィルの日記に三人は集中していた。-------------------------------------XX年XX月XX日日々、私の力が衰えてくる。奴の力が増大しているのが肌で感じられる。急がねば、奴が気づく前に研究を終わらせなければ。今日、研究に大きな一歩が踏み出された。やはり鍵はあの赤い石だったのだ。あの赤い石の欠片を使って、人と魔獣の合成に成功したのだ。魔獣の細胞組織に赤い石の欠片を特殊な条件下で合成すると、+RNA体のウイルスを生成できることが解った。ウイルス化した細胞は自信では増殖できず、人の細胞による偏性細胞内寄生により一気に増殖する。しかし、問題があった。宿主である人の精神面が非常に不安定となった。私は宿主となった彼をミと名づけたが彼は失踪してしまった。--------------------------------------XX年XX月XX日もうダメだ、奴は気づき始めている。念のため、この部屋には結界を張っておいたが何処まで効果があるか。例の物は随分集まった。もう少しで全てが揃う。しかし、私の手も多くの血に染まってしまった。研究はおおいに行き詰まった。人や魔獣にあの力を支えるキャパは無い。前回の成果であるウイルスの受け皿が見つからないのだ。又私は一から生命を作る作業に取り掛かった。しかし、何度やってもダメだった。ウイルスの宿主になるには細胞組織と精神面の両方が不足していた。私は彼等を”ファ”と名づけ丁寧に葬った。--------------------------------------XX年XX月XX日最近は記憶を無くす事が多くなってきた。私はこの不毛な闘いが、何の為であるかすら、あやふやになってきた。しかし、時は奴を更に強大にしていた。そして奴の目的の準備は着々と進む。例の物が遂に揃った。今は奴に気づかれないように封印した。必ずや希望をもたらしてくれる。今は信じるしかない。彼がそうであったように。そして、奴のもくろむ儀式の準備も整い始めた。私は遂にある男に全容を打ち明けた。彼ならなんとかしてくれるだろう。絡みあった、運命の糸を解くことが出来るのは彼しかいない。研究は遂に後一歩の所まで進んだ。彼女を助けるには、最後の賭けで私の研究にすがるしかなかった。成功する保証など何処にもなかった。しかし、神は存在するのだろう彼女は不治の病から救われた。私の作ったレッドストーンのウイルスと彼女を蝕むウイルスが互いに侵食しあい、彼女の身体の崩壊を止めたのだ。しかし、1月後に最悪の事態が起きた。2つのウイルス同士が干渉しあい、新たなウイルスに進化してしまったのだ。RNA体とDNA体を同時に持つ既にウイルスではない細胞となって寄生母体である彼女の身体から独立し始めたのだ。私は最後の手段をとらざるをえなかった。現在の彼女の身体を培養液で分解し、増殖し続ける細胞の新たな受け皿として、鉱物を選んだ。元々宝玉の欠片から生まれた力だからか、奇跡は起きたのだった。彼女の意識体をそのままに不死の生命体をとして新たに彼女は生まれ変わった。そして驚くべき事に、あの赤い宝玉の力をもコントロールする事が可能だった。以前の彼女が優れた戦士であった事が幸いしたのだろう。遂に私は目的を達したと感動した。しかしそうそう上手くは行かない。巨大な魔力を放出することもコントロールも可能となったが、魔力の充電が追いつかない。彼女が魔力を放出する時には、誰かが膨大な魔力を供給する必要が出来てしまった。結局、私の研究はまた頓挫した、結局私に救えたのは彼女の意識体のみだった。死に怯える苦悩から、死と接する事が出来ない苦悩を彼女に与えてしまった。果たして、彼女は幸せなのだろうか。私は新たな彼女の事を”ソ”と呼んだ。当然研究上の中だけである。彼女に対しては旧友である昔の名前で呼んでいる。--------------------------------------「・・・魔槍メタルビートル・・・」花火が呟く。「まさか!」「何!」楸とフクチが花火の声に反応し驚愕の表情を浮かべた。<あとがき>少しペースが速くなってきたかな?でも次回は間を取ろうかとも思ったり、思わなかったりw今回は少し科学的な事を書いていますが、雰囲気だけ味わって下さい。多分嘘っぽいてか適当ですからw
2007年02月23日
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小さな暗い部屋、窓一つ無く灯りは蝋燭が一つのみ。壁や天井にはカビがはびこり、匂いが鼻につく。アルテミスはその部屋の片隅にしゃがみこむ小さな少女を見つけた。「お姉ちゃん誰?」不意を襲った小さな少女の言葉にアルテミスは驚愕した。「私が見えるのか?」アルテミスが狼狽し少女に声をかける。「え?他の人には見えないの?突然現れたからちょっとビックリしたけど見えるよ」少女が微笑みながら言葉を返す。「でもね、此処は誰も入っちゃいけないんだよ。長老さんに怒られるよ」「・・・あ!そうだ、お姉ちゃんは幽霊さんでしょ。だから突然現れたんだ」「普通の人は此処に入れないもんね」「閉じ込められてるのか?」「う~ん、月に一回ね赤い満月の夜があるの」「私はその満月の夜に生まれたから、呪われちゃったみたい。だから毎月この日は外に出ちゃいけないの」「でもね寂しくなんかないのよ。私にはこの子がいるから」いかにもやせ我慢している顔で、自分に寄り添う一匹の子犬を撫でる。「コロ、お客さんだよ。君にも見えるかい?」「この子、コロチュウって言うの。生まれた時から一緒にいるの」「・・・私のたった一人の友達かな」少女が寂しい気持ちを押し殺し、元気に笑いながら友達を紹介した。その小さな子犬は、柴犬のような茶色の毛並みとくるりと巻いた尻尾が特徴であった。そして、その首輪に下げている宝石にアルテミスは目を奪われた。丁度真中で右に透き通る真紅、左に吸い込まれるような漆黒で形成された宝石。その美しさは思わず息を呑む程であった。「お姉ちゃん、どうしたの?幽霊でもコロが怖いの?」「あ、いや。可愛い犬だな」「ありがとうお姉ちゃん。お姉ちゃんは優しい人ね」「私やコロを見て虐めないもの」「初めてあった人を虐める理由なんてあるのか?」「わからない。でも私を虐めない人はいないよ」「全然知らない人でも虐めるから。多分、私を見ると人は虐めたくなるんだって思ってた」アルテミスは平然とした表情で話す少女を見て自分の過去を重ねていた。_私はこんな表情で人と接していたのか。_これではまるで人形だ。「何故抵抗しない?閉じこもっていては相手の虐めを肯定しているのと同じだ」「君が抵抗の意志を示さないと状況は変わらないよ」「そんな事、随分前に諦めたわ。それに理由は私自身ではなく私が生まれた日なんですもの」「生まれた日までは自分で変えられないわ」コロチュウを撫でる少女の手には無数のためらい傷があることにアルテミスは気づいた。「傷が気になる?人って中々死ねないよね」「元々臆病だから死を考えるのだけど、その臆病な自分が死ぬなんて怖いこと・・・」「最初は自分でもわからないから行動するの。でも血を見ると臆病な自分が目を覚ますの」「人が嫌いなのかい?信用できないのかい?」「他人だけじゃないわ。閉じ込める長老も嫌い」「面倒見てくれるニーナも嫌い、表面だけの妹達のルジェも雪音も嫌い」「嫌い、嫌いこの世界も、あの赤い月はもっと嫌い」「でも、一番嫌いなのは臆病な自分…」「辛かったのね。でもあなたは人や自分が信用できないくせに」「心の奥底で、他人を信じたいと望んでいるのね」「名前はなんて言うの?」「私はトリーシャ。父や母も生まれた時からいないのに名前だけあるなんて変なものね」「あ、妹達とは血が繋がっていないの。ただ一緒に育てられてるから妹なんだって」「大人の都合ね」冷静を装うトリーシャの目には涙が浮かんでいた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第40章 呪われた血』ザードフィルの研究室と思われる部屋にフクチ、楸、花火の三人がいた。その不気味な部屋には大小様々な薬品と今まで見た事も無いような魔獣の標本。ガラスで出来た水槽には何かの培養液なのか?不思議な色の水が満たされた水槽がいくつか並べられていた。「ザードフィルの奴、ここで何をしていたんだ」楸が独り言をもらす。「奴は有名な錬金術士だからな。俺達が見てもまったく判らん」花火が丁寧に答える。「二人とも、ちょっと来てくれ」研究室の机を調べていたフクチが二人を呼び寄せる。その手には一冊のノートが握られていた。その分厚いノートはかなり古く、表紙は既に色あせていたが最近まで使用していたのか誇りなどは付いていなかった。古い表紙には『ザードの秘密の日記(見ちゃだめよ)』と書いてあった。三人はその拍子抜けな題に笑いながらも、フクチが手に取り机の上で開いた。-----------------------------------ザードの日記XX年XX月XX日うへへへ、今日は誰に奉仕させるかな。ルジェの指使いは最高だし、雪の一生懸命な態度も捨てがたい。悩むところだが、姉妹全部に相手をさせるか。いやぁ最近は溜まってるからな、ここで一気に抜かないとやばいな。疲れがね取れるのさ、マッサージはね。うん、彼女達はいい整体師になれるな。------------------------------------「なんなんだ、紛らわしい。ちょっと期待したじゃないか」と楸。「何を期待してたんだか」フクチが白い目で楸を見る。「いやぁ、まぁそのなんだか関係無いようだなこの日記は。はははっは」「いや、フクチちょっと貸してくれないか」花火が真面目な顔でフクチの本を受け取る。怪訝な顔で二人が見守る中、花火は先ほどのページを開けながら、なにやら不思議な呪文を唱える。すると、先程見た文章の下から赤い文字が現れた。「どうやら、簡単な呪法が仕掛けてあったようですね」「赤い文字は多分彼の血で書かれているのでしょう。通常の人間が開いても読めない」「力ある者が読むとトラップが、赤い力を使う事が出来る者しか読めないようです」「ある特定の人間にのみ伝えたい何かが書いてあるようです」-------------------------------------XX年XX月XX日この文字を読む事が出来る人間がまだ残されている事を願う。これは、我々地上界の最後の希望を造るための研究を綴る。奴に対抗するには、あれが必ず必要だ。奴は今も力を取り戻す準備をしている。そして、運命に導かれ彼らも集うだろう。奴は邪魔な物全てを一気に取り除く準備をしている。私も急がなくてはならない。私は今も私が自由になる時間で例のあれを探しつづけている。そして、その為にもこの研究を成功させなくてはならない。--------------------------------------XX年XX月XX日私は今も奴の目に怯えている。奴にだけはバレては行けない。例の物は随分情報が集まった。そのことに関しては部下達も上手く動いてくれている。研究は相変わらず進まない。最初に生まれたのは、生命とも物とも言えない状態であった。大きな力に器が耐える事が出来ず、不安定なまま5分で崩れてしまった。私は彼を”ド”と名づけ丁寧に葬った。--------------------------------------XX年XX月XX日奴の力はドンドン強くなる。私には時間が多く残されていない。急がねば。例の物が遂に一つ手に入った。多くの戦場で武器商人をしてきたかいがあった。多くの血の代償として、一つの希望を手に入れた。研究は相変わらず進まない。次に生まれたのは、人の形であった。タンパク質の合成は問題ないだろう。しかし魔力を使うには至らない。そして寿命の問題は解決出来なかった。急速に成長しつづける細胞を止める事が出来ず、三日目には土へと還った。やはり、無からは創造出来ない。触媒を探す必要があるのか?私は神への冒涜を決断する必要がある。私は彼を”レ”と名づけ丁寧に葬った。--------------------------------------「何をやっていた?ザードフィルの研究はなんなんだ?」楸が首をかしげる。「しかし、我らの知るザードフィルとは少し違うな?奴は何を隠しているんだ」フクチも同じ表情だ。「彼は昔から一人で背負うタイプだから。この研究と今夜の宴、何か関係がありそうだね」「奴とは誰なんだろうか。黒幕がまだいるみたいだね」「その黒幕と戦うために何かが必要で、いくつかは集めて足りない物を作っているのかな」花火が自分の解釈を説明し、更に日記を読み進めていった。<あとがき>さてさて、またまた新たな複線が始まりました。そろそろクドイ展開ですが、もう暫くお付き合いください。さすがに、構想段階での複線は出揃い始めましたのでもう少しの辛抱です><;・・・いつまで二部は続くのかw
2007年02月22日
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無数に増殖した巨大な魔物が屈強な戦士達を蹂躙する。多くの者達が傷つき、後方の天使達に保護されBIS達に回復を施される。「くぅ、きりが無いな」ザードフィルが口惜しそうに呟く。そこに、新たな魔物が姿を現す。その姿形は他の魔物と酷似していたが表皮は血のように赤くそこから溢れ出るオーラは他の魔物とは比べられない位に巨大で、真っ黒なオーラが部屋全体を覆っていた。「くくく、愚かな地上界の虫けらどもよ。敵わぬと判って何故に死に急ぐ」「我は赤き宝玉の主、ロシペル。どうせこの地上界の全ては消え去る」「無駄に死に急ぐのは馬鹿らしいぞ」「さぁ全てを無に還そう」ロシペルを包む暗黒のオーラにより、神殿の壁や床に亀裂が入り部屋全体が崩壊し始める。崩れた壁が浮遊し、異常な力場が戦士達の自由を奪う。その圧倒的な力に屈強な戦士達の表情に絶望が浮かび上がる。ザードフィルが眼を閉じ、何かを決心したように再び眼を見開き戦士達に声を掛ける。「悪いが皆、俺に命をくれ。これから最後の勝負に出る」「レッドストーンの力が完全に開放される前、今しか奴を倒す時は無い」「何、今更言ってんだ。あの赤い光を感じた時、あの時から生きて戻れるなんて思っちゃいないぜ」「家族や友のため、我らの命など安いもんさ」「私の計算では、奴が覚醒したら7日で世界は崩壊する。今惜しんでも同じことです」「全ては未来のために」口々にザードフィルに戦士達が答える。20名の戦士達の誰一人として自分の命を惜しむ者はいなかった。「すまない皆。では私の体を媒介にして奴の力を反転させる」「奴の力そのものを使って、次元の狭間に奴の体ごと引きずり込む」「皆の力を俺に貸してくれ」20名の戦士達がザードフィルを中心に手をつなぎ、それぞれのオーラを解き放つ。赤や青、黄色や緑、それぞれの体から溢れ出るオーラがロシペルの黒きオーラを押し返す。「無駄無駄、何をやっても人間如きが我の破滅の力に逆らうことは出来ん」とロシペル。すると、一人の戦士が槍を持ちロシペルの前に立ちはだかる。「和風!」sakezukiが声を掛けるが和風は軽く左手を上げたまま笑っている。「悪いが俺は付き合えない」と和風が笑う。「何故だ和風」ザードフィルが問う。「誰かが奴を食い止める必要がある。それは俺にしか出来ない」「馬鹿な!誰も一人では太刀打ち出来ないぞ」ゲルニカが制止するも和風は笑っている。「お前達は未来に必要な奴等だ、次元の狭間に飛ばされた奴が復活した時奴を止めるのはお前らだ」「それに、簡単に死にはしない。お前達が上手くやったらさっさと逃げるさ。俺は臆病だからな」「虫けらが一人で何が出来る。簡単に捻り潰してくれる!」ロシペルの巨大な足が和風を襲う。「サイドオン!、ダミー全開!」ロシペルの攻撃をかわし、無数の分身でロシペルの前に立ちはだかる和風。「さぁ、ここから和風ちゃんスペシャルのおでましだ」「いけぇー、風の槍!」和風の手から緑色に輝く槍が宙に突風を纏い投げ出される。「炎の槍!」紅蓮に覆われた槍が同じく宙に浮かぶ。「大地の槍!氷の槍!闇の槍!」次々と投げ出される槍がロシペルの周りに浮かぶ。「そして、これが希望の、光の槍だぁー!」眩しく光り輝く槍が和風の手から解き放たれる。6本の槍がそれぞれに光を放ち、その光が円を結ぶようにロシペルを囲む。「さぁ槍に宿りし全ての精霊よ、古の盟約に従いその力を解き放て!」和風の掛け声と共に6本の槍が共鳴したように激しい音と光が溢れ出しロシペルを包む。「ぐぅおおおおお、たかが人間如きの技で私の力を抑えれるものかぁ」言葉とは裏腹にロシペルの動きは封じられ、周りにいたロシペルの分身達も蒸発したように消えうせた。「今だ、ザード!」和風の声に頷くザードフィル。「さぁ皆、行くぞー!」19名となった戦士達が手を繋ぎ、それぞれのオーラを高める。「オーラ、最大開放!出力全開!シンクロ率120%」すさまじいオーラが戦士達を包み、天空に向かい一気に放出される。その力で神殿は崩壊し天井には夜の空が顔を出した。ロシペルの放つ黒きオーラは戦士達の放つ7色のオーラに押し戻される。しかし、戦士達への負荷も想像以上で特にその中心で全ての戦士のオーラを纏めるザードフィルの体は崩壊しかかっていた。「ザードフィル大丈夫か」榎が声を掛ける。「大丈夫だ俺の事は心配するな。集中力を乱すな」「行くぞー!ロシペルのオーラとシンクロする。」「ぐっぐう」全員のオーラと更にロシペルのオーラを自らに取り込みザードフィルの崩壊は加速した。「皆の力を一つに!」「解き放て!」「次元開放ー!」ザードフィルを中心に空間が歪む。その中に引きずられるようにロシペルが入っていく。「ぐぅおおお、我は必ず復活する。憶えておけ人間共よ。赤い悪魔は滅びはせん・・・」ザードフィルの中心で空間の歪みが戻っていく。「やった!」「やったぞー!」所々で戦士達の歓喜の声が上がる。それを制するかのようにザードフィルが手を横に広げ、その後地上に降り立ち一人の戦士が横たわる場所へ近寄った。それは全ての力を使い果たした和風の亡骸であった。その和風の亡骸を抱えるようにして戦士達が集まる場所へ足を向けるザードフィルの体も何故か半透明となっている。「ザード、お前・・・」「ああ、流石に俺の体も耐えれなかったみたいだな」「しかし、悲しむ事はない。戦士の志は皆の中にある。私は長い間戦ってきた」「戦士にも休息は必要だ。少しの間休ませてくれ」「さぁ、もう行くさ。戦士がたどり着く場所は皆同じ。少しばかり先に行っている」ザードフィルと和風の体が更に薄くなり、今では光の屈折でしか形が判らない位になっていた。その形の中心には光る球体が和風、ザードフィルの中心にあり今にも消えそうな弱い光となっていた。全ての戦士達が涙を流し俯いていた。しかし本当に光が消えそうになると、誰からか右手を額の横に当て敬礼をし始め、やがて全ての戦士達が敬礼をしザードフィルと和風の死を称えた。一瞬であった、ほんの気の緩みだったがアルテミスは壮絶な闘いを見守った後、戦士達の悲しみに共感し視線を地面に向けた。その時、視界が真っ黒に染まり数人の戦士達の姿がザードフィルの体と共に消えうせていた。_そうです。これは終焉ではありません。頭の中で聞き覚えのある声が聞こえる。_全ての始まり、ここから全ての悪夢が始まったのです。_赤い日と呼ばれる日から。_守護者?_どうなったの?_レッドストーンの力は絶大で命をかけた戦士達の力でも完全には封じられませんでした。_ロシペルは最後の力を使いザードフィルを含め数人の戦士達を次元の隙間に道連れにしたのです。_さぁ次はもう少し後の時代へ行きましょう。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第39章 全ての力』「ザード様、ザード様」「あ、ああ」「いかがなさいました。少しうなされていた様でしたが」トリーシャがザードフィルに声を掛けるが、ザードフィルは空ろな表情を浮かべていた。「いや、少し夢を見ていたようだ」「そうですか、メイヴィの身柄を拘束しましたがいかがなさいましょう」トリーシャの傍らには、メイヴィが気丈な表情でザードフィルを睨みつけている。「ああ、少し話しがしたい。お前は下がっていろ」ザードフィルに命令され、トリーシャは部屋を後にした。塔の中程ではフクチ、楸、花火の三人が魔物達と戦闘を繰り広げながら部屋の詮索をしている。「フクチ大佐、楸、無理しなくても私がなんとかする」「俺は大丈夫だ、力を使う度に少し頭痛がするが耐えられない程じゃない。それより大佐が問題だ」「これでも一応軍の人間だ、魔法は使えなくとも体術の心得はある。心配しないでいい」「それに、元々体は頑丈に出来ているしな」花火達三人は人質の救出と他にザードフィルの本当の目的を探す事にしていた。ワザワザ何時でも殺せる子供を捕らえたのだから、何か目的があるはずだ。しかも、何かの儀式を行うと言っていたザードの言葉がどうしても気になっていたからだ。そして、その儀式までは少なくとも子供達は無事であると確信していた。何箇所かの扉を開け、部屋を捜索している時。異様な部屋に出くわした。それは、研究室なのか書斎なのかザードフィルがここで何かを行っていた事は間違いなかった。<あとがき>いやぁ、かなり気合を入れた展開にしましたがどうでしょうか?あまりに前半に力を注ぎすぎて後半はおまけになっていますwザードさんを結構カッコ良くしましたが、皆さん違和感を感じないように^^和風さんも大活躍でしたね、まぁ直ぐに死亡しましたが><;相変わらず、マタリの更新ですが懲りずに見てくださいねノシ
