「 ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド/Brothers of the head (2006) 」
2:1+1=3
「A・I」の原作者ブライアン・オールディスが、結合体双生児ロック・バンド、トムとビリーの壮絶な生涯を題材で1977年に発表した小説「Brothers of the head」 の映画化です。
監督は、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」で賞賛を浴びたキース・フルトン&ルイス・ペペ。
主演は、結合体双生児トムとバリーを演じた、双子の俳優ルーク ・トレッダウェイ &ハリー ・トレッダウェイ 。
Story :人里離れた岬でひっそりと暮らしていた、結合体双生児のトムとバリー。
2人は18歳の時、興行主のザックに売られてしまう。
しかし音楽の訓練を受けてその音楽的才能を開花させたトムとバリーは、70年代後半に絶頂を極めたイギリスのパンク・ムーブメントの空気の中、1975年結合体双生児ロックバンド、ザ・バンバンとして鮮烈なデビューを飾った。
バンドを率いる結合体双生児トムとバリーによる過激なステージ・パフォーマンスと不気味なほどの美しさが、一瞬にして人々の嫌悪と恐怖を熱狂に変え、ザ・バンバンはデビューと同時に一気にスターダムにのし上がる。しかし、ある女性との出会いでトムとバリーの運命の歯車は狂い出し…。
離れたくても離れられない兄弟の魂の叫びが胸に突き刺さる衝撃作。ー 作品情報より ー
ドキュメンタリータッチで撮られたまったく新しい奇想天外な構成の映画で、一言で言うと大変衝撃的な映画でした。
腹部で臍帯の部分の延長のようなような形で繋がったまま生まれて来た双子のトムとバリー。肝臓と消化器系統の一部を共有する二人の結合は早い段階から分離手術が必要でしたが、それは命をかけなければならない危険な手術でもあったのです。父親は手術を拒否し、姉と共に人里離れた岬でひとめを避けるように生きて来ました。その当時の医学から判断すると、父親の判断が正しかったかどうかなんって誰にも言えないと思います。
昔、ベトバム戦争でアメリカ軍によって撒かれた枯れ葉剤の影響で似たような結合体の双子が生まれたケースが多々あり、今でもその影響は無くなってはいないそうです。ちょうど日本で手術して分離された双子でベトちゃん、ドクちゃんのニュースが先日TVで流れていました。分離して元気に大人になり結婚することになった幸せそうな表情のドクさんのニュースでした。その反面、脳の麻痺のため寝たきりとなったままのベトさんの映像も公開されていました。
どちらもこのままでは生きて寝ているだけの一生しか選択肢が無い場合は、分離することによってどちらかは助かってもどちらかは犠牲になってしまわざるを得ない状況でも、分離手術の危険を冒す意義もあるとも言えるかもしれません。
しかし、トムとバリーの場合は、肝臓を共有し消化器も共有している上に精神面でも複雑に絡み合っていたため、当時の医学では、分離することによる危険と自立した生活をするための希望がどの程度あったのか・・・・
双子でありながら、まじめでナイーブな優しい性格のトムと、真逆とも言える、繊細であるがゆえに傷つきやすく衝動的な性格のバリー。当然のことながら、体は繋がっていても精神面では常に葛藤を起こし対立し喧嘩が絶えない二人が、子供から少年になり、結合されたままの状態で大人の体になって行くトムとバリーにやがて当然訪れる淡い恋心と性の衝動と苦悩を考えると過酷の一言です。
そんな彼らに開花したロックの才能には、 魂を表明する危機迫る叫び が込められていました。
例え五体満足で生まれて来ても、なにかに抑圧されて圧縮されたエネルギーが爆発する瞬間と言うものがだれしもあるものです。それが音楽で言うとロックだったりすると私は感じます。
そんな、なにひとつとしてままならない抑圧のかたまりを生まれたときから背負って生きている彼らから発せられる魂の音や叫びにも似た歌声は、まさ正真正銘のロックでした。
ロックバンド 「ザ・バンバン」は、ザックによって利用されたいわば見せ物的な興行であったかもしれませんが、それでも、生きて行くために他に道がない彼らにとって、この「ザ・バンバン」でロックすることが生きていた証であり、自分の湧き出る魂を叫び続けてきた、 作り物ででない本物のロック でした。
心の底から湧き出て止まらないフレーズを紡ぎ合わせながら作られた曲のすべてに、刃物ような激しい感性と澄み切ったピュアな恋心が素直に旋律に流れています。
~おしまい~
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