「 硫黄島からの手紙 / Letters From Iwo Jima (2006) 」
硫黄島の戦闘をアメリカ側と日本側の双方の視点から描いた2部作の一つ。
アメリカ側の視点から描いた作品にはライアン・フィリップ主演の「 父親たちの星条旗 / Flags Of Our Fathers(2006) 」
5日で終わるとされる戦いを、36日間戦い抜いた男達の物語。
クリント・イーストウッドの描く日本の視点のお手並み拝見・・・・いたしました。
・・・・っとわざわざお断りするのは、先に公開された 「父親たちの星条旗」のレビュー の際にとんでもない(笑)暴言を吐いた私が悪うございました・・・っと思える作品になっていたからです。
大きな感動とか涙するとかそんなものより、ただただ、その場で観ていたかのような繊細で鋭い洞察力で描かれている本作が素晴しかったからです・・・・
そして、ただ暗いだけの映像ではなく、どこか洗練された色彩にも驚かされました。センスの良い色遣いにも、「ミリオンダラー・ベイビー」のようなクリント・イーストウッド監督の選んだ音楽にも静かに心に響くものを感じました。
監督は、「ミスティック・リバー(2003) 」、「 ミリオンダラー・ベイビー (2004) 」のクリント・イーストウッド。
製作は、「シンドラーのリスト(1993)」、「プライベート・ライアン(1998)」、「 未知との遭遇 (1977) 」、「 E.T. (1982) 」、「 宇宙戦争(2005) 」、「 ミュンヘン (2005) 」などあげだしたらきりがないほどの代表作を生み出してきた巨匠スティーヴン・スピルバーグ。
製作総指揮及び原案は、「 ミリオンダラー・ベイビー (2004) 」、「 クラッシュ(2005) 」とその深く鋭い視点と確かな構成力には、世界が認めた2005年のアカデミー賞脚本賞受賞で記憶に新しいところです。
ポール・ハギスと共に原案を手がけ、脚本を書いたのは、アイリス・ヤマシタ。日系アメリカ人で、ビッグ・ベア・レイク・スクリーンライティング・コンペティションで、脚本作「Traveler in Tokyo」が第1位に輝き、ポール・ハギスの目にとまった事がきっかけで手がける事になりました。
アイリス・ヤマシタさんが翻訳した台詞を、栗林中将役で主演の渡辺謙が数カ所修正して、繊細な日本語のニュアンスをより正しく表現するためにこだわって作られていると言う事です。
そして、アイリスさんは 『 「日本の人々にとって政治的にも文化的にも微妙な含意を持つ、大変配慮を要する事柄であるということに留意した」と述べている( 産経新聞社より抜粋 ) 』 と述べています。
また、CBSテレビは、イーストウッド監督が日本側の視点からの制作を行った意図について、「米国の観客に、『われわれはいい人間だ』といった単純な考え方から卒業してほしい、と思ったからだ」と指摘していると言う事です。
主演は、「 ラスト サムライ (2003) 」でトム・クルーズと共演し、「SAYURI (2005)」ではチャン・ツィイと共演し、「バットマン ビギンズ (2005) 」でラーズ・アル・グール役で怪演するなど、ハリウッドでの活躍もめざましく、邦画「明日の記憶 (2005) 」では、主演とエグゼクティブプロデューサー も努めています。
この映画で妻への手紙という形でナレーション的な役割をはたしつつ、謙さん演じる栗林中将と共に最後まで生きて戦った西郷 役に二宮和也 が抜擢されています。来年は、嵐のメンバー総出演の「黄色い涙(2007)」が公開される予定です。
また、ロサンゼルス・オリンピック馬術競技の金メダリストの「 バロン西 」こと西竹一中佐役には、伊原剛志。
栗林中将のやり方を疎ましく思い命令に従わない伊藤中尉 役には、「男達の大和」など、戦争映画では常連の中村獅童。
Story : 戦況が悪化の一途をたどる1944年6月。アメリカ留学の経験を持ち、米軍との戦いの厳しさを誰よりも覚悟していた陸軍中将・栗林(渡辺謙)が硫黄島に降り立った。着任早々、栗林は本土防衛の最期の砦である硫黄島を死守すべく、島中にトンネルを張り巡らせ、地下要塞を築き上げる。そんな栗林の登場に、硫黄島での日々に絶望していた西郷ら兵士たちは希望を見出す。だが、一方で古参の将校たちの間で反発が高まり…。
ー goo 映画 より ー
舞台となる硫黄島は(東京都小笠原村硫黄島・・)グアムと東京のほぼ真ん中、日本の最南端に近い、周囲22kmほどの小さな島。61年前に起きた太平洋戦争激戦の地「硫黄島」の戦闘を描いたアメリカと日本の双方からの視点で描かれた二つの物語の一つです。
まだ、戦闘機が中継地点を置かないと日本本土まで飛行できなかった当時に、中継地となる硫黄島を死守する事は大変本土にとって大きな役割を果たす事になるのです。
アメリカが圧倒的な兵力を持って5日で占拠できる予定だったこの地を36日間も守った事により、本土での子供達の疎開などをする事などに大きく貢献した、栗林中将率いる日本兵達の壮絶な戦いを、まるでその場で観ていたかのような完全とも言えるような描写力で 淡々と丁寧に 描かれています。まるで日本人が作った映画のようでした。
しかも、アメリカで教育を受けていて、アメリの良さも日本の心も両面を持ち合わせた栗林中将像を「 象徴 」として描いており、また、アメリカ生活経験を持ち、ロサンゼルス・オリンピックで金メダルを取ったバロン西を通して、アメリカも日本にも同じ家族の愛が溢れている事を伝えようとしています。
また、自分の気持ちに正直に物事を観、口にしてしまう若き兵士、西郷 を通して、「 君たちだって、こう言いたかったのだろぉ?、正直に本音を言えよ 」 とでも言っているかのような、クリント・イーストウッド監督を始め作り手側の意図が見えるようでした。
まさに、そうだよな~。鋭いな~と関心してしまいます。
戦争映画やテロを描いた映画などで、どんな憎い相手にも自分たちと同じ家族を愛し、国家を愛する姿が描かれていて、戦争や宗教観の対立や諍いというものさえなければ、家族や国家を愛する本質は同じなのだと言うことを伝えようとされていますが、これほど相手の立場に立って作られている作品はないとも思えます。
上でも抜粋した「米国の観客に、『われわれはいい人間だ』といった単純な考え方から卒業してほしい、と思ったからだ」と言うクリント・イーストウッド監督のコメントにもあるように、日本人が「父親たちの星条旗」を観て、アメリカ人も本作「Letters From Iwo Jima」を観る事によって、お互いの考え方や認識を改めさせ問題提起する機会を与えようとする素晴しい試みになっています。
全米映画評論委員会が選ぶナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では優秀作品賞に輝きました。アカデミー賞作品賞にもほぼノミネート確実となりましたね。
とは言え、日本では両方の作品が大きな反響を呼ぶことは必至だと思いますが、アメリカでは、「父親たちの星条旗」さえもしょぼめな反応だったようですし、「硫黄島からの手紙」はなおさらあまり公開劇場数も多くないようですし、どれぐらいのアメリカ人が観るのかなとは思います。
まだまだ、語りたい事があるのですが、次回また、じっくり書きたいと思っています。
「硫黄島からの手紙 / Letters From Iwo Jima (2006)」は明日12月9日(土)公開です。
是非ごらんください☆
~おしまい~
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