2007年02月20日
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全面が白い石で覆われた部屋に多くの戦士達が集う。ある者は傷つき立ち上がる事さえ出来ない。ある者は傷ついた仲間に近寄り、不思議な光で治療する。また、自らの闘気を高めるために精神を集中する者。また、先程の闘いから装備の見直しをする者。この状況の中、己のすべき行動をそれぞれが把握しすぐさま実行している点は相当な経験を積んだ猛者たちであることを物語っていた。一瞬の間を置き、悲鳴と共に先程の巨大な敵の全貌が現れた。無数の足、巨大な尻尾、黄ばんだ皮膚に胸から突き出した2本の突起物、額から飛び出した角。そして、なにより一番戦士達を恐怖に陥れたのはその巨大な身体であった。「ひるむな、なんとか持ちこたえるんだ」とザードフィル。「パプリカ、俺が厄介な足の相手をする。お前は氷雨で動きを止めてくれ」弓矢使いに声をかけたのは、アルテミスの良く知っているゲルニカであった。味方が巨大な力になぎ倒されていく中、ゲルニカは槍を回し無数の足を掻い潜る。巨大な魔物の足が味方に迫る瞬間に穂先を出し、攻撃を逸らす。そしてまた高速移動で別の足へと穂先を向ける。複数の生き物かのような足はゲルニカの不規則な動きに追いつかず困惑したように動きが鈍った。無数の氷の矢が降り注いだのは丁度その時であった。魔物に降り注ぐ氷の矢はその巨大な身体を青白く染め上げ、動きを奪った。「よし今だ反撃しろ」誰かが叫ぶ。「待て、何かがおかしい。距離を取ったまま攻撃しろ!」ザードフィルの声も虚しく、剣を振りかざし多くの剣士達が動きの鈍った魔物に対し我先にと突き進む。数人の剣士が魔物に対し分身をし無数の突きを繰り出した時、剣士達の動きに呼応するかのように魔物の身体が複数に分裂した。グシャ!グチャッ!まるで生の肉をミンチするかのような音が部屋中に響き、屈強な戦士達の背中と進む足を凍らせた。「ちっ、だから言ったんだ。この勇者様達め」誰にも聞こえない声でザードフィルが呟く。・・・何?こんな大きな魔獣見たこと無いよアルテミスは目の前の光景に口をあけたまま立ち尽くしていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第38章 強襲』トリーシャ達、ロウ・ヴァイオレット達が立ち去った廊下。殆どの人間は床を舐めるように倒れこんでいる。そこに柱の影から一人の男が姿を現す。風天であった。風天は倒れている者達の背中に耳を当て、一人ずつ背中に手をかざした。その手は僅かな光を放ち、倒れし者達に再び生気を吹き込んだ。「ノラローだったかな?お前にも出来るはずだ仲間を助けるんだ、やってみろ」風天が石のように立ちすくむノラローに声を掛けるが反応が無い。「戦士なら、男なら今自分に出来る事をしろ!泣くことなんて何時でも出来る!」風天に叱咤され、ようやく自分を取り戻したノラローは倒れて動かない仲間の子供達にかけより風天の動きを真似、自らの気を硬くなった仲間の体に流し込む。しかし、どうにも上手くいかない。それを見た風天が近寄りノラローの手に自ら手を重ねる。「いいか、体の外の気と調和するんだ。それを自分の内に取り込み又外へ出してあげる。外から内、内から外だ」「外側から内側、内側から外側」首をひねってノラローが答える。「そうさ、周りの気と自分の気、そして相手の気が少しずつ調和するんだ」風天が静かに答える。ノラローの手が僅かに光る。自分の外と相手と自分が繋がる実感がノラローに訪れた時、倒れた子供から僅かに生気が戻る。「やはりな」ノラローの後ろから風天とは別の大きな影から声がする。ガラテアであった。「ここに集められた子供達は皆プレイヤーの因子を持っているな」「手加減はあったにせよ、奴のスキルを食らって生き残れるなんて普通の人間には無理だ」ガラテアの言葉にセシルスが続ける。「ああ、しかも我々とも違う何かを持っている感じがするわ」「さて、なんとか死者は出さずに済んだみたいだけどこれからどうします」風天が問う。「ああ、悪いが風天はこの子達を街まで送ってくれ。俺達はメイヴィを取り戻す」ガラテアの声に風天は頷く。しかしガラテアの目線を遮るようにノラローが立ちはだかった。「俺も行く。俺がメイヴィを助ける」ノラローの声が届いてないように軽く目の前の少年を押しのけ、風天に近寄るガラテアだったがその腕にノラローが纏わりついて離れない。5分程同じやり取りを繰り返し遂にガラテアが折れた。「必ず俺の後ろにいろ。そしてやばくなったら真っ先に逃げろ。走って絶対後ろを振り向くな」「そして俺の命令には絶対服従だ。命令違反は隊を崩壊に導く」ガラテアが厳しい表情で話す。「いいのかガラテア」セシルスの問いに仕方無いといった表情でガラテアは両手の平を上げる。懐から各種の薬品や道具を出し、ノラローに分配し三人は風天と子供達と別れトリーシャ達を追っていった。<あとがき>随分長い間更新してませんでした。本気で暴走モードになって終わるのか心配な今日この頃。まぁRSと同じでマイペースを貫きますb
2007年02月13日
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不思議な構造物の中、多くの戦士達の先頭に一人の魔法使いが立っている。厳しい表情を見せ、神経を集中する。ふいに魔法使いが叫ぶ。「目標を補足した。かなりの速度で向かってくる。全員戦闘態勢を!」魔法使いの指示で各々が精神統一し、臨戦体勢をとる。「ザードフィル、目標の数は判るか?」ビショップが魔力を高めながら先程の魔法使いに問う。「数は不定だ、ダミーがかなり混じっている。補助を急いでくれ榎」「各BISは補助を急げ!WIZはヘイストを自分とBIS部隊に優先的に」「火力は前面に均等に配置に!補助を貰った奴から臨戦体勢を!」「ティマ部隊は特技モードで待機だ、かなりの数だもらすなよ!」ザードフィルの指示が飛び交う中、戦士達が様々な光に覆われる。WIZと呼ばれる彼らの杖が高速で振りかざされ、その杖に呼応するかのように一瞬、戦士達の体から光る銀色の翼が現れる。「流石に補助が速いな」榎が感心したようにザードフィルを見る。ザードフィルのにやりとした表情は直ぐに強張った。「ぐわぁっ」「うぐぅ」「がはぁっ」あちらこちらで悲鳴がこだまする。壁の中から薄気味悪い、黄ばんだ肌をした巨大な腕が現れ戦士達をなぎ払う。巨大な敵は空間を無視して、壁や天井から姿を現しては攻撃し、また壁に溶け込んでいく。「ザード、ここは不利だ。広間まで部隊を下げろ!ここは俺が何とかする」一人の剣士がザードフィルの横に進み出た。「sakezukiか、確かに状況は良くないな、しかしお前一人で大丈夫か?」ザードフィルの言葉にsakezukiは右手を突き出し、その拳にザードフィルは軽く拳を合わせる。「BIS部隊、一旦引くぞ、広間に戻って合図と共にコールせよ」暫くの間、現れては消える巨大な無数の腕と戦士達は抗戦していたが、突然光と共に姿を消した。何故か一人の剣士だけは残り、相変わらず巨大な腕と格闘を続けている。無数の腕に剣を突き刺し、迫る腕に盾を押し当て奮戦するが、苦戦は否めなかった。アルテミスは必死で彼らの気を探り、なんとか下の階にその姿を見つけ出した。そこはさっきまでとは違い、階全体が開けた大きな部屋となっており天井も高く巨大な空間が口を開いていた。「応戦の準備は整ったか?よし、sakeさんをコルしろ!」ザードフィルが叫ぶ。「ザーさん、sakeさんは大丈夫ですかね?」一人の魔法使いがザードフィルに尋ねる。「鳳統か?いや、無理だ。まぁあそこで進み出るのがsakezukiらしい。そして死んで帰ってくるのはお約束だ」ザードフィルが微笑みながら答える。「・・・お、お約束ですか」鳳統は苦笑いしてそれ以上は口にしなかった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第37章 勇者』剣と剣が激しく火花を散らす。怒りに狂ったガラテアの表情は真っ赤に染まる。そこに、数人の足音がガラテアの背後から聞こえる。「ん?なんだメーガ三姉妹か、今は忙しい相手できんぞ」ロウ・バイオレットが足音に向かって言った。「メーガ三姉妹言うな!今時の奴等は知らんぞ」トリーシャが激しく口答えする。「そうですわ、トリねぇ様しか知らない世代です」と雪音。「うん、ジェネレーションギャップよね雪さん」とルジェ。「くぅ、あんた達、後で覚えてらっしゃいよ」トリーシャが二人の妹を睨みつける。背後に迫った危険を察知し、セシルスが矢を構える。「さぁメーガ三姉妹、デルタアタックでもなんでもかかって来なさい」セシルスが意気込む。「まぁまぁ、そう鬼のような顔しないで私達は彼方達に用はないの」とトリーシャ。そして、剣を合わせるガラテアとロウ・バイオレットを素通りし奥の子供達の所へ進む。ガラテアは背後を通るトリーシャ達に気をそらしたが、ロウの放つ闘気がそれを逃さない。一瞬の隙を突き、ロウが間合いを開ける。すぐさまロウに気を集中させるガラテアだったが、ロウの刃は子供達に向けられた。ザン!ロウの放った真空の刃が子供達に向かう、体の全身の力を一気に爆発させロウの放った攻撃を追い越し子供達の前で腕を広げ、背中で攻撃をまともに食らったガラテアをメイヴィは悲しそうな表情で見つめる。「ガラテアーッ!」セシルスが必死の表情でガラテアの元へ向かう。グサッ!ガラテアを追うセシルスの背後から、ジェイクリーナスの放った巨大な槍が鎧を貫きセシルスに突き刺さる。そして、ガラテアの背中にも同様に無数に分裂した剣が突き刺さる。倒れる二人を確認し、さっさと引き揚げるロウの背後に衝撃が走った。ドン!ロウの背中にまだ小さなノラローが飛び蹴を食らわしていた。再度、攻撃態勢を取るノラローだったがロウの盾により吹き飛ばされてしまった。止めの剣を振りかぶるロウに対し、地面に腰を下ろしながらも睨み返すノラロー。その前には風天が手を上げて立ちはだかる。しかし、ロウの剣は頭上で止まったまま動かない。その瞳はノラローを捉えたまま動かない。「お、お前、名はなんと言う?」「俺の名はノラロー、文句あるのか!殺せるもんなら殺してみろ!」とノラロー。「ノラロー・・・そうか、しかし命は大切にしろ。お前はまだ自分の命を粗末に出来る程生きていない」「男なら何かを成し遂げるまで簡単に死ぬな」ロウバイオレットが厳しい口調で答える。「俺はお前を倒す!それまでは絶対に死なない!」「精々鍛えて来い。それまでは誰にも殺されないようにしておく」ロウはそれだけ言うと地下を後にした。「ふーん、珍しいなあの黒い剣聖が止めを刺さんとはな」とトリーシャ。「お金にならん事はしないのさ、そういう奴だよ」とルジェ。「で、どうするの他は?」と雪音。トリーシャは血で滑りやすくなった廊下を進み、メイヴィの前に立った。「この子以外は用は無い。さっさと引き揚げる」優しい微笑みを投げるトリーシャに対し、メイヴィは冷たい視線で答える。お互いに視線を逸らさぬまま数秒が過ぎたが、最後にはトリーシャの方が視線を逸らし振り返った。「さぁ、ザードフィル様が待っている。急ぐよ」嫌がるメイヴィの腕を掴み、トリーシャはメイヴィを持ち上げ地下を後にした。注:メーガ三姉妹、FF4の中ボスだったかな? デルタアタックはその必殺技。 覚えてる人いるのかな?<あとがき>え~体調不良のため小説を書く時間がとれません><;暫く、更新はさらに遅くなります。本当に完結するか最近は不安だったりしますがw
2007年01月29日
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上も下も分からない暗闇の中。ただひたすら何かに引き込まれるように進む。遠方の光が透き通る身体を突き抜ける。その光が急激の速度を増し、一気に世界を真っ白に染める。眩い光に視界を奪われたアルテミスの視力が回復した時には暗闇に包まれた空間も、身を包む光も無く先ほどまでいた遺跡のような場所に降り立っていた。「ふう、どんな所に飛ばされるかと思ったけど案外普通の場所ね。メタビは知ってる場所なの?」心の中のメタルビートルに対しアルテミスが話しかけるが返事がない。そして何時も身体の中心に感じていた不思議な感覚も消えうせていた。「ちょっと、メタビ悪ふざけはよして」「メタビ、メタルビートルー、・・・」「・・・いないの?どうせまた突然現れて、憎まれ口を言うのでしょ。知ってるんだから」暫くの間、アルテミスはその場に留まった。壁にもたれ地面に腰を下ろし山形に畳んだ足を両方の腕で抱えこんで、痛んだ石畳が並ぶ地面を見つめていた。_ひょっとして、あの暗闇の中ではぐれてしまったのかな?_もしそうならメタビを探さなきゃ。新たな世界に投げ出されたアルテミスにとって、今なすべき事が見つかっただけで不思議と立ち上がる勇気が沸いてきた。ここが、何処なのかわからない。しかし古い人工的な建築物であることは明らかだった。痛んだ石畳を蹴って、ひたすら走った。左手を壁にあて、常に壁に沿って走った。息が切れるほど走ったが、結局誰にも会わないまま元の場所へと戻ってしまった。激しい息遣いで、両方の手を膝に当て地面を見つめていると、何処からか人の話し声が聞こえる。_誰かいる!_どっちの方向だ?_壁の中!確かに壁の中から聞こえる!どういった構造になっているか理解出来なかったが、確かに壁の向こう側から人の話し声が聞こえる。アルテミスは膝についた手と頬を壁に当て、耳に意識を集中した。足音が聞こえる。でも壁が薄く隣にもう一つの廊下があるとは思えない。試しに何度か拳で壁を叩いてみたが反響もなく、分厚い岩の壁であることは間違いない。しかし、足音はどんどん近づいてくる。その時であった、アルテミスが張り付いている壁からなんの前触れもなく人が現れた。まるで、壁から人が生えてくるように手と足が現れ、ゆっくりと全身が姿を現した。そして、また一人、二人、三人と人が姿を表す。しかし、不思議と目の前にいるアルテミスの姿を気に留めるものはいない。結局、最後には総勢20名程の者がアルテミスの眼前に現れた。そして、アルテミスはその中の一人を見つけ抑えていた声を発した。「メタビ!」目の前の群集の中にメタルビートルはいた。しかし、アルテミスの声に反応を示さない。そればかりか、誰もアルテミスの声に気づく者はいなかった。思わずメタルビートルに走りよるアルテミスはあることに気づき、走る足を止めた。そう、アルテミスが慌てて足を進めた時に群集にぶつかった時であった。体に来るべき衝撃はなく、そのまま体を重ね素通りしてしまった。そして、目の前まで迫って初めて気づいたメタルビートルの姿は明らかにアルテミスの知っているオーラと違っていた。姿は今と変わらない、しかし明らかにアルテミスの知っているオーラの感触とは違う。_違う、このオーラは私と同調しているオーラと明らかに違う。_確かに強いオーラではあるけど・・・_やはり、ここは私がいた場所とは違う次元の所。きっと過去の世界だと思う。_だから誰も私に気づかない。そしてメタビも私と知り合う前のメタビなんだ。アルテミスは不思議と今置かれている状況をすんなりと受け入れた。それはあの部屋の守護者が自分に課した試練と感じていた。_私は何も知らない。_だから、きっと此処で何か知らなきゃいけない事があるんだと思う。新たな決心をしたアルテミスはその群集の進む方向へと続いていった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第36章 血海』長く続く地下の廊下、そこを一匹のウサギが疾走する。時に部屋の前で止まり中の様子を伺う。そしてまた次の扉まで走る。何度目かの部屋の前に来た時、ウサギは暫くの間動きを止めた。そして、元来た廊下を引き返していった。「はぁはぁ、あったよ。ここから廊下を出て3番目の部屋の壁に鍵があったわ」ポン!メルモはいい終えると変身を解き、人の姿に戻った。「ふーん、で部屋には何人いたの?」とメイヴィ。「部屋には二人。特に警戒してる様子もなかったわ」「他の部屋にも誰もいないし」「部屋には忍び込めそうか?」とノラロー。「無理じゃないけど、二人相手では私は勝てない」メルモが悔しそうに答える。「勝てなくてもいいわ。ここまで戻ってこれる?」とメイヴィ。「それは大丈夫よ。ウサギはかけっこでは負けないわ」自慢そうにメルモが答えた。「じゃお願い。ここまで来たら私が何とかするから」メイヴィが得意そうに言う。「お、おい。男の俺の立場は?俺だってプレイヤーだぜ」ノラローが口を挟む。「そうね、彼方は他の子達を守ってあげて」「OKって全然期待されてないじゃん俺」ノラローは酷く傷ついた顔をしたが、メイヴィに睨まれてそれ以上は何も言わなかった。それから直ぐに作戦は実行された。そして何もかも子供たちの予想通り事は進んだ。ウサギを追いかけてきた兵士はプレイヤーでは無く、牢の前に現れたメイヴィの召還獣に腰を抜かし慌てて逃げた。鍵を手に入れたメルモが牢の鍵を開け中の子供たちから歓喜の声が上がり、すぐさま廊下は子供たちで溢れ返った。しかし、そんな喜びの顔がすぐさまに固まった。ゆっくりと、スローモーションの様に倒れていく子供たち。一人、また一人と地面に子供たちが倒れていく。その表情は笑ったまま。自分に何が起きたのかも理解できずに。そして、メイヴィの表情も強張ったまま固まった。ただ、自分の視界が真っ赤に染まった事だけは理解出来た。メルモもノラローも目の前で起きた現実を受け入れられず、冷たい廊下に腰を抜かしたように座り込んだ。その床は真っ赤な色で染められ、腰と足にゆっくりと触れる液体は暖かい感触がした。魂を抜かれ人形のように立ち尽くすメイヴィ。その真っ赤な視界の中心に黒い人影が二つ立っていた。「いたずら坊主たちにはお仕置きが必要だな。くくくっ」「そうね、用の無い奴は始末しろと依頼されたから丁度よかったみたいね」「まぁついでにさっきの役立たず達も殺っちゃったがまぁいいだろう」狂喜に満ちた表情の二人の背後には先ほどメイヴィに脅されて逃げた兵士達が怯えた表情のまま固まって床に転がっていた。ダッダッ二人の後ろから新たな戦士が駆けつける。「間に合わなかったか。ロウ!俺はお前を許さん、覚悟しろ」ガラテアが二人の戦士に切りかかる。カン!剣と剣がぶつかり合い、つばぜり合いの格好となり冷たい悪魔の表情をしたロウ・バイオレットと怒りに満ちた鬼の表情のガラテアの顔が接触するほど近寄る。「フファファハァ、丁度いい。仕事では無いがお前との決着を付けてやろう」ロウ・バイオレットが喜びの表情で高らかに笑った。メイヴィはその二人の戦いを時が止まったかのように見つめていた。<あとがき>え~本編をようやくUPしました。今年の初更新でいきなり血の海を演出してしまった><;中々本編を更新したくなかった理由がこれだったんです。でも、書かないことには先に進まないので・・・まぁ違った展開も書けますが、最初のイメージはここでこの展開だったので迷いましたが結局最初の構想通りにしました。進みが遅いですが、今年も懲りずに見てくださいなノシ
2007年01月16日
