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May 28, 2006
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カテゴリ: 美術
ドイツ語版とスペイン語版のカタログが置いてあったので、

国際的に、お客様が来ているんですかねぇ?

と首を傾げていたら、 紺洲堂主人さん が受付の方に確認して下さいました。

オーストリアの「フレンドリー・エイリアン」 クンストハウス・グラーツ 、ならびにスペインの ビーゴ現代美術館 をめぐっての帰国展、なのだそうです。
日本の現代美術の紹介、ということで、作家さんも日本人が中心。

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美術館を入ったところに、 森脇裕之 Lake Awareness 」。

あまりにも自然な展示なので、常設なのかと思っていました。

天井から吊り下げられた、ブルーの半球。
小さな三角形のLED基盤の組み合わせで出来ています。

手を近づけると、それを「知覚」して、かそけき音を立てながら光度が上がり、それが漣のように広がっていきます。

しゃがみ込んで、半球の内側の空間へ。
360度、視覚が青の空間に満たされます。
そして、自らの手が起こす、音を伴う波紋。
何とも言えない揺らぎの感覚。

作品とのコミュニケーションが、癒しを与えてくれます。

これは面白いし、楽しい。


岩井俊雄 さんの双方向系の作品に近いものがあります。
(岩井俊雄さんの公式ページは こちら 。)

岩井俊雄の仕事と周辺


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呪術的なエネルギーに満ちている感じ。
常設展示に後ろ髪を引かれつつ、企画展「CHIKAKU 四次元との対話」へ。

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とは言え、 岡本太郎 さんの作品がここでも導入の役割を果たします。

岡本太郎 さんの撮った写真を中心に、CM出演などを含めて、その業績を振り返っているのですが…凄いですね。

思いつく限りのことをやり切った、というエネルギーを感じます。
飛行機を飛ばして、夜空に一筆書きを描いた作品とか、今の作家の卵とかでも思いついて諦めたりしてそうですし、新宿での1時間絵画パフォーマンスとか、「岡本太郎」が行ったことに意味がある作品。

何より、写真が。

昨年『写真展・岡本太郎の視線』展というのがあって、私は行かなかったのですが、ご覧になられていた紺洲堂主人さん曰く、「こちらの方が、質・量共に良い」とのこと。
(紺洲堂主人さんの『写真展・岡本太郎の視線』展感想は こちら 。)

同じ「カメラ」という道具を使っても、その切り取り方のセンスには、人それぞれのものがあり、その、「呪術的なるもの」を、呪術的なままに写し取ってしまう力は、やはり、凄いなぁ、と思います。

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写真では、 森山大道 さん、 中平卓馬 さんの作品が続きます。

同じく写真つながりで、 杉本博司 さんについては、以前森美術館で拝見した「 劇場 」シリーズの出展でしたので、 こちら をご参照ください。

新宿 アデュウアエックス新装版 苔のむすまで

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やなぎみわ さんの作品も、「 砂女 」のシリーズから、「Girls in Her Sand」。
こちら に原美術館「やなぎみわ展」で同作品を観た時の感想を書いています。

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中村哲也 さんの作品、多分、数年前の『Emotional Site』展で観ました。
(これはかなり充実した、面白い企画展でした。はは。この頃はまだblogをやっていなかったのが悔やまれますね。 こちら に少しだけ情報がありました。)

今回は「 Premium Unit 」シリーズでの出展。
有機性を持った漆芸イメージの物体が、バスタブや洗面台として、日常に置かれる不思議さ。
その個性の強さに眩暈すら覚えます。
でも、日常品への侵食は、やり過ぎだよなぁ…。

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笠原恵実子 さんの「 ラ・シャルム 」は、2001年の横浜トリエンナーレで拝見したのと同じと思われます。

円形に広げられた、金髪の人工毛髪が、大きさを変えて数組。
ビデオ・インスタレーションでは、その円の上で、金髪女性がパフォーマンスしている風景が映されています。

色々と女性をめぐる言説を喚起させられる作品であり、そこはかとない不気味さをはらんでいます。
そう、まるで、髪の毛だけ残して消えて(消されて)しまった肉体の抜け殻を見るような…。