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トリーシャ「みんな、逃げて!ザードフィルに取り付い奴が覚醒する前に」ルジェ「ええ、何処に行けばいいの?」雪音「目的地はアリアンよ!急いで」ガラテア「やばいぞ、ザードフィルに取り付いた奴がもう直ぐ覚醒する」ザードフィル「みんな~仲良くやろうよ。そんな簡単に覚醒しないよ」デデデデ~~~~ン♪ザードフィル「うはぁ、ヤッパなるのか?やっぱキングの方なのか?」キングラクセス「へへへ、ザーさんのために、GV会場で刃油買い占めてあげたよ」ザードフィル「ぐぅおおおおお~、せめて心臓にしてくれ~」キングラクセス「あ!間違えて、鎧油買っちゃった」ザードフィル「さらにぐぅおおおお~!は、早く奴等に渡さないとえらい事になる」 「よし、ここは必殺の急行カードだ!」トリーシャ「まぁまぁ、お正月なんだし、そんなむきにならないで」ガラテア「やばい!」ザードフィル「・・・1が2個って・・・こんな引き、いらねぇー!」ガラテア「よし、今のうちに・・・ってなんで俺まで1なんやぁー!」キングラクセス「ザーさんのために、露店してあげたよ。いっぱい売れたよ」 「HP効率の背中が1Gとか。皆感謝してたよ。いいことすると気持ちいいねぇ」ザードフィル「やばい、このままじゃホントに破産してしまう。やばいぞ俺」 「よし、こなったら、1か8かカード!よし8が出た」ガラテア「・・・ザーさん俺貧乏やからね・・・」 「ぐぅ、やっぱ俺につけるのか・・・」ザードフィル「悪いね、まぁお遊びだからね、フフ」キングラクセス「ガラさんのために異次元してあげたよ。普通のロンコが出来たよ」ガラテア「えええ~~、いきなり3億ぐらい出費かよ~」トリーシャ「まぁまぁお正月だしね、ガラさん」ガラテア「フフ、そうだね、お正月だから楽しまないとね」 「じゃ、俺はこのカードを使うよ」トリーシャ「そ、それは・・・新幹線カード!サイコロ4個使える強力な進行形カード」ガラテア「まずは、ルジェちんにラクさん上げるよ」ルジェ「キー!ガラさんなんか嫌いだぁ~」トリーシャ「まぁルジェちん、正月なんだから・・・」キングラクセス「ルジェさんのためにGEMをいっぱい買っておいたよ。ボーナス全部分」 「これで、10年間は課金できるよ」ルジェ「ひぃ~~~!リアルマネーまで、しゃれにならないよー!シクシク」トリーシャ「まぁ・・・6月にまたボーナス出るから・・・しょ、正月なんだから・・・」雪音「なんか殺伐としてきた・・・でも未だにルールが判らない私はダメな子?」トリーシャ「適当なカードを使ってみたらいいよ。遊びなんだから」雪音「じゃ、このサミットって奴でいい?」トリーシャ「ひぃ~~~~~~それはダメーーーーーー!」ザードフィル「もう遅いらしい、みんな集まったよ」トリーシャ「いいもん、私はリンケンに飛べるリンケンカードとかかくれみのカードあるもん」ガラテア「そこで、俺の刀狩カードでかくれみのカードぼっしゅーね」トリーシャ「きぃーーーーー!」ルジェ「ごめんなさい、お姉さま。めちゃぶつけカードでラクさんあげますわ」トリーシャ「ルジェちん・・・友達だったよね・・・」ザードフィル「悪いねぇトリさんぶっ飛ばしカードで・・・」トリーシャ「ひぃーーーーー!バリアートだよ・・・」 「くそ、ならば場所かえカードで・・・って雪ちゃん今何使った?」雪音「え?ふ、ふういんカードってやつだけど・・・」トリーシャ「きぃーーーーーーー!それカードが使えなくなるやつでしょ!!!!」ガラ&ザード&ルジェ&雪「まぁまぁ、お正月なんだから」トリーシャ「正月なんてだい嫌いなんじゃぁあああああああああああああああああああああ」*********************************************皆様、RS電鉄は本性が現れるので程ほどにしましょうね。過去の調査ではキングボンビーにより友達を失った小学生は年間5万人を突破した(嘘)桃鉄はFF3(ファミコン版)のラストダンジョン並にハードを本気で壊したくなるので危険ですね^^では、私は今日から仕事ですが皆さんは残りのお正月をお楽しみくださいね^^
2007年01月04日
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ちょっと大人な表現が含まれています。嫌な人はスルーでwこの作品はフィクションです。登場する人物団体等は架空の物・・・だよね?「トリーシャとピアノ」ラララ、ラララ、ララララン~♪優しげな鐘のような音が響き渡る。その繊細なピアノの音が僕を切なくさせる。ここは、アリアンの酒場。僕、オギが彼女と出会った場所だ。日曜の夜、必ず彼女はここにきてピアノを皆に聞かせる。「ラ・カンパニュラ」の優しくも悲しげな音色が、僕の心締め付ける。あくまでも優しげなタッチで時には力強く、時には包み込むように。あの細いしなやかな指が、滑らかに鍵盤の上を踊る。「ああ~トリーシャ、僕の心はこの鐘のように激しく高鳴る」「君の姿はまさに、ラ・カンパニュラ、青きベルフラワーのように美しくも繊細だ」アリアンの酒場は、常に大勢の戦士達が集う。その身も心も傷ついた戦士達をトリーシャのピアノが癒す。いつもは騒がしい店内も、この時だけはピアノの音に耳を傾ける。その中に、見習いビショップオギの姿があった。オギはこの3ヶ月間、トリーシャのピアノを聴くためだけに酒場でオレンジジュースを注文している。そして、今日ついに僕、オギは決意した。その手にもった花束を渡しトリーシャに告白をするつもりだ。さぁ演目は終了した。「ブラヴァー!」「ブラヴァー!」パチパチ、パチパチ!!!鳴り止まない拍手の波に、トリーシャは立ち上がり会釈する。さぁ、今だ!今この花束をトリーシャに渡し、想いを打ち明けるのだ。椅子から立ち上がり、彼女の元へと進もうとした時「あら、オギチャンじゃない?フフ」「私、シル姫よ。フフ、毎週通ってると思ったら。ヤッパ私に気があるのね。ウフ」「仕方ないわね。花束までもらっちゃったら。付き合ってあげるわ。ウフ」その相手を考えない言動。スイカの上に蜜柑を乗せたような体形。極めつけは、ピンクハウスでもタメラッテ作りそうにもないフリフリのドレス。間違いなく、彼女はシル姫!一言だけ言わせてくれ。「おまぁああああああああ、うぜぇえええええええええええ」はぁはぁすっきりした。ぐすん。「雪音とルジェの秘密」ハッ!バシッ!「さすが和風じゃのぉ」「フッ!フレディー!悪ふざけは止めろ」私は槍の収集家としてフランデル大陸一の和風です。そして今槍を投げつけたのが仲間のフレディー君。「さすがじゃのぉー、和風」「まぁ、槍なら見た瞬間にしなりや、速度、性質まで見抜けるよ。ランサーフェチやからな」そうなのだ、私は槍の事なら殆ど知っている。今では槍を見た瞬間に先程のように白刃取りが咄嗟に出てしまう。そして、今私が捜し求めている槍はあの伝説の「蜻蛉切り」かの有名な本田忠勝を数多の戦いから傷一つ付けなかった伝説の槍である。刃先に止まった蜻蛉が真っ二つになった事から付いた名が「蜻蛉切り」。その身は多くの血に染まり、赤黒く、しかし穂先は白色透明な澄んだ色を失っていない。そして、今夜も私は「蜻蛉切り」を求めて旅を続ける。ふと艶かしい声に私足が止まった。「ああ~もうダメ、お姉さま」「ああ~まだよ、まだだめよルジェ」この喘ぎとも叫びとも取れる声に思わず足を止めてしまった。そこは民家の前、窓にはカーテンが掛かっているが少し隙間が有り、中から光が漏れている。_ダメだ、俺は紳士なんだ。紳士が覗きなどしてはいけない。そんな本当の心の声も空しく、取り付かれたように窓に足が向かう。次第に先程の声が近くなる。「雪音姉さま、もう私腰がおかしくなりそうですわ」「はぁ、はぁ、あああ~~ルジェーーー!」もう、私の好奇心は止められない。窓の隙間からそーと覗く。二人の女性の影が蝋燭の明かりに照らされ壁に映る。一人は肩までの髪で、長身で痩身。もう一人はもう少し髪は短く小柄な女性である。声の距離感から判断すると長身の方がルジェと呼ばれ、小柄なほうが雪音だ。二つの影は髪を振り乱しながら頭をうつむきかげんにし、上下に揺れている。時折、吐息と共に顎を天上まで上げるように背中を揺らす。「はぁ、はぁ、はぁ。あああ~お、お姉さま~」「る、ルジェーーー」私の好奇心は深まるばかり、もう本能のまま窓に鼻が当たる程近づけて二人の姿を確認する。それは蝋燭に照らされたルジェの背中が確認できた。肩までの髪が不自然に揺れる。うっすらと背中に汗が光る。上下に揺れるその背中は、時折グラインドする様に前後に揺れ、その度に腰と反対に肩が仰け反り。背骨の線が臀部の付け根まで半円を書く。「激しすぎますわ、これじゃ私が壊れてしまう。ああ~頭がもう真っ白に・・・」一方の雪音の方はルジェの背中越しに、肩とわき腹の線が確認できる。ルジェの背中が邪魔で肝心な所が確認できない。しかし、ルジェと向き合い、同じように糸で繋がったように雪音も上下運動をする。時折、同じように仰け反るがその喉には血管が浮き出て、その度に吐息が漏れる。しなった釣竿のようにしなっては戻り、戻ってはしなるその柔らかい肢体。「ああ~私も限界よ・・・あぅ」雪音の体が小さくビクンと痙攣し、白い肌が紅潮する。隙間から覗く腹筋が不規則に痙攣する。その時、ルジェの背中が小刻みに震えだし、背中はお腹を抱え込むように、何かを耐えるように屈みこむ。「もうだめ、もうだめ・・・も・ぅだ・め・な・の・・あああぅう」ルジェの叫びとも悲痛とも取れる声は、和風の脳内を直撃した。バタン!「あんた達!何時までそんなことしてるの!」「「ト!トリーシャ姉さま!」」「ロデオマシーンダイエットなんて、流行ってるだけで効果ないんだから程ほどにしなさい!」「だってーオネェは痩せてるからいいけど、ねぇルジェ」「うん、部分痩身したいんですもの。ね、雪姉さま」その言葉を聞いて、ようやく和風は我に返った。_いかん、武士の魂が煩悩に支配されてしまった。まだまだ修行が足りん。ふと、その和風の前に一本の赤い槍が現れた。「ハッ、間違いない、その赤黒い柄に白色透明な穂先。蜻蛉切り!」夢中で白刃取りを行った。「うぎゃぁああああああああああああああああ」悲しい叫び声が街中に響き渡りました。その後、暫くの間和風を見た者はいない。
2007年01月01日
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~~~オープニング曲~~~~~~マックスハートー♪ブヒブヒ!ウマウマ♪ ブヒブヒ!ウマウマ♪ ブヒブヒ、ウマウマ♪ 二人はブヒウマ♪一難さってまた一難、ぶっちゃけありえない♪ショルパ着てても、二人は~メチャクチャタフだしぃ♪お互い二日酔いを~乗り越えるたび 強く(酒が)近く(トイレが)なるね~♪your ぺっ! my ぺっ!死んでるんだから♪ ラグパラなんてメじゃない!パラ打つ門にファミ来(きた)るでしょ!ネガティブだって ブッ飛ぶぅ~♪「お急ぎの方へ」の花買って 指つらせ思いっきり~ もっとパラレル!マックスハートー♪ブヒウマ!ブヒウマ♪ ブヒウマ!ブヒウマ♪ ブヒブヒ、ウマウマ♪ 二人はブヒウマ♪~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ジュオ~~~~~~、ブルンブルン。「あ~お酒飲み過ぎると、トイレが近くなって仕方ないね。うん」「って誰に言ってんだ。案外寂しがりやな酒チンなのよね。お、ある意味君もチンが付いてるね相棒」深夜一人、酒屋の壁に放尿をするsakezukiがふと空を見上げる。其処には無数の流れ星が流れていた。「お~、スゲェー数の流れ星だ。そだいい事あるようにお祈りしよう」「おお~こっちに一つ近づいてくる。うんあれにしよう・・・でもちょっと近いなぁ・・・」「ってむっちゃ近いよママン~~~~~~」ヒューーーーー!ドッカーーーーーーン!直径50センチもある流れ星がsakezukiを直撃する。「いたたたった~~~!うん、これ普通に痛いよって、ナンジャーこいつ!!」sakezukiが見たそこには一匹のファミリアがいた。「僕はファミリアの正宗だマサー!」「うわぁこいつしゃべってるよ」「君は光の戦士に選ばれた、正宗の世話もするマサー」「むむ、あっちの方に反応が、あっちにいくマサー」「むむ、酒の飲み過ぎだなこりゃ・・・幻覚、幻聴・・・ぶっちゃけありえない」正宗は東の方へと走っていく、仕方なしの千鳥足で追いかけるsakezuki。所々でもどしながら追いかけた。そこへ、反対方向からタケウマが向かってくる。すると、タケウマの前方を走っていたファミリアが正宗に飛びつく。「村正~だぁマサ」「正宗~~~~だぁムラ」「タケチン!どうしてここへ?」「酒チン!村正につれてこられてってどうして酒チンが?」ガン!「はっはっはー、そいつらを渡してもらおうか」「誰だお前は!」とsakezuki。「あいつはヘビメタだマサー!」「そうだムラー!僕達の光のアジトを襲った奴だムラー!」「さぁ、光の戦士ブヒウマとなって戦うのだムラー!」「え?何?そのブヒウマって?」ガン!ヘビメタの攻撃が二人を襲う。「さぁわがしもべ、いでよ~サバオチー!」すると、地面から今まで見たことのない魔獣が現れた。「ぐずぐずしてる暇はないマサー!早くこの異次元ボックスに課金バッチを装着するだマサー」「そうだムラー!速くしないと、この世界から消されてしまうムラー」sakezukiとタケウマは戸惑いながらもお互いを見つめ、コクリと頷く。そして、正宗と村正が変身した異次元ボックスに課金バッチを取り付けた。すると、眩いばかりの光が二人を包む。「いくよさけちん!」「いくよウマイちん」「「デュエは剣士の基本・ウェイブマネー!」」 sakezuki「光の使者(ひかりのししゃ)・甘党ブラック」 タケウマ「光の使者・ウマホワイト」 ブラック&ホワイト 「ふたりはブヒウマ!」 ホワイト 「ダメオンの力の僕(やみのちからのしもべ)たちよ!」 ブラック 「とっととおウチにかえりなさい!」 「って何言っちゃってんの?」 ホワイト「ぶっちゃけありえない」ヘビメタ「ぬぬ!行けー、サバオチ!社員の怖さを教えてやるのだぁ!」 ブラック 「行数が無い!一気にいくよ!」 ホワイト 「いいよ、酒チン!」 ブラック 「ブラックパンティー!」 ホワイト 「ホワイトパンティー!」 ホワイト 「課金の呪縛にとらわれし者よ」 ブラック 「今、その鎖をたちきらん!」 ブラック&ホワイト 「ブヒウマ・アン・インストール!!」 サバオチー「グワァーーーーーーーーーー」二人の放つ光にサバオチは砕け散った。へびめた「くぅー、パスは覚えておけ!IDは消えないからなぁーー!」 「ガ・ガラテア様に栄光あれ~!」へびめたは捨て台詞を言って消えていった。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~タケウマ「いやぁー面白かったでしょ、酒さん。アウグで大人気なんですよ」sakezuki「・・・・う・・・うん」おしまい。
2006年12月31日
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-何故だろう。人は常にあの優しげな月の光に懐かしさを覚える。-まるで、遠い昔に離れてしまったもう一人の私...-昼に輝く太陽とは違う優しき光。-全身を包む柔らかな光の感触。-耳には届かない、全身で感じる優しき歌。-草や海、全ての命が奏でる不思議な響き。-何故だろう、満ちる時には自然と微笑みが。-何故だろう、下弦の時には切なく-何故だろう、朔の時には不安が襲う。-ふと、頬を涙が伝う。-誰?-欠けてしまったもう一人の私。-いびつな私の心の形が私を不安にさせる。-あなたなの?-何処かで別れてしまった、私の欠片。-何時まで待てば、あなたに出会えるのだろう。-いびつな心が私に突き刺さる。-私は誰?-私は私、この掌に感じる感覚。-私を包む入れ物。-私が私を作り上げる。-ああ、私の中の闇が膨らむ。-それは虚しい闇。-それは孤独な闇。-周りの全てが悲しい闇に溢れてる。-身体の中心が痛い。-激しい痛みが胸を襲う。-これが現実?-現実に起こる全ての出来事が心を鷲づかみにする。-優しき光は虚無?-笑顔、微笑み、全ての優しさを自ら作り出す。-偽りの微笑みで真実の痛みを癒す。-ああ、私の中の光が溶け出していく-私の形を作る心の光が溶けて出していく-真実と虚像。-痛みと微笑み。-闇と光。-全てが混ざり合って-私が無くなっていく-それは優しき光。-それは私じゃ無い物。-外から吹く風。-ああ、それは確かな真実。-私が作り出せないもの。-あたたかい。-月から吹く風が私の奥底の暗闇に優しさを運んでくれる。-月の光が私の暗闇に暖かさを運んでくれる。-私はまた少し優しくなれる気がする。・・・アルテ・・・アルテミス・・・・・・聞こえますか?・・・彼方は今自分の心の中を彷徨っています・・・心の底、その更に奥深くにその扉があります・・・さぁ勇気をもって進みなさい・・・無くしていた記憶を呼び覚ますのです。石の神殿、その天井より降り注ぐ光に両手を広げアルテミスは光と同化した。身体が溶けるように朱色に輝き、意識は光と共にアルテミスの身体から抜け出していた。真っ赤な世界が視界に広がる。その先は少し黒味を帯び、更に奥に僅かな白き光が見える。赤い血液の海に漂うように、アルテミスはただその流れに身を任せる。何かが心の奥で響き渡る。優しい歌のよう。そして悲痛な叫びのようでもある。あの黒い世界の先に光が見える。きっとそこに・・・きっとそこにあるはず。_何が?_何があるのだろう?自分で理解しているはずなのに、わからない。霧の中を彷徨うように思考が巡る。でもそこにある。私の中の答えがきっとある。_私はあの黒い世界を越えなければいけない。_その先に私の中の真実が必ずある。アルテミスは強い心で僅かな光を目指していた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第35章 心の声』ザードフィルの塔、その一階の広間そこにガラテアとセシルス、風天がいた。「あの、妖しい青い人形から反応が出てます」風天が中央の椅子に向かい指を刺す。「うぅ、なんで判ったんだぁ。おいらがラクセスって名前だってことを~」青い人形が椅子から飛び降り、手足をばたつかせる。それはまるで操り人形のように片方の手と足を同時に上下に動かして、慌てたように動かしている。「どうしよ、どうしよう」ラクセスは両方の手をばたつかせ、まるで飛べない鳥がもがくかのように同じ場所をくるくると走りまわる。「むー、こうなったら仕方無い」「どうぞ先へお進み下さい」ラクセスは途端に走るのを止め、三人に向かって頭を下げた。「ガラ、どうする?」とセシルス。尋ねられたガラテアも困惑の表情を隠さない。「お前、簡単に通してザードフィルに許されるのか?」とガラテア。「ああ~~~~、そうだった。ザードフィル怖い。あの冷たい眼、とても怖い」「でも、今日はきっと定休日だ。うん私は休みで寝ていた。誰が通ったか覚えていない」それだけ言うとラクセスはまた椅子に登り、背中を向けた。「どうやら、ただの臆病者らしいな。行くぞガラ」セシルスがガラテアの肩にポンと手をかけ、先へと足を進める。丁度、ラクセスの椅子の横を通り過ぎた時、セシルスの足取りがピタリと止まった。「どうしたセシルス?」とガラテア。「来るなガラ!」セシルスは振り返りもせずに言葉を発する。「ヒヒヒ、おいらは大した攻撃は出来ないけど。これなら簡単にこの女を倒せる」「ほら、こんなことだって出来ちゃう」セシルスは背中を向けたまま、可笑しな口調となりガラテア達を挑発する。そして手は自らの首へと動き、首を絞め始めた。「どうなってんだ、セシ冗談はやめろ」とガラテア。「ガ・ラ・・・こいつ憑依が出来る。罠だ・・・」「フフ、今ごろ気が付いてももう遅い。それ以上動いたらセシルスの命は無いと思うぞ」セシルスがラクセスの口調で答える。「迂闊だった」悔しさをにじませ、ガラテアがこぼす。「う~ん、きっと大丈夫ですよ。だって反応は2つありました。もう一人はきっと味方です」と風天が涼しい顔で答える。その時であった。ドーン!バタン!セシルスの身体が後方に飛ばされ、仰向けに倒れる。その前には覆面に全身を黒い鎧で身を包んだ戦士の姿が。その身体は小柄ではあったが、細い金属のような筋肉と柔軟な筋肉を併せ持った肉体が確認できた。男は何も言わず、そのまま懐から銀色に光る使い古しのライターを取り出すとタバコを一本口にした。「苦戦しているようだな」黒い戦士がガラテアに向かって言った。「お、お前が何故?」とガラテア。「今回の任務、依頼主、共に不信な所があってな、マスターから暗部に要請があった」「しかし、死の商人ザードフィルが絡んでいるとはな。厄介だぞ」「マスターが・・・すまない」「お、お前はまさか!」セシルスが我に返り、覆面に言う。しかし、覆面はタバコを持った手の人差し指を伸ばし口に当て片目を閉じる。「俺達は名を捨てた暗部の人間だ。それ以上は口に出すな」「しかし、昔約束したろ。ピンチの時には現れるんだよ俺は。このライターに誓ってな」「礼はお前達の任務が無事済んだら。美味いカレーでも作ってくれ」三人は静かな笑いの表情を浮かべた。「さぁお前達は先を急げ、此処は俺が引き受けた」「子供達は地下だ。まずはそちらへ」「すまない。行くぞセシ!風!」ガラテアと風天、そして立ち上がったセシルスは地下へと続く階段を走り去る。ふと、セシルスだけが階段の前で振り返る。「必ず美味しいカレーを作るから、必ず生きて帰ってね」「ああ、俺は必ず生きてお前を待っているさ」「で、ところで、実はまた調子に乗って飛び蹴したら身体が痺れたんじゃ?」セシルスが肩眉を上げて問う。「ギク!いやぁ、タ・タバコを吸いたいだけで・・・さっさと行ってくれ。せっかくカッコ良かったのに」「ケリーに蹴りは似合わんよ。フフ」「ああーーー、お前ばらすなよ!だから臭いとか言われるんじゃー」含み笑いをしながら、セシルスは階段を走り広間を後にした。・・・僕ちんどうしよう・・・・・・こっそり逃げちゃいたいけど・・・・・・なんか怖そうな人がいるし・・・・・・このままおいら出番ないのかな・・・・・・それもちょっとカナシス・・・<あとがき>メリークリスマス!少ない量ですが更新します。まぁなんとか35章を書きました。今回はちょっとスランプな時期がありまして、キーボードが進みませんでした。結果、いきなり訳わからん意味不明な始まりになりました。う~ん、どうなんだろう?好き嫌いがはっきりする書き出しと思う。意味不明な詩?これに理解又は共感を覚えた人はヤバイです。きっと遠い昔に別れてしまった欠片です。今すぐ全てを捨てて私の所へ来て下さいww(いねぇか><)まぁトリーシャ編はゆっくりと進んでいきます。今回はプロジェクトHには関係ないけど、まぁガラさんの小説との含みを持たせてマスターとかって出しました。暗部は勝手に作りました。ケリーさんも了解なしです(許してね><)色んなキャラが登場しますし、2部の最後の戦いですからじっくり行きましょうb