うーん。

「何故金髪にこだわるのか?」が、見えてこないのが、歯痒い。
いろいろ深読みは出来るのですが、納得出来る説明に至りません。

カタログによると、他の色を使うこともある、との説明でしたし、髪の持つ身体性と物質性という二重性、主体と客体の揺らぎ、といった視点からの解説がされていましたけど…何か違うんですよね。
いや、解説としては優れているのですが(伊藤俊治さんによる解説です)、実感として、そこまで凄い作品だと思えない。

実際に触れたり、真っ赤なハイヒールが上に転がされていたりすれば、全く違う印象になる気がします。

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小谷元彦 さんの作品も、多分どこかで観た気がするのですが、思い出せませんねぇ。

スケルトン
鍾乳石のイメージを喚起させる、天井から垂れ下がった白い塊。
何故か「乾いた戦争」という言葉が脳裏によぎります。

今回展示されていなかったようですが、宇宙船の一部を思わせる真っ白な球形の「 ベニレス 」は、それに対するシェルターのようにも見えます。(カタログに写真掲載)
両作品を並べて観たかったですね。

白の色調が、清潔さではなく、ちょっとくすんだ、燃え尽きた灰の雰囲気なのですね。
それが造形と相まって不安感を掻き立てているのです。

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渡辺誠 さんは、クンストハウス・グラーツ、ビーゴ現代美術館、岡本太郎美術館での会場設計を担当されたそうです。
写真を見る限り、クンストハウス・グラーツでの展示は秀逸。
ビーゴ現代美術館での展示もコンセプトが明確で面白そう。

岡本太郎美術館では…予算が足りなかったのかなぁ、と。

作品としては、「 FIBER WAVE 」という、グラスファイバーの背の高い「草叢」が風に靡くという作品を出展。
建物内部と、屋外展示の2箇所で展開。

ただ、あまりに整然としすぎていて、少々物足りない感じもします。

冒頭の森脇裕之さんの作品に近いテイスト。

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いやぁ、時間が足りなかったのが悔やまれます。
何より、常設展の方をもっとじっくり観たかった。

そう、やはり、岡本太郎作品の力強さって偉大で、思わず惹き付けられる魅力があるのです。

岡本太郎 岡本太郎美術館にて

この「呪力」に現代美術作家は太刀打ちしていかなければならないわけで。

今回の出品作家でも、森脇さんや渡辺さん、杉本さんなんかは、スマートさで勝ってはいますけど、その分、オドロオドロしい部分は捨象されています。
力強さ、という基準だけで言えば、森山大道さんの作品が最もインパクトがあります。
「呪術性」で言えば、やなぎみわさんや、中村さん、小谷さんが特徴的ですね。

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岡本太郎さんを含めた、先達の凄さを知れば知るほど、現代美術って大変だな、って思います。
呪力を超えるために、呪縛を断ち切って、自らの呪法を確立していかなければならないのですから。

ま、観る側としては、とんでもない魔法をかけてくれる術者に出会えるのが楽しみなわけで。

さて、次はどこに行きましょうか?

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『CHIKAKU/四次元との対話』
- 岡本太郎からはじまる日本の現代美術
[ヨーロッパ巡回帰国展]

@川崎市岡本太郎美術館(向ヶ丘遊園)
http://www.taromuseum.jp/

[会期]2006.04/08(土)~06/25(日)

作者:
 岡本 太郎 (OKAMOTO Taro;1911-1996)
 森山 大道 (MORIYAMA Daido;1938-)
 中平 卓馬 (NAKAHIRA Takuma;1938-)
 杉本 博司 (SUGIMOTO Hiroshi;1948-)
 渡辺 誠 (WATANABE Makoto;1952-)
 森脇 裕之 (MORIWAKI Hiroyuki;1964-)
 やなぎみわ (YANAGI Miwa;1967-)
 伊藤 高志 (ITO Takashi;1956-)
 草間 彌生 (KUSAMA Yayoi;1929-)
 笠原 恵実子 (KASAHARA Emiko;1963-)
 日高 理恵子 (HIDAKA Reiko;1958-)
 須田 悦弘 (SUDA Yoshihiro;1969-)
 中村 哲也 (NAKAMURA Tetsuya;1969-)
 小谷 元彦 (ODANI Motohiko;1972-)
 トリン・ミンハ (Trinh T.Minh-ha;1952-)

★★★★☆





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Last updated  June 16, 2006 07:41:41 PM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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