2006年12月25日
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赤い光線と青い光線が混ざり合い、幻想的な光景がアルテミスの視界に広がる部屋の中央では、魔獣ガラテアが赤い光を帯びた魔獣と青い光を帯びた魔獣に囲まれている。「さぁ、赤き旅人よ、我らの求めに応じて下さい。そして、我らの過ちを正し、人々を救って下さい」天井からの声がアルテミスに話し掛ける。「私、意味が解らないのです。赤き旅人とか言われても。どうしたらいいのか」「目の前の屈強な魔獣、それは魂を奪われた悲しき戦士のなれの果て、ただひたすら氷の女性を守るのみ」「最後の想いにのみ突き動かされています。そして、悲しき氷の女性。彼女を救い出す以外に戦士の魂は戻りません」「私に何が出来るの?」「赤き旅人よ、彼方はまず真実を知る必要があります。悲しき運命の日を」「そして、彼方の力で運命の歯車を変えてください」「我ら赤き旅人が守人の過ちを・・・」「彼方は誰?真実って何?解らないことばかり・・・私に何を求めるの?」「赤き旅人、アルテミスよ。掌を上へ、私の力で時の壁を超えてもらいます」「そして、見て、感じるのです。真実を。きっと正しき道が見えるはず」「彼方のなすべきことが」「で、でもあの子達がまだ戦っている。あの子達を置いては行けない」「優しき戦士アルテミスよ、安心するがいい。それは長き旅かもしれない、しかしほんの一瞬の出来事でもあるのです」「彼らは強き正しき心を持った魔獣。この部屋の力が開放された今、あの子達は簡単には負けはしない」「安心して自らがなすべき事を確認してくるのです。さぁ掌を上にかざしなさい」キュウ。キュウキュウ。必死に戦う正宗と村正がアルテミスの方を見て泣き声をあげる。まるでここは任せろと、アルテを押し出すように。「ありがとう、本当に君達には助けられてばっかだね」「私、勇気を出していってくるよ。きっとまた会えるよね」「だって君達は私を守る一対の宝剣だもんね」アルテミスがゆっくりと両方の腕を天井に向かい伸ばす。掌を開いた時、天井が眩いばかりに輝き始めた。「さぁ始めましょう、真実への旅を」【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第34章 真意』暗い廊下、ザードフィルの塔の中に二人の女性の口論が響く。「そんたらこといっでも、らじね」そんなこと言っても、らちがあかない「でも、聞いてルジェ、私達だけではどうにもならない」声の主、つまり雪音とルジェの会話が少しずつ大きくなる。「わ、えふりこぎじゃねが!だすけぇ、このままほんじなしじゃ、いんずい」とルジェ。私、見栄っ張りじゃない!けど、このまま意気地なしじゃ、心地悪い「簡単に言わないでよ!奴等だって簡単に信じる訳ないでしょ」と雪音。「だすけぇ、つらつけね思われでも、やづらにかだる」とルジェ。だけど、ずうずしいと思われても、かれらに加わる「私だって、トリーシャを助けたい思いは同じよ、けど簡単には行かないし、トリーシャ自身が・・・」「呪われた血の呪縛は、ザードフィル様しか解けないし・・・」「彼らが上手くザードフィルを倒したところで、トリーシャが元に戻るかどうかなんて・・・」雪音がなんとかルジェを説得しようとするが、上手く言葉が見つからない。「そったら、ぐやめぐのはやめれ!」そんなぐちるのはやめてルジェが雪音を一喝する。「どうしたの?ルジェがなんか怒ってるみたいだけど、私と何か関係があるの?」二人の背後にトリーシャが立っていた。二人はバツが悪そうになんでもないと同時に首を振る。「ルジェさん?あなた興奮すると故郷の言葉がでるのよ、私に隠し事なんて冷たいね」「お姉さま、誤解です。ただ少し、デ、デザートのことで揉めてただけですの」とルジェ。「そ、そうよ。な、何でもないの」と雪音。二人の苦しい言い訳が続いたが、トリーシャは気にも止めず振り向き戻っていく。「ザードフィル様がお呼びです。二人が招いた客については不問だそうよ」暗い廊下をコツコツと音を鳴らし、奥へと消えていく。残された二人も顔を見合わせトリーシャを追いかけて暗闇に溶けていった。塔に幽閉された花火達、マシン・インターによって開かれた扉の向こうから足音が近づいてくる。花火、フクチ、楸の三人は反対方向へと足早に進む。廊下の角を何回か曲った後。近くの扉の中へと逃げ込んだ。「ようこそ諸君。そして久しぶりだな花火」部屋の奥、暗闇の中から聞きなれた声。ザードフィルの声は届く。身構える楸とフクチを右手で制止して花火が一歩前に出る。「あまり品が良い住まいじゃないな。ザードフィル」と花火。「そうか、案外気に入ってもらえると思ったのだがな」「今日は客が多くてな、大したもてなしも出来ないがゆっくりしていくといい。楽しい宴が始まる」ザードフィルが静かな口調で答える。「お前が手に入れようとしている力は我々人間の手に余る物だ」「力では人を幸福に出来ないと何故理解出来ない!」花火が問う。「お前が持つ力、臆病なお前には過ぎたる物。俺なら力を有効に使える」「俺は既に変わりの適正者を見つけた。そして、レッドストーンもな」「お前の中で眠る、レッドストーンよりも大きな赤い石をな」ザードフィルが得意げに答える。「どうやって、力を手に入れるんだ?お前は適正者ではないのだろ?」楸が口を挟む。「ほほ~楸と言ったな。中々いい眼をしている。お前の中の漆黒の炎が渦巻いて見える」「お前のその強すぎる正義感は、己の弱さの裏返しだろう?どうした?動揺が瞳に現れているぞ」思いもよらない言葉に、楸は怒りをあらわにし、ザードフィルに向かっていこうとしたがフクチがしっかりと両方の肩に手をかけて抑える。「ここは奴の城、安易に行動を起こすのはまずい」とフクチがたしなめる。「フフ、いい瞳だ憎悪が満ち溢れている」「花火、感じるか?これが人なんだ。強い正義感が激しい憎悪を呼ぶ」「今、この大地は悪意に満ちたオーラで溢れている。こんなに悪意に満ちているにもかかわらず」「人々は正義の戦いと言い。お互いを傷つけあう」「それが、この母なる大地にどんな影響を及ぼすかも知らないで」「大地は浄化の炎を求めている。天上界より失われた赤き炎、地下界より湧き出る黒き炎」「全てのバランスが狂い出し、やがてはこの母なる大地が黒き炎に包まれる」悲しき表情でザードフィルが語る。一同は始めてみるザードフィルの人間らしさに驚きを隠せなかった。ただ一人、花火を除いては。「しかし、お前のやり方に賛同できない。人は可能性をもった生き物だ。醜い反面、お互いを慈しみあう」「人が愛を忘れない限り、俺は人という種を信じる」と花火が反論する。「お前はお前のやり方でいい。俺は不安なんだよ、絶対に壊れないと言われ氷の橋を渡るようなもんだ」「俺はその橋を全力で壊すのさ、本当に壊れないなら人はその橋を渡るがいい」「俺はこの大地の守人が最後の末裔。この世界を守るのがさだめだ」「さぁソロソロ俺は失礼しよう。他の客も待たしているのでね」「ああ、忘れていたよ。フクチ大佐と楸君に私からプレゼントを渡そう」ザードフィルが二人に目線を合わす。二人は身構えるが、何時の間にか黄色の光で自由を奪われていた。ゆっくりと、コートの中から黒く光る球体を取り出すザードフィル。その球体は金属のような鈍い光を放ち、中に液体でも詰まっているように光がうねっている。「これは、錬金術者として私が極めた結晶だ。ブラックストーンと名づけている」「漆黒のこの世界にぴったりの名だ」「右手の球体。これは、埋め込まれた者のオーラを永遠に食らう石だ」「こいつはウイザードの力に反応する」掌より少し小さい球体は妖しく光り、フクチの目の前に持ち上げられる。嫌な汗がフクチの額に流れる。記憶の何処にもない恐怖心がフクチを襲う。これほどの恐怖は数々の戦争を潜りぬけた猛者もこの小さな球体に不思議な恐怖感を覚える。そして、ゆっくりと球体が額の中にめり込んでくる。完全に球体が額に飲み込まれ時、フクチの身体に急激な脱力感が訪れた。「感じるか?自分が無力になった感覚を。安心しろプレイヤーとしての力を失っただけだ」「普通の人間と同じ、魔獣に怯える生活を送るだけだ」怒りに満ちたフクチは杖に力を込める。しかし、杖ばかりでなく自分の指先にすらいつもの感覚が伝わらない。絶望感がフクチを襲う。ザードフィルは何事も無かったように、今度は左手を楸の眼前に持ち上げる。「安心しろ、これはお前の力を食らいはしない」ここで、にやりとザードフィルが笑う。楸の瞳は力強くザードフィルを睨み返す。「いい瞳だ。その憎しみに反応し魔獣の力をお前に与えるだろう。但し、お前の自我と引き換えにな」「お前も聞いたことがあるだろう、悲しき湖の洞窟に棲む魔獣の話を」「あれが俺の研究の始まりだ。プレイヤーと魔獣の共通点からレッドストーンに眠る神獣の力と融合を試みた」「次にお前も知っている、メタルビートルだ。奴の病から救う手立てはレッドストーンとの融合しかなかった」「そして、有機物と無機物の融合の媒介に槍を選んだ。その時点では意思のある有機物レッドストーンとの直接融合はできなかった」「そして、ついに俺は見つけた。赤い悪魔達、地下界の住人達と同じ血、呪われた古代エリプシャンの血を」「赤い悪魔がなし得た、レッドストーンの力との融合、それは皮肉にも悪魔達を一番憎む種族」「悪魔達に根絶やしにされたとされるエリプシャンの血統にあったのだ」「もう判るだろ、トリーシャの呪われた血。それがレッドストーンとの融合の鍵だよ」フクチと同じように、ザードフィルの手から楸の額へと黒い球体が移動する。「しかし、残念ながらこれは完全な物ではない。本来の力を使用すると自らの自我を侵食し始める」「くれぐれも気をつける事だな、プレイヤーの力を解放するたびに恍惚と憎しみの感情が石に侵食される」ゆっくりとそして確実に球体は楸と同化し始め、遂には全てが楸の中へと消えていった。「そして、最後にもう一つ。これは呪いの効果も付けてある。お前が俺を殺した時、それが合図となり」「お前の中の力が暴走し、俺の力とお前の力を全て吸収した魔獣が召喚されお前を乗っ取るだろう」「憎いか?くくっく。はははっは。憎い俺を殺した時、お前は俺の思い通りに世界を焼き尽くす魔獣となる」「せいぜい、俺のために世界を蹂躙してくれ」真実を知らされた楸は言葉を失った。憎き敵を倒す事で自分が敵の望みを叶える魔獣となる。どうにもならない事態。理解できない出来事が起こりただ立ち尽くすのみであった。「では、宴の準備がある。余興はここまでだ。花火、是非俺を倒しに来い」「ただの人となった男と自分の力の解放を恐れる男と共にな」再び部屋には暗闇だけが残った。ザードフィルは音も無く姿を消していた。途方にくれる三人の男を残して。<あとがき>ついに過去と現在の繋がりが見えてきたかな?ザードさんの考えも少し、本当の真意なのかどうかは知りませんがwそして、フクチ、楸が呪いにかかってしまった!ルジェさんの言葉はどうなん?適当に書いているので間違っているかな?まぁ雰囲気が伝われば・・・あ、今回は戦い全然なかった、ごめん面白くなかったねぇ~
2006年12月15日
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石畳から伸びる柱、人が隠れるに充分な幅の頑丈な柱が天井を支える。柱の影に膝を付き、中央の戦いを伺うアルテミス。戦況は一進一退の攻防が続いていた。激しく打つ胸の鼓動を抑え、アルテミスが柱の文様に手を当てると柱から光が文様に沿って溢れアルテミスの脳裏に言葉が刻まれる。---我、赤き旅人の守護者なり。---ここに赤き宝剣の力、封印せし---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---その力、そよ風の如き---その力浴びて、赤き宝剣、輝き増さん柱から、優しい風が吹きアルテミスの髪を揺らす。柱の文様は光を失い言葉もそれ以上は続かなかった。_アルテ、次だなこの柱の封印は解けたみたいだ。_うん。柱の影からガラテアと正宗、村正の戦いを覗き込む。最初に一撃で飛ばされたことを思うとかなり善戦している。素早い動きで左右から交互に攻撃を繰り返し、ガラテアを翻弄していた。「ゴメンね、もう少しお願い」小さな声で二匹にお礼を言う。もちろん聞こえる訳でもないが、アルテミスは感謝の気持ちを表したかった。その隙に次の柱へと移動する。同じように柱に手を当て、文様の声を聞く。---我、赤き旅人の守護者なり。---ここに赤き宝剣の力、封印せし---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---その力、優しき光の如き---その力浴びて、傷つきし宝剣、再び輝かんさらに、次々と柱の文様を開放するアルテミス。---我、赤き旅人の守護者なり。---ここに赤き宝剣の力、封印せし---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---その力、強き鋼の如き---その力浴びて、宝剣、金剛石とならん---我、赤き旅人の守護者なり。---ここに赤き宝剣の力、封印せし---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---その力、雷の如き---その力浴びて、宝剣、全てを貫かん何度目か柱のを開放した時、遂に赤き宝剣の謎がアルテミスには理解できた。_メタビー、私わかったの。_何が?_赤き宝剣が何処にあるかよ_マジか!_うん_私は知ってたのよ赤き宝剣の場所。それはず~と近い場所で私を守ってくれてたの。_多分、間違いない。この空気感。これは私が初めてこの世界に触れた時にも感じた。_きっと次の柱で証明出来る。そんな気がする。アルテミスは急いで次の柱に向かい、抱きしめるように柱に触れた。ガラテアは正宗と村正の猛攻でアルテミスの存在にすら意識が向かわない。---我、赤き旅人の守護者なり。---ここに赤き宝剣の力、封印せし---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---今こそ、我が全ての願いを託し、宝剣の真の姿を現さん---願わくば、この宝剣をてにし旅人、時を超え---我ら古代の血族が犯した過ちを償うこと、せつに願わんカッ!部屋の中央が眩い光に包まれる。それぞれの柱が呼応したように文様から光を発し、それぞれが一本の光の束となり、部屋の中央へと差し込む。その光は白色からやがて清らかな朱色へと変化していく。その光は二匹のファミリアへと注がれていた。_まさか!正宗と村正が宝剣なのか?_たぶんそう。赤き二対の宝剣。それは私が初めて出合った魔獣達。_そして、いつも守ってくれている子達なの。_二人の事なのか、種族そのものが赤き旅人を守る存在なのかは解らないけど。_ふむ、ならば部屋の主は魔獣使い、ビーストテイマーか?_時を超えとか言っていたが?光を注がれた正宗と村正の身体に変化が現れる。その身体は真に赤き宝剣の様であった。赤き身の二匹は速度を増し、ガラテアを容赦なく攻撃する。一瞬怯んだガラテアは防戦一方となる。しかし、それでも赤き獣と化したガラテアは強く一向に倒せる気配がない。_加勢するぞアルテ!_まって、まだ何か来る。天井から光が何本も伸びてくる。確かに、青い光が何本も天井から降りてくる。その天井には優しげな女性の顔が浮かび上がる。その女性が青い光に声を掛ける。「さぁ、可愛い私の子供達よ少し力をかしておくれ」「ポチ、マークイン、サンペーター、ホークス、スーズー、さぁ長き眠りより覚めなさい」青い光の中から、ファミリアより少し小さく紫がかった魔獣と、蟹の姿をした魔獣、人の姿に短剣をもった魔獣、二足歩行する大剣をもった鳥の姿をした魔獣、鎧を纏った骸骨の姿の魔獣が現れ、ガラテアを囲む。「さぁ、これで暫くの間は大丈夫です。私の話を聞いてくださいますか。遠い未来の赤き旅人よ」柱からの赤い光、天井からの青い光が幻想的に部屋を包み込む。氷の中の女性の表情が少し穏やかになったようであった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第33章 守護者』ザードフィルの居城、その牢に数人の子供達が閉じ込められている。「どうやら、この扉は呪文によって封印してあるみたいね」とメイヴィ「ああ、俺の技術では鍵は外せなかった」とノラロー「でもいいこと、ノラロー。今後、鍵は無理に外さないで。トラップが爆発したら、みんな死んじゃうわ」「それ以外の方法を探しましょう」とメイヴィ。「それなら、鍵を探しましょう。私ならここを出られるわ」めるもが懐からステッキを取り出すと、光を発し姿を消しその中から白い兎が現れた。周りの子供達からは驚きの声が漏れる。「ふふ、可愛いでしょ。この階の何処かに鍵があると思うの。探してみるわ」とウサギ。「お願い、でも気を付けてね。危なくなったら直ぐに戻ってきて」とメイヴィ。ウサギの姿となっためるもは扉の鉄格子の間を潜り、子供達の願いと共に走っていった。♪「インターの奴、なんだかんだ言いながら扉を壊したままにしていったな」と楸。「ああ、本来、あいつは悪ではない。ただ純粋に強さを求めてるだけだからな」と花火。「ただし、彼の言っていることが正しいことと、周りの人が不快に思うことは違う」とフクチ。「私は軍に在籍し、多くの部下達を率いてきた。当然、戦争行為の中、軍律は厳しい」「でも、人は律を厳しくすればするほど、あざとくなる。その内、軍律の文字にのみ従い」「当然、人が思うべき、当たり前の気持ちを忘れてしまう」「道とはそんな物ではない。なににも縛られていない君達の方が人々のことを愛する気持ちに長けている」「悲しい現実だ。本当なら軍隊に法律などいらんと思いたい」「人々を救いたい気持ちの有志が集まった中、本来の目的を果たすため、同じ方向を見ているのだからな」フクチが残念そうに頭をたれる。「遠い昔から、人は群れを作って生きてきた。元来助け合って生きる本能を持っている」「そして、この世界もそう。大地と水、光と植物。皆お互いに助け合い生かされている」「本来、我々プレイヤーが一番その事を解っているはずだね」「今のこの世界の悲鳴もね」花火が悲しげな顔で答える。「世界の悲鳴?」と楸。「ああ、その事に一番初めに気が付いたのは多分ザードフィル、彼だよ」花火が意味ありげに答えたが、楸とフクチにはさっぱり理解出来なかった。その答えについて問いただそうと二人がした時には、廊下の遠くから聞こえる足音で一同の会話が途絶えた。♪塔の一室、そこにロウ・ヴァイオレットとジェイクリーナスが立っている。蝋燭に照らされた顔は不気味に陰影が付き、表情は笑っていいるのか、強張っているいるのか解らない。そこに、一人の男が影から浮き出るように姿を現す。「Jブランクか」とロウ・ヴァイオレット。「はい、け、剣聖さま」Jブランクの声は震えている。怯えるように身をかがめ、ひたすら頭をたれる。「影が、スパイがその存在を知られるとなると問題だな」厳しい目つきでJブランクを睨む。「は、はい。どうかお許しください。剣聖の奴、まさか私の存在に気付くとは夢にも」「まぁいい。今日は下がれ」ロウ・ヴァイオレットの声に安堵の息を吐き、Jブランクが扉に向かう。ザク!Jブランクの背後から闇の黒き太刀筋が襲う。言葉もなく息絶えるJブランク。「失態は許さんよ、それが闇の掟だ。お前も承知していただろう」冷たい視線を床に転がるJブランクの身体に向ける。ジェイクリーナスは眉一つ動かさずに見届ける。「これからどうする?ザードフィルの祭りに付き合うのかい?」とジェイク。「いや、契約は終わった。確かに闇を仕切っているのは奴だ。しかし、全ては契約の元ってだけだ」「闇に生きる者は群れたりしない。利害関係で敵にも見方にもなる。それが親子でもな」「では、剣聖を追うかい?」「それも無い。仕事と私事は別だ。特に今回のような場合は私情が絡むと命を落としかねん」「では、またあの子を探すとするかい?そのロケットに入った写真の赤子を」「まぁそんな所だ。悪鬼と化した俺に唯一残った人の部分だ。ゆっくり探すとするさ」「私も暇人だから付き合うさ」二人の表情が緩む。蝋燭に照らされた表情は少しの間だけ穏やかとなっていた。♪ギギィーゆっくりと扉が開く。そこはザードフィルの居城。ビッグアイの中央にそびえる塔。その入り口を開き、ガラテア、セシルス、風天の三人が足を踏み入れる。「さぁ、鬼が出るか、蛇が出るか楽しみだな」とセシルス。既にセシルスは弓に矢をつがえ、敵の気配を探している。塔の内部、一階は一つの大きな部屋となっていた。中央に地下と2階への階段があり、天井は高く大きなシャンデリアがぶら下がる。壁には写実、印象、抽象様々な絵画が飾られている。シャンデリアの下には何故か不自然に椅子が置かれ、青い人形が座っている。・・・誰だ・・・俺は・・・いや、間違えた。誰だ・・・お前達・・・誰もいれちゃいけないんだ・・・誰も入っちゃいけないんだ「来たか!何処にいる!」ガラテアが身構える。「気配は無い。ちっ、何処にいる」セシルスは弓の狙いが定まらない。「まって下さい。今探知します」と風天。・・・ず~と目の前にいるよ・・・でも言っちゃいけないんだ・・・あああ~言っちゃった・・・よくも騙したな・・・おしおきされてやる・・・いやおしおきしてやるんだ・・・頑張れ俺「セシ、やばいな。またこのパターンだ」とガラテア。「ああ、どうして最近はこんな奴ばかりが相手なんだ。さすがにもう笑えないな」とセシルス。「いました、あの青い人形から反応が!」風天が叫ぶ。困惑に包まれた中、三人の戦士達が身構える。新たなる戦いが始まった。<あとがき>今日は、内容が薄いのですが更新しちゃいます。いつも楽しみにしてくれている方への誕生日プレゼントです。(小説更新しかプレゼントできなかったし><)アルテ編は、赤い宝剣の謎が・・・wバレバレだったかな?とは言え、ボディさんから大切な物をお借りしますと当初予告してましたが、これは予想外では無いかなwまぁ許してくださいね^^(正宗と村正だけと思ってたでしょうねぇw)トリーシャ救出編は相変わらず忙しく場面がかわります。いろいろと膨らんだ構想を収束させるべく、頑張りますb年内に後1回は更新しますので、ジャンプやマガジンがお休みする時でも狙うかwまぁ合併号とか無いですが・・・
2006年12月06日
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冷たい空気は生き物のように部屋中を暴れまわる。床下の底から突き抜けるような衝撃波は一直線に柱へと向かう。背中を預けた柱から、背筋の凍るような衝撃が胸を突きぬけ前方の壁を直撃するようだ。アルテミスは振り返り、柱に手をあて魔獣ガラテアを伺う。「え!」_どうしたアルテ。不思議な感覚がアルテを包み、その驚きから思わず声が出てしまった。しかし、猛威を振るう剣圧とそれが起こす轟音で声はかき消され、ガラテアには気づかれない。_今、確かに声が聞こえた。メタビーは何も?_いや、何も聞こえんな。_確かに聞こえたの。こう柱に手をあて・・・その時であった、柱に刻まれた不思議な文様、その一つ一つが頭の中に入り込んでくる。---我は封印の部屋の主なり---古き民の末裔にして赤き旅人の守護者_聞こえた?_ああ、今度は間違い無さそうだな。_アルテ、もっと手を柱に当ててみろ。何者かは知らんが、この部屋の主だろう、少しは役立つかもしれん。ドドーン!いくつかの柱を攻撃した衝撃波が一回りして、再度アルテ達の身を隠す柱に衝撃を加える。_アルテ、速くしろ!この柱も長くはもたんぞ。_うん。アルテミスは慌てて柱に刻まれた文様に手をあて、なぞるように動かしていく。---我の力、即ち、赤き旅人の宝剣を残す---赤き宝剣は一対にして、けして離すこと能わず---我の力、即ち、宝剣を研ぐ、宝剣直ちに光輝かん_おお~なんか凄い剣が隠されているのか、一対ってことは二刀流だな_アルテ、お前ランサーやめたらどうだ?_無茶言わないでよ、なんとか槍の使い方覚えたばかりなのに、剣なんて直ぐに扱えないよさらに、アルテミスが手を動かす。---我の力、即ち、宝剣が為の力この間に封印せし---封印せし力、この間を支えん---真の赤き旅人が触れし時、その力開放せん---ここに、我の力、即ち、宝剣の再生を促すが力封印せんガン!ゴゴゴ!3度目のガラテアの攻撃が、アルテミス達の隠れた柱を直撃する。アルテミスが触れた文様は力なく光を失い、アルテミスの頭の中に響く声も聞こえなくなっていた。_しまった、まだ途中なのに。_ゲゲッ、どうすんだよ。なんでいつもそんなにドンくさいんだよ、お前は!_だってしょうがないじゃない。難しい言葉とか聞き取りにくくて、メタビーだってそうでしょ!_お前、なんか此処に封印を解くような力があるって感じだったぞ。_そもそも、最初にここの柱じゃなかったらアウトじゃん。なんて不親切なんじゃ!_しかも、もう既に一本半壊しているぞ。_え?柱になんかあるの?_馬鹿かアルテ!なんかスッゲー剣とそれのパワーアップ機能が柱の一つ一つに封印してあるらしい。_とりあえず、お前があの不思議な文字に触れると開放するかもってことだ。_で、赤い剣が二つあるそうだ。どうする?剣を探すか、取りあえず柱の封印を解くか?_柱が危ない、剣は本当に使い物になるか分からないけどとにかく封印を解きましょう。アルテミスがガラテアの様子を伺う、今は反対側の柱に向かい攻撃を行っている。今がチャンスとばかりに一気に隣の柱へ走りこむ、しかし踏み出した足が小石を蹴り上げてしまった。コツン!_やばい!ガラテアの斧が迫ってくる、衝撃波により体が引き裂かれると想像したが実際には衝撃はこない。柱の影からガラテアの様子を伺うと二匹のファミリア達が再び立ち上がり、ガラテアと奮戦していた。救われたアルテはゆっくりと柱に手を当てていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第32章 時を超え』湿った空気のカビ臭い匂いが充満する部屋。灯りは壁に蝋燭が2つ。煙が微かに流れる。部屋中に小さな子供達が押し込まれ寒さはない。子供達は口々に「怖いよ~」とか「誰か助けて~」と叫び。泣き声が部屋を押し広げそうな勢いである。「本当にあなた達ってどうしようも無いと思うわ」一人の少女が立ち上がり、大勢の子供達に嫌味を言う。少しざわめき、その後静かになったかと思うと誰かが、少女に対し罵倒を浴びせる。「偉そうに強がって、じゃお前が俺達を助けて見せろ!」一人の罵倒が数人に伝染し、今では部屋中に少女を攻撃する言葉が広がっている。呆れた顔で少女が立ち上がる。すると、急に臆病になった者達は黙ってしまった。「ここで文句を言っても、何も状況は変わらないわ。それより、ここから出る方法を考えましょう」少女が、皆に話し掛ける。それでも、子供達は「非現実的だ」とか「大人達を待つべきだ」とか「小さな子供達だけでは無理だ」とかそれぞれが好き勝手な事を言い始めます。その時です、一人の男の子が立ち上がり皆を睨みつけます。「お前達いいかげんにしろ!元々このメイヴィさんがいなければ俺達は皆死んでいたんだぞ」「それに、メイヴィさんはプレイヤーだ。普通の大人なんかより何倍も頼れる」この言葉が子供達の心にズシンと重く響き、誰も文句を言い出す子はいなくなった。「そして、何を隠そうこの俺もプレイヤーだ。今は廃れてしまったロウ家の純血のプレイヤー。ノラ・ローだ!」「これぐらいの鍵なんて、俺様にかかれば・・・」ノラローは針金のような物で扉の鍵を開けようと試みるが、残念ながら扉は反応しない。「ま、まぁーなんだ。俺は武道家だからチマチマした作業は苦手なんだ」「ふふ、面白い人ね、私もプレイヤーよ。なんとか役に立つかしら?」「名前はめるも。プリンセスのスキルを持っているわ」新たなプレイヤーの登場で、子供達の表情が明るくなる。「二人ともありがとう。三人もいるなら何とかなりそうね。みんな知恵を貸して。そしてココから脱出よ」地下牢の中で子供達が歓喜の声を上げた。 ☆塔の最上階、その一番奥に大きな椅子があり、ザードフィルが足を組み肘掛に頬杖をつきながら腰をおろす。その傍らにはトリーシャが立ち、さらには椅子に対し二列に並び跪き、頭を伏せる者立ちがいる。バタン!沈黙を破るように、一人のランサーが扉を開ける。椅子に続く赤い絨毯を踏み、他の者など目に入らぬかのように、ザードフィルに向かい足を進める。「貴様!」何人かの者が声を発するが、ザードフィルの片手がその者達に向けられそれ以上は声を出せない。「何者だ、トリーシャがランサーに話し掛ける」「マシンインター。それが名だ。訳あってこちら側につく、悪い話じゃなかろう?」「何を勝手な!」とさらに跪く者達から声が上がるが結局先程と同じようにザードフィルにより静まった。「で、何を所望するのだ?マシンインター」とザードフィルが口を開く。「望む物はただ一つ、ゲルニカとの真剣勝負。他には何も」暫くの間、ザードフィルとマシンインターの無言での探りあいが続く。「いいだろう。お前の好きにするがいい。こちらの条件は何もない」ザードフィルの返答にざわめきが起こる。そして一番驚いていたのはマシンインターであった。「下がれ、後はお前のしたいようにしろ」ザードフィルの言葉で振り返り、扉の方へと足を進めるマシンインター。ザードフィルはトリーシャに目配せをする。「はっ!」トリーシャが一気にマシンインターの頭上に飛び上がる。そのままマシンインターの背中に向かい槍を立てる。ガツン!しかし、トリーシャの槍が突き刺したのは石の床のみで、既にトリーシャの背後にマシンインターが立ち槍をトリーシャの首元にあてる。「なかなかの腕だな、瞬間的なオーラの膨張率は俺以上かもな。しかし、身を削るような強さじゃ本物ではない」「まぁ、それでも化かし合いは女の方が上か。ふふ」インターはそれだけ言うと、目の前のトリーシャをすり抜けるように扉の向こう側へと去っていった。すると、先程までトリーシャであった存在が空気に溶け込み、元の場所にトリーシャの姿が現れた。「良いので?」ザードフィルはただ笑うのみで返答をしなかった。それがこの件については意見無用と一同への返事となった。 ☆ザードフィルの塔に夕日が当り、塔を赤紫色に染め上げる。石で出来た塔は独特の色合いを浮き立たせる。「再度、ガラテアに問う。我が姉、風の三姉妹が長女トリーシャを我が主ザードフィルから救い出すと?」「むろん、命に代えても」「よろしい、ではこの扉通るがいい。必ずや姉を救い出すのだ」と雪音。「ちょっとまった。これが罠ではないと保証できるのか」とセシルス。「信じる、信じないはそちらの自由です。それにこれから先は私達が手を貸すことはないでしょう」とルジェ。「ただ、これだけは忠告しておく。お前がこれから先出会うであろう姉はお前の知っている姉ではない」「そして、私達が望むのは本当の姉。古代の血に抗うトリーシャだ」「悪いけど、私達に出来る事はこの扉を開くことだけ。今度出会った時は容赦なく我等姉妹の槍と弓のコンチェルトが出迎える」雪音が鋭く、真っ直ぐな眼差しでガラテアを見据える。「お姉さま、コンチェルト(協奏曲)でなくて、カプリッチオ(狂想曲)の間違いね。お姉さまが絡むとね」「それはともかく。あなたなら、きっと姉を古き血の呪縛から救ってくれると信じています」ルジェの眼差しは少し不安なのか、悲しさが浮き出ていた。「ガラさん、ここは無理に闘う必要は無いでしょう。この先は長い、例え罠でも先に進むのが先決です」と風天ガラテア、セシルスは顔を見合わせ頷く。お互いの意思を確認し、扉の向こうへと足を進めた。「お前たち、美人にそんな悲しげな表情は似合わん。俺はトリーシャとお前たちの笑顔を取り戻しに行く」「それが、俺の払うことの出来るお前達への対価だ」軽く手を上げ、肩に巨大な斧を担ぎ暗闇の塔へとガラテアは消えていった。残された二人の姉妹は何かにすがるような視線でその大きな背中を追っていた。やがて、赤い日が沈み、フランデル大陸を闇が包み込む。赤い月がまた昇る。<あとがき>いやぁ一旦筆を置くと書けないですねぇ、よく4日連続なんて書けたなと自分でも思います。アルテ編は、なんかおかしな事になっています。全然反撃しないアルテですが、正宗・村正が攻撃中なので許してください><;戦争編改めトリーシャ救出編は場面が変わりすぎて読者に優しくないですね。なんとか読者を置いてかないようにしていますが、独りよがりな感じは否めないです。しばらくの間はこんな感じですが、暖かい目で見守ってください。今年中に後2回くらいアップしたいですが、どうなることやらwちなみに、2部は今年中に終らないことは確定していますb
2006年12月05日
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冷たい石に囲まれた部屋、その壁には巨大な獣と一人の女戦士の影が部屋の四方をまわる。前方には小さな戦士の影、それを追う巨大な獣の影。その影から長く、先には巨大斧が度々振り下ろされる。壁の欠片が四方八方に飛び散る。柱があろうが、壁があろうが構わず斧を振り回す魔獣。しかし、不思議な事に中央の台座にある氷塊にはけして傷つけはしなかった。_メタビ、ガラテアさんってこんなに野獣みたいな人なの?_いや、確かに野生的な部分もあるが違う。今のガラは正に野獣だな。姿も随分人から離れちまってる。_何故?_理由など私にもわからん。ただ、あれから相当な年月が経っている。心から変化したのか外見から変化したのか?_ただ言えることは、奴を元に戻さんことには我らは先に進めない。ただそれだけだ。やがて、ガラテアが動きを止める。そして中央にゆっくりと歩き始め、周りを見渡す。_どうしたのかしら?柱の影に隠れながら様子を伺うアルテミスが、内側に向かって問いかける。_ああ、多分闇雲に追い回すのを止めたのだろう。中央からならどの方向にも最短で終える。_ちっ結構知恵が付いてきやがった。_多分戦士の頃の記憶が戻りかけてるのだろう。_なら少しはお話できるかなぁ?_まぁ無理だろう。戦士として戦ってきた体の記憶。戦いの記憶が戻ってきたに過ぎないな。_これでスキル使い始めたら厄介だぞ。メタルビートルの嫌な予感はまさに的中した。ガン!ゴゴゴッゴ!バン!ガラテアが巨大な斧を地面に叩きつける。その剣圧で地面に一直線上に衝撃が走る。それを、柱の近辺に打ち付ける。何本かある柱に数発撃っては次の柱に撃ちつける。いずれはアルテミスが身を隠している柱も標的となるだろう。_ちっ、ストレートスパイクか、あれならこの狭い部屋で中央から炙り出せるな。_案外筋肉馬鹿じゃないな。どうするかこのままではいずれ見つかる。_かといって正面からでは勝ち目がない。そうしている間にもアルテミスの隠れている隣の柱が標的となる。しかも、段々攻撃の威力は増し隣の柱に至っては攻撃の威力によって、柱の下部が左右から削られ元の半分程の太さしか残っていなかった。ガン!その時であった。ついにアルテミスの背中、つまり柱に衝撃が走った。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第31章 それぞれの道』ビッグアイのザードフィルの居城。その塔の牢屋ではフクチや花火達が捕まっている。随分長い間、使用していなかったのか、そこは湿気を帯び黴臭い匂いが充満していた。フクチ、花火、楸の3人は顔を突き合わせて今後の作戦を練っていた。しかし、その中に交わらず一人壁に背中を預けて立っている男が一人。「インター、どうした?」楸が話し掛ける。「花火、ゲルはどうした?」とマシンインター。「ああ、あいつはメタルビートルを受け取りに行っていた。多分榎と共にここをへ来る」「魔槍メタルビートルか、完全最強モードで来るのだな」とインターが確認する。「ああ、ザードフィルが相手ならメタビの力が必要だろう」花火は不思議そうに答えた。「では、俺はここから出て行こう」インターが壁から背を離し、ドアに向かう。「無駄だ、その扉は呪印が施してある」楸が止めるが、インターは相手にしない。「お前達のように貧弱なウィザードと一緒にするな」「おお、助かります」とフクチ。「ん?勘違いするな。ここから出るのは俺だけだ」「ま、まさかお前、裏切る気か?」楸がインターの襟首を掴むが槍で横面を叩かれて地面に腰を落とす。「裏切る?お前達はお前達の進むべき道を行けばいい。俺は俺の道を行く。ただそれだけだ」「ゲルニカですね」と花火が静かに問う。「ああ、そうだ。俺はあいつを超えるために生きている。あいつに師事したときからそうだ」「そして、メタルビートルを持ったあいつは俺の知る限り最強だ。そして俺はそれを超える!」楸が立ち上がり、怒りの形相を隠さない。「お前は、あの子達やトリーシャを助けようと思わないのか!」と楸が怒鳴りつける。「それは、お前が勝手に掲げる正義だ。あの子達と同じ位の子が毎日世界中の何処かで食べ物もなく死んでいく」「それを全部お前が助けると?世界中の人間に説教でもしてまわるのか?」「目の前の惨劇だけは助けたいと言うなら、それはただのお前の望みだ」「俺は、俺の望みを叶える。ただそれだけだ」「それで、ザードフィルの力を借りて勝ってもお前の力じゃないだろ!」楸がなんとか食い下がる。「ふん、俺はザードフィルを利用するのは時と場所のためだけだ。本気のゲルでなきゃ俺は満足せん」「力は己のみ、他人から貰うほど落ちぶれちゃいない」「本当に行くのですね」花火は何故か穏やかな表情で問う。「ああ、お前達が間違っているとは言わん。ただ俺の目指す道とは違うだけだ」「それから、エロスに伝えてくれ。お前に俺は越せんとな。いつでも殺しに来いと、その日がお前の命日だと」「俺が教えた兄弟弟子の中でも一番素質がないとな」「意外と優しいな、インター。同じ修羅の道は進むなと伝えておく」「しかしな、あいつの名はネロスだ。名前ぐらい覚えておいてやれ、可愛がってたんだから」なんとか笑みを戻した楸がインターに軽く拳を胸にポンと当てる。ガン!マシンインターの強烈な突きで、扉の呪印が破壊される。そして、扉の向こうにマシンインターは走り去っていった。塔の下、入り口付近に立つ二人の女戦士。それと対峙するガラテア、セシルス、風天の三人。少し大気は肌寒い位冷えた来た。片側に太陽、反対側に月が向かい合うような時間帯。その有様は塔の前に立つ二人にどこか似ていた。まったく違う輝き、優しい月明かりと明るさの中に何処か寂しさが伴う夕日の光、質は違うが何処か似ている。そんな所が塔の前に立つ二人のオーラと似ていると感じるのだろう。「さぁ、ガラテア答えろ!我が主、ザードフィルに何用だ?」と雪音。「決まっている、あの子達とトリーシャさんを取り戻す!」とガラテア。「そそ、このシチュエーションですからね。悪の塔に捕らわれた姫を助ける騎士です」と風天。「ならば、この薔薇の紋章、ロウゼンの槍、すなわちホワイトローズ・ランサーオブランサー」「パウダースノー・シンフォニーこと雪音の洗礼を受けてみろ」「だ・か・ら、お姉さま、す~ご~く長いです。しかもなんでもカタカナっぽくすればカッコイイ訳ではないです」「・・・ルジェちん、もいいよ、姉は疲れたよ。もうローゼンやめる。こんな戦いどうでもいいよ、私は引退するよ」「ひぃ~、お姉さまが鬱モードになってしまった。皆さんなんとか言ってあげてください」「ルジェちん、私に気を使わなくていいよ。どうせ私なんて・・・後はみんなで楽しくやってよ」「ひぃ~、このメンバーで楽しくって言ってることが滅茶苦茶ですわ」すると、風天がにこやかな顔で二人の前に進み出る。「雪音さん、そのホワイトなんちゃらとかローゼンなんちゃらとかカッコイイと思います」「え!そ、そう?彼方けっこうかわいいね。お名前は?」「風天と呼んで下さい」「う~ん、いい名前。さぁルジェちん行くよ!」「お姉さまの立ち直り、相変わらず速すぎますわ」「そんなのいいの。さぁいくぞガラテア!我らの必殺攻撃を受けてみよ」「はい、お姉さま!」「いやぁ!」「いやぁ!」二人の戦士が同時に分身を作り、ガラテア達の前現れ突きを繰り出す。「ふん!」ガラテアの巨大な斧が分身達をことごとく打ち破る。そればかりか、ガラテアの繰り出した巨大な斧の風圧で塔の壁に一文字の傷を刻む。「くぅ、さすが砂漠の猛虎」と雪音「私たち姉妹のオーサムを食らって平然と対処するとは。何処かの剣聖とは大違いだな」「姉さんこの人達なら・・・」「ああ、ひょっとしたらあの人を救えるかもしれないね」二人の姉妹がお互いの顔を見て微笑む。その表情は穏やかでそして決意に満ちた表情であった。ひんやりとした心地よい風が一同を包む。二人の戦士の髪がなびき夕日に反射するようであった。「ってか彼女達の年じゃ、ガラの射程圏外なだけだよな。うんやっぱおかしいよこの姉妹」セシルスのぼやきが風の音にかき消されていった。<あとがき>フフフ、3夜連続UPはもう二度としませんと言いました。しかし!4夜連続がないとは言ってませんb奇襲とは「さすがにもうないだろう」と思わせた所でするから効果的なんですw(誰に対して奇襲なんだろうか??)まぁ、それでも毎日チェックしている人のため、そしてギルドHも最後なので自分なりに頑張りました。思えば、この地味な小説もHのメンバーのおかげで随分と花あるものになった気がします。本当の私のメッセージはチョット暗い部分が多いので、明るいHのメンバーには随分助けられました。私的には少し脚色はしてますが、結構RS内の彼ら、彼女らの色は出ているのではと思っています。(色々意見はあるでしょうがゆるしてねw 反面小説では書けない部分・・・エロとかエロとかもあるからw))Hの皆さん本当にお疲れ様でしたm(_ _)m小説の方ではもう少し活躍してもらいますねノシ
2006年11月30日
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堅牢な石造りの部屋、けして広すぎる部屋ではないが狭いわけでもない。部屋のあちらこちらには丸い柱が数本、天井を支えていた。その柱には常に灯りが燈されていて、その光により柱や天井、床の摩訶不思議な文字や絵を浮かばせる。中でも一番異様な雰囲気を出しているのは、部屋の一番奥に置かれた氷の結晶であった。「けして暑いとは言わないけど、何故この氷は溶けないの?」氷塊を前にアルテミスが問う。「これは普通の氷ではないのさ、よく見ると薄っすらとオーラが取り囲んでいるだろ」「そのオーラが水の分子運動を抑制しつづけている」メタルビートルが説明したように、氷塊の周りには白く輝く透き通るオーラが漂っていた。「これは、中の女性のもの?」「ああ、半分はそうかもね。でも残りは氷を作った奴の物だよ」「その人は何処に?」「奴は、彼女をこの氷塊に封印するため肉体を捨てたのさ。今もこの部屋にいる」ギギッギィー。ガッガン「な、何んだ!」突如、アルテミスの後方から異音がした。それは岩と岩がぶつかる程の巨大な音であった。キュゥー!キッキィー!振り返るアルテミスよりも速く正宗と村正が疾走する。異音の方向、すなわち扉の方へと向かってく。石の扉の前で人の丈よりも高く飛ぶ正宗、地面をスレスレに滑り込むように飛び込む村正。二匹が向かった先には、あの入り口付近に巨大な斧を持って立っていた石造であった。ザッザン!ビシッ!パキン、パキン!ファミリア達の痛烈な一撃が石造の頭部、脚部に突き刺さる。刺さった槍の割れ目からひび割れが走り頭と足元から稲妻のように石造全体を包む。ファミリア達が次の一撃を放とうと構えた時、石造のひび割れから強烈な光が発せられた。カッツ!光は部屋全体を包み込み、アルテミスの視界を奪い去った。光が治まり、目が暗闇になれた時には正宗と村正が足元に転がっていた。そして、赤黒い巨体、異常発達した右上腕と肩、充血した眼光の魔獣が身の丈程もある巨大な斧を持ちこちらを睨んでいた。「どうやらお目覚めのようだ」とメタルビートル。「コロッサス以上にやばそうなんだけど・・・やっぱ戦うの?」とアルテミス。「ああ、奴はここのガーディアンだ。奴を倒さない限り氷は溶けない」「アルテ、お前なら奴を救えるはずだ。悪いが頼む」「彼方が私に頼みごとなんて、止めて!なんだかもう会えないたいだよ」「元々お前の人生に私の存在など無かったはずだ。元々ない物を何故惜しむ」「一緒にいる事が大事じゃないだろう?一緒にいた時にお前がどれだけ成長したかが大事なんだ」「悲しい振りなどせずともいい、死ぬまで悲しみ続けることなんてどうせ出来ないんだから」「違う!悲しい振りなんかじゃない!」「確かに私の人生にメタビはいなかった。当たり前よ、生まれた時から一緒の人なんていない」「親でさえいない人もいるわ。でも誰とも出会わずに死んでいく人はいない」「人はねメタビ、人と触れ合うことでお互いの優しさや思いやりで伸びていくの」「憎しみや妬みでねじれて行く奴もいるけどね」「メタビは本当に正直なのね。初めて出合った時と同じ。ふふ、あの時は酷い人と思ったわ」「わ、私は変わらない。お前が変わったんだ、強くなったんだ」「そうね、彼方やセシルスや皆に強くしてもらった。人はお互いに影響されながら成長していく」「だから、メタビと離れて悲しくないわけないでしょ?本当に悲しい事って、どうしようもなく悲しいってあるの」「私は向こうでちょっと浮いていたから、その気持ちがわかる。人に嫌なことされるとかじゃなく」「その気持ちは必ず一つの思いからくるの」「それはね、”孤独”ってこと。一人でいるのは好き、でも孤独は怖いの」「ほら、猫ってそうでしょ。飼い猫とかって勝手に一人で出て行ってしまう。でも必ず戻ってきて家族を確認するの」「人は生まれて直ぐに動物のように立ったり出来ないでしょ、それはね助け合って生きていくことが前提だからと思うの」「だから、人との別れは本能で拒否するの。本当に悲しいことなの」「あ~あ、わかったわかったよ。しかし今度の相手はずーと孤独と戦ってきた。手ごわいぞ」「人の弱点である部分など微塵も残っていない」「人であるなら、孤独と戦ってきたひとなら・・・私は、私はその人とわかりあいたい」「まぁやるしかないだろう、とにかく手を出せ私を使わなければ一瞬も持たんぞ!」「え!」ガン!赤黒い、大木のような腕から振り下ろされた斧がアルテミスの眼前にせまる。何故だろう完全に不意をつかれたはずだった。しかし、一瞬速く頭を下げメタルビートルに手を伸ばした。ただの偶然なのか理由は定かではないが、柱を砕くその強烈な一撃を目の当たりにしたアルテミスは背中に冷たいものが流れるのを感じていた。_砂漠の虎ガラテア、それがやつの名だ必死に距離を取るアルテミスの中でメタルビートルが囁く。壁に写った影が炎に揺れさらに巨大になり迫ってきた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第30章 繋がれし者達』ポツン・・・ポツン・・・天井から落ちる雫が楸の頬を濡らす。「うぅ・・・」「やぁ、目覚めたようだね楸」緑のコートの男がうめく楸に声を掛けた。「は、花火!どうしてここに?」「あれから暫くして助かった子供達と一緒につれて来られたんだよ」「こ、ここは牢屋!はっ、トーリーシャはどうした?」「あー、その事ならインターから聞いたよ。理由はわからないけどどうやらザードフィルが全てを握っているようだね」「何故、お前達がいてむざむざ捕まったんだ?」「戦って、犠牲を出すには幼すぎるのだよあの子たちは。それに、やばい奴もいた普通に戦って勝てるかどうかも」「やばいやつ?」「聞いたことあるだろ、黒の剣聖ロウ・ヴァイオレット」「なっ、何!って知らんけど強そうだな」「はは、楸は知らんのか奴は裏社会では有名人だよ。ゲルニカでもどうだかって奴だ」とインターが口を挟む。「こ、こほん。さぁこれからどうするか作戦を練ろう。お互いの情報を交換せねばと思うのだが」とフクチ大佐。そして、4人の密談が薄暗い牢屋で行われていった。雨上がりの砂漠に虹がかかる。二人の戦士が砂漠の中に座り込む。そこへ向かう戦士さらに二人。「セシ、悪いが俺はもう立ち上がる事すら出来ん」とガラテア。「わ、私だってもう指一本だって動きゃしないよ」と砂漠の上に大の字になるセシルス。「っておいセシ。お前服着て無いじゃんか」「ふん、減るもんじゃないよ。見たい奴には見させておけばいいさ」「ごめん、頼むから服着てくれ」「ちっ、ホントに女には弱いのだな」致し方なしに、しかも面倒といった表情を浮かべゆっくりと鎧を手繰り寄せ、身にまとう。そこに、新たな戦士達がようやく近づいてきた。一人はガラテア達も知っている榎であった。もう一人は、小柄な体系、黒い軽装で身を包んだ男であった。「すまん、俺にはどうすることも出来なかった」と榎。「いや、結局また俺は誰も守れなかった。俺のせいだよ」とガラテア。「奴等に囲まれた時、なんとか仲間に合流するしか方法は無かった」「そして、今仲間が奴等を追っている。俺はお前達と合流してからと」そして、榎はガラテアとセシルスの間で天に祈りを捧げる。手に持つ棍棒が光を放つ。大気は震動し、自然のオーラがガラテアとセシルスを優しく包み込む。「すまない、感謝する」「その腹の傷は深い、直ぐには治らんが貴様程の戦士なら充分戦えるだろう」「さぁー向かおう、奴等はビッグアイにいるそうだ」榎の背中から白い翼が現れ、片手を天に突き上げ掌を広げるとガラテア達の視界は塞がった。次に視力が戻った時には、前方に大きな塔が立ちふさがっていた。「悪いが俺達はこれから仲間と落ち合い、作戦を練る。どうするお前達は?」と榎。「すまない、本当なら一緒に行動すべきだろう。しかし、俺は直ぐにでもあの子を・・・」「はは、そう来ると思ったよ。まぁいい、こいつを置いていく。潜入は得意なハズだシーフだからな」榎に押し出されるかのように、黒い軽装をした男が前に出る。「ふ、風天です。よ、よろしく」「はは、少しおとなし過ぎるが使える奴だ、連れて行ってくれ。ではこれで失礼する」榎は再び、天に手をかざし光と共に消え去っていった。「ガラ、どうする?」とセシルス。「まぁ、考えても仕方無い。正面玄関から入ろう」とガラテア。「待ってください、もう既に歓迎の準備が始まっている見たいです」と風天。塔の影、その左右からゆっくりとそして鏡を合わせたように槍を携えた女戦士がお互いに近寄る。塔の丁度真中、扉の前で二人は合流しまるでシンクロするように同じ速度でこちらを振り向いた。身構える三人に微笑みながら、視線でを這わす。じっくりと。「よくぞ来た、ビッグアイへ」右側の女が言った。「いらっしゃいませ。ふふ」左の女が続く。「ザードフィルに用がある。案内してもらおうか」とガラテア。「ははは、そう急くな虎よ。我こそはこのタワーの守護者、薔薇騎士団・ローゼンナイツの風の3妖精と呼ばれし」「その次女であり、ホワイトダイアモンドダスト・メロディーこと雪音!」「ねぇさん、長い長い。もう少し短くしないと覚えてもらえないって言ってるでしょ」「申し訳ありません。姉は少し語学が達者ではなくて」「玉石混淆とか和光同塵なんて言葉はおろか、妨害と防害の違いや好意と厚意の違いさえ知らないんですもの」「る~~じぇぇ~~ちん。な・に・か言ったか~」「私だって4文字熟語ぐらい知ってるぞ・・・さ、さけちにくはやしとか」「お姉さま、それは酒池肉林の事ですの?まさに論語読みの論語知らずと言うか読めていませんわ」「る~じぇぇ~ちん。今日はご飯抜きだからね。戦いのイロハを習った私を馬鹿にするのは許さん!」「しかも、横紙破りなことを平然と」「お姉さま、青は藍より出でて藍より青しって事を知ってますの?」「なんだ?新しい漫画か?」「ええ~い、そんな事はどうでもいい。ザードフィル様に用があると言ったな」「あ、ああ」とガラテア。ガラテアとセシルスは緊張感で強張った筋肉がすっかりほぐれて、あきれ果てていた。「セシ、こんな女って何処にでもいるものなのか?ちょっとレイチェルを思い出したぞ」「い、いやぁ皆がそうじゃない・・・と思う」「二人セットな分こっちの方が扱いにくそうだな」ガラテア、セシルス、風天の3人は困惑していた。出来れば関わりたくない思いで一杯であった。新たな風がビッグアイと戦士達に吹き始めた。月がもう直ぐ昇りはじめる。<あとがき>フフ、禁断の3夜連続UPですbもう二度としません(キッパリ)アルテ編では遂に戦争編との絡みが少し見えてきましたね^^。戦争編は新たなキャラがまたしても登場です。ちょっと女性陣が強烈なキャラにしすぎたかな?べ、べつにHがもう直ぐ終わるからなんでもありで書いてる訳じゃないです・・・ゆ、許してくだはいm(_ _)m以外と風さんは普通になってしまったw2部はHのメンバーをなるべく出していきたいのですが、全員はちょい無理っぽい><;まぁ出来るだけ頑張りますが、是非登場してカッコイイ役したい人はコメント欄へw注)甘党仮面とかになっちゃうかもbはぁ~疲れた・・・作者取材のため来週はお休みです(マテ
2006年11月29日
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どれほどの時間が経過しただろう。洞窟に差し込む月明かりが、地面にひれ伏すアルテミスを優しく包み込む。「さぁ、アルテ時間がない。どれほど悲しんでもセシルスは戻ってこない」月明かりに負けない位優しく、メタルビートルがアルテミスの赤い髪を撫でる。「うん、でも凄く悲しいの。ほんの少しの時間しか触れ合えなかったけど、あの人のこと凄く伝わってきた」「また一つ成長したな、アルテ。一流の戦士はお互いのオーラで不思議と通じ合えるんだよ」「それ凄く感じる。戦いの中でセシルスさんが私の中に流れ込んでくるのが解るの」「凄く悲しい心の流れが私の中に入ってくるの」「小さな、小さな女の子が泣いていたの。凄く猛々しい一撃と一緒に・・・」「でも、最後は笑ってただろ?」「うん」「なら、アルテお前も笑わなくちゃな。さぁ行こう最後の試練が待っている」「うん」ようやく立ち上がり、涙を拭くアルテミスは何故だか頭上の月に向かい”ありがとう”と呟いた。なんとなく、セシルスが見てくれているそんな気がしたからであった。二人は相変わらず魚と戯れている正宗と村正を呼び、洞窟の奥へと進む。「しかし、今回はホントにあんたたちは魚取ってただけだねぇ」とアルテ。「しょうがないよ。こいつらは本当の敵かどうか分かってるからな。セシルスは敵じゃないって知ってたんだよ」キュィ、キュウ、キュキュウいかにもそうだと言わんばかりに正宗が胸を張る。村正もそれにならって胸を張る。そんな仕草が戦いに疲れたアルテミスにとって、大変に癒されるものであった。暫く足を進めると、明らかに人口的な建造物の入り口らしき扉が一同を迎え入れた。その扉をアルテミスが押し開ける。それは石で出来た扉であり、何やら不思議な文字で色々と彫刻がなされていた。キャー!扉を開けた瞬間、アルテミスの目に飛び込んできたのは、巨大な斧をもった魔獣であった。しかし、その魔獣は斧を振りかざしたまま微動だにしない。よく見ると石で作られた彫像であった。「ふぅ、びっくりした」しかし、もっとびっくりしたのは正宗達であった。二匹のファミリア達はアルテミスの声に驚き槍を落とし二人で抱き合っていた。「見ろアルテ、お前が本当に会わなければいけない人があそこで待っている」石造りの部屋の奥、中心方向を指差すメタルビートルがアルテミスに告げる。その指の指す方向には、炎が5つ燈る台に囲まれた巨大な氷の結晶がある。いや、よく見ると炎に照らされ薄っすらと黒い影が氷の中心部分に確認出来る。アルテミスは何故だか吸い込まれるようにその氷に足が向かった。ようやくその黒い影の正体が分かりかけてきた。それは氷付けとなった一人の女性の姿であった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第29章 裏切りの微笑』小都市ビッグアイその中央に高くそびえる塔がある。戦場では男たちが未だに凌ぎを削っていた。「やっと我が家についたな。さぁ目覚めろトリーシャ、我が僕よ」塔の一番高い所にある一室では、ザードフィルが冷たくなったトリーシャの身体に不思議な気体とも液体とも言えない不思議な球を当てていた。その球体は時に真っ赤に、時に真っ青にまた時にはどす黒い色をしそれぞれが混ざり合いながら光を放っていた。その光の球から、光の雫が落ちトリーシャの唇へと流れていく。その一つの雫がやがて線となり次第に太くなっていく。その光の線が太くなるとは逆に光の球はどんどん小さくなる。やがては小さな小石のようになり最後には全てトリーシャの口へと流れ込んでいった。「うぅ、ここは何処だ。ざっ、ザードフィル何故お前が」闇の中から目を覚ましたトリーシャが信じられないと言った表情で叫ぶ。「ははは、トリーシャ残念だがお前は私からは逃れられないさ。いやもう一人のトリーシャからもな」「な、なに!」ザードフィルの言葉にうろたえたトリーシャが、部屋の周りを見渡しその視線が小さな窓を見つけ止まる。その窓には大きな満月が、妖しく赤色に光っていた。心なしかいつもより大きい円を書いていた。「くぅ、ううぅ。ダメだ。お前は出てきては行けない」「は、はめたわね、ザード・・・。ああ~あダメよ。ああ~もう意識が・・・」突然、頭を抱え出し床を転げまわるようにトリーシャが長い髪を振り乱し苦悩の表情を浮かべる。頭を抱え、床にうずくまるトリーシャの体が小刻みに震え、そしてゆっくりと振動がどまる。「ふふふ、はははぁ、戻ったぞ。私は戻ったぞ」突如、奇声を発したトリーシャの表情はすでに別人となっていた。それどころか髪も短くなり多少の面影を残す以外はまったくの別人と変わり果てたトリーシャがそこにはいた。「トリーシャよ、愛しいトリーシャよ戻ったか」「月の夜にお前に流れる太古の血が再びお前を狂わせる」「私は錬金術を研究するにしたがい、レッドストーンの欠片に眠る天界の血を発見した」「そしてそれは、聖なる意思と禍々しい意思が混沌となり結晶化したものとわかった」「先程お前が飲んだあれがそうだよ。液体のようで固体のようで気体のようでもある。あれがレッドストーンの欠片だ」「そして、お前はレッドストーンの適正者なのだよ。お前に流れる血。太古の末裔だよ」得意げに語るザードフィルの前に落ち着きを取り戻し、妖艶な表情のトリーシャが近寄る。バタン!その時であった、トリーシャの呻き声を聞きつけて楸とインターが扉を開けて部屋に駆けつけた。「何事だ?トリーシャは何処だ?」と楸。「やはり裏切ったかザードフィル」インターが静かに呟く。「ん?何のことだ。トリーシャは確かに助かったぞ。お前等の目の前にいるだろう」「何!」狼狽する楸の前にトリーシャが槍を持ちにやりと笑う。「ま、まさか」バキン!「ぐはぁ」不意をつくトリーシャの攻撃が楸を襲う。そしてトリーシャであるかも知れないとの思いが楸に反撃を思い止まらせた。一撃、二撃と槍が楸を襲う。頭から血を流し鎧はへこみながらもなんとか意識を保つ。「ははは、泣け! 叫べ! そして、死ね!」「月を見るたび思い出せ!太古の血の継承者トリーシャの名を!」遂に楸の意識は真っ白な世界へと消えていった。ただ倒れながらにその瞳に映る赤い大きな月だけが意識に残されていた。<あとがき>はは、たまには一気に更新しないと第二部が終わらないのでwまぁ、今回は新たな展開のための予告編的なものなのでねbアルテ編は遂に最後の試練へと進んで行きます。長い試練もこれで一応最後となります。少しは私もアルテも成長したでしょうか?戦争編は急展開ですね^^久々にザーさん&トリーシャさん、楸さん&インターさんの登場となりました。まぁトリさん的にはチョイネタぽくしてるのですが分かったかな?設定とか台詞とかですw
2006年11月28日
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ひんやりとした空気が肌に突き刺す。月明かりが島から突き出した岩の影を地面に書き写す。その影に隠れるように、セシルスが腰を下ろす。「どう、合格かな私?」アルテミスがセシルスの前に立つ。「ふふ、まさかあんな事が出来るとはね。油断もあったけど、完敗だよ」「レッドストーンに愛されてるのだね、アルテは・・・」「うん、よくわからないけど、突然凄い力が湧いてくるの」「はは、さすが本来の適正者だ。所詮は私やメタビとは出来が違うな」「えっ!」「見なさい、この手を。段々と薄くなってきている。そろそろ私の身体も限界だ」アルテミスの前に出されたセシルスの掌は、月明かりが透け既に色の大半を失っていた。「私は前の戦いで既に身体を失ったんだよ。今はレッドストーンの欠片の力でなんとか・・・」「それももう終わりだねぇ。最後にアルテミス、彼方に出会えてよかったよ」「そんな!メタビみたいに私から力を受け取って!」「はっはっ、メタビは特別なんだよ。私は偶然この力を得ただけだから無理だな」「セシルスの異常なまでの精神力が、近くにあったレッドストーン欠片と反応し力を得たんだよ」メタルビートルが槍から戦士の姿に変化しアルテに説明した。「私のことはもういい。アルテが私の意志を継いでくれるさ。心残りはない」「意志?」「ああ、でも説明はいらない。君がなすべき事をなせばそれがきっと私の願いだ」「きっとアルテならあいつを救ってくれる」「さぁー私は帰ろう、この世界の一部へと・・・」透き通るセシルスの身体がより一層薄くなる。月明かりに照らされ、溶けるように輪郭が消え始める。アルテミスが必死に手を伸ばすが、もう其処には手ごたえがなくセシルスの身体の中に入ってします。アルテミスが涙を流し、その掌で空中の何かを掴むように握りこむが、またしても手ごたえがない。そして、セシルスは微笑むようにアルテミスを見つめ何かを確認するかのように頷き、星が弾けるような不思議な光をいくつも放ち、月明かりに溶けていった。「セシルス、セシルス、セシルスは何処?セシ・・・うっうう」空中に浮かんだ自らの手を地面にだらりと下ろし、アルテミスは泣きじゃくった。悲しい声が洞窟に響き渡る。メタルビートルはただ優しく、アルテミスの背後から抱きしめていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第28章 決着』砂漠の砂が竜巻のように、戦士達の周りに集まっていく。濃度の濃い空気と砂が戦士達の呼吸を阻害する。「さぁ、あまり時間はありません。一気に行きます」と甘党仮面。「いつでも来い、闇の力で砕いてやろう」とロウ・バイオレット。甘党仮面がウマタケマンとガラテアをちらりと見て、再度ロウを睨む。「さぁウマタケマン、何をボケボケしてるのです。私達の力を見せるのです」「む、一人で来れぬのか、案外腰抜けだな」「いや、最近のヒーローは巨大な敵にみんなで向かっていくのが王道なのですよ。悪の貴公子どの」「き、貴公子?ムフ、中々いい呼び名だな。良かろうこの悪の貴公子の力破ってみろ!」ロウ・バイオレットは気分良く、黒いオーラをまとい甘党仮面の出方を待っている。「行くぞタケちん!」「よし、ついに出番ですね。甘党仮面!我らのデュアル・スピリチュアル・パワーを見せてやろう!」ウマタケマンが叫ぶ。「う・・うん、そのスピなんとかを見せて、や・・やろ・・う」甘党仮面がウマタケマンの異様な気迫に押されてなんとか相づちを打つ。「何を戸惑っているのです。いつものです。さぁいつものセリフを!」「う、うん、み、未来を照らし!」と甘党仮面がハズカシそうに叫ぶ。「勇気を運べ」と力強くウマタケマン「大地に薫る風!ウマタケウィンディ!」叫ぶウマタケマンの腕から放たれた盾が巨大な竜巻を呼び出し、ロウバイオレットの動きを封じる。「くく、こんな程度の力で俺の黒きオーラは破られない。俺は黒き偉大なる貴公子だ!」「今よ甘党ブライト!」とウマタケまんが叫ぶ。「ブッ、ブライト!まぁいいや。天空に満ちる月!甘党ブライト!」ちらりとガラテアの方を見ながら、甘党仮面が赤いオーラを発し自らを包む。「やばい、ファイナルか!ロウ、気をつけろ、剣聖技で来る」ジェイクリーナスが気付き、高速移動で甘党仮面を追うが既に光に包まれ高速移動する甘党仮面に追いつかない。「はぁああああー」甘党仮面の光る身体が、ロウの黒いオーラと反発し合いながらぶつかって行く。「ま、負けん。俺の憎悪が、黒き魂がお前達等に負ける訳がない!」カッ!ガガガー!二人のオーラが混ざり合い、大きく光を放ち天空まで上る柱となり地面から突き上がる。そして、そのまま天空の雨雲を突き破り対消滅して消えていった。「くっ、互角か。だが、そっちも手は尽きたようだな。フフ剣聖技、もはや通じぬぞ」「いや、全ては囮。今です、ガラテアさん。彼方の受けた痛み全て倍返しです」「何!」甘党仮面の放った言葉に意表を突かれ、振り向いた方向には既に巨大な斧を高らかと掲げるガラテアの姿があった。「食らえロウ・バイオレット!我が受けた痛みそっくり倍返しだ!」赤く、鮮血に染まった巨大な血の刃がロウの肩から心臓に打ち下ろされる。身を守る黒いオーラが無い今は、その真っ黒な鎧も役に立たず紙のように破れる。「ブ、ブラッドシェーカーとはな。くっ・・・ぶはぁっ」「良かろう、今回は私の負けだ。ビッグアイに来るがいい。そこにお前達の仲間がいる」「待っているぞ」ドサッ力尽きたロウ・バイオレットが顔面から砂の中に倒れる。ウマタケマンが近寄り死体を表に向けるが、そこには先程まで見ていたロウ・バイオレットの顔とはまったく別人の顔であった。「無駄だよ、禁呪だよ他人に自らの意識と力を乗り移らせる。そんな所だろう」と甘党仮面。「では?」とウマタケマンが聞く。「そう、時間稼ぎだね。とにかく敵の場所と避難民の無事が確認出来ただけ上出来だよ」「すまない、助かった。甘党仮面」最後の一撃を放った後、倒れこんでいたガラテアが斧を杖のように立ち上がり甘党仮面に頭を下げた。「いや、礼には及びませんよ。まずは傷の手当をそして、こちらに向かっている彼らと共にビッグアイへ」取り囲んでいた魔獣の群れ達はいつしか消えうせ、遠方に数人の戦士達がこちらへ向かってきていた。「たぶん、フクチ大佐か花火達の仲間ですよ。後は任せました子供達を救って下さい」ウマタケマンが声をかけると、甘党仮面と共に再びドラゴンを呼び出し空中へと消えていった。「酒さん。やったね、ナイスですよ」「う、うん。でもあれはどうなの?最後のやつは・・・」「え?二人はブヒウマですよ。マックスハートですよ。アウグスタで絶賛放映中です」「・・・うん、いいんだけど、なんかちょっと古い気もするし・・・」何時の間にか雨の上がった青空に二匹のドラゴンが羽ばたいていた。<あとがき>う~ん><;風邪ひいて最悪の体調です。RSは殆どINしていません。今回のアルテ編はセシルスさんのお葬式ですねwまぁ、まだ戦争編に出てきますので(こっちでも死亡って書いてあるかぁw)・・・ごめんなさい><。愛してますので許してね^^戦争編、ウマタケマンがちょっと爆発ですwパ○リなのは許して下さいw娯楽小説なので、楽しければいいかなと思っています。実は、元ネタをよく知りませんw最近買った娘の本に出てたので、使ってみました。このシリーズは随分長いことやってますね、凄い人気なのかな?
2006年11月27日
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夜の月明かりの中、二本の閃光がぶつかり合う度に火花を散らす。洞窟独特の風は生暖かく、二本の光に吸い寄せられるように集まっていく。高速移動の中、アルテミスの瞳には外からみた景色とは全く逆に、ゆっくりとまるで、風景写真を1枚づつめくるかのように写る。「ねぇ、この感覚。何か不思議ね」_ふふ、この速度に乗った時の感覚は体験した者にしかわからん。_体のスピードが上がるにつれ、脳の感覚神経の速度が一気に跳ね上がるのさ。_脳内の情報処理速度が上がるから、視覚・聴覚・触覚全ての感覚が逆に遅く感じる。「だから、マスターは体を鍛えろと、足腰を重点的に鍛えてくれてたのね」_まぁそんな所だ。我々はこの感覚を「神の領域」と呼んでいる。_「神の領域」に触れる事の出来る奴は、戦士の内でも極僅かマスタークラスだけだな。「マスターか、でもこの感覚って凄い好き」「空気の中で不思議な光の一粒一粒が、肌をなでるように優しく触れるの」_普通の戦士達から見たら、お前達は光そのものだよ。_光ったと思った瞬間には、体を貫かれている。_セシも同じ領域にいる。油断するな。来るぞ!光の速度でセシルスが迫ってくる。しかし、アルテミスの目にはスローモーションのように映る。同じく自らの体をスローモーションのように動かし、アルテミスが迎え撃つ。突き出した槍と槍。お互いの喉元に向かい交差して行く。カン!アルテミスの眼前にセシルスの槍が迫った時、アルテミスの槍がブロックする。_ダメだアルテ!避けるんだ。メタルビートルがアルテの中で叫んだ時には既に遅く、アルテミスの瞳に写っていた景色が速くなる。高速移動がブロックにより、一気に止まったからであった。その直後には、セシルスによる無数の残像攻撃がアルテミスを襲った。「きゃーっ!」セシルスの攻撃が鎧の上からアルテミスを襲う。攻撃を食らったアルテミスは一瞬硬直する。再度、セシルスの残像攻撃がアルテミスを襲うが、なんとかダミーステップで逃れる。_離脱だ、アルテ!メタビの声に反応し、再度高速移動で距離をとる。_さすがセシルスだ、相手のブロックを誘って一旦動きを止め、その隙に畳み掛ける。「交わした方がいいの?」_出来るならな。岩と岩の間をジグザグに高速移動するアルテの背後には既にセシルスの影が迫っていた。岩の柱を中心に方向転換し、再度正面から二人がぶつかっていく。「鬼ごっこは終わりかい、どんなに力を秘めていても戦い方が素人なんだよ」「私は逃げないって言っている!私は負けない!」「どんなに辛い過去があるか知らないけど、人は過去には生きられない」「過去に生きる人間に、未来を歩こうとする人は倒せない!」二人の距離がどんどん短くなる。_まだよ、もっと、もっと速く。もっと速く!_アルテ、あまり速度を上げると交わせないぞ!_だめ、あの人と同じ速度じゃ勝てないの。悔しいけど向こう方がうまい。_もっと、自分の限界を・・・壁を・・超えて!二人の槍が再度交差する。絡み合う槍は激しい火花を散らし擦れ合う。ブウォン!巨大な音が発したその瞬間、セシルスの瞳に写るアルテミスの姿が消えた。白く幕をはったような空気の壁が、セシルスの前に現れたかと思うと丁度、先程まで交差していた槍の先から破れたように中心から弾け飛ぶ。その直後、一気に衝撃波がセシルスを襲う。「なっ何なんだこれは。うはっ!」ガガガ!ガン!衝撃波と共に激しく地面に打ち付けられるセシルス。その口からは大量の血反吐がこぼれていた。_まさかな、ソニックブームを起こすとは恐れ入ったよ。「ソニック?セガの?」_なんだそれ?今、お前は確かに音速を超えたんだ。_物体が音速を、空気の壁を超える時に強烈な衝撃波が生まれる事があるんだよ。「あ!私、槍を交わそうとスピードを欲したら何故か目の前が真っ白になって、セシルスが・・・」ひんやりとした空気が一気に凍る程に冷えていた。月明かりに照らされた、水蒸気が反射して雪のように幻想的な景色であった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第27章 衝突』砂塵が舞い上がる中、僅かに浮かび上がる影と影。二つの影が重なり合う時、激しい火花が舞いガラテア達の頬に当る。ロウ・バイオレットと甘党仮面、二人の持つ気の大きさか二人の下に空気が集まり他の者達は喉が渇いてくる感覚さえ覚える。「おらぁおらぁ、おらっぁ!どうした、お前の力はそんなものか?」鋭い剣の連打が甘党仮面を容赦なく襲う。「くっ、はっ!」カン、カン!甘党仮面の重い攻撃はことごとくロウ・バイオレットの盾に弾き返される。そして、次の動作に入る時にはロウ・バイオレットの斬撃が甘党仮面を襲う。ッザ、ザン!「うはぁ!」「お前の胸に刻んだ十字の傷、我が血の紋章ブラッディークロス。それを刻まれて生きていた奴はいない」甘党仮面は自らの鎧に刻まれた太刀筋とそこから流れ出る赤い液体を指でなぞる。その指を口元に寄せ、匂いを嗅ぎ舌で味を確かめる。「う~ん、いい甘さだ。血糖値が充分に回ってるね、しかし毒とは案外せこい剣聖だね、闇さん」「ふん、黙れ、俺の生きてきた世界はお前のような演武の世界ではない!」「常に生き残った者が勝者だ。そして、敗北はすなわち死。手段どうこう言う輩は所詮甘い世界の人間だ」「う~ん、そして生き残った結果、何が残ったのかい?」「黙れ!」ロウの剣が素早く空気を切り裂く、同時に甘党仮面の体が分裂し垂直方向、水平方向そして真っ直ぐに巨大な斧を解き放つ。ガン!ロウの体が仰け反り、そのまま砂の中に埋まる。「ロウ、ただ生きるだけなら何故民草に紛れない?土を耕し草木を植え生きていけばいい」「お前は俺に勝てないよ、守るべき者がない奴、己の為だけの剣では心は斬れない」憤慨し、鬼の形相をしたロウが立ち上がる。「力が全て、力無き物は淘汰される。俺はその為に全てを闇の中に捨ててきた」「貴様に何がわかる!友や肉親をも敵に回さなければ生きて行けない闇の世界の住人を」「明るい世界で剣聖ともてはやされてきたお前に、わかるはずがない」「ロウ、もはや言葉は要らないですね、次でその答えを出しましょう」「あ!ちなみに私は甘党仮面です。はい」睨み合う二人の体からオーラが膨張し、大気の震えが止まらない。二人を囲む屈強の戦士達ですら、二人の闘気から身を守るのがやっとであった。輝く頭上の太陽を、ゆっくりと暗い雲が隠す。まるで、二人の悲しき闘いに涙するようにスコールが降り始めた。<あとがき>あ~あ、やちゃったw来たよアルテのペガサス流星拳><;肉体が音速の壁を超えちゃったよ、このまま行くと名前だけカッコよくて意味不明な技の応酬、車田ワールドへ突入だよ><;戦争編は次回に決着持ち越しかな?頑張れ!甘党仮面、強いぞ!甘党仮面wロウの暗い過去の説明は割愛です><;ではいつも懲りずに読んでくれている方どうもありがとうm(_ _)m
2006年11月18日
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「許さない!絶対に許さないんだから」「メタビ!あなたは私に力をくれると約束したんでしょ、勝手に死ぬなんて許さない」半分激怒し、半分泣き声のアルテミスの声が洞窟内に響き渡る。激情したアルテミスの言葉にメタルビートルは気おされていた。「もう、私のために誰かを失うことはさせない。さぁ槍に戻りなさい」メタルビートルに対し、利き腕を突き出し手のひらを広げる。しばし、二人の間に沈黙が流れるが、やがてメタルビートルの表情に笑みが浮かび。体中に赤い光を浴びながらメタルビートルの体が槍の姿へと変化し、アルテミスの手に収まった。_アルテ、セシルスの高速移動掴めるか?_判らないけど、気を追えば行ける。「さぁ、勉強はこれからが本番よ。覚悟はいいねアルテミス」セシルスが言い放つと、高速移動を繰り返し、島中を縦横無尽に移動する。その後をすぐさま追うアルテミス。_速く、もっと速く、私にスピードを頂戴。レッドストーンよ!意識を集中し、セシルスを追うアルテミスの足がオレンジの光を放つ。走るアルテミスの鎧が月明かりに反射し、光の線となり暗闇に後を残す。次第にアルテミスの体が廻りの景色と同化していく、ついには光の線のみとなり島中を2本の線が駆け巡る。ザン!光と光が交差した後、そこにはセシルスの体が置き去りにされていた。鎧と鎧の継ぎ目から血を流し、立ち止まるセシルス。「まいったよ。スピードは上出来だ。しかし、油断はもうしない」再度、光に姿を変えたセシルスがアルテミスを追う。光がまた島中を駆け巡る。カン!キン!光と光が交差する度に火花と金属音が洞窟に弾ける。しかし、その状態も長くは続かなかった。何度目かの光の交差の後、アルテミスは背後に金属の感触を感じた。ガン!激しく壁に打ち付けられ。視界が真っ赤に染まる。「まだまだだね。所詮は付け焼刃、スピードに自らがついて行っていない」「制御できない単調な攻撃では、私は捕らえられない」_アルテ聞こえるか、ワールの高速移動は長距離と短距離を交互に混ぜるのだ_え?_セシルスの高速移動を見ろ。足に一気に気を送り移動するスキルは次の気の回復が間に合わない。_この世界から充電するエナジーがお前達の座標に追いつかないのだよ。_だから、一旦短いスパンの移動で気を充電しないとガス欠状態で身動きが出来ない_だから簡単に後ろを取られるのだよ_うん?なんか確かに高速移動すると、足がつったみたいになるの。_なんとかやってみる。壁に手をかけ、立ち上がり、高速移動で一旦距離をとる。_それからアルテ、セシルスには手加減をするな。_え?_あいつは私と同じ亡霊なんだよ。お前の手で楽にしてやってくれ。_うん、今なら私やれると思う。あの時はわからなくて、レッドストーンに意識を奪われたけど_今は凄く実感してる。_メタビって本当に凄いよ。今なら色んな技の出し方が体に刻まれてるのがわかるの。「さぁ、これからが本番よ。セシルス私の渾身の槍を受けてみなさい!」「口数の多い女は男に嫌われるよ、覚えておきな」再び、高速移動を繰り返す二人のランサーが地表に光の線を映し出す。月明かりと二人の光が湖面に映り、幻想的な情景であった。3人の孤独な女達の戦いであった。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第26章 二つの光』大地に漆黒の染みが浮き出てくる。その染みは次第に広がり、大地を埋め尽くしていく。そこに、僅かな光が差し込んでいく。拡がる漆黒の大地を切り裂くように・・・光が切り裂いた場所が、赤色に染まる。それはとても鮮やかと呼べない濁った赤色であった。光は時には大きな輝きを放ち、時には漆黒に埋まりそうになりながらも、漆黒の中心点へと進んでいく。「ぐうぁー、くぅっ、絶対に生き残っている!絶対に・・・」大小さまざまな魔獣に囲まれ、体中の肉が削がれ、斧も既に切り裂く能力が欠落した状態でそれでも、ガラテアの進む足は衰えない。背後のセシルスですら恐ろしいと感じる眼光が、獣達の中心へと注がれる。いや、中心しか見えていないといった方がいい状態であった。背後や横から来る獣達の爪や牙などは目もくれず、ひたすら前へと突き進む。背後のセシルスは巧みなステップと残像を残し、魔獣達から何とか逃れガラテアの援護をする。「いくら回避の優れたランサーだって、これじゃ長くは持たないぞガラ。ガラ!聞いてるのか!」「すまんセシルス、無理ならなんとか一人で逃げろ。俺は必ずあの子達を救う」「それだけは譲れない。これ以上我々のために幼い命の灯火を消すわけには行かんのだ」そして、光は漆黒の大地に飲み込まれた・・・2つの強き光はあがらいながらも、巨大な漆黒の渦へと飲み込まれた・・・漆黒の渦はまるでそれ自体が巨大な生き物のように、2つの光を飲み干したまま鼓動していた。新たな二人の戦士が、魔獣の群れの前に降り立った。「間に合わなかったか・・・」「いやまだだ、僅かに気を感じる。ガラテアは生きている!」「悪いが、後方を頼む。俺はガラテアの作った道を駆け抜ける」前方の男が自らの周りに盾を浮かべ、魔獣達の群れへと走り出す。後方の男は巨大な盾から竜巻を作り出し、前方の男に襲い掛かる魔獣の動きを封じ込める。竜巻に巻き込まれた魔獣は、体の自由を奪われ彫像のように動きを止めた。ただ悲痛な叫びを残して。「ガラテア、大丈夫か?」片膝を付き、両手で脇腹に刺さった剣を掴むガラテアにセシルスが寄り添う。ガラテアは大剣を腹に飲み込みながらも、自らを刺した相手に向かい睨み付ける。そこには、真っ黒な鎧に身を包んだ剣士と、ランサー、そしてJブランクの姿があった。「フフ、砂漠の猛虎もこれだけの魔獣相手ではさすがに体が持たんか」「き、貴様、何者だ」鼻で笑い、ガラテアを見下す男の変わりにJブランクが前に出る。「貴様も少しは聞いた事があるだろう?黒の剣聖の名を、ふはははぁ」「まさか、何故お前が・・・ロウ・・バイオ・・レット・・」流れた血の量からか、ガラテアの視界が薄らいでいく。「まだ、寝るなよ、俺はまだ楽しみ足りない」ガラテアに刺さった剣をひねるように回しながらロウ・バイオレットが引き抜く。「ぐっはぁっ」大剣が引き抜かれたその腹から、肉塊と共に大量の血液がほとばしる。「ガラテア!きゃっぁ!」ガラテアを気遣うセシルスの頭が後方に引っ張られる。ロウの隣にいたランサーによって髪を掴まれ、後方に押し倒されたからだ。「お前は私が相手をしてやろう。と言っても魔力も切れ、体力も残っていないお前じゃぁ遊び相手にもならん」「私はジェイクリーナス、せめて殺された相手の名前を冥土に持って行きな」倒され、仰向けになったセシルスの鎧にジェイクリーナスが手をかける。抵抗するセシルスの利き腕の手首と地面が二股に分かれた槍によって結ばれる。「まずは邪魔な物を剥ぎ取らないとね。恥辱の果てに死んでもらおう」そのまま、ジェイクの手が思いっきりセシルスの体から鎧を剥ぎ取る。「きゃーっ」絶望的状況の中、セシルスの中で眠っていた女の部分が顔を出し、とっさに胸部を片腕で隠し、身をよじらせる。鎧の下から、腕に隠れて白い肌が露出する。その交差した腕の下からは揺れるように真っ白な楕円の下の部分が顔を覗かせる。身をよじらせ半身になった体にジェイクが跨り、今度は下半身の鎧に手をかける。必至に足をよじらせ、足首と膝をそれぞれ重ねるように抵抗するが、無常にも白く長く伸びた足の付け根があらわになる。「ちっくしょう」「はははっ、そうだ、その心からの叫び。ぞくぞくするよセシルスちゃん」横になり、抵抗する力の無いセシルスの頬に悔し涙が零れ落ちる。「さぁ、後はどちらがお好みかい」ジェイクリーナスの手が妖しくセシルスの背中を上から這いまわり、最後は下腹部の中心にたどり着く。「ああ~、うっ」ジェイクの手の動きに合わせ、おぞましき感覚が背中からゆっくり首筋に這い回る。その感覚がやがて首から細いアバラをつたい臀部から前方に移った時、体中に電気が走る感覚がセシルスを襲う。体中の毛穴が広がる感覚をこらえ、悔しさと共に唇を力一杯にかみ締めた時、視界に写る光る物体を感じた。シュッ!キン!「ちぃっ、邪魔すんじゃないよ!今いいところなんだから」ジェイクは後方から飛んできた剣を槍で打ち落とし、振り替える。「ついに来たな、剣聖!」ロウバイオレットが叫ぶ。「何を勘違いしてるのかな?私は剣聖なんかじゃありませんよ」「ケーキ大好き、甘党仮面です。皆さんよろしく」「見よ、ショルーダーパットではなく完全に身を包んだフルプレ。背中に担いだ巨大斧」「頭から被った大型兜。何処から見てもsakezukiではありません。完璧な変装です」「ちょーっ。自分で変装っていっちゃってるじゃないですか」ガン!「いっ痛たーぁ、やめて下さい。そんな大きな斧で叩くとホントに死んじゃいますよ」「ウマタケマン君、私は甘党仮面だ。sakezukiなんて紳士は知りませんよ」「なんで私まで変な名前になってるんですかぁ、しかも物凄い手抜きな名前ですよ」ガン!「あたっ!」「つべこべ言わないで、さぁセシルスさんを助けるのですウマタケマン」セシルスはこの好転した状況に、ガラテアの顔を伺う。ガラテアはロウの言葉で既に失いかけていた、意識と視力を振り絞り振り返る。「おお~、甘党仮面さんと言ったか。どこの誰だか知らぬが助太刀恐れ入る」「ってガラ、どう見てもsakezukiじゃないのか?」「ん?セシどうして甘党さんが剣聖なんだ?格好が全然ちがうぞ」「しまったぁ~、ガラはいい意味でも悪い意味でも純粋だった。う~ん、説明するのが面倒だ」ロウ・バイオレットがガラテアを置き去りにして、甘党仮面に進み寄る。「ようやく、ようやく俺の念願が叶う。闇に生きてきた俺に本当にどちらが強いか教えてくれよ」「さぁ闇の剣聖の剣を受けてもらおう」ロウ・バイオレットの踏み込みと同時に、砂が舞い上がり、全員の視界を遮る。その中から、金属音と激しい光がもれていた。最強の剣と最狂の剣の再戦が今始まった。<あとがき>ちょっとサボっていた感はあるものの、ちゃんと構想はねっていましたbアルテ編はようやくアルテの戦いに入ってきました。長いねぇ~この戦いもw飽きずに見ている方、本当にありがとう^^え~戦争編、一言まず始めに。「セシさんゴメンなさい」ちょっと剥いじゃいましたwたまには、色が入らないと小説に艶夜じゃなく艶がでないですから><;まぁソフトな感じですからあんまりエロじゃないと思うけどねw後、sakeさんとロウさん、いや甘党仮面とロウさんの対決がついに始まっちゃいました。どっちか勝たないといけないので、どっちか負けます(当たり前かw)まぁ次回に期待してください。
2006年11月14日
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風立ちぬ 今は秋今日から私は 心の旅人随分寒くなりましたね。無法遅滞となっている庭のミントを抜いてしまいました。ごめんよミント君><;昔読んだマスターキートンのお婆さんがミント畑を作ってたような・・・忘れたよwmikusukeです^^今回もまだ小説アップ出来ません(´・ω・`)ショボーンそしてGVの報告でもありません。たまには思った事でも書こうかなぁなんてw皆さんRPGをする時、一番最初に悩むのは何ですか?私はやはり、キャラ名で凄く悩みます。普通に1時間以上は掛かります。そして、基本キャラの作り直しはしないタイプです。すご~~~く後悔する時もありますし、馴染むまでに違和感があります。当然、定番のキャラ名も御座います(mikusukeではありません)女系主人公でやる場合は必ず決めていた名前もありました。ダビスタ系でその名前を付ける場合は、牝馬三冠取れると核心した場合のみつけます(≧∇≦)b そんな中、RSやっていると色んなキャラ名がいて楽しいですね。これは、オフゲーではありえない楽しみかたです。三国史系の人とかガンダム系、RS関係、スポーツ選手系、リアル氏名もじった系・・・etcキャラ名で結構自分を主張してたりしますし、親近感が沸いたり沸かなかったり・・・ちなみにやっぱり多いと思うのは3国系かなぁクレヨンのオトボケキャラのあの人も蜀系だしプロジェクトHにも2人いますね^^一人は蜀、一人は呉ですね^^昔は結構マニアックな部類だったけど、無双がスマッシュヒットしたので随分メジャーな名前になっています(ちなみに私は呉系が好きですね)漫画系もよく見かける代表です。おっさんずのガラ衛門さんも今度アニメ化する例の漫画からですね^^わかりやすいのか、わかりにくのかどうにもわからないのは、Hのメンバーですwsakezuki うん人柄がわかりやす・・・のか?サモちゃん うんなんかサモア系っぽい?タケウマ うん・・・・なんなんだぁwBUG う~んアーチストからなのかな?よくわかりませんが私の中では既にBUGと言えば RSのBUGさんです><;ザードフィル なんかニュアンスはカッコイイのですが、元ネタがなにかさっぱりです。 今度聞いてみよう、うん!(ちょっとオーケストラっぽいと思うw)ちなみに、私は季節を感じさせる自然の漢字を使っている雪音さん は名前が素敵と思います。何故、急にこんな事を書くかといいますと ・ ・ ・例の女性キャラ名、使われてました(´・ω・`)ショボーン何気に塔でソロしてたらキメラと対峙する○○○さん思わず、アスヒと羽をプレゼントしちゃいましたそしたら、「よかったら、キメラ一緒しませんか?」ってヾ(>▽<)ゞ 恥ずかしい♪だってね、だってね・・・昔の大切な方の愛称なんですwしかもその名前で呼んでいたのは私とその人の母親ぐらいw当然、別人とはわかっているのですが、恐るべしオンラインゲームつい画面の前で照れてしまって/(;-_-) イテテ・・・お馬鹿さんですねぇwホントは眠いのに深夜までお付き合いしましたよ><;最後はアリアンで分かれたのですが・・・後で耳が来て、「友録お願いします」って・・・当然、断りませんよw礼儀正しいし、中性的な言動(どっちかと言うと女性的)しかも幼女と来たもんだ!いあいあ、困ったもんですね。なんでも言う事聞いちゃいそうですよほんとwリアのその子になんて誕生日に雪の少ないこの地方で雪だるまをプレゼントするためノーマルタイヤで雪山を走ったり(中には指輪がキラリ☆、溶けたら出てくる寸法さ)誕生日に間に合うように、車の免許も前日に取りに行ったよなぁうん、一生その日が書き込まれるのよね、免許書にその子の誕生日の前日がw年の数だけ薔薇の花束ってのもしましたよ~♪落ち込んでる日には私の大好きな向日葵の花束を季節はずれに探してねぇ~、向日葵のように早く元気になってくださいってwカスミ草だけの花束なんてのも実は好きだったりします^^(チャイルドブレス:赤ちゃんのため息)弁当も作ってあげた覚えもあったり・・・サンドイッチ、出し巻き卵焼き、サラダ、タコさんウインナー、スコッチエッグ(メンチカツにゆで卵入っているやつ)そんな事を思い出しながら、ペアハンをしておりました(〃∇〃) てれっ☆恐るべし、オンラインゲームどうなの皆さんはそんな経験ありますかwなんだか、血迷って一気に書いたのですが、良く見たら恥ずかしいリアの暴露話ではないか><;まぁいいかそんな年でもないしねぇ但し、今の相棒には見せれなくなったなぁこのブログ 〃*`Д´)どうしたらいいんだよぉ帰りたい、帰れないあなたの胸に風立ちぬ 今は秋今日から私は 心の旅人
2006年11月09日
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少しずつ寒さを感じる今日この頃。懐まで極寒のmikusukeですΣ( ̄ロ ̄lll) ガビーン11月に入りついにプロジェクトHが再開しました。そして、ついにプロジェクトHvsクレヨンが実現しました。その内容の前にクレヨンの最近の感じはと言うとTOP300ぐらいで平均200ぐらいかな?(詳細は知りませんw)でも、結構まじめに反省会やらして、最近はまとまりが出てきました。結果も付いてきて、TOPの差で10~30位でも勝っちゃったりしてます^^正直、入った当初はこんなに強くなるとは思いませんでした(〃∇〃) てれっ☆なんせねぇ・・・入った当初はTOP200で平均80位だったかな?(その当時はこれくらいのGも結構あったのです)1PT~2PTで勝率は多分2割ぐらいでしょう。色んな人の出入りもあったのですが、多くの人がこの弱い時代を共に味わった方達です。正直、前回のプロジェクトHの時に初めて体験したクレヨン以外のGVでクレヨンとはレベルの違う戦いだなぁなんて思いました。あれから半年、今ではクレヨンのGV回数は260を超えています。本当に多いと思います。週5回でも1年掛かりますよね 本当に歴代のGM様に感謝です。その苦労は計り知れますねそして、プロジェクトHとの対戦を行えるまでに成長しました。プロジェクトHとのTOPの差は30・・・果たして、結果は ・ ・ ・やはりプロジェクトHの勝利でした(* ̄∇ ̄*)エヘヘでもね、凄く接戦だったんです。撃墜数はクレヨンが2、Hは1です。お互いの補助がフルに機能して、互いに点を取らせない展開だったんです。BISもうまくコルを使っていたし、ホントに少し油断したほうがいつでも勝てる展開でした。なんて言ったらいいかなぁ・・・う~ん・・・私の好きなバスケで例えると、フルタイムでお互いにオールコートプレスしてる感じ?足を止めた方が負けw(伝わるかな?)とても緊張感があって良かったです。でも、多分私がアルテミスでクレヨン側にいたらモット点差がって><;とほほん追伸:メタルビートル様 やはり彼方はおいしい役所が回って来ますねぇ(一人で二人分w) ある意味、記憶に残るプレイヤーですね
2006年11月06日
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漆黒の世界に響き渡る悲鳴。それは、アルテミスの叫びであった。セシルスの放った矢は明らかにメタルビートルの頭蓋骨を貫通していた。しかし、セシルスは攻撃の手を緩めない。暗闇の中、四方八方に弓を連打する。「ちっ、うざったいねぇ。ダミーなんて時間稼ぎにしかならないよ!」_ダミー!そうか、あれはメタビの気が作った残像なのか。_この暗闇では判断できない。暗闇からは返答とも取れる矢の連打がセシルスを襲う。「ふん!ダミーなんてランサーなら常識だよ!」矢が次々と襲うセシルスの体から、新たなる体が生まれるかのように分裂した。セシルスの攻撃とメタルビートルの攻撃が激しさを増す度に、分身の数が増えていく。しだいに小さな島全体が二人のランサーの姿で覆い尽くされた。アルテミスにとっては何がなんだか判らず、ただ困惑の表情を浮かべるだけであった。しかし、その拮抗した展開もやがて終わりを告げる。メタルビートルの矢が次第にセシルスを捉え始めた。「メタビ、もうやめよう。充分なんだよ」「セシルス、どうしたお前が諦めるなんて珍しい」「誤魔化してもだめよ、メタビ」「最初は気付かなかった、でもお前の攻撃を受けて理解したよ」「何の事だ・・・」「メタビ、あなたその状態でスキルを全開にするたび、命を削っているのね」「考えてみればそうよね、あなたは魔力そのもの。魔力を放出するとはあなた自身を放出するのと同じ」「・・・」メタルビートルが弓を構えた状態で立ち止まる。「そして、あなたの命は残り少ないのね」「うるさいぞ!」メタルビートルの手から矢が放たれる。シュー!グサッ!「何故よけないセシルス」セシルスのその覆われた眼から涙が零れ落ちていた。「あなたの・・・そのあなたの尽き果てそうな命では、もう私を傷つける事は出来ないの・・・」「馬鹿にするなセシルス!」「もういいよ、もういいよメタビ・・・」メタルビートルは、まるで諦めたかのような表情を浮かべ語りだした。「セシ、確かに私は失敗作だよ。私はレッドストーンと人の融合を確認するための試金石だったのさ」「実験は失敗だったよ。霊的な集合体であるレッドストーンの欠片に人としての器が持ちこたえられなかった」「元々不治の病に侵されていた私は進んで実験体となった。しかし適正者ではなかった」「やつのおかげで、この魔槍に意識と霊力を全て融合させる事ができ、一命は取り留めた」「でも所詮は金属体のこの体では、お前達のようにこの世界から魔力をもらう事は出来ない」「唯一力を回復させる道は、魔槍の使い手の魔力だけだ」「だから、私を扱う者は無尽蔵の魔力がいる。私に供給する分と自分の分だ」「当然、扱える者は数少なく、直ぐにゲルニカによって封印されたよ」「所詮、拾った命だアルテミスのために最後に一花咲かすよ」「ダメー!メタビーが死ぬなんて許さない。絶対に許さないんだから」時間が経ち、ダミーが消えたその場所にアルテミスは泣きながら立っていた。既に顔はくしゃくしゃとなり、眼を吊り上げ泣きながら怒っていた。アルテミスの声にならない泣き声が暗い洞窟の中にこだまする。それは、悲しい風の音とどこか似ていた。【漆黒の世界と赤石物語】(Blackworld and Redstonestory) ~古都の南風 傭兵の詩~『第25章 黒い影』砂漠の風はやみ、暑さだけが際立つ中戦士達が同じ方向を見定める。「J・・・何故こんな所に?」最初に声を出したのはセシルスであった。「理由は分からん、しかし味方ではないようだな。後ろめたいから逃げた」ガラテアが答える。「今は誰が味方か、誰が敵かはどうでもいいのでは?ガラちん」「剣聖、どうゆう意味だ?」「おや?この気を感じないのですか?私なんてビンビンきちゃってますよ」_!!ガラテアとセシルスは急に我に帰ったように、反応する。「まさか!何故これほどの数の魔獣が!」「ガラさん、多分あなた達を狙う敵がコールしています。我々はそいつらの動向を伺っていました」タケウマが答える。「くっ、行くぞセシルス!」「待って、ガラ。二人は加勢してくれるのか?」「セシさん、私は紳士です。当然女性を助けたいのですが、アウグの剣聖が加担したとなれば国民を巻き込む」「いいさセシ、お互いに事情はある。ただ俺は俺の戦いをするだけだ」「だって、ガラ流石にこの気の量は尋常じゃない。助けるどころかこっちの命が危ない」「ならお前はココにいろ。俺のわがままに付き合う必要はないさ」それだけ言うと軽く手を挙げ、難民キャンプの方角へと走り去っていった。「ちっ、ほんと男は馬鹿だよ。まぁそれに付き合う私も馬鹿かな?」「じゃ、ちょっと死んでくるわ」同じように手を挙げ、軽く微笑みを浮かべセシルスはガラテアの後を追っていった。「酒さん、本当に・・・」「タケ!それ以上何も言うな。剣聖sakezukiは一人の命ではないのだ。簡単に捨てられる命ではないのだ」「酒さん・・・ありがとうやっと私の思いが伝わりましたね」砂漠を疾走するガラテアの表情が冴えない。_なんて数の気だ。_しかも、戦いの気がもう薄れている。_フクチ大佐や花火達はどうした?まさかもう・・・_いや奴らならきっと守ってくれる。きっと・・・戦場は砂丘がうねる小高い部分の頂に達すると目視出来た。しかし、其処に広がるのは大小さまざまな魔獣達の群れであった。「はぁ、はぁ、これは、なんて数だ。本当にこの中に人がいるのか?」ようやく追いついたセシルスがガラに問いかける。「絶対にいる。あいつらだって相当な使い手だ。必ず守ってくれているはずだ」「行くぞ!」ガラテアが大きく息をつき、その勢いで魔獣の海の中に身を投げ出すように突っ込んでいく。その後ろから、セシルスが弓を放ちガラテアの前の魔獣達をなぎ倒していく。砂の大地を真っ赤な血が埋めていく。斧を振りかざし、鬼人のようにガラテアが魔獣達を切り裂き、吹き飛ばし、押しつぶす。其処には、もう一種類の魔獣がいるかのようであった。<あとがき>はい、アルテ編は少しメタビの秘密が明らかになったかな?戦争編は、急展開のつもりだけど・・・ガラさんがベルセルク状態となっていますwちょっと少なめで今回は終わりましたけど次回にまぁ頑張りますw
2006年11月02日
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う、あああああ、うぉっほん!私はギルド鬼浜爆走クレヨン隊のフクチ大佐であーーーーーる!見るがいい、みんな私に敬意を払っておる。今日は、10月25日のギル戦の報告でもしてやろう。ふむ、今回はこちらが終始優勢であったようだな。(注:mikuはでていないので分かりません)しかし、ギル戦では展開次第でまったく逆の結果もありえる。この結果に満足せず、皆の者精進するように。また、たまにはギル戦の結果を報告してやろう。では、さらばじゃ。
2006年10月29日
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